複業・兼業時代に求められる 次代の「転職とはたらく」におけるテクノロジー活用とは

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人々の「はたらく」を取り巻く環境が、この数年、特にこのコロナ禍において大きく変化しています。この変化に伴い、転職活動の在り方も変化し、これからは誰もが自分らしく働ける環境へと変化してほしいと願う人は多いと思います。

「人々に“はたらく”を自分のものにする力を」というミッションを掲げ、転職サービスや新しい「はたらく」を創るパーソルキャリアが今、何を考え、どんな壁にぶつかりながら歩みを進めているのか、そしてどんな未来を見据えているのか。これまで派遣、アルバイト領域の責任者を歴任し、現在はdodaやiX、i-commonなど転職支援領域の総責任者である取締役執行役員 瀬野尾に、テクノロジー本部から代表して斉藤 孝章が話を訊きます。

“正社員がすべて”という価値観は当然のように無くなってくる

 ――本日はよろしくお願いします。瀬野尾さん、まずはこれまでのご経歴と現在の管掌範囲をおしえてください。

瀬野尾:2000年に、某HR会社からインテリジェンスに転職しました。最初は、当時インテリジェンスの中にIT領域のエンジニア派遣部門を持っていて、そこに配属されました。さらに、ネットワークの障害対応や広義のインフラ系など、テクニカルサポートを中心にIT領域のアウトソーシングも担当していました。 

その後、ECサーブテクノロジーという、三井物産様とIIJ様、インテリジェンスの資本で立ち上げたITの会社の立ち上げからジョイン。その会社は、現在のパーソルプロセス&テクノロジーという会社となりますが、しばらくはその領域に携わっていました。

エンジニア派遣やITのアウトソーシングという話をしましたが、当時のIT業界は、まだまだクラウドサービスなど存在しなかったので、いわゆる日立様、NEC様、IBM様などメーカー系のSIや独立系のSIなどいろいろと多重構造な中で、ITと言えばSI企業という世界観でした。我々も当時で言えば、業務系のシステムを開発する領域にトライしようと、SIを志向していたので、ミリオンという会社と、ITマーケティングソリューションズという会社をM&Aをしました。私は当時からリーマンショックくらいまで、インテリジェンスにおけるIT全般の責任者としての任務を全うしてきました。

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パーソルキャリア株式会社 取締役執行役員 瀬野尾 裕

元々、私は営業職だったのですが、インテリジェンスに入社して初めてITの道に入り、そこから突き進んできました。エンジニアではないので技術は分かりませんが、業界のトレンドやテクノロジーなどにはとても興味がありますし、今までもビジネス側の観点でテクノロジーの変化を見てきました。私の時代はパソコンが一人一台ではなかったので、そう考えると時代は相当に変化していますよね(笑)。

現在は、dodaで転職や採用の支援をしています。管掌範囲は、人材紹介サービスと求人媒体サービス、ハイクラスや顧問事業領域も担当していますが、どれもメディアが紙媒体からwebシステムに移行しているので、そこにもITの知見がなければプロダクト作りは出来ません。

当たり前のようなことを言っていますが、これには原体験があります。dodaを管掌する前には、アルバイト情報サービス「an」を担当していましたが、求人情報誌は当初紙メディアからスタートしました。その後のスマホやアプリなどの時代の波に適応できず、競争に負けてしまい撤退。52年の歴史に幕を閉じました。

また、私のキャリアの中にはエンジニア派遣のみならず、事務派遣に携わっていたこともあります。エンジニアだけではなく、サービスの立ち上げなどを行うビジネス側、事務領域、雇用形態も正社員や派遣、アルバイトと、さまざまな人のはたらき方を時代と共に見てきたように思えます。

 

――これまでさまざまな雇用形態を取り巻く課題も見てきた瀬野尾さんだからこそ伺いたいのですが、複業・兼業が少しずつ一般化されてくる中で、雇用形態の垣根は薄まりつつあると考えています。これからの「はたらく」はどのように変化していくとお考えでしょうか。 

瀬野尾:結論から言うと、現時点では「はたらき方がシームレスになる風が吹き始めた程度」だと思います。実態としては、さまざまな問題解決をしなければならないと思いますが、過去よりは良い風が吹いていますよね。釈迦に説法ですが、今回のコロナがそれを劇的に加速していますよね。斉藤さんは、どう感じていますか。例えば、オンラインやテレワークは、何年分くらい縮まっていると思う?

