dodaプラスサービスは、doda人材紹介サービスに契約した法人顧客が利用できるサービスです。本サービスは、dodaサイトにも求人を掲載し、人材紹介サービスと併用することで、より多くの転職希望者と出会える機会を創出しています。そのことからも、立ち上げてから右肩上がりで、多くの法人顧客にご利用いただいています。
以前の求人審査AIプロジェクトの記事では、このdodaサイトに掲載する求人広告の作成において、掲載基準を満たす原稿制作をAIがサポートし、原稿修正の手戻りを解消する取り組みについて取り上げました。
今回は、システム上のバッチを活用して原稿の審査項目を組み込み、原稿の作成・審査から掲載までのアナログ対応を全て自動化すべく始動した「デジタル審査システム導入プロジェクト」にフォーカス。キーマンとなる三村、内山、澤田の3名に今の思いを語ってもらいました。
- 5つのステップで課題に着手――周囲の理解を得ながら着実な前進を
- 会社やメンバーへの貢献を見据え、与えられた状況で今できる限りのことに挑戦したい
- 目の前の課題への対処療法ではなく、根本的な改善に向けた次のステップへ
5つのステップで課題に着手――周囲の理解を得ながら着実な前進を
――まずは、今回デジタル審査導入プロジェクトが始動した背景からお聞かせください。求人広告の原稿制作には、どのような課題があったのでしょうか。
三村:dodaプラスに掲載される求人広告の原稿は、法人営業が作成した求人票をもとに作られているのですが、この求人票の内容をそのまま掲載できる訳ではありません。掲載にあたって「求人掲載基準」を満たす必要があるため、基準に抵触する箇所がないかをdodaプラスの担当者が一つひとつチェックしていたんですよね。
このチェックの工程には多くの工数と業務委託費用がかかる上、あくまで人の手による作業なので、対応者によって指摘事項にムラが発生しているという課題がありました。
今回原稿の審査自動化に向け始動したのは、この業務委託費用を削減し、原稿の品質を一定に揃えたいという企画からの要望がきっかけでした。
――課題解決に向けてどのようにプロジェクトを進めてこられたのですか?
三村:周囲から「いい取り組みだね」と前向きな反応をもらえてはいたものの、効果が実際に出るかは未知数だったので、全体を5つのステップに分けて進めていくことにしました。
一番手をつけやすく効果を出しやすい箇所から順にSTEP1、1.5、2、2.5、そして将来的に行うSTEP3の5段階としています。まずはSTEP1で効果を見せ、今後その効果を拡張していけるという先の見通しを示すことで、経営陣にもIT投資をする価値を理解してもらおうと考えた形です。
具体的には、STEP1でフィジビリとして実験的にデジタル審査を導入。業務委託費を削減してROIを示すとともに、デジタル審査によるNGデータの蓄積を開始して、次の段階につなげる準備をしました。その後STEP1.5として業務に合わせたバッチ改修を実施し、つづくSTEP2では原稿の新規作成・修正時にデジタル審査を本格導入しています。
現在この導入までが完了し、STEP2.5で審査業務の完全自動化に向けた残課題に内山さんが取り組んでくれているところです。いずれは、STEP3として審査の精度を重視した取り組みにまで踏み込んでいくことになります。
――ミニマムで始めてスケールさせていったのですね。皆さんはそれぞれ、どのような役割で進めていたのでしょうか。
三村:私は開発のPMをしており、何百万通りとある審査項目のパターンがきちんと組み込まれているかを開発ベンダーの方々と話し合いながら、テクニカルな部分の管理を行っています。
内山:私はSTEP2.0の頃にプロジェクトにジョインし、オーナーである三村さんのサポートとしてテストのレビューを行ったり、自分が担当するSTEP2.5に向けて残課題の整理と計画立てをしています。現在は2.5をメインで進行しています。
澤田:私もSTEP2.0からジョインしており、デジタル審査の処理をスムーズに実行できるように、要件定義や設計を担当しました。
