【HiPro Direct】プロダクトマネジャー0.5年目の学び #techtekt Advent Calendar 2022

こんにちは。テクノロジー本部エンジニアリング統括部 UXデザイン部で、サービスデザイナーをしている長谷川リョウヘイです。
HiPro Directという、高度な専門性を持つ副業・フリーランス人材と、彼らを必要とする企業がマッチングできるプラットフォームのプロダクトマネジャーを、今年の4月から務めています。 そしてプロダクトマネジャーに着任した瞬間に、16名のプロダクト企画・デザイナー・エンジニアの3職種が所属する組織のリーダーにもなりました。 マネジメントをした経験がない私が半年間で失敗を繰り返しながら学んだ、3職種とのコミュニケーション方法について、メインで語らせてください。

※Hipro Directに興味を持って頂けた方は、こちらの誕生秘話もぜひご一読ください。

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前提

まず、組織図をお見せしたいと思います。3職種それぞれ、どのような構成であるのか把握していただくことで、 どういう状況でそういったコミュニケーションが起きているのか、という前提の理解に役立つかもしれません。

プロダクトサイド組織図

また、2週間のスクラムイベントを起点としたプロダクトの企画、デザイン、開発を行っています。

基本となる企画開発プロセス

こうして素早くBMLループを回していくことで、ユーザーや事業にとって必要な機能を素早く企画開発し、顧客体験価値の向上や、KGI / KPIの向上に務めています。

エンジニアとのコミュニケーション

毎月1on1を実施する

私がプロダクトマネジャーになったのは、一番最初の正式版リリースを終えたタイミングでした。 しかし、以下の3つの理由が絡まり合い、エンジニアには企画・デザインチームへの不満が溜まっていました。

  1. 個人と法人向け、そして管理画面という構成のシステムを短期間で開発していたこと
  2. 短期間の開発が故に、ピープルマネジメントの体制を整えることが出来ていなかったこと
  3. メンバーに0→1の立ち上げ経験が多くなかったため、デザインやコンプライアンス面での手戻りが多く発生していたこと

プロダクトマネジャーに着任した私が最初に行ったリファインメントでは、 「もっと早く相談してほしい」「これは詰まってないんじゃないか?」「コンプラの指摘はクリアしているのか?」とエンジニアの皆様から非常に怒られました。 今思えば、新たに代わったプロダクトマネジャーに対して、期待も込めてのご指摘だったのだと思います。

思ったよりも雰囲気が良くないと感じた私は、エンジニア10名全員と毎月1on1を行うことを決定しました。 しかし、最初の1on1では、「正直、企画チームがダメダメすぎて働きづらい。稼働を減らしたいと思ってる」というネガティブな声も頂きました。

私は、プロダクトマネジャーとなったからには全員を「家族」だと思いたいという気持ちで、「今は何が課題か?どうしたら解決できるか?問題の原因はなにか?」とひたすらに話して回りました。 もちろん、人間関係はプライベートの話も大事なので、半分はプライベートの話、半分は仕事の話といった形で1on1を進めました。 そうしてひたむきに話して、解決策をすぐに実行し、至らないところがあってもしっかり謝る。でも意思決定はしっかりする。 そうした姿勢を見せていくうちに、徐々に信頼関係が生まれて、気軽に全員が僕とコミュニケーションを図って、のびのびと働ける環境になってきました。 (最近は「そろそろ炎上したいな〜」と言われたりするくらいです。笑)

リーダー体制を構築する

毎月1on1を繰り返して信頼関係を獲得したのですが、次なる問題が発生しました。 それは、「このやり方ではプレイングとマネジメントを両立することが時間的に難しくなってきた」ということです。 エンジニアとの1on1だけでなく、デザイナーや企画メンバーとの1on1、それぞれのチームマネジメントMTGなど、マネジメントにもかなりの工数をかけていました。 その分、クリエイティブに集中して作業できる時間が減り、精度が落ち、ところどころで仕様の抜け漏れや伝達の抜け漏れが発生していました。

ここで、自分の所属するUXデザイン部の特徴を思い出しました。それは、「自律分散型の組織を目指している」ということ。 専門性の高いメンバーは、自分の専門領域については意思決定を行う。専門外の領域に関しては、専門家にアドバイスを仰ぐ。という体制です。 私のプロジェクトでいえば、企画は自分がリーダーを継続するが、エンジニアに関してはリーダーを別で立てる、という体制になりました。 (ちなみに、デザイナーに関してはリーダーを立てるというよりも、3人で自律してチームを育てて行く方が性に合うという着地になっています)