斉藤:そうですね。あれだけ東京オリンピックが来るからリモートワークを推進しようと言っても、大企業は動かなかったという現状から見ると、10年くらいは縮めたと思いますね。

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デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー 斉藤 孝章

瀬野尾:そうだよね。僕も10年分を3か月で劇的に変化させたと感じます。僕が正確にどのように捉えているかというと、日本に企業が360万社ほどある中で、大手企業は0.3%です。テレワークが進んだというのは一部の人たちの話でしかなくて、超大手と大手の話なんです。地域や業種という観点で見たときは、僕が言っている「風が吹き始めた」ということは正しくないけれども、そういうコトも含めて機運だと思っています。しかし私を含めて、一部の人たちは劇的に変わりましたよね。いろいろな働き方を見ているなかで、働く場所や時間をテクノロジーが変えたと思います。オンラインのビデオ会議ツール一つでも、これまではそれを“使わないといけない”という事がなかったですし、合わせて通信環境の変化も大きく貢献したと思います。

オンラインによって働く場所や時間が多様になるということで、例えば、子育てしながら事務で働くということも可能になりました。ご両親の介護などをされている方にとっても、働く場所や時間というのは大きな軸になってくると思いますし、例えば沖縄に住んで、月に4回ほど東京に出社するということもできるようになりましたね。

インテリジェンス時代から特に新卒採用を強化してきたので、新卒で入社している人が多くいますが、そこでよく出る話があるんです。「電車に乗っていると(これから社会に出て)仕事をしたいという気持ちになれない」ということを、最終面接で素直に言ってくれる人が多くいるんです。

日本経済を支えてきて、戦う企業戦士であった諸先輩方を否定するつもりはありませんが、確かに満員電車に乗っている人たちは疲れている人が多いですよね。若者から見たら夢が持てないと感じてしまうのも頷けます。通勤はやはり、働くという中でもっともストレスに感じることなので、これが無くなったことで、劇的に働く環境を変化させたと実感しましたね。

 

――「シームレスになる風が吹き始めた」ってわかりやすい表現ですよね。今回コロナによって一気に風が吹きましたが、実は数年前から「はたらく場所と時間の問題」ってあったような気がしていて…。コロナ以外で言うとどんな要因があるとお考えですか?

瀬野尾:一番不可逆的な構造は、企業やすべての働く人たちが少子高齢化を認識し始めたことが大きいと思います。また、日本のGDPが停滞していることで、これまでの日本の人事制度や報酬制度、評価制度のようなものが、“このままでいいのか”という壁にぶつかっています。グローバルな観点で競争力が求められるなかで、企業寿命が短くなってきているのも事実。ずっと同じ会社という気運は無くなってくるし、会社に同質し従順になることに疑問を感じていると思います。

 

――「はたらく」ことが変化しているなかで、私たちのビジネスモデルは新しい働き方を求める人たちに寄り添っていけるのでしょうか。

瀬野尾:“正社員がすべて”という価値観は当然に無くなってくるので、わかりやすくdodaの世界でいうと、フリーランスという働き方もセットで提案できるように考えていかなくてはなりませんね。個人は企業に属するのではなく、仕事やプロジェクト、ジョブを楽しめるかという価値観になってくると思います。そして、企業側も従順に長い間勤める人ではなくて、“この仕事ができる人がほしい”という流れが加速してくると思うので、それにあったサービスのあり方や提供の仕方も変わってくるでしょう。

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テクノロジー文脈としては、Z世代の影響があると思います。Z世代は超デジタルネイティブ世代であり、また成長ややりがいを重要視するので、プライバシー保護という観点においてもとても意識が高い世代です。この世代に合わせたテクノロジーという考え方になります。