原稿にはタイプAとタイプBの2種類があり、タイプAはバッチで自動的に作られるため、そのタイミングでデジタル審査を組み込むことが可能です。しかし当初のタイプBは、自動で作られたタイプAを手動でコピーして作成していたため、タイプAと同じタイミングでデジタル審査をかけられない状態だったんですね。
これではデジタル審査の良さが出ないため、タイプBの作成についても人の手をかけない形で自動化し、両者一括で作成・審査ができるように変更を行いました。
――そのような非常に手間のかかるプロセスでも、これまでは当たり前のこととしてこなされていたのですね。自動化されると、業務の形が大きく変わりそうです。STEP2.5で取り組まれる課題についても教えてください。
内山:STEP2.5では、主に審査にかかわる周辺業務の自動化に取り組んでいます。従来は、審査後に法人営業の方がNG項目を修正したり、原稿に修正内容を反映したり、また修正内容があっているかの目視審査を再度業務委託で実施していました。このNGになった後の一連の工程にも対処し、さらに業務の効率と品質を高めることで、今回のデジタル審査導入プロジェクトとしては一旦完結となります。
会社やメンバーへの貢献を見据え、与えられた状況で今できる限りのことに挑戦したい
――ここからは、プロジェクトを振り返っていただきながら、課題に取り組む皆さんのマインドに迫っていきたいと思います。ベースとなるのがレガシーなシステムであることも踏まえ、苦労も多かったのではと推察していますが、難易度としてはどのような感覚をお持ちですか?
三村:ベースとなるシステム自体には手を入れておらず、バッチ処理のデータの流れの中に審査の仕組みを差し込んだ形なので、技術的難易度はそこまで高くないかなと捉えています。
ただ実は並行して、転職メディア事業部でもこのデジタル審査を活用しようと動いていました。メディア側への搭載のために、STEP1で作ったロジックをどう使うか考え、「メディア専用のロジック/dodaプラス専用のロジック/共通で使うロジック」「NG表現のアラートが上がる時/上がらない時」などを場合分けしながら、全体を設計していく作業が大変だったなと振り返ります。
――皆さんの取り組みが、dodaプラスにとどまらず他にも展開されているのですね。ITコンサルタントとして既存のシステム上の課題に向き合われる中で、三村さんはどのようなゴールを見据え、どのような思いで取り組まれているのでしょうか。
三村:歴史あるサービスのシステムなので、多くの課題に直面することは基本的には仕方がないかなとは思いつつ、やはり新しく作るものは綺麗にしたいという思いがあります。自分が関わるプロジェクトの中で、積極的に今の仕組みを壊して新しいものに入れ替えることで、負の遺産をなるべく取り除こうと取り組んでいるところです。
ただ、そもそもデータベース自体に課題があるので、根本的に解決するためにはどこかで新しいデータベースに切り替えるべきだろうと考えています。現実的に考えると、今できることは将来的にその切り替えが上手くいくように、今あるものを綺麗に区分けして整理しておくところまでかな、とは思いますね。
――澤田さん、内山さんは入社間もない中で本プロジェクトに参画されましたが、特に苦労された点やそれでも頑張れた理由などがあれば教えてください。
澤田:入社して初めて参画したのがこのプロジェクトなので、そもそも原稿の仕様もキャッチアップできていないところからのスタートでした。かつ、おっしゃる通りレガシーなシステムで、すべてのドキュメントが綺麗に揃っているわけでもありません。そうした中で既存の仕様をキャッチアップしながら、改修後の仕様を検討していくのがなかなか大変でした。三村さんに並走していただいて、サポートをいただきながら進めてこられたのが大きいですね。
また要件定義をする中で、依頼してくださった企画の方や、実際に原稿制作の作業に関わる方とコミュニケーションを取ることも多かったので、このリリースによって業務が効率的になり、皆さんに喜んでもらえるところを想像して頑張ってきました。
内山:私は率直に、原稿制作周りのプロセスの複雑さを痛感しましたね。システム自体のつくりもデータ連携も複雑で、また業務フローにさまざまな人とシステムが関わりあっており、膨大な情報を自分の中で整理して理解するところに苦労しました。今でも完全に理解しきれたかはわかりませんが、三村さんに何度も同じことを聞いたり、絵を描いて教えてもらったりしながらキャッチアップしてきています。
