社会を取り巻く雇用課題の一つに「若年者の雇用課題」があります。例えば、高校卒業後の進路として就職を選択する場合に、大学卒とは異なる独自のルールや文化の中で職業選択をせざる得ないケースが存在したり、応募できる職種や待遇についても大学卒と差がないとは言い切れなかったり――また自分に合った職業選択を行うためのキャリア教育の不足など、取り組むべき課題も山積しています。
今回は、そういった若年者の雇用課題に目を向け、パーソルキャリアのミッションに共感して入社した2名――データサイエンティストで教育にも深いかかわりのある太野と、労働政策に関する研究に携わり、データ分析・コンサルなども行ってきた田中にインタビュー。どのような想いでパーソルキャリア働くことを決めたのか、パーソルキャリアを通じてどのような社会課題の解決を考えているのか、話を聞きました。
- 若者を社会へ適切に“送り出す”仕組みがない――教育と労働の断絶に感じた違和感が原点に
- 「事業への貢献」と「課題追求」の両立を実現する
- “若年者の雇用課題のこれから”を見据え、パーソルキャリアでできることとは?
※撮影時のみ、マスクを外しています。
若者を社会へ適切に“送り出す”仕組みがない――教育と労働の断絶に感じた違和感が原点に
――お二人がパーソルキャリアにジョインされた背景には、「若年者の雇用課題」への思いがあったと伺っています。まずはこのテーマに目を向けられたきっかけや経緯から教えていただけますか。
田中:課題に目を向けたというよりは、強い当事者意識を持っていたという感覚です。背景として、私が大学生だった2000年代半ばはワーキングプアや派遣切りといった労働問題がさまざま生じ、また就職氷河期と言われた時代でもあり、生まれた年が原因で苦労しなければいけないことに不条理を感じていました。
また教育から労働への移行が断絶されている感覚も強くあり、「卒業後に突然シビアな世界に飛び込まなければいけない。そのための武器を手に入れる機会も希薄なのでは」と違和感を覚えていたんです。
そこから、矢面に立つ自分たちの世代の研究をしたいという思いで、若者の教育や労働を研究できる大学院に進学。教育系の博士課程に在籍しながら、労働政策にまつわる研究所で若者を対象とした研究を行った経験も、現在のキャリアにつながっていると思います。
――太野さんはいかがですか?
太野:私は出産・育児を機に教育に興味を持ったことが、大きなきっかけになっていると思います。
子供は、知識を与えられる前から「大きくなったら何になりたいか」と問われるんですよね。大学生ごろまでそういった“将来”に対する問いが繰り返される状況にはもちろん、高校に入ればその問いの最適解が「大学に行くこと」になり、高校卒業後に就職する人へのケアが不十分であることにも違和感がありました。
これらの実感を通して、キャリアや一人ひとりの自立につながる教育を施し、高校生も大学生もきちんと社会に送り出すような仕組みの構築に携われないかと考えるようになった、という経緯があります。
――転職時に、お二人がそれぞれ感じていた課題や違和感を解決する場として、パーソルキャリアを選ばれたのはなぜですか?
太野:ベネッセi-キャリア(ベネッセホールディングスとパーソルキャリアの合弁企業)を中心に、学生や企業、大学への支援事業を行っていることが入社の決め手です。「“まなぶ”と“はたらく”をつなぐ」事業の実績があるこの会社でなら、当時自身で描いていた雇用課題にまつわる企画構想を実現できるのではという思いで、リファラル採用のお誘いを受けることにしました。
田中:私は研究所の任期を終えた後に民間企業に就職したのですが、市場と近い距離にある広告業界で「いかに利益を上げるか」にコミットして働いている自分に違和感を覚えていました。そこで、山積する社会課題に対してアプローチできる企業、中でも自分が苦労してきた経験から“はたらくこと”を支えられる企業への転職を考え始めました。
その中でパーソルキャリアを選んだ決め手は、博士課程終了後の就職活動で苦労した際に「doda」のキャリアアドバイザーさんに寄り添っていただいた経験があったこと、また面接時に私が挑戦したいことを後押ししてくださる雰囲気を感じたことが、大きかったかなと思います。
「事業への貢献」と「課題追求」の両立を実現する
――現在は、デジタルテクノロジー統括部でどのような業務を担当されているのですか?