また、テクノロジーという言葉に包含されるかもしれませんが、人の可能性を最大化させるための人の情報というのは、まだまだ最適化されてはいません。例えば、転職領域でいうと学歴や年齢ですね。経験やスキルを一番重要視していますが、学歴や年齢、転職の回数も要素として大事にしている企業も多いことは事実です。ただそれによってその人の可能性の最大化ができているかどうかは疑問ですよね。人に関するあらゆるデータや情報をしっかりと可視化していくということは、我々パーソルキャリアとしても、さまざまな接点を持っているので、その第一人者となり、人の可能性を最大化していきたいと考えています。

テクノロジーやデジタルを含めて、“人と言えばパーソル”と言われるようになりたいですね。それらをテクノロジーによって実現できたら面白い。まだまだ明確な解はありませんが、色々と試しながらやれたら楽しいですね。

とは言っても、アナログの世界もとても重要です。AIに無くて人間にあるものは良心と意思だと思います。最後の一押しや誠実さというものは、人と向き合った時にとても重要になってきます。短絡的に言えば、人が少なくなってくるので、AIと同居するのは必然的になってきます。仕事が奪われるというよりは、仕事の中身が変わってくるということですね。

 

――テクノロジーに代替されるというより、テクノロジーと組み合わせて新しい価値を創造するということですね。

瀬野尾:テクノロジーに代替されるものももちろんありますよ。RPAのように自動化できるものもあるので、つまらない仕事はやらなくてもいいと思います。反対に面白いと思える仕事以外はやらなくてもいい。そういうものはどんどん自動化していけば良いのです。 

一方で、人口減少によって人手不足になっていく領域もあれば、新しい職を探す人もいます。ジョブチェンジする仕掛けを、パーソルキャリアがダイナミックに構築していく必要があるのではないでしょうか。例えば、製造業でエンジンを作っている人がIoTの導入に伴い、ソフトの世界にジョブチェンジするとか。要するにテクノロジーによって、役回りを変えていかなければならない人たちもいるんじゃないかと思っています。今まで事務をやっていた人でも、RPAを操れる人になれば、より存在価値を出すことができるので、そういうことを長期的にチャレンジしていきたいと考えています。

そもそもテクノロジーというのは、広く受け入れられるためには人を脅かしてはいけないと思います。人を支援するために、支えるために、AIがあるという考え方ですね。しかし世の中の多くの人は、A or Bに振れた話が好きですよね。もっと広くインダストリーを見るべきです。広くあまねくテクノロジーを広げるためには、人を支援するという考え方で、AIやデータを活用していきたいと考えています。

 

斉藤:瀬野尾さんのおっしゃる通りで、テクノロジーが人の代替になるということはあり得ません。

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意思を持ったり、雰囲気を読み取る力っていうのは、AIはまだまだ人に追いつきません。人の価値を高めるものがあくまでテクノロジーであり、データであり、技術です。基本的にこれからの世の中というのは、もちろん一部は代替しなければならないですが、人のバリューを高めていくというところのサポートをするのがAIでありテクノロジーであるということを、たくさんの経営者の方々に伝えたいですね。その点を間違えている人が多いです。

データやテクノロジーを扱っていると、僕たちも人の良さというものを再確認させられます。カウンセリングひとつとっても、人の感情をAIでは読み取れないですし、データはあまりにも素直すぎるので「ダメ」と判断しストレートに伝えてしまいます。例えば、10個紹介先があったとして、そのうちの1つしか選考通過しないという場合に、人であればそれを上手に伝えることができますが、テクノロジーではまだまだ難しいですよね。

瀬野尾:誤った使い方をすると、人を不幸にしちゃうよね。

斉藤:そうなのです。異常に冷たいですよね。その点はZ世代ですら良しとしません。彼らはSNSなどコミュニケーションを多様に使う人たちなので、気持ちの振れも大きい。なので、その冷たさを無くした人の価値が出てくると思います。

 

データやテクノロジー、AIによって示される新しいはたらきかた

――はたらき方がシームレスになってきたことと同時に、テクノロジーもアナログの世界も融合して価値を提供していくことが大事になりそうですね。ここからは少しテクノロジー領域のお話を伺いたいのですが、特に斉藤さんが管掌しているデジタルテクノロジー統括部では、今後どのような支援ができるとお考えですか?

