取材の「場」の作り方

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こんにちは。techtekt編集部 もりたです。

世の中的にこの1,2年で技術広報に関する発信や技術広報の採用がぐっと増えたように感じています。その役割は多岐にわたり、エンジニア採用を支えたり、開発者コミュニティを強化したりと、各社が技術広報のプライオリティを高めていると理解しています。

そこにはこれまで、技術広報として活躍されてきた方々がオープンに、ご自身のノウハウを余すことなく公開されてきたことで、技術広報へ参入しやすくしてくださっていたことが本当に多くの人の支えになっていると思います。

私もその一人として、とてもとても微力ながらこの技術広報の領域に、これまでの知見を還元したいと思い、今期からより発信を重ねてまいります。皆様どうぞよろしくお願いします。

さて、今回は「取材の“場”の作り方」についてです。年間70本以上の取材を続けてきた私が、取材環境から時間の使い方、取材中の“嗅覚”についてなど実践していることをお伝えします。

 

こんな方にオススメ

  • Webメディア取材や自社のオウンドメディア取材を担当する採用広報、技術広報の方
  • 取材準備を入念に行っても、本番(取材中)で「なんかいつもうまくいかない」と感じている方
  • 取材時間の使い方(大幅に時間が余る、または、時間を超過する)に悩んでいる方
  • インタビュイーの本音を引き出すのに時間がかかってしまって、その人らしい記事ができないことに悩んでいる方

取材の時間・流れ

まずは大まかな取材の流れについて説明します。

  • 取材時間は撮影含めて60分
  • 取材準備の時間として、編集部だけ前後30分バッファを持つ。(後述)
  • 60分の内訳:ロゴ前撮影 → インタビュー → トップ画撮影

オウンドメディアの記事作成のための取材時間は、撮影込みで基本的に60分に設定しています。サイト立ち上げ当初は90分(長くて120分)で取材を行ってきましたがインタビュイーのコストを極力減らしたいため、60分に短縮し、聞きたいことをぎゅっと詰め込んでいます。

また、撮影も合わせて行います。たまに撮影を別日で行うケースを耳にしますが、個人的には同日の方がおすすめです。インタビュー中の自然なしぐさや振る舞いは、きっと一緒に仕事をするときにも出るものだと思いますので、それをありのまま伝えたい、という想いからです。あとはインタビュー中の目力もなかなか別日だと出ないので(笑)それも合わせて同日がおすすめです。

 

撮影はあえてインタビューの前後に挟んでいます。インタビューされることに慣れている社員はそう多くはありません。大体皆さんいつも緊張して取材場所に来られることが多いです。そのため、いきなりマイクを向けるのではなく、撮影から始めることで徐々に肩の力を抜いてもらいます。

撮影も緊張すると思うので、とにかく担当者はよくしゃべることが重要だと思っています(静かに写真だけ撮られるところを想像してください。それだけで緊張感ありますよね。)

「今の笑顔いいですね!」「あれ?少しまだ表情が硬いですか?」「●●さん(インタビュイーと一緒にはたらくメンバーや上司)を思い出してみましょう」などと話していると、みなさん顔がほころび、さまざまな表情になります。

techtektでは「パーソルキャリアではたらくリアル」をお伝えするために、より自然体の社員を映し出せるよう取り組んでいます。

インタビュー後のトップ画撮影は、インタビュー後の晴れやかな表情を撮影するために後にしています。ロゴ前撮影とはまた違う表情になっているインタビュイーの皆さんを見られるのは担当者の特権の一つだなぁといつも感じています。

 

取材環境

取材は、パーソルキャリアの大手町オフィス内にあるスペースを使って行っています。イベントにも使われるような広めのスペースで、取材中は貸切予約をして、社員も入れないように工夫しています。

オープンテラスやカフェなどで取材するケースも多いですが、やはりほかの人の目があるとインタビュイーがのびのびと話せなかったり、声が入ってしまって文字おこしに苦労することもあるため、静かな環境で行っています。

また取材中にも撮影が入るため、取材前準備として環境をきれいにすることを心がけています。

  • インタビュイーの周りは空間を開けておきたいため余計なものは置かない(椅子・机は撤去)
  • カメラマンさんが動きやすいような配置を心がける
  • インタビュアーとインタビュイーの席の距離感 など

取材前後に場所を片づけたり、リセットしたり、と手間はありますが、そのくらい取材環境には配慮をしています。

 

取材中(本番)

基本的には事前に作成している取材骨子の通りに進行しますが、骨子通り進めていくと、こんな経験に遭遇することはありませんか?

