データ×Tech戦略 part2――テクノロジーの“プロ集団”が狙う事業開発テーマとは

トップ画像データとテクノロジーを司り、高い技術力を生かした業務でミッション実現を目指す「デジタルテクノロジー統括部」。当社の主力事業である転職支援にまつわるプロジェクトを数多く担うほか、時にはMaaSや情報銀行といったテクノロジートレンドに沿った社会課題解決の実証を行うなど、さまざまなジャンルのプロジェクトを担っています。

2021年10月より、デジタルテクノロジー統括部では、市場の変化に合わせてテクノロジー活用をより推し進めるべく、いくつかのテーマをもとに新たな事業開発の創出にチャレンジしていきます。

どのような想いで事業開発テーマを設定し、仕組みづくりを進めていくのか。パーソルキャリアに2021年4月に入社した企画構想の立役者、マネジャーの篠田と、これまでも数多くのテクノロジー活用を支えてきたゼネラルマネジャーの斉藤に話を聞きます。

 

発足から4 年 デジタルテクノロジー統括部の“今”

――まずは、デジタルテクノロジー統括部の“今”についてお聞かせください。長く部を率いてこられた斉藤さんと新たに参画された篠田さん、それぞれの視点から、社内における役割や部としての課題をどのように捉えていらっしゃいますか。

斉藤:デジタルテクノロジー統括部は、「人々に、“はたらく”を自分のものにする力を」というパーソルキャリアのミッションを、データとテクノロジーから実現するためにつくられた組織です。

デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

デジタルテクノロジー統括部 事業開発部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

発足以来、dodaをはじめとした既存事業のデジタライゼーションや、業務効率化など、テクノロジー活用に現場と共に取り組んできました。課題が生まれた時に現場から声をかけてもらって協働するなど、役割や立ち位置を少しずつ確立できてきたかなと手応えを感じています。

一方で、テクノロジー活用を進めるだけでなく、既存事業に囚われない第三者視点から新規事業を興していくことも私たちの役割の一つですが、この点ではまだ大きな課題があると捉えています。

労働人口の減少など様々な社会課題がある中で「本当に求められるサービス」になるには、効率化などの社内に向けた視点だけでなく、社会を広く捉える・中長期的な視点が必要です。社会や他社の動きに目を向けて「あるべき姿」を描き、その実現に向けて時には既存事業の枠を壊しながら新たな取り組みを創出する。このような動きを今後より強化していきたいと考えています。

 

篠田:そうですね。特にビジネスの話になると、HR業界で起きていることに議論が閉じてしまいやすいものですが、例えば流通や金融、保険、物流・交通など他の業界でもテクノロジー活用の事例は豊富に存在します。また、企業のビジネスプロセスや生活者の行動も大きく変容しています。そういった外の動きに今まで以上にアンテナを張ってヒントを得たり、「自分たちの取り組みとの掛け合わせで新たな価値を生み出せないか」という視点から議論ができるようになったりすると、より良いなと思います。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー 篠田 徹

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー 篠田 徹

 

また、入社してメンバーとコミュニケーションをとる中で、各領域の高いスキルを持った方が集まっていること、そしてそれぞれが自身の領域だけで閉じずに他領域の知見も身に付け、役割からはみ出しながら協働して業務を成り立たせていることを感じています。もちろん、互いの領域に関わり合うことはリスクも孕んでいるかもしれませんが、一方でさまざまなバックグラウンドで経験を培ってきた方々の観点が混ざり合う、非常に良い環境とも言えます。だからこそ、今後はもっと議論の機会を大切にしていきたいですね。

特に斉藤さんのおっしゃる新規事業創出の観点では、一人ひとりに良いアイデアがあっても「面白そう」というだけでは走り出せません。課題をより深掘りして本質を見極めるための議論を、個々ではなく皆で行い、「アイデアの種を撒いて水をやり、芽を出す」という過程を、丁寧に行っていきたいと思います。

 

一定の制約を設けることで、自由な“文化”が“仕組み”に変わり、やがて“戦略・戦術”に発展する

 