斉藤:データやテクノロジー、AIの観点で、まずは社内へ支援で言うと、網羅性という部分でかなり精度が上がると思います。人の計算量はどうしても限られてしまいます。例えば、今までは月に100人の対応が限度だったものがあったとしたら、定型の質問などは取得することができるので、その辺りの一部は代替できると思います。そうすればキャリアアドバイザーが求職者に実際に会うまでの補助ができますし、それは時間削減にもつながります。私たちが実際に聞きたい質問はその定型質問ではありません。経歴などを聞いても、それは履歴書を見れば分かることです。なのでまずひとつは、時間の削減をし、人にバリューを返してあげる、その人を判断する際の材料を渡してあげることができます。

世の中でもよく言われる「働くスコア」に関しては、我々が蓄積した知見があります。法人企業様からお預かりしたデータがあるので、先ほど瀬野尾さんが言っていたジョブやプロジェクトへのアサインが容易にできてくると考えています。その点は我々が強みにしているところです。さまざまな規制があるので、すぐにとはいきませんが、その実現は我々が成し遂げるべきことです。現時点では我々のビジネスモデルがそこに寄与できているかというと、網羅性や迅速という観点でもまだまだ足りません。しかし、必ずや実現できるものと確信しています。

複業の話もそうですが、今は少子化の問題があります。少子化があると働く人が少なくなり、企業の存続が危うくなる可能性もあります。エンジニアも100万人足りないと言われているなかで、1社だけで雇用されるというのがあり得なくなるのではないかと思います。そうなった場合にいくつかの会社にアサインしてあげる、いくつかを提案してあげるということは、僕たちにしかできないことだと思います。

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企業も少子化になると、内需だけではそこまでモノが売れなくなってきます。そうなったときに、今は対価として給料が支払われていますが、それが1社だけでは賄えないということが中小企業などで起こりうると思います。そういったときに、複業という働き方をセットで提案してあげられるのも僕たちだけです。1社だけの可能性で何とかしようという考え方はもう終わっているので、ロイヤリティをそちらに求める可能性もあります。個人の人には喜ばしい世界観になるので、時間もそうですし、働く場所というのも雇用形態を含めて提案するということを、僕たちが今までに蓄積してきたデータによって実現できるのではないかと考えています。

 

――斉藤さんがお話しされている世界観は、まさに今、日本中あちこちの企業が感じている手詰まり感のような気がします。何がネックになっているとお思いでしょうか。

斉藤:やはりデータがまだそこまで活かされていないという技術的な問題と、それを受け入る側の意識の双方に問題があると感じています。一番大きいのは個人情報だと思いますね。やはりまだ個人情報を預けることにも抵抗を持つ人もいるでしょうし、ましてや勝手にAIに判断されたりすることに気持ち悪さを感じることもありますよね。世の中的な流れでいくと、ヨーロッパで進んでいるGDPRやブロックチェーン技術があります。日本国内では、情報銀行もスタートしていますが、まだ課題も山積みです。

また、技術やテクノロジーの部分で進んでいるのは中国です。スーパーアプリと呼ばれていますが、すべてがその中で完結しています。しかし、その反面ニュースでも取り上げられるように中国の場合データから個人を監視しているという話もあります。便利ですが、すべてが見られているということもあるわけです。

海外の流れを元に、僕たちも今後の技術活用について考えないといけません。僕たちはデータホルダーとしてユーザーの大切なデータをお預かりしながら活用していますが、その主権が個人にあった場合は活用の仕方が変わります。今はきちんと同意を取っていますが、今後ユーザーが許可した場合のみ活用できる、となると技術も変わっていきます。個人情報の考え方が全世界で広まっていくと、間違いなく技術も変わっていきます。

中国の事例からは、日本でもどこまでを監視して、どこまでのデータを渡すかという点が決まっていれば可能だと思います。僕たちはマイナンバーにとても期待していて、デジタル化した免許証と結びつけるような技術も登場しています。そのハードルはとても高いので、なかなか進まないのですが、認証の信頼性を担保しながら倫理観も維持した上で色々と考えていけると思います。。

