このエントリは、Techtekt アドベントカレンダー 2021 の16日目 & エンジニアリングに興味があるデザイナー、デザインに興味があるエンジニア Advent Calendar 2021 アドベントカレンダー 16日目 です🎄 。
こんにちは。テクノロジー本部エンジニアリング統括サービス開発部でフロントエンドエンジニアをしています江口です。
お前何者だ、という方は、こちらをご覧になってください。
今年の10月に、UXエンジニアチーム という組織を有志数名で結成しました。その経緯や目指すところをご紹介したいと思います。
UX エンジニアとは?
一般的にはデザインエンジニアと呼称されたりしますが、現在私が所属しているエンジニアリング統括では、当初UXデザイン部の中に組織するエンジニア集団を指す名称として、UXエンジニアという名称が先にあったという経緯があり、こちらの名称を採用しています。現時点では、立場や組織によって定義がまちまちな職種ですが、一般的には、デザイン(特にUIの設計)やエンジニアリング領域(特にMVCでいうビュー層の実装)の双方に関する深い知識を持っている職種、として扱われることが最も多いかと思います。
なぜ取り組み始めたのか
私が所属しているエンジニアリング統括には、UI/UXデザイナー・サービスデザイナー・UXリサーチャーを統べるUXデザイン部と、フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニア・インフラエンジニアを統べるサービス開発部が属しています。 よく言えば専門知識領域に特化した集団を有し、互いをプロと認め、中間成果物たるデザインをそのまま最終成果物に変換する、というプロセスで行われています。逆に悪く言えば、自身が置かれている職能に関する関心領域を極め、他の職能集団の関心領域についてはお任せすべきで、相互理解をしていこうという意識がそこまで高くないというのが、現エンジニアリング統括の実情です。
そこに対する課題解決のためのトップダウンな取り組みとして、統括部長の岡本さんをはじめ、サービス開発部の鹿野さん、UXデザイン部の藤井さんで進めているのがカルチャーデックです。詳細はこちらをご覧ください。(記事はサービス開発統括当時のものですが、エンジニアリング統括になった後もこの施策は続いています)
この記事で岡本さんが述べられている、
プロダクトを早く出す、ユーザーに問いかける、最速対話をするということは、エンジニアが率先しています
この意識にドライブがかかったことは間違いないのですが、速度を優先するあまりフロントエンドに技術的な負債が溜まってしまい、解消する時間がないため、機能追加の速度が落ちてしまうという副作用が顕著になってしまったプロジェクトが出てきました(もちろん、それだけでなく、歴史的に長い期間保守されている、という理由もあります)。
また、アジャイル開発・リーンスタートアップについて最も重要である「早期のBTCコラボレーション」が実現できていないという課題も顕著になってきていました。
具体的には エンジニアは全員忙しいから、エンジニアにはプロジェクトの企画・デザインの完成系だけを共有しよう という雰囲気が統括内に漂ってしまっていました。
そこで、少なくともエンジニアとデザイナーは早期にコラボレーションし、実現可能で開発効率の高いデザインを、デザイナーとエンジニアの双方から作ることで開発効率を向上するというミッションを掲げ、早いタイミングでのBTC間のコラボレーションを産むための文化の醸成を目的として活動することにしています。
現時点では、世間が一般的に想像するデザインエンジニア・UXエンジニアとはちょっと異なるので、その点だけ注意してお読みいただけると幸いです。
具体的に何をしているか
当初の目論見では「各プロジェクトのフロントエンド(特にビュー層)の実装に関する負債を返し、エンジニアとデザイナーのどちらが受け持つべきか不明瞭な領域(インタラクションなど)やプロトタイピングを一手に引き受けるスペシャリスト集団になる!」などと甘いことを考えていました。
とはいえ、この目指すべきところと今の現場の温度感があっていなければ、いろんな施策も空回りしてしまします。そこで、まずはボトムアップ施策を通してプレゼンスを高めていこうと重い、各プロジェクトのフロントエンド実装者とデザイナーに、フロントエンドに関する課題感をヒアリングするところから始めました。(リサーチの際は、UXリサーチチームに進め方をご指南いただきました。坂部さん・はろかさん、いつもありがとうございます!。UXリサーチチームについてはこちらをご覧ください。)
その結果 技術面でサポートしてほしいプロジェクトはあまりない ということ、また エンジニアとデザイナーのプロダクト開発に関する目線があっていない ことが浮き彫りとなります。また、アサイン面やコミュニケーション面での課題も噴出することとなり「これは流石にUXエンジニアがなんとかできる範疇ではない・・・」という課題まで吸い上げることとなってしまいました。
これをきっかけとして、エンジニアリング統括の定義するUXエンジニアを「エンジニアとデザイナーの目線を合わせる人たち」に方向転換しました。
真っ先に取り組むこととしたのは、デザインファイルのフォーマットの統一化です。
現在UXデザイン部では、Figma または Adobe XD を利用してデザインを作成しているのですが、それらのフォーマットに統一感がないという課題がありました。UXデザイン部では特に、アサインを頻繁にローテーションしているということもあり、アサイン変更直後に、デザインファイルがどのように纏まっているのかのキャッチアップからはじめる必要がある、ということが問題として顕在化していました(もちろん、エンジニア側もチームメイトになったデザイナーによってフォーマットが異なることで、確認する手間が増えているという問題も出ていました)。
