副業・フリーランス人材マッチングプラットフォーム「HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト)」――開発のウラガワを聞いてみた

パーソルキャリアは、今年5月にプロフェッショナル人材の総合活用支援ブランド「HiPro(ハイプロ)」を立ち上げ、7月には同ブランド内で副業・フリーランス人材マッチングプラットフォームサービス「HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト)」のサービス提供を開始しました。
「副業・兼業は推進される一方で、なかなか外部人材の活用が進んでいない」――Hipro Directのサービスデザインに携わった長谷川はそう話します。そのような課題を解決するために、開発側ではどのような試行錯誤があったのでしょうか。今回はサービスデザイナーの長谷川に加え、エンジニアの早坂、山内、星に話を聞きました。

 

企業の外部人材活用を支援するマッチングプラットフォーム

 

――まずは、「HiPro Direct」のサービス概要から教えてください。

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第1グループ リードディレクター 長谷川 椋平の写真

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第1グループ リードディレクター 長谷川 椋平

長谷川:「HiPro Direct」は、企業の外部人材活用を支援するプラットフォームです。「高度な専門性を持つ社員が自社におらず、事業が推進できない」といった課題をお持ちの企業様と、副業やフリーランスとして活動されている“プロ”が直接出会える場となっています。

 

――このサービスは、どのような背景で誕生したのでしょうか?

長谷川:タレントシェアリング事業部では、企業様が抱える課題に対して経営顧問をご紹介する「HiPro Biz(旧:i-common)」というサービスを10年ほど運営しています。

その中で、顧問となるのは元役員や上級役職者といった豊富な経験と高い専門性を持つ方々であるために、契約料金が比較的高く「さまざまな方から幅広く意見を聞きたい」というニーズには応えきれていなかったのです。

また、顧問からのアドバイスによって、経営や事業の課題に対するソリューションが見つかっても、実務人材の不足によって実際にそれを実行に移すことができない企業様もいらっしゃったり……といった課題が挙がっていました。

これらをふまえ「HiPro Biz」では拾いきれないニーズに応えていくために、プロ人材と直接・手頃な費用で出会えるマッチングプラットフォームを用意しようと生まれたのが「HiPro Direct」です。

 

――「HiPro Direct」の強みを教えてください。

長谷川:一つは、案件作成の過程を簡略化し「3つの問いに答えるだけで案件ができ、最短即日でプロの方と話ができる」という体験をご提供していること。これによって、外部人材の活用に慣れていない企業様でも自社で簡単に案件や人材要件の定義が行え、「プロと話すってこんなにすごいんだ」と体感していただくことができます。

もう一つは、企業様の案件作成やプロ人材のプロフィール登録において業種を600種以上のスキルに細分化することで、マッチングの質を高めていること。プロに依頼したい内容をより的確に業務の実態に沿った形で定義し、それに応えてくれる人材と出会うことができます。

 

可変性・拡張性を意識し、実装や環境に合わせた柔軟な開発を

 

――続いて、開発にフォーカスしてうかがいます。まず「Hipro Direct」の技術スタックについて教えていただけますか?

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア 山内 英夫の写真

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア 山内 英夫

山内:フロントはNext.jsを使用し、React環境で開発を行っています。開発言語はTypeScriptです。

 

星:サーバーサイドはNode.jsを使っており、フレームワークはNest.jsを採用しています。開発言語はフロントエンドと同様に、TypeScriptです。またデータベースと連携するO/Rマッパーについては、TypeORMを採用しています。

 

早坂:インフラ側は基本的にGCPを使っていて、サービスとしてはGoogle Kubernetes Engine(GKE)、データベースはCloudSQLを使用しています。

 

 

――今回サービスを創るにあたっての、エンジニアの皆さんのこだわりポイントはどのような点でしょうか。

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア 星 裕也の写真

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア 星 裕也

星:こだわったのは、クリーンアーキテクチャをベースにしつつも、そのルールにかっちりと則るのではなく、“可変性” を意識して実装や環境に合わせて柔軟に対応する方針をとっていることでしょうか。

 

山内:可変性についてはフロント側でも意識しており、設計段階でサービス開発部のフォーマットであるアトミックデザインを採用せず、今後柔軟に変更できるよう独自のディレクトリ分けを考えて進めました。これは正解だったのではないかなと思っています。

 

早坂:インフラ側も同様ですね。今後「HiPro Biz」との連携を進めることを見据え、認証周りの拡張性は高めにしたほうが良いだろうとAuth0というサービスの利用を決めました。GKEを選択したのも、認証の安全性や可用性を高めようという判断です。

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア 早坂 悠の写真

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア 早坂 悠

 

――サービスが今後どのように変化していくかわからない立ち上げ段階において、拡張性をどのように考慮して進められているのでしょうか。

長谷川:立ち上げと同時に、「HiPro Direct」として市場をどう攻めていくかというロードマップも描きながら進めています。「今後このような機能を追加する時があるかもしれないので考えておきましょう」と適宜お伝えをしていました。