 

――それが実現するとデータの精度が上がり、マッチングの精度も上がってくる感覚ですね。

斉藤:アルバイトの働き方のトレンドも変わってくると思います。今、スーパーアプリの中ではアルバイトとして、スーパーのレジ打ちや事務の仕事はありません。実は一番流行っているのは企業向け製品販売YouTuberです。そこでSNSで商品を売ってもらうための投資をします。広告会社のようなものはいなくて、個人を育ててフォロワーを増やすことによって、そこにマージンを支払うというモデルです。インフルエンサーを自分たちで作るということが、今はいちばん流行っています。それくらい今は日本との差がありますね。倫理観は重要な要素なので見過ごすことはできませんが。

 

「顧客」を主語に、”喧々諤々やってほしい”

――シームレスな働き方へ変わり、私たちが提供するユーザーの世代も変化していくとなったときに、事業側がテクノロジー側に期待すること、逆も然りですが、教えていただけますか?

瀬野尾:組織的な観点でいくと、このような新しい技術を活用した取り組みというのはすぐに効果が出るものと、いわゆる戦略的に投資してチャレンジし続けるものと切り分けて、斉藤さんにお願いしたいと考えていて、事業側もそれをきちんと理解しなければならないと思っています。遊びも必要ですが、結果も出してほしいということが斉藤さんへの要望ですね。

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事業側から見たときに、やはり我々はITやテクノロジーの会社ではありません。しかしITというのは、経営の意思としてもかなりの武器なので、手段としては最大限にやりたいので、そのアイデアは欲しいです。しかしテクノロジーが会社方針の上位にくると、それは事業側として、分かち合えないと思います。人間は怯えますし、敵か味方かで判断してしまうので、未知なものには構えてしまいます。また事業側にはテクノロジーを正確に理解している人はいないので、たくさん学ぶ必要があります。

テクノロジー側は、事業側ともっと融合してほしいと思っています。斉藤さんのように顧客起点から考えるというのは、マーケット起点、社会から考えるという発想なのでとてもいいと思いました。テクノロジー自体を目的としていないところが、事業側と斉藤さん側が融合する大きなポイントで、何かを生み出す大きなポイントだと思います。

組織論的にはもっと事業側に斉藤さん部隊が入っていってほしいですし、主語は「顧客」です。顧客にとって良いデータやテクノロジーを考えることが重要です。どうしてもこれらの話は、社内業務のプロセスの話ばかりになりがちですが、生産性は上がりません。もちろんそこも大事なんですが、もっとカスタマーやクライアントを起点として中に入っていくことが重要です。中から外という発想ではありません。その点を共通認識として持っていれば融合が進み、面白い何か新しい形のサービスやモデルのあり方というものが、間違いなく生まれてくると思います。

斉藤さんはこれまでのキャリアの中でも、そのようなことを考えてきたと思います。なのでストーリーとしていつも「外から」となっています。僕はその顧客起点がとても心地いいですね。なんでこんなに心地いいかというと、僕も最近気を付けないと社内の会議ばっかりになって内向きな、ツマラナイ男になってしまいそうなんだよね。(一同爆笑)。斉藤さんと話していると顧客起点に引き戻してもらえるからいいんですよね。

斉藤:いやいや瀬野尾さんそんなことないじゃないっすか…(照)

瀬野尾:ちょっと余談を挟みましたが、真面目に話すとパーソルキャリアは、規模も大きくなってきたので、0から1にしているステージではなく、10を100にしなければなりません。それをやり遂げたときには、世界レベルで価値のあるものをお届けできると信じていますし、それが醍醐味だと感じるものの、大きな組織なので、融合と言ってもなかなか難しいです。そうは言っても、顧客を主語に考えていけば大丈夫だと思っています。10人のような1万人の会社というイメージのように、大きい会社だけれどもベンチャーなマインドで「顧客のために」を主語にして、スピーディーに挑戦や変革をしていくという文化を持ちたいと強烈に思います。それが自分の役回りだと考えています。