原動力としては澤田さんの思いに共感する部分が大きいですが、加えて投資対効果が非常に大きいこともあり、いい意味で「すごいプロジェクトに入ったんだな」と感じました。もちろん大変ではありますが、これをやり遂げたら会社に大きく貢献できるのでは、と自覚できたことで頑張れていると思います。
目の前の課題への対処療法ではなく、根本的な改善に向けた次のステップへ
――最後に、現在のKPT(Keep,Problem,Try)を踏まえて、皆さんの今後の意気込みをお聞かせください。
澤田:今回は三村さんが中心になって進めてくださる様子をそばで見てきましたが、目の前の課題だけでなくシステム全体を俯瞰する広い視野で、仕様や方針を検討されているのが印象的でした。
なぜ今のような形になっているのか、背景を理解する難しさも課題としてありますが……この先新しいシステムに上手く切り替えていけるように、自分がPMになった時にも、目の前の課題への対処だけでなく根本的な改善につながるような仕様の検討に挑戦していきたいなと思います。
内山:三村さんの進行を見ていて、特に品質を大切にされていることを感じました。デジタル審査は目に見えないところで行われるものではありますが、非常に重要な役割を持ちます。もし審査の品質が悪ければ、見えてはいけないものが表に出てしまうようなことにもつながるので、品質へのこだわりは自分がPMになった時にもぜひ踏襲していきたいと思っています。
また私がキャッチアップに苦労したように、原稿制作周りのプロセスには複雑な部分が多いので、データからシンプルにしていくことが求められると感じます。まずは今取り組んでいるSTEP2.5を安全に終えて、その先で、まだ構想段階ではありますが、次世代の新制作システムを三村さんと検討しています。原稿制作を簡単で誰もが分かりやすいシステムにすることにも今後挑戦していきたいです。
――ありがとうございます。最後に三村さんからもお願いいたします。
三村:基本的に、私一人では何もできません。今回も開発ベンダーや企画の方々、内山さんや澤田さんなど、様々な協力者の方々と話し合いながらここまで進めてくることができたので、この体制はずっと維持していきたいですね。
サービスの長い歴史の中で、データベースやシステム周りにはたくさんの課題がありますが、そうした問題をクリアできるように、構想中の新制作システムでは柔軟に新しい形に挑戦していければと思います。
――ありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)
三村 亮太 Ryota Mimura
BITA統括部 プロジェクトBITA部 システムPMグループ シニアコンサルタント
2018年4月にパーソルキャリアに中途入社。前職では、鉄道系SIerで様残なシステム開発と運用保守を経験。 現在は、dodaプラスおよびメディアの原稿領域および企業向けサービス(doda Request)を担当。
内山 麻里衣 Marii Uchiyama
BITA統括部 dodaプラス プロセス&システムデザイン部 dodaプラス プロセスデザイングループ コンサルタント
2019年12月にパーソルキャリアに中途入社。前職では、金融系SIerで会計パッケージの開発を経験。 現在では、dodaプラスのT原稿制作周辺のシステムを担当。 原稿のデジタル審査等、原稿に関連するプロジェクトのPMとして従事。
澤田 智子 Tomoko Sawada
BITA統括部 dodaプラス プロセス&システムデザイン部 dodaプラス プロセスデザイングループ コンサルタント
企画統括 dodaプラス プロセス&システムデザイン dodaプラス プロセスデザイン コンサルタント 前職は人材サービス会社のシステム部門に所属し、基幹システムの運用保守に携わる。 2020年5月にパーソルキャリアに入社。入社後はdodaプラス事業におけるT原稿制作業務やスカウト配信業務のシステム改修プロジェクトに携わる。
※2021年7月現在の情報です。