転職サービス「doda」をはじめ、パーソルキャリアにはさまざまな法人顧客向けサービスがあります。そして、その中から法人企業様のニーズに沿った最適なものをご提供するために、1社につき複数名の法人営業が担当し、企業を取り巻く採用課題に向き合いサポートを行っています。
そうした営業活動から得られる多くのデータや情報を、よりスピーディーに安心して活用できるように。また営業担当者が各サービスの垣根を越えてシームレスに活用できるように……とデータ基盤の構築に取り組むのが、法人企画統括部 デジタルソリューション部の檜山と、デジタルテクノロジー統括部でデータビジネスやデータエンジニアリングの知見を有する田中、柳、井上です。
彼らはどのようなビジネス課題、技術的課題を乗り越えてデータ基盤の構築を進めているのでしょうか。4人に話を聞きました。
※撮影時のみマスクを外しています。
“データドリブン”のタイムリーな営業活動・最適なサービスのご提案に向け、データの可視化を推進
――まずは、今回プロジェクトが始動した背景から教えてください。
檜山:パーソルキャリアは今、サービスごとに事業部が配置された組織体制になっています。その中で「法人企業様の採用課題に最もマッチするサービスをよりスピーディーに提供するためにも、各事業に横串を通していこう」と取り組んでいるのが私の所属する法人企画統括部です。現在は全社のBtoB領域における方針として「法人戦略」の検討を進めています。
その過程ではデータの可視化や分析が大切になりますが、現状として事業部ごとの独立性が非常に高く、各事業では分析が行われているものの “パーソルキャリア全体として見るとどうか” という視点が不十分だという課題がありました。
そこで、法人戦略を検討する前提として、まずはパーソルキャリア全体で顧客基盤のどこに課題があるのかを可視化する、という取り組みに着手することになったのです。
――全社の課題の可視化や戦略策定を進めるにあたり、どのようなことが課題になり、今回データ基盤の構築を行われることになったのですか?
檜山:各事業部が運営を独自に行っていることもあって、使っている基幹システムもそれぞれ異なっており、サービスにまつわるデータは事業部ごとに個別に存在しています。
そこで当初は、データを可視化したレポートを作成にあたって、私が各事業部に問い合わせて月500万件以上のデータを集め、手作業で一つのフォーマットに落とし込んだり、データどうしの紐付けを行ったりしていたのです。
柳:毎回さまざまな関係者に問い合わせをしなければデータが取得できないというのは、システム的な観点からも複雑で、適切な状態とは言えません。
またレポートを作れるのも各項目の定義を説明できるのも檜山さんのみで、アウトプットが全て一人に依存してしまっていること、エンジニアがどこを運用保守すべきかが整理されておらず、問題が起きた時に問い合わせる先も明確でないこと……これらは運用、ひいては経営にとって大きなリスクになり得ますよね。
檜山:さらに、手作業かつデータ量も莫大なためレポート作成には多くの時間がかかっていました。柳さんのおっしゃったように属人的な運用を改善するためにも、レポートの早期完成を実現するためにも、改善が必要だろうとプロジェクトが始動しました。
――井上さん、田中さんは途中からプロジェクトにジョインされたとのことですが、概要を聞いた際の印象としてはいかがでしたか?
井上:全体の仕様を把握されている檜山さんの存在に、安心感はありましたが……とはいえ「ある事業のデータを軸にするのではなく、 複数の事業のデータをきれいに合わせて横串で見られるようにする」というやり方はこれまでに経験がなく、難しいポイントだと感じました。
田中:法人データを横串で見られる基盤を作るというのは、とても壮大な取り組みですし、今のパーソルキャリアにとってやらなければいけないことだと認識していたため、大変そう、と同時に面白そうだという印象でした。
頼れる先輩方もいらっしゃるので、参加できるのならぜひ参加したいなという思いがありましたね。
データ収集・加工作業の自動化が実現。さらにシステムを発展させ、お客さまの採用課題の解決へ
――プロジェクトの現在地を教えてください。
檜山:BIを構築して私が手作業で行っていたデータ収集・加工作業を自動化するStep1が完了し、現在は、Step2として対象データソースの追加やダッシュボード機能の拡張に取り組んでいるところです。
田中:また、レポートをもとに分析や議論を行う事業側のミーティングに私と井上さんで参加し、現場での使われ方や「ここの数字が分からない」といったユーザーの声を知るなど、今後の改善や活用推進に向けたアプローチも進めています。
――ここまでの取り組みを振り返って、特に苦労されたポイントなどがあればお聞かせいただけますか?
柳:そもそもプロジェクトを立ち上げる際にほとんどメンバーがおらず、体制づくりには苦労しましたし、当初は本当にできるのかなという懸念もありました。檜山さんがテクノロジーのリテラシーをお持ちで会話を進めやすかったこと、BI系の経験をお持ちの田中さんや井上さんがジョインしてくださったことに、助けられましたね。
また営業情報はパーソルキャリアがこれまで作ってきた歴史であり、法人企業さまに関連する大切な情報であるため、コンプライアンスの徹底が重要かつ大変だったなと振り返ります。
檜山:私の場合は、フォーマットが揃っておらず、同じ項目でも事業によって名称が異なる場合もあるというような、これまで個別管理されてきたデータを扱うことですね。
まずは、各事業部のマネジャー層に経緯を説明してデータを取得することの同意を得た上で、その配下のキーマンたちにコンタクトをとり、年月・売上・組織……といった細かな項目ごとに「このデータはどこからどう取ればよいのか」をヒアリングしてきました。全ての事業部のデータを一覧化した上で、一つのフォーマットに収めるという過程には、非常に苦労しました。
井上:今回採用したデータ仮想化・統合ツール「Denodo」は自分にとって初めて経験する新しい技術であり、またDenodo独自の仕様で処理が動いている部分もあるため、構築には苦労しました。製品会社に問い合わせながら課題を解決していく過程が、とても勉強になりましたね。
また今後Denodoの活用を進めていきたいという思いもあったため、単にレポートが出せればよいのではなく、「データをどのように持たせるか」「どのような仕様のデータが、どのように使われてレポートになるのか」まで理解して実装する必要があったところが、一番大変だったポイントです。今回集めたデータを今後別の目的で活用する際に、得られた知見を活かしていきたいと思っています。
――Denodoについては、本記事の続編である「技術編」にて詳細を記事にしていきますので、皆さんご期待ください!