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斉藤:おっしゃる通りだと思います。短期と長期ということがあるので、現場の目の前にあるものも僕たちはうまく拾わなければなりません。そこで成功体験を作っていくことによって、より長期ができるはずです。中長期ばかりに向きすぎていてもバランスが悪いです。しかしどうしても、短期ですら変化に怖がってしまうところがあるので、短期であってもそこを楽しむ、僕たちを使いながら遊んでもらうという感覚で寄り添っていくことが必要だと感じています。そのためには成功体験しかありません。今までパーソルキャリアはあまりテクノロジーでの成功体験がないので、まずは遊び道具として僕たちを使うということが一番だと思います。

中長期でいくと、ブロックチェーンや情報銀行といったようなものはいくらでも提案が出来ます。今はいろいろな所にテクノロジーが存在して、それが人の価値をより強固なものにしたり、場所や時間の制限を変えることができています。僕たちが事業側に求めることは、「怖くないので遊んでください」ということですね。

瀬野尾:すごくいいね。そうだね。そういうコミュニケーション生まれるといいよね。

斉藤:そうなんですよ。それが誰でもできるとさらにいいと思っています。やはり企画の人たちだけでは偏ってしまいます。もちろん企画の人たちも各事業の生産性を高めるためにテクノロジー活用を考えていますが、それだけではなくて、営業などの現場で困っている人たちの声を集める仕組みもどんどん作っていかなければと思っています。現場の声はとても貴重なので、僕たちも積極的に取りに行きたいと思ってるんです。

瀬野尾:かなり貴重だよね。わかるわかる。

斉藤:僕たちに一番不足しているものはドメイン知識と現場力です。企業が何を求めているのか、自分たちのフィット&ギャップが自分たちでは見えていません。中長期の提案は出来ますが、短期の提案が出来ません。しかし成功体験を積むためには短期の提案が大事なので、そのあたりの仕組みをどのように構築するかが重要です。大きな会社なのでセクショナリズムがあり大変なのですが、私たちから提案し、現場に遊べる空間というものを用意できたら、と考えています。それは僕たちの使命ですね。

 

――確かに現場が持っているノウハウをデジタルで活かすと当社を選んでくれる顧客が増えそうですよね。例えば営業が顧客に提案している時の「間」や「大事な一言」とかって現場にしかない情報ですよね。

斉藤:そうなんです。昔それを音声や動画などで解析しようと思ったんですが、そこにもやっぱり個人情報の壁があって実現には至らなかったんです…。でも持っているノウハウをもらいながら、この辺もやりたいですよね。

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冒頭でもあった通り、瀬野尾さん自身もさまざまな経験もされていますし、現場にもこれまでのビジネス経験をもっているので、僕を含めた中途入社のメンバーたちは、本当に感謝してるんです。自分たちのロイヤリティを高めながら、持っている力を伸び伸びと発揮させてもらっている感覚があって。。。しかし稼いできてくれているのはあくまで営業であるという事を忘れてはいけませんし、僕たちはその感謝をもっと伝えるべきだと思っていますね。

瀬野尾:それ、ぜひ伝えてほしいね。社内だけどwinーwinの関係なので、それを分かち合った方がいいですね。やっぱり見えないことによって現場でも「稼いできたお金で何をやっているんだろう?」となってしまうので、お互いに表現をしあうことでより繋がりができて、満たされることも変わってくるよね。

斉藤:僕たちは寄り添いたいし、一緒にやっていきたいという思いがあります。どこの企業も似たような話もありますよね。

瀬野尾:そういえば思い出したけど、Facebookでも、システムをごりごり作っている人の他にはもちろん営業がいますが、営業を感じたことはありませんよね。それはビジョンやミッションに忠実だからです。「いくら儲けよう」ということをザッカーバーグは語ったことはなく、シンプルに「世界をつなげよう」と言っています。しかしその裏側では営業が大変な努力をしていて、作り手と売り手は強固につながっているそうです。営業が儲けてきてくれているから、僕たちは作ることが出来るときちんと伝えているそうです。それはとても良い関係ですよね。

 

――たぶんお互いに感謝は思っていても、なかなか表現できなくてその機会を逃していることもありそうですよね。この辺はクリアになりそうでしょうか?