そこで、UXエンジニアチームの取り組みに賛同していただいたデザイナーとエンジニア数名で、まずは あるべきデザインファイルの様式の策定を行っています。
注釈:こちらデザイナーの方から「私も参加したい!」という声を何名からか頂いていますが、こちらもスピード優先で、まずは形にしたいというポリシーがあり、初期はメンバー数を絞って進めています。。いわゆる ピザ2枚ルールを地でいこうとしています 。ごめんなさい!形になった後は、どんどんフィードバックください!一緒に改善していきましょう💪
他にも、「技術面でサポートしてほしいプロジェクトがあまりない」とは言ったものの、全くないわけではないので、課題感のあるプロジェクトに、オブザーバーとしてマークアップのコードレビューに入ったり、リファクタプランのサポートから実際に手を動かすところまで、包括的なサポートを始めています。
さらに、非エンジニア(主にデザイナー)向けに、昨今のモダンなフロントエンド開発がどのように行われているのかのナレッジ共有施策も行っています。現在は、NuxtJS の環境構築からモダンなCSSの書き方、レスポンシブデザインの考え方といったナレッジ共有を行い、参加者からは「学校で習いたかった!」「jQueryで知識が止まっていたので助かる」といった声もいただくことができました。
最後に、
アサイン面やコミュニケーション面での課題
ここについても、吸い上げた情報を適切にマネジメントレイヤーに報告し、具体的に何をしてほしいかを付け加えて提言するようなことも行っています。組織にまたがる課題を適切に収集できるというのも、組織を横断するチームのメリットですので、それをうまく活かすためにも、現場レベルではどうしようもない問題解決のためはロビー活動?も適切なレベルで利用して行きます。
今後の展望
今後は、エンジニア向けにもマークアップスキルを伝播するような施策にも取り組んでいきたいです。特に、フロントエンドエンジニアの悲願であるIE11サポート終了を控え、よりモダンなHTML・CSSの知識が求められるシーンがすぐそこまできています。正直、私自身も完全にキャッチアップできていないので、共に高め合いつつ、質の高いマークアップをしていけるように組織をドライブしていきたいと思っています。(以前Techtektに寄稿したCTFの施策についても狙いはここにあったりします。CTFのレポートはこちらをご覧ください)
新規事業では、検証価値の確定・素早いMVPの開発・より良いUXの提供という観点で、フロントエンド開発の重要性が高まってきています。エンジニアリングとデザイン双方の高い知識があるプレイヤーがプロジェクトに参画している状況に持っていければ、そこまでフロントエンドが得意ではないエンジニア・エンジニアリングのことはわからないデザイナーがいても、彼らの翻訳機として機能することで、プロジェクトの開発速度をデザイン・フロントエンド領域開発で高速化できるはずだ、という強い想いがあり、それを早期に実現したいと考えています(これは Crafting Component API という概念の影響を強く受けています)。
エンジニアとデザイナーがシームレスに連携できる環境を整えることで、ストレスのないデザイン作成・フロントエンド開発環境を整えていきたいですね。
現在パーソルキャリアが進めている、はたらく未来図構想 に関しても、様々なサービスをリリースしていく予定となっていますが、その際に必要になるであるデザインシステムの構築を牽引できるような組織にしていければと考えています。
ちなみに
新しいチームを立ち上げました!といっておいてなんですが、最終的に、UXエンジニア/デザインエンジニアチームは、長期間組織したままにすることは前提としていません。なぜなら、エンジニアの考えをデザイナーが理解し、デザイナーの考えをエンジニアが理解できてしまったら、あえてチームとして組織する必要がなくなるからです。この考えからわかっていただきたいのは、まず早い段階でお互いの考えを共有し合い、理解し合うこと、それを現場レベルで推し進めるのが、現時点のエンジニアリング統括のUXエンジニアチームのコアバリュー、ということです。本来はプロジェクトマネージャーやスクラムマスターが担う部分かと思いますが、それすら超えていける組織にしていきたいという淡い期待も付け加えておきます。
最後に
現在、積極的にUXエンジニアチームについて稼働できているのが実質江口の1名だけであること、そして私もいろいろなプロジェクトの企画などに声がかかっていることなどが重なり、正直手一杯な状況が続いてしまっています。。このエントリをご覧になって「なんか楽しそうなことしてるな」「デザインエンジニアのキャリアパスを自分も目指したい!」「フロントエンド開発もデザインもしたい!」「技術がわかるからできるデザインがあるという強いポリシーがある」という方がおりましたら、是非お話を聞きにいらっしゃってください!(というか、助けてください!!)
それでは。
江口 拓弥 Takuya Eguchi
エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ シニアエンジニア
2008年、地元山形のソフトハウスに入社するも、半年後に東京へ転勤。Webアプリケーションの受託開発とセールスエンジニアを3年経て、派遣先であった小さなSIerに転職。システム統合に伴うデータ整備業務を経験し、堅牢なシステムの作り方と運用に触れる。2018年に仙台に移住。Ruby on RailsとVue.jsを使用した受託開発業務を経験した後、パーソルキャリアにジョイン。Nuxt.jsとFirebaseを利用し、転職後アフターサービス「CAREER POCKET」を開発。その後は複数の新規サービスの開発に携わる。
※2021年12月現在の情報です。