本題に戻りますが、このプロジェクトに携わる中で、醍醐味や面白さを感じられたこと、学びになったことはありますか?
檜山:一番醍醐味を感じられたのは、実際にBIができあがり、自分が苦労して手作業で作っていたレポートが これまでの半分以下の時間でポンっと出てきた瞬間です。元々の仕様を私しか知らないため、皆さんにロジックを全てお伝えして進めていく大変さもありましたが、やはりできあがったものを見たときには大きな感動がありましたね。
田中:私は、ユーザーの方が喜んでくださっているのを目の当たりにできた、今が一番嬉しいかもしれません。
また今回、檜山さんと同じ部署の方がBIに興味を持ってご自分で勉強をされたそうで、運用はその方が担ってくださっているんです。レクチャー会を開いて仕組みを説明されたりするなど、運用までユーザー側で自走できるように取り組んできた工夫が実り、「自分たちでやろう」という意思を持って動いていただけたことをとても嬉しく思っています。
井上:私としてもやはり、作ったものが実際に使われているというところが、一番の醍醐味としてあるかなと思います。
またデータの観点で、さまざまな業態のデータを扱って横串で見られる楽しさも感じられました。今回のレポートだけでなく、今後の活用も通してさらにそういった多様なデータを深掘りして見ていけるのが楽しみです。
田中:個人的な学びとしては、BI系のツールを触った経験はあったもののPower BIは初めてで知識がなかった中で、勉強してモックを作って実現可能性を確かめて……と取り組み、新たなツールを使えるようになったことが大きな成果だったなと。今後より活用の幅を広げて、事業にとって重要な取り組みにもつなげられるようにしていければと思います。
柳:私も、事業側のインサイドセールスについては全く知識がない状態でプロジェクトに入ったため、本を読んで知識を補いながら進めていきました。事業やその動きを理解できたことで、実際に使っていただけるものを作ることにつなげられましたし、プロジェクトを進める中で檜山さんとのコミュニケーションを円滑にすることができたのもよかったかなと思っています。
――ありがとうございます。それでは最後に、みなさんが今後チャレンジしたいことをお聞かせください。
檜山:今回のプロジェクトは、法人企業様に最適なサービスをお届けすることの起点になるものだと思うので、これがゴールではなくさらにシステムを発展させ、上段の目的であるお客さまの採用課題の解決に挑戦していければと思います。
田中:今回のプロジェクトで得られた経験をもとに、データマネジメントを推進していきたいなと。その基盤構築から、意味のあるダッシュボードを作るまでの流れを、責任を持って担える組織ができるといいなと考えています。
井上:私も田中さんと同様に、今回さまざまなデータに触れた経験を活かして、「それぞれのデータをどのように管理するのがよいか」というデータマネジメントにまで領域を広げていきたいです。
今は柳さんと一緒に人事データ活用の基盤構築にも関わっていますが、そういった全く異なる畑のデータの正しい管理方法・活用方法についてもこれから考えていければと思います。
柳:まずはCOD(Cross Over Director)として、今後も開発側とビジネス側をつなぐ役割を果たしていきたいというのが一つです。
また井上さんから人事データのお話がありましたが、営業の数字の裏側には “はたらく人”がいますから、そういった営業の数字と人にまつわる情報をつなげていくことで、より “パーソルキャリア全体として” の視点を深めていけたらと思います。
――ありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)
檜山 武志 Takeshi Hiyama
法人企画統括部 デジタルソリューション部 データ企画グループ
大学卒業後、パーソルキャリアの前身の前身にあたる株式会社学生援護会に入社し、アルバイト領域における市場分析、業績管理、社内BPRなどに従事。 2019年に法人企画統括部に異動し、法人戦略のモニタリング設計を担当。
柳 賢二 Kenji Yanagi
デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 CODグループ シニアエンジニア
大学卒業後、SIerを経て、組み込み業界に入り国内外の様々な家電メーカー様の案件に従事する。 その後、コンビニエンスストアチェーンの情報システム部門に転職し、大規模業務システムの 改善案件や、24/365の運用保守を担当する。2019年6月より現職。
田中 麻衣子 Maiko Tanaka
デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ リードストラテジスト
大学院卒業後、独立行政法人にて研究員として若年者雇用・キャリア形成に関して調査・研究。その後、コンサルティング会社に転職し、広告関係のコンサルタントを担当。2022年より現職。
井上 裕貴 Yuki Inoue
デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 サーバーサイド・インフラエンジニアグループ リードエンジニア
専門学校卒業後、SIerを経て複数の業界でデータウェアハウスの運用保守やSalesforceの開発を担当。2022年4月より現職。
※2023年2月現在の情報です。