斉藤:先ほど瀬野尾さんがおっしゃった通り、僕たちが近づいていけば声は聞こえてくるはずです。今はちょっとした壁があり近づけていないので、本来ならば「ありがとう」から届けなければならないのに、それが出来ていません。

瀬野尾:それが本質だと思います。組織的な構造でいうと縦割りで分かれているので、それでは歩み寄りませんよね。現実的な構造としてそうなっているので、なかなか超えていきません。なので斉藤さん側が事業を兼務する形で、事業とテクノロジーが近くなるような状態に構造を変えていきたいと思います。そこでもちろん見ている視点が違っていたり、バトルもあると思いますが、そのときは「顧客起点」という目的やビジョンやミッションを軸に喧々諤々でやってほしいです。そこから旧態のビジネスモデルが変わり、きっと面白いものが生まれると思います。

 

――まさに事業側とテクノロジー側のそれぞれの組織文化が異なることが融合を妨げてしまうような感覚を持っていたんですが、そこはあえてコンフリクトを起こしに行くことで文化になっていくのかもしれないですね。

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瀬野尾:そうだと思う。生まれも育ちもDNA も違うので、ぐちゃぐちゃでいいんです。皆さんがもめているときというのは、実は上り方や進め方についてです。目的さえ共通であれば、上り方はいろいろあって良いということを認識しておくべきです。

 

――その目的を共通で合わせに行く、っていうところがポイントですよね。ここが本来はミッションやビジョンになると思うんですが、その見方も今は部署によって多少異なる印象を持っていますが、、、いかがですか?

瀬野尾:そうだね。僕はあえて、ミッションやビジョンは遠すぎるので、ギャップは「顧客」だと見ておけばいいと思います。逆から考えるという発想もあると思いますが、僕は顧客の顔が見えているかというやり方を積み重ねる方が、よっぽど価値があるものを生み出すと思います。例えばAmazonさんも最終の意思決定は「顧客志向なのか」ということが背骨になっていると思いますよ。今のパーソルキャリアが足りていないのは、明確にその部分です。

 

――組織文化が違う事やカラーが違うことは良いことだと思っている一方で、部を超えて仕事をするときの共通言語は「顧客」という事に改めて立ち返ることが大事なんですね。

瀬野尾:旧インテリジェンスには5DNAというものがあり、それらは今のパーソルの行動指針の中にも昇華されています。成長マインドや自分ごと、外向きということも共通言語だと思います。ただ、僕はそれも大切だけど、シンプルに「顧客」だけの方がいいと思います。ビジネスそのものは結局「誰かのために何ができるのか」というシンプルなものなので、それに価値が高まれば売上が上がっていくという、きわめてシンプルな形です。それ以上の話はありません。しかしそれを実現させるのはとても難しいです。

斉藤:いろいろな人がいるので難しいですが、そのいろいろな人がいるということも価値ですね。

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――顧客を主語にして、文化を超えていくことが大切ですね。改めてステキな対談をありがとうございました…!

(取材・文=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/撮影=古宮こうき) 

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瀬野尾 裕 Yu Senoo

パーソルキャリア株式会社 取締役執行役員

1973年生まれ。法政大学を卒業し、人材サービス企業を経て2000年にインテリジェンスに入社。派遣事業部長、複数のグループ会社の役員などを経て、17年テンプホールディングス(現パーソルホールディングス)執行役員。18年から現職。

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斉藤 孝章 Takaaki Saito

デジタルテクノロジー統括部 ゼネラルマネジャー

大学卒業後、自動車業界を経て、コンサルティング業界、EC業界、人材業界などのITガバナンス及びIT戦略・設計に従事する傍ら、管理職として組織構築に貢献。2016年にパーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。同社のミッションである「人々に“はたらく”を自分のものにする力を」の実現をテクノロジードリブンでリードする。

※2020年11月現在の情報です。

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