中途・新卒入社者の定着サポートツール「HR Spanner」の正式版リリースに至る軌跡とは?

HR Spanner担当者4人の写真

2021年8月、転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリアは、企業の人材採用のみならず人材定着までをも支援するべく、中途・新卒入社者の定着サポートツール「HR Spanner(エイチアールスパナー)」正式版の提供を開始しました。

以前techtektでも取り上げたように、2019年9月からβ版の提供を開始し、利用企業の声を適切に反映しながら正式版のリリースに至りました。そこにはどのようなプロセスがあったのでしょうか。今回は企画の主担当として現場で奔走した徳田と、本サービスのスタート時から携わっているPMの早坂、開発エンジニアである佐藤、鈴木の4名に話を聞きました。

 

 

β版から正式版へのポイントは”改善の優先順位を見極め”

――まずは「HR Spanner」のサービス概要と、今回リリースされた正式版の特徴から教えてください。

徳田:HR Spannerは、中途・新卒入社者の定着支援を行うサービスです。短期反復型のアンケートを用いて新入社員の声を集め、人事の方が一人ひとりのコンディションを把握してアクションを起こせるようサポートします。

正式版では、β版の時にはなかった項目として「なぜこの会社を選んだか」といった入社直後のインサイトや、前職の職務要件などを伺うアンケートを追加しました。これにより、採用後のオンボーディングに活かせるのはもちろんのこと、「この会社に定着しやすいのはどのような方か」を理解したり人材要件を具体化したりと、採用の前段階にも活用いただけるようになったことが正式版の特徴です。

 

――β版のリリース後、どのような流れで正式版リリースに至ったのでしょうか。

サービス企画統括部 サービス企画部 サービス企画グループ 徳田 千尋の写真

サービス企画統括部 サービス企画部 サービス企画グループ 徳田 千尋

徳田:β版の導入企業数が目標値を超えた時点で正式版の検討をスタートし、まずはVOCを集めて改善点を抽出していきました。しかしVOCは粒度も内容もさまざまで、リリース目標までの限られた時間でその全てに応えるのは難しい、という判断に至ったのです。

そこで「一つひとつのVOCを起点に改善する」のではなく、「VOCから見えてきた本質的な課題へアプローチできる改善に絞り込んで実行し、最短工数でより使いやすいサービスを目指す」と方針を定め直しました。

まずは絞り込みのアプローチとして、改善点を「開発工数」の大小と「お客様へのインパクト」の大小の掛け合わせで4象限に分類しました。「インパクト(大)で開発工数(小)なら、優先的に実施する」「インパクト(大)のものは、開発工数(大)でも実施する」など優先順位を判断し、スコープを決定しました。

その後、改善の方向性の裏付けとなるVOCを集めるべく、新たにヒアリングを実施しています。社内のUXリサーチチームにアドバイスをいただきながらヒアリング設計を行い、それぞれの改善点についてCS観点・プロダクト観点からの定性情報を吸い上げ、方向性を明らかにして開発に進んでいきました。

 

早坂:また、企画側からユーザーの声をもとにした要望をいただき、実装できるかの判断を開発側でしていきました。「メモ機能が欲しい」など使いやすさに関わるご要望がほとんどだったので、基本的にできないものはないという感覚でしたが、リリースまでに間に合うかどうかの認識を合わせ、間に合わないものはリリース後に回すなどの判断をしていきましたね。

 

開発の手を止めないために――意識したのは役割を超えた相互理解

 

――ここまでのプロジェクトを振り返って、良かったところや大変だったところを教えてください。

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ エンジニア 鈴木 文明の写真

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ エンジニア 鈴木 文明

鈴木:正式版の開発がスタートした頃は、開発メンバーは私と早坂さんの二人だけで、やりたいことに対してリソースが足りない部分もありました。

ですが途中から佐藤さんが加わってくださり、さらに他プロジェクトのメンバーや新卒の方、パーソルプロセス&テクノロジーベトナムの方にもご協力いただき、リソースを補填していきました。そこから連携によって開発がうまく回せるようになったことが、よかったかなと振り返ります。

 

徳田:リソースが足りない時は、企画メンバーからオーナー、オーナーから開発側の上席へと補填をお願いするパターンもありますが、今回は一人ひとりの開発メンバーがそれぞれの上長に対して声をあげてくれたんです。「HR Spanner単体にとどまらず、事業全体を前進させられるサービスだ」という思いで皆さんが開発に臨み、それを発信してくれたおかげでアサインが叶ったと思っています。

 

――β版開発の頃からメンバーが入れ替わり、また新たな仲間もたくさん迎えられたということですが、メンバーの変化によって苦労されたところはありますか?

