新卒データサイエンティストの成長ストーリー #番外編 初プロジェクトでの分析/考察を通じて得られた学び

新卒データサイエンティストの成長ストーリー #番外編 初プロジェクトでの分析/考察を通じて得られた学び

2022年4月、「事業及び社会課題を整理し、テクノロジーでサービスの付加価値を高めるプロ集団」であるデジタルテクノロジー統括部に2名の新卒データサイエンティストが入社しました。用意された研修プログラムをこなしながら、どん欲に学び、主体的にプロジェクトや打ち合わせに参加し、得られた知見をアウトプットする――既存社員にとってもよい刺激となりながら、半年が経ちました。

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今回、そんな2人がとあるプロジェクトにおいてタッグを組み、アンケート調査をもとにした仮説検証・フリーテキスト分析・網羅的分析を通じて、注力課題の設定と解決策の提案までを行った報告書をまとめ上げました。仔細な考察から分析の手法までがわかりやすく書かれた130ページ超の超大作により、プロジェクトは大きく前進したといいます。この取り組みを通じてどのような学びや気づきを得られたのか――2人に話を聞きました。

 

※撮影時のみマスクを外しています。

 

アンケート結果から“はたらく”にまつわる課題と解決策を導く

 

――まずは、今回お二人が進められた取り組みの概要から教えてください。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 安藤 有瑠聡

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 安藤 有瑠聡

安藤:今回パーソルキャリアの人事部より、実施済みのアンケートから示唆を得るフェーズについてご相談をいただき、私と倉持さんでアンケート結果の分析と仮説の検証を担当しました。

 

――お話を受けて、どのようなプロセスで課題設定・解決策の提示まで進めたのでしょうか。

安藤:まずは、「測りたい内容が各質問項目できちんと測れているか」「どの項目をみたら仮説を検証したと言えるか」などの観点で、データを精査することから始めました。仮説と質問項目との間にずれが生まれている部分があったためです。

倉持:その後、①人事部で立てた仮説の検証、②フリーテキストの分析、③仮説とは直接関係のない項目の網羅的な分析、の3つを進めてみようと決め、本格的に始動した流れです。

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お互いの得意領域をふまえて、定量的な仮説検証や網羅的な分析は安藤さんが、フリーテキストの分析は私が担当する形で役割分担をしています。それぞれの分析から見えたことをつなぎ合わせながら、また先輩やデータ分析に詳しい方にご意見をいただいて修正を加えながら、進めていきましたね。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 倉持 裕太

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 倉持 裕太

 

――具体的に、どのように分析を行われたのですか?

倉持:私は大学院でテキストマイニングを学んでいたため、まずは頻出語を図示してまとめる「ワードクラウド」や単語どうしの関係性を図示する「共起ネットワーク」などの手法から試みました。

ただ、分析対象であるフリーテキストには、アンケート回答者の率直なお声がたくさん書かれていました。それを定量的に示そうとするよりも、しっかりと読む方が大切だなと思い、方針を変えたんです。

500件近くの回答を一つひとつ丁寧に読みながら、「このコメントは、おそらくこういうことを示している」とタグ付けして整理を進めていきました。

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安藤:私は、最初に精査したデータをもとに人事部の方が立てた仮説を検証したほか、網羅的な分析では年齢や職種、部署などの区切りをかけ合わせた分析を行いました。 膨大な分析結果をどうまとめようかという段階で行き詰まりかけたものの、倉持さんのフリーテキスト分析の結果から方向性が見えた部分もありましたね。

 

倉持:フリーテキスト分析から見えたことと定量的な分析結果との間で、一致している部分を発見しながら進められるなど、良い連携ができたかなと思います。

 

“相手に伝えること”にこだわった調査報告が、新たな依頼につながった

 

――データ領域を専門としない方々に向けて分析結果を報告するにあたり、気をつけた点やこだわった点はありますか?

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 安藤 有瑠聡

安藤:分かりやすくまとめるために、データ分析に詳しい方と対話をしたり、同様のテーマに関する他機関の調査結果から情報をキャッチアップしたりするように意識していました。今回の報告全体の方向性にも、他の調査結果をチェックしていく中で得たひらめきが活かせており、意味があることだったかなと思っています。

実際の報告書より一部抜粋

また、依頼してくださった方々にとって意義のあるものになり、その先で自分たちの会社を良くするためのものになるように、「依頼元の組織が何を目指しており、それは何のためなのか」まで調べて考えることは大切にしていましたね。

 

――倉持さんはいかがですか?

倉持:「相手に伝わるか」という視点には、特にこだわって資料作りを行いました。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 倉持 裕太

初めはわかったことを全て伝えたい、という気持ちで資料を作っていたのですが、近くの先輩から「よく分からない、内容に追いつけない」と途中でフィードバックをいただいています。その時に、私たちが伝えたいことを盛り込むのではなくて、相手にしっかりと伝わって「行動に移さなければ」と感じていただくことが今回のゴールなんだと気がついたんですよね。

実際の報告書より一部抜粋

そこから、一番伝えたいメッセージを冒頭に置き、そこから逆算していらないものを削ったり作り直したりと、再構成を行って資料を完成させました。

安藤:発表時の伝え方についても、同様にこだわりを持って進めましたよね。原稿の内容や喋り方など細かな部分一つで全体の印象が大きく変わりますから、最後まで入念に詰められてよかったと思っています。

 

――お二人のこだわりを詰め込んだ報告の、最終的な成果や手応えとしてはいかがでしたか?