  • 事前の打ち合わせにはなかった または、骨子の内容とは少しずれるけど大事な話が出てきた。このままその話を続けてもらうべきか?
  • 明らかにインタビュイーが答えにくそう(答えられない、話が冗長になっている、など)
  • 話が広がりすぎてしまって、時間的にも記事的にも収集が付かなくなってしまった
  • インタビュイーが想定質問への回答をしっかり準備していたので、用意されたものを読み上げるだけで終わってしまった
    • かしこまった答え、きれいな答えが中心になってしまう。インタビュイーらしい表現に欠けてしまう
  • 取材自体はスムーズに終わったが、後になって「あれも聞いておけばよかった」と後悔することがある

いずれかの経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。

個人的には、どんなに取材骨子を丁寧に・しっかり作りこんでも、いつだって起こりうることだと思っています。さまざまな事情はあれど、取材中に原因追及している場合ではありません。

そこで、大事にしたいのは取材中の「嗅覚」と「臨機応変に対応するチカラ」、「質問力」の3つです。

取材中の“嗅覚”、臨機応変に対応するチカラ

(可能な限り言語化すると)嗅覚とは、「インタビュー中に思わずこぼれ出た旬な話・深掘りすべき話をかぎ分けて逃さないチカラ」だと思っています。

骨子を作成している時点で、ある程度記事のストーリーを想定して取材に臨んでいる方が多いですよね。しかし、何かをきっかけにして、より深いエピソードが聞けたり、本題とは逸れるけどいい話が出てきたりしたときにどうしていますか?骨子の内容と逸れてしまうので、スルーしていたり、話を切ってしまったりしていないでしょうか?

本当は想定する読者の方にとって有益な情報だったかもしれないのに、逃してしまうのはモッタイナイ。

「もし入社者だったら、今の話もうちょっと聞きたい(かも)!」

「その話に派生させて、〇〇についてはどう考えていますか?」

「ちょっと取材骨子にはないんですけど、それってぶっちゃけどう捉えていらっしゃるんですか?」

など、コンテンツ企画者と読者を行ったり来たりさせながら、その嗅覚を研ぎ澄ましています。

 

もし骨子とは少しずれた場合の対応を臨機応変に行うことも重要です。

テーマを少し変えてみる、テーマは変えないけど厚みを持たせる部分を変える、想定していた質問項目を少し減らす、など場の状況に応じてクイックに変更します。

この辺りを鍛えるにあたって、「誰のために」「何を伝える」記事なのか、そしてどんな記事にするのかを具体的にイメージし続けることが重要だと感じています。先ほども書きましたが、取材中は読者になりきる、読者と言っても具体的に――これからXX統括部の面接を控えている方、もしくはこれから入社する方、興味はあるけど応募を迷っている方――読者にとって有益な情報提供になるかどうかを考えながら取材を行っています。

質問力

取材中はどうしてもインタビュイーの回答ばかりに目がいきがちですが、納得のいく答えを引き出すには「良い質問」であるかが重要です。回りくどい質問をすれば、回りくどい回答しか返ってきませんし、曖昧な質問だと曖昧な回答、あるいは望んでいない回答しか返ってきません。

明らかに答えにくそうな時や、話が広がっている時には質問の仕方や見方を変えます。

 

質問の一例

  • オープンクエスチョンでの質問が続いた場合は、一問一答形式で質問する
  • インタビュアーが言葉を選びすぎず、単刀直入に聞く(回りくどくなることを避けるため)
  • インタビュイーの中で「〇〇することが当たり前」になっていることを言語化してもらう(例:そうじゃない選択肢をとることもできたのに、その判断したのはどうして?など)
  • 行動や意思決定の背景にある文化を探る(例:その行動は職種特有のものなのか?組織文化なのか?企業文化なのか?など)

インタビュイーが答えやすいように質問文をシンプルにしたり、またインタビュイーの中で黙知的なコト、当たり前すぎて言語化されていない部分を引き出すことを心がけています。

 

最後に

ここまで長々と記載をしましたが私もまだまだできていない部分が多く、日々勉強です。社内のエンジニアが取材のフィードバックをしてくれるので、これまでの取材をブラッシュアップしながら進めてこられたと思います。

一方で、うまくいった取材の時には大体インタビュイーから「ここまで話すつもりなかったのに、ついつい話しちゃったよ」「楽しすぎてしゃべりすぎちゃった」なんて言葉がもらえると、それはもうその日は祝杯です(笑)日ごろのエンジニアとの対話を大事にしながらこれからも取材の場の作り方を向上していきたいと思います。

また、techtektではクレジットに記載がある通りパートナー企業としてエーアイプロダクション様にお世話になっています。techtektが立ち上がってから共に走り続けるパートナーとして、この取材の在り方についてもたくさん議論を重ねてきました。

この場をお借りして感謝を申し上げます。いつもありがとうございます!

 

それでは次回のtechtektの記事もお楽しみに!

 

パーソルキャリア もりた

もりた

戦略企画統括部 組織開発部 Techリレーショングループ 

2009年パーソルキャリアに入社。キャリアコンサルタントやマーケティングの経験を経て、人事へ異動。エンジニア採用やオンボーディングなどの施策検討などを行い、現在は採用広報として、エンジニア向けオウンドメディア「techtekt」を運営する。

 

※2024年6月時点の情報です。