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エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア 早坂 悠

早坂:サービス企画やサービス開発では「誰かが抜けても回せる開発体制」や「誰がやっても変わらぬアウトプットを出せる標準化」を心がけてきたので、メンバーが変わっても開発に支障をきたすことはありませんでした。

意識したこととしても、「やりとりはGitHubのIssueの中でやろう」というチームでの取り決めに沿って、きちんと履歴を残すようにすることくらいですね。わからないことがあれば、上長や他のエンジニアに相談することもできましたし、基本的に連携はうまくいったと思っています。

 

――企画側と開発側の連携という観点ではいかがでしたか? 

徳田:コミュニケーションがしっかりとれるチームだったと思います。企画から発信したことに対してエンジニアやデザイナーの方がしっかり応えてくれる、ということが当たり前にできていた感覚です。回答もスピード感を持っていただけるので、意思疎通も図りやすい印象でした。

 

鈴木:確かに、連携の時間差が生まれなかったのは良かったですよね。こちらからも、普段から何かあればすぐにチャットツールで徳田さんに質問していましたし、そこはスムーズだったと思います。

そもそも仲が良くて、オンライン懇親会も数ヶ月に一度は開くなど、日常的にコミュニケーションをたくさんとっていたことが、開発での連携にも活かされたと思います。

 

佐藤:それぞれが言いたいことをちゃんと伝えられているという感覚がありましたね。

 

――徳田さんとエンジニアの皆さんの間に、密なやりとりがあったのですね。

鈴木:徳田さんが企画とエンジニアのやりとりの窓口を一手に引き受けてくださり、調整や開発側のスケジュールの取りまとめまでしてくれていたので、徳田さんに聞けば不明点がすぐに解消され、とてもやりやすかったです。

 

早坂:誰に聞いたらいいかわからない、と悩む時間がないのは大きかったですよね。

 

エンジニアリング統括部 サービス開発部 リードエンジニア 佐藤 宏樹の写真

エンジニアリング統括部 サービス開発部 リードエンジニア 佐藤 宏樹

佐藤:そうですね。また徳田さんには、ある程度エンジニアの言葉でお話ししても大丈夫という安心感もありました。専門的でわからない内容があったとしても、その場合はすぐにこちらに確認してくれて、追加で情報をお伝えするとしっかり理解してくれます。やはりエンジニア側のことを理解しようと寄り添っていただけるのは大きいなと思いましたね。

 

――徳田さんとしては、どのような思いで企画と開発をつなぐ役割を担っていたのでしょうか。

徳田:このチームの開発メンバーは、こちらがお願いする「やりたいこと」に対して力一杯頑張ってくださる方々です。そんな皆さんにとっては、私たち企画側がお伝えする言葉が大きな意味を持っていて、それを信じて開発してくれている訳ですよね。だからこそ、自分が理解して納得したことだけをお伝えするようにしようと意識していました。

またエンジニアの皆さんには、外部連携も複数あったり後半からシステム構造を一部変えたりと、とても難しいお願いをしてしまっていました。なので、内部の連携や各システムの窓口の方との交渉など、必要な調整は先回りしてこちらで行ってきました。開発の手を絶対に止めないように、次に何をすればいいのかが常に具体的にわかる状態を作ろうと心がけてきたかなと思います。

入社当初は今のようにプロダクトマネジャーのような立ち回りをするとは想像していませんでした。まずは前職でSEとして「案を形にする」フェーズを率いてきた経験を活かしながら、目の前のプロジェクトの中で求められる役割を果たしていけたらいいなという感覚ですね。いずれはこの経験を活かして、新たに「0→1」の起案をするアプローチにも挑戦していきたいと思っています。

 

正式版リリースは出発点――さまざまなサービスと連携し提供価値を高める

 

――正式版がリリースされて2週間が経つということですが、社内外からサービスに対するお声などはありましたか?