――ここからは、今回行われた事業開発の仕組みづくりについて詳しく伺っていきます。まずは企画の概要から教えてください。

篠田:新規事業開発について、以下2つを行いました。

  1. プロセスを緩やかに型化すること
  2. アプローチする領域として「事業開発テーマ」を設けること

まず①の型化については、新規事業開発のプロセス全体を細かく分けて捉え、マイルストーンを設定しました。この型をベースに皆で共通のステップを踏んで事業創出に取り組んでいくことになりますが、「型に沿って進めること」は目的ではありません。あくまで新しい価値を生み出すための手段となるように、“緩やかな”型化をポイントにしています。ゴルフをするにあたって、基本的なスイングの仕方を共有するイメージですね。

②の事業開発テーマについては、ミッション・ビジョンの実現に辿り着くために、私たちがアプローチしていくべき領域を「マーケット」「技術」の2軸で定めたものです。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー 篠田 徹

マーケット・領域のテーマは、“これまで培ってきた知見を活かして、優位性を発揮しながら価値提供できる領域”且つ“はたらき方が大きく変化していくなかで、社会課題解決につながったり、新たな価値が生み出される余地のある領域”を想定して設定しました。「人々がオーナーシップを持って自身のキャリアを形成していく」「企業が人々の“はたらく”の多様化に対応していく」ためのサポートや仕掛けにフォーカスし、エンドユーザーの抱える課題を解決していきたいと考えています。

技術領域についても同様に、“これまで私たちが既存事業を推進する中で培ってきた技術領域”、例えば機械学習や自然言語、音声、動画などを事業開発テーマの中心に据えました。加えて、今後多様なはたらき方がさらに広がる中で必要とされる技術、例えば信用や履歴の裏付けの基盤となる「ブロックチェーン」なども、テーマに反映させています。

この2軸の事業開発テーマをもとに、「マーケット技術の掛け合わせで、いかに有効なデータを取得するか」「どのような価値に転換していけるか」を議論していこうと、動き出したところです。

 

――これまでも新規事業開発に向けて様々な取り組みをされてきたと思いますが、この2つの仕組みがつくられたことで具体的にどのような違いが生まれるのでしょうか。

斉藤:これまでの新規事業の起点は個人の経験や発想によるもので、だからこそ既存事業に囚われやすくもありましたが、今回の仕組みができたことで、そういった「属人的」な部分を減らせると考えています。

デジタルテクノロジー統括部 事業開発部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

またさまざまな観点から、新規事業創出が進めやすくなるはずです。これまでは、せっかくアイデアが生まれても「この領域で社会課題を解決しうる事業になるのか」などの理由から確度が低かったり、適切なステップを踏まずに事業化に漕ぎつけられなかったりする場面もありました。今回アプローチする領域があらかじめ定められ、さらに明確にフェーズを切ってマイルストーンが設けられたことで、「感覚」ベースではない進め方で議論しながら着実に前進していけると思っています。

 

篠田:「本当に解決したい課題か」「ソリューションは適切か」「お金を払っていただく価値を出せるか」を各フェーズで順を追って検証していくことで、クオリティだけでなく形になるスピードも高まる期待が持てますよね。

また進めやすさという点では、アイデアを生み出す過程にも言えます。「制約からしかものは生まれない」と言われるように、真っ白なところからアイデアを生み出すのはそう簡単ではありません。一定の制約ができたことで、課題の本質に迫るアプローチがしやすくなればと思っています。この過程では、課題の本質に迫るため、慣れ親しんだ既存プロセスやこれまでの常識を疑う思考にも心掛けています。

 

――仕組みが自由を制限するのではなく、自由な発想や議論を生み出しやすくし、またその種から着実に芽を出すための助けにもなるのですね。

 

斉藤:そうですね。「自由」は時に苦しいものですから。今回仕組みをつくっていただいて、「自由の中で自分たちがどうやって泳げばいいのか」を教わったことで、デジタルテクノロジー統括部の自由な「文化」が「仕組み」に変わり、これがやがて「戦略・戦術」に変わっていく、その途上にあるのだと捉えています。

