転職サービス「doda」では「dodaアプリ」を展開し、使いやすい求人検索や求人の紹介、各種情報のプッシュ通知によって、お客様のスムーズな転職活動をサポートしています。
アプリローンチとしては、後発だったdodaアプリ。3年前には、立ち上げ背景や当時の苦労を赤裸々に語っていただきました。
今回は、3年ぶりにdodaアプリ開発チームを取材。リリース時からの変遷と、さらなるユーザビリティ向上に向けて行われた「Native化プロジェクト」について、話を聞きました。
- スピード感を持ったグロース開発の実現に向け、Native化に着手
- アプリの利便性が高まり、お客様のスムーズな転職活動の後押しに
- 「常に変化していく」マインドを大切に、不確実性に立ち向かえるチームを目指して
スピード感を持ったグロース開発の実現に向け、Native化に着手
――まずは前回の取材から「Native化プロジェクト」発足に至るまでの変遷について、教えてください。
福田:前回の取材は、2019年12月にdodaアプリを本格的にリリースした後、開発体制を整えて内製化とスクラム体制への移行を行い、半年ほどが経った頃のことでした。
当時は技術負債の解消を目指す「リプレイスプロジェクト」に取り組み始めており、あれから1年ほどかけてプロジェクトを進め、2021年3月にリリースに漕ぎ着けました。この段階でだいたいの画面のNative化が完了し、その後は①ダウンロードや流入を伸ばすこと ②ユーザーにとってより使いやすいアプリにすること の二つをテーマに改善を重ねてきた、という流れです。
――そんな中、今回「Native化プロジェクト」が発足した経緯とは?
福田:2年前のリプレイスプロジェクトにおいては、リリース時期を考えると全画面のNative化を完了することは難しいため、スコープ調整を行って、いくつかの画面がまだNative化されずに残っていたのです。
このままでは、アプリの改善施策を打つ際にサイト側に変更を加えなければならず、サイト側との調整やテストが煩雑で、スピード感を持った改善ができません。
また技術的な観点でも、WebViewではパフォーマンスに課題が残りますし、何か問題が起きたときに「不具合なのか、サイト側で行われたリリースに起因するのか」が分かりづらくなってしまいます。
これらの課題をふまえ、前回のリプレイスで要件外とした特定画面のNative化を行い、アプリ独自でグロース開発を進めていく素地を作ろうと、プロジェクトが始動しました。
――今回スコープはどのように設定されたのですか?
福田:会員・サービス登録、Web履歴書、応募フォームの3つの画面のNative化を進めていくこととし、まず会員・サービス登録画面から順に着手しています。
アプリの利便性が高まり、お客様のスムーズな転職活動の後押しに
――プロジェクトの進め方と皆さんの役割分担について教えてください。
福田:私はプロジェクトがスタートした初期の段階から、チームの組成やスケジュール、取り組む内容の管理をリードする立場で関わってきました。
今回の「会員・サービス登録画面」の改修は、doda内の場合さまざまなサービスから登録の入り口が設置されており、またその歴史もそれぞれで異なっているため、その仕様の全容を把握しているエンジニアはほとんどいませんでした。そこでまずは仕様の調査からプロジェクトがスタートし、豊田さんやパートナーさん含む6~7名で進めていきました。
豊田:私はサイトソースを読み込んで仕様を調べ、それを実装を担う方々に共有するとともに実際の開発も一部お手伝いさせていただく、“何でも屋さん” のような立場で動いていました。
小林:私はパートナーさんも含めて7,8人の体制で、バックエンド部分の実装を担当しました。登録フォームと言っても「会員登録」「エージェント登録」「スカウト登録」……と種類もさまざまで調査量が非常に多いため、豊田さんたちに徐々に調査を進めていただきながら、調査結果が出たところから順に手を動かしていく形でしたね。
――プロジェクトを進めるにあたって、特に気をつけたこと、工夫したことなどはありますか?
福田:今回扱うのはお客様の大切な個人情報をご入力いただく登録画面で、他のさまざまなシステムに情報が連携される元でもあるため、何か一つでもデータ不備のような問題が起きれば大きな損害に繋がってしまいます。アプリを使ってくださっている方の数や、関わる業務の規模を考えると、データの扱いが非常に難しく、怖い部分ではありました。
豊田:最終的に、全登録パターンにおいてサイト側で登録作業を実際に行い、登録したデータベースの結果とアプリで作ったNativeのデータを比較して。差分がないかを一つひとつ調べる形で、品質を担保しました。
福田:楽な方法ではありませんが、守らなければいけない大事な部分ですから。ここは「やり切りましょう」と特に皆さんにお声がけしていたかなと振り返ります。
――他に、プロジェクトを進める上で苦労したことがあれば教えてください。
豊田:やはり調査のフェーズでしょうか。小林さんからあったように登録フォームは種類が多く、さまざまな箇所のソースを見なければいけません。各箇所で使われている言語も管理方法も異なるため、ソースを追っていくこと自体が手強い課題でした。
また一つのフォームがさまざまなサービスに紐づいており、パラメータについても「誰がどの施策で、どのような意図で入れたのか」「消してはいいものなのか」も分からず……。そんな状況の中、万全を期して全てのソースを読んでいく作業は非常に大変でしたね。
福田:当時はリモートワークが中心でしたが、みんなで出社して「なんだこれ?」を共有し、「分からないから一緒に調べよう」ができるようにするなど、心理的な部分のケアを考えながら進めました。
――プロジェクトの成果として、現段階で見えているものはありますか?
