チームパフォーマンスを発揮させるチームEI(Emotional Intelligence)について #techtekt Advent Calendar 2022

チームパフォーマンスを発揮させるチームEI(Emotional Intelligence)について #techtekt Advent Calendar 2022

techtekt アドベントカレンダー2022 10日目です🎄✨

こんにちは。
エンジニアリング統括部 UXデザインチームのサービスデザイナーの高橋です。
新規事業創出におけるユーザー体験設計やプロジェクトマネジメント、ファシリテーションなどを行なっています。アカデミック領域では、チームワークを研究しています。

この記事では新規事業創出に取り組むチームの「チームパフォーマンスを発揮させるチームEI(Emotional Intelligence)」について書いてみたいと思います。

チームパフォーマンスを発揮するにはチームワークが重要である

チームパフォーマンスを発揮するにはチームワークが重要です。

「何を当たり前のことを言うんだ!」思った方もいらっしゃいますよね。

ただ、チームワークは、普段何気なく使われる言葉であるからこそ、理解の抽象度が高いままで使ってしまうことも多いのではないでしょうか。

例えば、新しいチームが立ち上がった時に、「よし、まずはチームワークを高めるぞ!」 と考え行動する内容は、人によってバラバラだったりします。

もちろんそれが悪いと言うつもりもなく、まずやってみるというのは大事な一歩なのですが、より最適な行動を起こしていくために、チームワークの品質構造を知っておくと行動や施策の目安になりますよということです。

チームワークの6つの品質構造
  • コミュニケーション(オープンで直接的なコミュニケーション)

  • 協調性(個々の取り組みが調整されている)

  • メンバーの貢献バランス(貢献のバランスと専門性の発揮)

  • 相互支援(互いに助け合い、支え合う)

  • 努力(タスクへ全力で取り組む)

  • 結束力(チーム維持への意欲、チームスピリット)

上記6つが、チームワークの品質構造として必要な要素と言われています(Martin&bullet,2001)。

そして、このチームワークの6つの品質を上げるための考え方や視点の一つとして、「チームEI=チームの感情的知性」があります。

チームパフォーマンスを発揮するために、チームワークが必要。そのチームワークの品質を上げるためにチームEIの考えを取り入れるという感じです。

チームEIは、新規事業を作るチームに重要な視点

「チームEI=チームの感情的知性」とは、他のメンバーの気持ちや行動に寄り添い、協調するスキルであり、新規事業開発など不確実性の高いプロジェクトに取り組むチームにはとても重要な視点です。

なぜ新規事業を作るチームに重要かと言えば、ポイントは多様性です。

私たちは、通常BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)メンバーが組み合わさってチームになります。

色々なタイプのメンバーがいることで、ものごとを考える視点が多くなり、新規性や独自性が生まれやすくなります。

一方、デメリットもあって、多様性が高いチームは合意形成するのがちょっと大変だったります。場合によっては、意見の食い違いが原因で、チームの中で対立が生まれてしまったりなんてことも。

そこで重要なのが、メンバーの気持ちに寄り添うことです。

チームメンバーそれぞれが持つ背景やナラティブ(物語)を理解し、考えるという点が非常に大事になってきます。

ちなみに、チームEIが高いチームは、信頼性やコラボレーション、創造性の高い問題解決能力が高いことが実証されています。(Druskat&Wolff,2001)

 

チームEIとチームワーク品質要素との関係性は?

最初にご紹介したチームワークの6つの品質要素ですが、あえて分けると2つになると考えます。

右側3つが「プロジェクトマネジメントでカバーする品質要素」、左側3つが「チームマネジメントでカバーする品質要素」です。

チームEIは、その中でも特にチームマネジメント領域のコミュニケーションに影響するものと考えます。

プロジェクトマネジメント領域では、ゴールとプロセスを定めて、最適なメンバーを揃え、取り組みを明確化し、タスクを管理していきます。

少し乱暴ですが、きちんとメンバーにそれぞれの役割とタスクを割り振れば、コミュニケーションが多少雑でもうまくいったりします。

しかし、新規性が高いプロジェクト(特に新規事業開発など)は、そもそもゴールはなんとなくしか見えない、プロセスは無数にあって何が正解かもわからない、進んでは戻るを何度も繰り返します。その時、コミュニケーションはとてもとても重要な要素になります。