安藤:最終的には、分析結果のサマリと詳細な内容を合わせて130ページほどの報告書として完成させました。

また、今後の人事施策に対してより具体的な示唆や改善ポイントを得るために、データ取得時の評価指標や影響因子把握の工夫、今回のデータでは分析できなかった重要ポイントを報告書に含めています。

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倉持:関係者の皆さんからも実際に、「いい資料でした」というお声をいただけました。

また今回ご相談いただいた人事部の方から新たな分析のご依頼もあり、「どのようなデータを集めるべきか」などの方針策定までお任せいただけることになっております。伝えることにこだわった結果が、次につながってよかったなと思っています。

 

「“データに基づく意思決定”をテーマに、まだまだやれることがある」

 

――取り組みを終えた今の、率直な思いをお聞かせください。

倉持:フリーテキストを読み込む中で、回答者の方々の「社会のために頑張りたい」という思いに触れたり、互いに助け合う人情味溢れる様子を感じたりと、ポジティブな意見を知ることができてよかったなと感じています。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 倉持 裕太

安藤:私も皆さんの人柄の良さは強く感じました。

一方で、この規模の会社であれば、データに基づく意思決定についてはまだまだ開拓の余地があるなとも思っています。これからやれることがたくさんあって楽しみです。

 

――この取り組みを通じて得られた気づきや学びがあれば教えてください。

倉持:プロジェクトを進めるにあたって必要な要素――例えば工数管理表やタスクのフロー図の作り方、ミーティングの組み方、資料作成やプレゼンの方法などを、1ヶ月半という短期で学べたことが大きかったなと思います。

実際の開発案件のマネジメントはより複雑になるとは思いますが、全体の流れを知れたことは今後の助けになると感じています。

 

安藤:量的な分析において、あれもこれもと要素を詰め込んでいるうちに、自分にしか分からないようなコードになってしまったことが反省点です。

今回はデータの前処理から統計解析・可視化に至るまで全てPythonで進めましたが、「この可視化のところは誰でもわかるように」「ここは自分1人がわかっておけばいい」などの観点でツールを使い分けて、あらかじめ選定しておくべきだと学びがありました。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 安藤 有瑠聡

また、今回の取り組みはコンサルタントの業務に近いものだったのかなと思っており、この経験を通して、事業会社におけるデータサイエンティストとしての振る舞い方やスピード感を学べたなと思っています。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、お二人が今後チャレンジしたいことをお聞かせください。

倉持:心理学領域を大学で研究してきて、今回のように “人” に関するデータを扱うことに興味がありますし、今は人事と兼務もさせていただいているので、今回学んだことを活かしてこの領域でもっと価値発揮していきたいと思っています。

もちろんアンケートデータだけでなくもっと豊富なデータもありますから、それらを活用して示唆を提示し、事業や組織を動かすところまで貢献していけたら嬉しいなと思います。

 

安藤:データサイエンティストにはビジネス・アナリティクス・エンジニアリングの3領域があると言われる中、今回は手法的な高度さよりも “人を動かす” ことが主軸となるビジネス領域で多くの経験を積めました。人事部に限らず、今後もデータに基づいた意思決定を支援して いきたいなと思っています。

一方で、大学でデータサイエンスを使ってきた経験からアナリティクスの領域を大切にしたいという思いがあり、現在も学会での情報のキャッチアップも続けています。そういった最先端の技術を使って、転職希望者様と法人企業様を上手くマッチングさせることにも挑戦していきたいですね。

3領域全てを極めるのはなかなか難しいものですが、いずれの領域でも研鑽を続けて行きたいと思います。 

新卒データサイエンティストの成長ストーリー #番外編 初プロジェクトでの分析/考察を通じて得られた学び

――ありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)

 

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 倉持 裕太

倉持 裕太 Yuta Kuramochi

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ

2022年に新卒入社。大学院時代は教育工学・学習科学を専攻。修士研究で取り組んだ若手人材の職場学習に関する研究の中で統計学の面白さに気づく。現在、エンジニアリング・データ分析について勉強中。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ 安藤 有瑠聡

安藤 有瑠聡 Aruto Ando

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 アナリティクスグループ

2022年度新卒入社。学生時代は看護系の学科で看護師のエキスパートシステムの開発やベイズモデリングによる創傷の予測に関する研究を実施。9月より人事制度に関するデータ分析や社内AIプロジェクトに参加。社内のあらゆる人々がデータドリブンな意思決定を出来るような支援をしていきたいです。最近の休みは大体FF14をしています。

 

※2022年10月時点の情報です。