これまでは小規模の組織だからこそ、このような仕組みがなくても成り立っていましたが、会社からかけていただく期待と共に規模と役割が大きくなってきた今、前進を続けるには仕組みが必要です。これからさらにジュニアのメンバーも迎えて組織が成長していくことを考え、今回つくった仕組みを柔軟に変化させながら、メンバーたちが価値発揮しやすい形を整えていければと思います。

 

社員も「“はたらく”が楽しくなった」と思える組織をつくる

――現段階での手応えや、部署の方々からのお声などがあれば教えてください。

篠田:ビジネスワークショップの形で、制約を設けた中で課題やアイデアを生み出す取り組みを行った際、完全に自由な議論の場では出てこなかったような課題感が持ち上がってきました。一定のフレームを設けることで、その領域に近しい課題が浮き彫りになってきたのかなと実感しています。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー 篠田 徹

デジタルテクノロジー統括部のメンバーは、さまざまな形で現場に関わらせていただいているので、「既存事業の事業部からのご相談」「キャリアアドバイザーが転職希望の方からいただいたお声」「ユーザーインタビューで見えてきた課題」など、たくさんのニーズや思いに接しています。そういった一つひとつのチャンスを今後拾い上げていけるといいなと、改めて感じましたね。

 

斉藤:今回つくった仕組みについては、現在一部のメンバーに先行して取り組んでもらっている段階なので、今後全メンバーに取り組みが広がっていく中で、評価をいただきながらPDCAを回していければと思います。

 

――ありがとうございます。お二人の今後の展望をお聞かせください。

 

篠田:非常にポテンシャルの高いメンバーの皆さんと共に、常識や今の仕組みをポジティブに疑いながら、「テクノロジーの力で構造を打破していく」くらいの気概で新しい価値を生み出していけたらと思います。多くの人々が自分らしくはたらくことのできる世界観をつくっていけたら嬉しいですね。

 

斉藤:私たちパーソルキャリアは「はたらく」の領域でサービスをご提供していきますが、それと同時に私たち自身も「この会社に来て“はたらく”を意識するようになった、楽しくなった」と思えるような会社にならなければいけません。今回の取り組みを、そのための仕組みにしていきたいですね。

デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

またこの仕組みをベースに、社内のメンバーにも「デジタルテクノロジー統括部ってこんな組織なんだ」と理解して上手く頼っていただけるようになると、とても面白い組織になっていくはずです。文化や仕組みをどんどん発信しながら前進していければと思います。

 

――それでは最後に、これからデジタルテクノロジー統括部に入られる方に向けて、メッセージをお願いいたします。

 

篠田:新しく入ってくださる方は、おそらく「パーソルキャリア、デジタルテクノロジー統括部の器を使ってやりたいこと」をお持ちだと思いますし、そこにはそれをやりたいと思われるようになった原体験があるはずです。その思いや原体験を大切にしていただき、斉藤さんや私を含む他のメンバーと一緒になって具体化をしていければと思います。

 

斉藤:今回できた仕組みを活かして、デジタルテクノロジー統括部ではたらく一人ひとりが「履歴書・職務経歴書に自信をもって記載できる一行になるような仕事」に幅広く挑戦できるような形をつくっていきます。ぜひ新たに参画してくださるメンバーにも、この会社や組織の環境をうまく活用して市場価値を高めていってもらえたら嬉しいですね。

 

――ミッション実現のための事業創出が楽しみになってきました!ステキなお話をありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

斉藤 孝章 Takaaki Saito

デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー

大学卒業後、自動車業界を経て、コンサルティング業界、EC業界、人材業界などのITガバナンス及びIT戦略・設計に従事する傍ら、管理職として組織構築に貢献。2016年にパーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。同社のミッションである「人々に“はたらく”を自分のものにする力を」の実現をテクノロジードリブンでリードする。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー 篠田 徹

篠田 徹 Toru Shinoda

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ マネジャー 兼 事業開発プロデューサー

国内総合シンクタンクにて、ビッグデータマーケティング及びAIやデジタルテクノロジーを活用した新事業開発支援コンサルティングに従事。その後、大手旅行会社にて、マーケット・インテリジェンス機能推進、R&D組織づくり、スタートアップ企業との共創による事業開発に取り組む。2021年4月にパーソルキャリに入社。

※2021年11月現在の情報です。