エンジニアメンバーのコンディション確認やモチベーションアップ、環境整備や仕組みづくりなどのマネジメント領域をお任せできたことにより、 1. リーダーのモチベーションがアップし、推進力も向上 1. エンジニア目線でのマネジメントなので、施策が的確であることが多い 1. リーダーがいる安心感につながり、生産性も向上 などのメリットが生まれたなーと実感しています。

エンジニアから積極的かつ率直に提案をしてもらう

チームのカルチャーとまでは明文化していないのですが、明らかにこのチームの特性として出来上がってきたことが一つあります。
それは、下の3つの目線で全員が提案するようになったことです。
1. ユーザー目線で積極的に「もっとこうした方がいいんじゃないか?」と提案する
1. ビジネス目線で積極的に「もっとこうした方がいいんじゃないか?」と提案する
1. チームのルールやプロセス、仕組みについても「もっとこうした方がいいんじゃないか?」と提案する

これは明らかに自分が着任した最初の3ヶ月と、後の3ヶ月で大きく変わったことです。 このようなポジティブな変化が生まれている要因を考えていたのですが、以下のような仮説を持っています。
1. 全員がユーザーやビジネスに興味があり、頭を切り替えて考える力がある(副業・フリーランスという身近な領域であるから、というのもありそう)
1. 自分がどんな会議でも徹底的に、情熱的にユーザー目線とビジネス目線で議論・意思決定しているから
1. Giveを賞賛し、失敗を許容するため、心理的安全性が上がってきた

この変化により、会議中の仕様に対する発言だけでなく、エンジニアが自分からFigmaの運用について提案してくれたり、コミュニケーションラインについて提案してくれたりと、 チームにとって良い方向につながる提案がたくさん生まれるようになりました。

デザイナーとのコミュニケーション

毎月末に振り返りを行う

サービスデザイナーでもある私は、UXデザイン部に所属していたため、プロダクトマネジャーに着任する前からデザイナーとは面識があり、尚且つ自分がマネジメントを行っていました。 そこで、毎月末にKPTを行う試みを行っていました。始めた当初は大きな不満も書かれなかったのですが、徐々に心理的安全性が上がっていき、とりあえず効率が悪いと思うものや不満につながっている仕組みなどは書き出してもらうことで、毎月組織としてのPDCAを回すことができました。 そのおかげで、デザインチームの運用に関しては何度も議論を重ね、自分たちで一定不満の溜まりづらいチームが出来上がってきました。 さらに、自分たちで自律分散型の体制を組んだことにより、自分たちのチームには自分たちで一定責任を持って運営していく意識が強まり、それによって生産性が向上した実感があります。

とある月のKPT

すべての依頼はSlackに明記する

これは細かいことですが、デザイナーのタスク管理を追求していった結果、現在はSlackのワークフローによる依頼に落ち着いています。 その依頼投稿をチャンネルにピン留めし、タスクが終わればピン留めを外す運用です。 これにより、どのタスクが終わっていないのかが一目瞭然で、尚且つスレッドを通して議論が積み重ねられ、流れてしまっても見返しやすいなどのメリットがあります。 zenhubでのカンバン方式での管理や、Figmaのコメントによる管理などを試したのですが、Slackがタスクのサイズ感やコミュニケーションの振り返りやすさなどを総合して勝利しました。

UXとビジネスメリットを両立したデザインを求める

デザインについての議論をMTGでしていると、「ユーザー体験上はこうすべき」という理に適ったご提案をたくさん頂くことができます。 一方で、0→1の新規事業だと、まだまだやりたいことも山積みで、最小限の価値提供で高速PDCAを回すことが求められます。 我々の事業だと、細かい高速の改善を回すよりも、競合他社に比較して機能を積み上げていくことや、お客様にとって必要な機能を追加開発していくことが優先的に求められます。 そのため、「ユーザー体験上はこうすべきだが、ビジネスの都合上、実装コストやスピードを優先したい」という会話が多くなってしまいます。

しかし、間の文脈をうまく伝えられずにいた結果、「長谷川は開発至上主義者だ」と言われてしまうことがありました。 これには深く反省し、しっかりと上記の文脈を伝えた上で、デザイナー自身もそういった視点を持って、実装コストやスピードのバランスの取れた提案や、こういったパターンがあるよという提案をしてほしいと依頼しました。 そうしたら、程なくして毎回のようにデザインの説明時に実装コストやスピードを考慮した説明が加わるようになり、議論のレベルが一段上がったように思えます。