よく言われる心理的安全性にも通じるところですが、メンバーが安心して発言ができ、メンバー同士での会話の量が増えていくことがポイントになります。

チームEIが高いチームは、このコミュニケーションの質と量が高く、そのため相互支援が生まれていき、結果としてチームの結束力が高まっていきます。

そうすることで難しい決断も恐れずに実行していけるチームとなり、結果プロジェクトもうまく回っていきます。

 

チームEIを高めるためにやるべきことは何?

 

チームEIを高めるためにやるべきことは、「メンバーの感情にフォーカスすること」です。

例えば、4人のチームがいるとして、その中の1人がなにか違うなと思っているとします。

その時に、3人が考える「正しさ」で会話してもあまり良い解決になりません。説得しようとするなら尚更です。

やるべきなのは、「何故、そう感じるのか?」についてチームで話し合うことです。

重要なのは、メンバーの感情を調整するという意識を持つことです。それが、チームEIを高めることにつながります。

そのためには、ユーモアを交えて話しをしてみたり、時には「参加してほしい」「あなたの貢献が必要だ!」と率直に思いを伝えるということでも良いです。

その他、おすすめの方法は、チームが危機になる前に「チームの感情がずれそうになったら立ち止まって話すこと」をチームのルールとして決めておくことです。これがあると、ピンチの時にチームを助けてくれるカードになります。

チームの感情を揃えることをしっかりと行っていく、そこに取り組んでもらえると良いと思います。

チームEIが危機になる時

最後に、チームEIが危機にさらされる時についても考えてみましょう。

こちらも一つの例ですが、とある企画会議などでメンバーがいくつかのアイデアを考えていたとします。その時に一人の人(優秀だと思われる人や職位が高い人)が、「それは前に考えたけどうまくいかなかったよ」とか、否定的な意見を言ったとします。言った人は何気ない一言かもしれませんが、それがきっかけでアイデアが出なくなって雰囲気も沈んでしまうケースがあります。チームEIが危機にさらされています。

別の例では、新商品やサービス開発の時に、上からの要望として(大抵断れない)取り入れたくない機能やデザインについてチームが採用を迫られているとします。それを採用することで、ヘタをすると企画が台無しになってしまうかもしれない。上は何もわかっていないんだ! こんな事でもそれまで意欲的だったチームのモチベーションを下げてしまうことにもなります。

また、他の例では、チーム内で一部の人に意思決定権が集中してしまい、他のメンバーが意見を言いづらくなってしまうなどもチームEIの危機的な状況の一つです。

もしこのような状況にチームがなってしまったら、まずは一旦立ち止まりましょう。そして、決断を早急にしないこと、何がチームの感情を阻害しているかを話し合うこと。

もちろん難しいかもしれない、話し合いができない状況かもしれない、でも勇気を持って話し合うということに取り組んでみてください。

繰り返しになってしまいますが、チームの感情を調整する事、それがチームEIを適切に保つための重要なポイントです。

 

以上、チームパフォーマンスを発揮させるチームEI(Emotional Intelligence)について書かせていただきました。チームで日々働かれている皆さんのお役になれば幸いです。

 

高橋 靖正 Yasumasa Takahashi

エンジニアリング統括部UXデザイン部 サービスデザイングループ プロデューサー

2020年3月にテクノロジー本部エンジニアリング統括部UXデザイン部サービスデザイナーとして入社。 前職は、デジタルマーケティング企業にてプランナー、UXディレクターとして勤務。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)にて、デザイン思考とシステム思考アプローチのイノベーション研究、組織心理学をベースとしたチームパフォーマンスの研究を行う。アカデミックと実践における両輪のアプローチを得意とする。

 

※2022年12月現在の情報です。