また、Hipro Biz、Hipro Techの領域で生まれてくるサービス情報をキャッチアップして共有させていただいたりはしています。

ただそれだけでなく、エンジニアのみなさんから「今後このような変更があり得るのではないか」「こうしておいた方がよいのではないか」と自主的にご提案やご指摘をいただける環境になっているんです。プロジェクト全体の大きな方針と、開発チームの知見をふまえた考えの両方がかけ合わさって、先のことを考えた進め方ができているのかなと感じますね。

 

山内:「このパターンが来たら絶対にこんな拡張が起きるはず」「このパターンはここに気をつけないとまずい」といった意見はさせていただいてきました。

これまでの開発経験で培った引き出しという部分もありますし、またフロントエンドではリファインメント前に読み合わせをしてディスカッションする時間を設けているため、チーム全員の知見も反映できているかなと思います。

 

星:バックエンドのメンバーも経験豊富な方が多いので、意識的に異常系に目を向けて考慮しながらみなさん提案されているなと感じますね。

 

お客様の声を元に短期での改善を重ね、かゆいところに手の届くサービスへ

 

――7月にサービスがリリースされましたが、お客様の声としてはどのようなものがあがっていますか?

長谷川:現在は無料の会員登録も合わせて企業様は100社以上、プロ人材は2500名以上のご登録をいただいており、50件近くのマッチングが生まれました。実際に稼働につながったケースも増えてきており、着実にご支援の実績がでています。

お客様から「こんなサービスを求めていました」「プロと話す体験ってこんなに良いものなんですね」と嬉しいお声をいただいたり、初月無料キャンペーンでの体験の良さから有償化をしてくださる例もあったりと、サービスに共感いただけるお客様がたくさんいるのだなと実感しています。

一方で「こんな機能が欲しい」「サブスクリプション型だけでなく、お試しできる料金体系があったら嬉しい」といったご要望もいただいており、現在新しいプランを実装するために早速始動しています。

 

 

――ありがとうございます。それでは最後に、このプロジェクトにおけるKPT(Keep, Problem, Try)をそれぞれの視点からお聞かせください。

山内:拡張性についての話もそうですが、思ったことを言いやすい環境ができているので、この点は継続していきたいですね。

一方で、SHIFT社にテストしていただいていること、複数の機能開発が並行で走るパターンが多いことにより、リポジトリの運用が複雑になってしまっていることが現在のプロブレムかなと捉えています。トライについては、もう少しモダンなツールやサービスをさまざま使っていきたいなと思います。

星:これまで大幅な遅れもなく安定して機能リリースができてきたので、今後もこのペースで開発のサイクルを回していきたいなと思っています。

長谷川さんからあったように機能面で改善のご要望をいただいているため、早坂さんをはじめインフラ側とも連携しながら、新たなサービスを使って新機能を実装していきたい、というのがプロブレムでありトライの要素かなと思います。

 

早坂:他のプロジェクトと比べても早いペースでリリースサイクルを回せているため、今後も短期での改善を維持していきたいなと思います。また開発初期の段階にオフライン顔合わせができたことは良かったのかなと思うので、今後も続けていきたいですね。

プロブレムとしては、機能面でかゆいところに手が届かなかったり、何も知らないユーザー様にとって「この機能が何かわからない」という部分もあったりするため、今後改善していきたいなと思っています。その先で、面談機能などあらゆる機能をこのサービス内で完結させることにも挑戦していければと思います。

長谷川:エンジニアのみなさんの生産性が非常に高いこと、機能や仕様についてみなさんからさまざまなご提案をいただけていることは、今後もキープしたいポイントです。

プロブレムとしては、副業・フリーランス市場はまだ法整備が進んでいく途上にあるため、一つの機能を作るにもクリアすべき物事がたくさんある点が挙げられるかなと思います。

トライとしては、テクノロジーを活用した競合優位性をどんどん作っていきたいなと思っているので。エンジニアのみなさんに、今後もお力をお借りできれば嬉しいなと思います。引き続きよろしくお願いします!

 

――ありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

 

 

長谷川 椋平 Ryohei Hasegawa

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第1グループ リードディレクター

エンジェル投資家への弟子入り、個人事業主、グルメテック領域での起業を経て、2020年1月にパーソルキャリアへ参画。企画段階からグロースまで、フェーズやプロジェクトを横断して「価値ある体験と持続するビジネスの仕組み」のデザインに従事する。

早坂 悠 Haruka Hayasaka

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア

2013年にWebエンジニアに転職。Ruby on Rails, React.jsを利用したサービス開発をフロントエンド中心に経験し、2018年7月にパーソルキャリアに入社。現在は「HiPro Direct」など、Next.js, GCPなどを利用したサービス開発に携わっている。

星 裕也 Yuya Hoshi

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア

2005年からjavaエンジニアとしてWebアプリケーション開発を経験。その後はベンチャー企業にて様々なWebサービスの開発に携わる。2021年12月にパーソルキャリアに入社し、HiPro Directではバックエンドエンジニアとして開発に携わっている。

山内 英夫 Hideo Yamauchi

タレントシェアリング事業部 Business innovation部 HiPro Direct Product部 Engineeringグループ リードエンジニア

2006年flashエンジニアとして転職したのち2012年頃からフロントエンドエンジニアとしてベンチャー企業を転々とする。2020年にパーソルイノベーション入社。エクスチームのフロントエンド開発に関わる。2021年パーソルキャリアに転籍。

 

※2022年10月時点の情報です。