徳田:β版の頃から使っていただいているお客様から、「β版を思い出せないくらい変わった」「よくなって、使いやすい」という嬉しいお声をいただきました。これはペルソナをもとにユーザビリティ設計を行い、ユーザー目線での開発を積み重ねてきた結果だと捉えています。

ただ、「リリースした第一印象で好意的なお声をいただけて満足」ではなく、これからだと思っています。1社1社継続してご利用いただけるだけでも本当に嬉しいことですが、ここからさらにデータを集めてできることを増やし、さまざまなサービスと連携しながらお客様への提供価値を高めていけるよう素早い改善を行っていきたいと思っています。

 

――それでは最後に、今後「HR Spanner」をどのようなサービスにしていきたいか、皆さんからお聞かせください。 

早坂:せっかくパーソルキャリアとして提供しているサービスなので、これまでのビジネスで蓄積されてきた多様なデータを適切に活用させていただきながら、dodaとの連携も図っていきたいです。連携をするとなると、エンジニアとしては大変ではありますが……(笑)それを超えて、採用前からオンボーディングまでひとつなぎのサポートができるようなサービスを目指していきたいと思います。

 

佐藤:今回正式版をリリースすることができましたが、サービスとしてまだまだ未成熟なところがあります。早くユーザーにフィットするような満足度の高いサービスにしていけるよう、改善を重ねていければと思います。

 

鈴木:これまでのユーザーインタビューで、「社員の方が抱えるトラブルに気がつけないうちに、その方が退職されてしまった」「メンバーが辞めてしまう直前まで、その理由が分からなかった」など、人事の方のお声を伺ってきました。そういった課題を解決できるよう、サービスミッションである「現場と人事の橋渡し」を目指し、トラブルが起きたときに人事の方がすぐに気づいてアクションを起こせるようなサービスにしていきたいです。その中で、エンジニアとしてはより内部品質を高めることに注力しながら、安全性の高いサービスを提供していきたいと思います。

 

徳田:HR Spannerが「使えば使うほどに “新入社員の方がどうすれば定着するのか” が分かるサービス」として、利用され続けることを目指していきたいと思います。

 

――素敵なお話をありがとうございました!

 (取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

 

サービス企画統括部 サービス企画部 サービス企画グループ 徳田 千尋の写真



徳田 千尋 Chihiro Tokuda

サービス企画統括部 サービス企画部 サービス企画グループ

SEとしてキャリアをスタートし、結婚情報メディアでの企画職経験、アパレル企業へのCRMツール導入コンサルタント等の経験を経て2019年8月にパーソルキャリアに入社。

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア 早坂 悠の写真



早坂 悠 Haruka Hayasaka

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ リードエンジニア

2013年にWebエンジニアに転職。Ruby on Rails, React.jsを利用したサービス開発をフロントエンド中心に経験し、2018年7月にパーソルキャリアに入社。現在は「HR Spanner」など、Nuxt.js, Firebaseなどを利用したサービス開発に携わっている。

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ エンジニア 鈴木 文明の写真



鈴木 文明 Fumiaki Suzuki

エンジニアリング統括部 サービス開発部 第3グループ エンジニア

新卒で半導体メーカーでエンジニアとしてLSI第三者検証業務等を経験したのち、 2013年にWebエンジニアに転職。Ruby on Rails, React.jsを利用したサービス開発をフロントエンド中心に経験し、2018年9月にパーソルキャリアに入社。現在は「HR Spanner」など、Nuxt.js, Firebaseなどを利用したサービス開発に携わっている。

エンジニアリング統括部 サービス開発部 リードエンジニア 佐藤 宏樹の写真



佐藤 宏樹 Hiroki Sato

エンジニアリング統括部 サービス開発部 リードエンジニア

新卒でSIerへ入社。Web系エンジニアとしてJavaを使用し、BtoC系サービスのフロントエンド、バックエンドを担当。自身でプロジェクトを選択できるなど自己実現性に魅力を感じパーソルテクノロジースタッフ(インテリジェンス)に2017年入社。約2年間BtoC系サービスのiOSアプリエンジニアとして大手事業会社のサービス開発プロジェクトに携わる。さらに事業にコミットできる環境に移りたいと考え、キャリアチャレンジ制度で2019年10月にパーソルキャリア入社。

※2021年9月現在の情報です。