プロダクト企画とのコミュニケーション

企画プロセスを明確化し、レビューを体系的に行う

自分は大学2年生の頃からインターンシップを通してビジネスデザインを学んできました。 投資家である師匠に教わった知識を活かし、自分なりに経験を織り込んできたのですが、ほとんどぶっつけ本番で失敗しながら学んできたため、 自分の中に「点」としてある知識を、部下のメンバーにとっての「線」として体系的に教えてあげることができず、ぶっつけ本番で学ぶ環境にしてしまっていました。

しかし、デザイナーやエンジニアが手離れし、企画メンバーのマネジメントに向き合った今、部下から「もっと体系的なレビューがほしい」「自分が成長している実感が湧きづらい」というフィードバックをもらいました。 これを急いで改善するために、以下の取り組みを実施し始めました。
1. HiPro Directにおけるプロダクト企画の業務を定義する
1. 企画の大きなプロセスを定義する
1. 自分がどのスキルをどう伸ばしたいのか、スキルマップを活用して決める
1. 伸ばしたいスキルに関係するプロセスを理解し、そこを重点的にやってみる
1. レビューするときは、プロセスの中のINPUTやOUTPUT、詳細プロセスなどを定義し、それに沿って体系的なレビューを行う

プロセスごとの企画票の一例

プロセスを行なっていく中で、この企画票をベースにプロセス自体も改善を行い、ナレッジが溜まっていくというメリットもあります。 こうした工夫を始めたおかげで、企画メンバーは最近顔がスッキリして、成長実感も湧き始めたと言ってくれました。

現場やユーザーとのコミュニケーションを取らせる

2週間スプリントの中で、企画とデザインをどう組み込んでいくのか。これは他のPdMの方々も悩むのでしょうか? 大きい機能開発ならまだしも、小さい機能開発にとってUXデザインをインタビューから1から企画して行うのは、かなりの労力を伴います。 しかし、現場の営業メンバーやCSメンバーと会話したり、顧客MTGに同席するのであれば別です。 ユーザーのリアルな声を収集して、企画することを徹底的に意識してもらうことで、精度の高い企画がアウトプットされてきているように感じます。

効果試算とパターンの提案を徹底させる

さらに、アウトプットは基本的に複数パターンを提案し、効果試算を行うことを意識づけてもらっています。 自分たちが考えたアイデアにはバイアスがかかりやすいため、慣れるまでは意識してFBし、
1. BTCの視点でメリット・デメリットがないか
1. この施策でどんな効果があるのか
1. 他にも課題へのアプローチ方法はないのか
という視点を徹底的に身につけていってもらうことで、すぐに考え方を吸収し、実践し始めてくれました。

その他の施策

上記では、企画・デザイナー・エンジニアそれぞれのチームに対する取り組みを紹介してきましたが、それ以外にも共通でやってみて効果のあった施策があるので、 以下に簡単に紹介します。

  1. 毎週2回プロダクトデザイン定例を開催し、プロダクトの企画やデザインフェーズから営業・CS・エンジニアを巻き込んで議論する
  2. 月例会で実績や方針を共有することで、チームがどこに向かっていて、今どの地点にいるのかを可視化する
  3. Slackで営業報告やCSの報告を共有してもらい、ポジティブもネガティブもフィードバックを見える化する
  4. リモートワークがメインなので、飲み会などコミュニケーション施策を徹底する
  5. 多数の営業・CSもいる全体の場で表彰する

まとめ

これだけの施策に辿り着いたことで、徐々にチームの士気もあがりつつあり、生産性も向上してきた実感があります。 そしてKPIの向上にも貢献できてきていることが、PdMとしても数字を通して実感できて嬉しくあります。 たった半年間で、いろいろな人から怒られてきましたが、皆さん全員が真摯に向き合うことで、失敗を許容し、解決に協力してくれます。 そんなチームメンバーに恵まれた幸運に感謝しつつも、さらなる成長を持って事業を牽引できるよう成長したいと思います。

長谷川 リョウヘイ Ryohei Hasegawa

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第1グループ リードディレクター

エンジェル投資家への弟子入り、個人事業主、グルメテック領域での起業を経て、2020年1月にパーソルキャリアへ参画。今まで15以上の新規事業企画や既存サービス改善のサービスデザインPJTに携わる。現在はHiPro Directのプロダクトマネジャーを担う。Neuromagic社認定デザインスプリントマスター。

※2022年12月現在の情報です。