小林:現段階でおおよそ全ての登録フォームのNative化が完了しており、その結果として、登録後の「カウンセリング予約画面」の表示率が3倍に伸びました。
またWebViewではできなかった登録後の自動ログインができるようになったことで、登録直後〜1週間以内の応募率も5〜10%ほど伸びています。
「常に変化していく」マインドを大切に、不確実性に立ち向かえるチームを目指して
――プロジェクトを通じて感じた、dodaアプリ開発チームのよいところはありますか?
豊田:「少しずつでもシステムをよくしていこう」という意識を、社員に限らずパートナーさんも含めてみんなが持ち、「ここはこうした方がいいよね」と言い合えているところがいいなと思っています。ここはどんどん伸ばしていきたいですね。
小林:今回のプロジェクトにおける綿密な仕様調査もそうですが、「困難なことも、スクラムの中で少しずつでも推進していく」という姿勢が根付いています。今後新たなプロジェクトが立った際も、この点は維持していきたいなと思います。
――今回見えた課題と、それをふまえた今後に向けての思いを聞かせてください。
豊田:「doda」の開発における “秘伝のタレ” を知っている方が異動や退職をされ、アプリチームに開発の深い部分を知っているメンバーが少なくなっていることが課題だと感じます。難易度の高い開発も着実に進めていくために、メンバーがさらに「doda」の開発に詳しくなっていくことが今後大事になりそうです。
小林:私は現在スクラムマスターとして開発に携わる中で、ディレクターとエンジニアとの間の対話で、スクラム開発に対する意識のズレがあるなと感じています。
福田:「アジャイルな開発」「変化に強く」という言葉が浸透しつつあるものの、まだ根底には「中長期的なスケジュールを提示すると予測ではなく期日として扱われる」というアプローチが残っていて。「フィードバックをどんどんもらいに行って改善しよう」「変化しながら予測可能性を高めていこう」というアジャイルのアプローチにはまだ変わり切れていませんよね。
小林:ここから、アプリチーム全体として「私たちはアジャイルで開発を進めて、アプリチームを絶対によくしていくんだ」という共通認識を持った状態になっていけるとよりいいのかなと思っています。
豊田:そうですね。開発体制についても、現段階での私たちのスクラム開発をまずは “チームの今の最適解” だと受け止めて、その上でやりづらい部分があれば、みんなでよりよいプロセスへと変化させていけるといいなと感じます。
福田:アジャイルにおいては、特定のイベントやプラクティスを入れればそれで正解とするのではなく、「常に変化していく」というマインドセットを大切にしていきたいですよね。
そのマインドを理解した上で、職種の垣根を超えてチームとして不確実性に立ち向かえるような組織になるのが理想かなと。私はもうチームを離れてしまいましたが、dodaアプリ開発チームにはそうなっていってほしいですし、外から何かできることがあればサポートしていければと思っています。
――ありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)
福田 尚亮 Naoaki Fukuda
プロダクト統括部 クライアントサービス開発部 法人プロダクトエンジニアリンググループ リードエンジニア
2018年にパーソルキャリアに新卒入社。アルバイト求人情報サービス『an』や転職サイトサービス『doda』でプロジェクトマネージャーとして従事。 その後dodaアプリの刷新PJTに参画しスクラムマスター兼エンジニアとして従事。現在は法人プロダクト開発チームに所属し、プロダクトやチームの改善に取り組んでいる。
豊田 裕一 Yuichi Toyoda
プロダクト開発統括部 グロース開発部 dodaアプリ開発グループ リードエンジニア
2021年にパーソルキャリアに中途入社。前職では独立系SIerとして業務システムの開発や、データ分析業務などを経験。現職ではdodaアプリの継続開発チームにエンジニアとして、プロダクトの改善に取り組んでいる。
小林 壮太 Sota Kobayashi
プロダクト開発統括部 グロース開発部 dodaアプリ開発グループ エンジニア
2021年にパーソルキャリアに新卒入社。エンジニアとしてdodaアプリの継続開発チームに参画し、現在はdodaアプリ開発チームのスクラムマスター兼エンジニアとして、チーム運営やプロダクトの改善に取り組んでいる。
※2023年9月現在の情報です。