太野:私はHR Tech領域のデータサイエンティストとして、新規事業の事業性を判断するための調査やインタビューといったマーケティングリサーチ業務を担当しています。
田中:私はビジネス側で、携わっているのは採用支援強化サービス「dodaプラス」・ダイレクトソーシングサービス「doda Recruiters」と、法人顧客向け施策を推進する企画の領域です。前職でのデータ分析やデータビジュアライゼーションの経験を活かして、現在もBIの活用検討や実装などを中心に担当しています。
――元々取り組みたいと思っていた若年者の就労支援とご自身の担当業務をどのように両立されていますか?率直にお聞かせください。
太野:面接の時点で「技術や力量によっては、個人の関心領域に2割ほどの時間を割ける」とのお話もありましたが、やはり自分のやりたいことばかりに取り組める訳ではありません。担当業務であるマーケティングリサーチは前職で携わった経験があり、自身の興味範囲でもあるので、前向きに取り組みつつ、少しずつですが、転職時から描いていた若年者に向けた課題解決の企画なども並行して進め、両立できていると感じます。
田中:私はまだ入社して4ヶ月なので、まずは仕事に慣れてという段階ですが、現在担当しているデータ分析などは好きな業務なので、太野さんと同じく楽しく両立できている感覚です。事業部の方も非常に協力的で、ディスカッションしながら進められる環境なのもありがたいですね。
“若年者の雇用課題のこれから”を見据え、パーソルキャリアでできることとは?
――後半は、「若年者の雇用課題のこれから×パーソルキャリア」をテーマにお話をお聞かせください。現在お二人は若年者の雇用課題の中でもどのようなテーマに興味関心を持ち、どのようなことを実現していきたいとお考えですか?
太野:高校生がしっかりとしたキャリア教育を受けることなく、就職・進学していることが大きな問題だと思っています。学習指導要領の改定によってキャリア教育にある程度フォーカスがなされ、「キャリアパスポート」などの制度も生まれていますが、彼らの自信を育めるだけのリアリティはまだないのではという印象です。
一人ひとりが視野を広げ、ものごとを異なる視点で捉えられる状態を実現する、つまり「リフレーミング」を行うためには、キャリア教育に人材サービス企業が提供できることがたくさんあるのではと考えています。
田中:例えば理系の大学院や専門高校などでは、学校と企業がつながってキャリア教育をきちんと提供した上で社会に送り出す、ということができているケースもありますからね。両者をつなぐ第三者の立場として、パーソルキャリアが入ることができたら面白いかもしれません。
――キャリア教育によって「自信を育む」ために、具体的にどのような手法や施策が必要だと思われますか?
太野:一つの有効な手段だと考えているのは、「振り返り」を教えることです。前職で探究学習をテーマとした実証研究を行ったことがあり、生徒が作文を書く「振り返り」を通じて成長していく様子を肌で感じました。
総合評価や第三者評価を獲得するという意味でも非常に重要な手法ではありますが、訓練をしなければ人は振り返ることも、そこから次のステップに進むことも難しいものですから。一人ひとりの自信を育むことにつなげるには、この手法を「大学進学がすべて」という価値観から離れて教えることが必要なのではと思います。
また、現在はゲームを用いたリフレーミングなども登場しています。成功体験を擬似的に重ねることで、自信を構築したり取り戻したり。もしくはやりたいことを見つける、というのも一つの手段かもしれませんね。
――田中さんは、他に取り組みたいことなどはありますか?
田中:近年「できれば仕事をしたくない」と考える若者が増えていると言われます。*1
その背景には、多様なはたらき方が広まったというプラスの要因ももちろんあると思いますが、一方、ハード面で「労働環境がよくない」、ソフト面で「自分に向いている仕事がわからない」などのマイナス要因があることも考えられます。このことを踏まえ、まず労働環境の改善は常に頭に置いておきたいという思いが前提としてありますね。
また自分に向いている仕事は何かという問いに対しては、キャリアの棚卸を経験している転職者よりも1社に定着している方のほうが不安を抱えやすい傾向にあります。
パーソルキャリアが転職のご支援をさせていただいてきた知見やデータを活かし、またテクノロジーを用いて、現状転職を検討していない方のセルフキャリアドックをご支援するような仕組みができたらよいなと思っています。
――内省やリフレーミングのご支援と、受け入れる側の環境を整えること、この両軸が鍵になると。
田中:そうですね。もちろん、“はたらく”にまつわる価値観を無理に変える必要はありません。必ずしも「自立してキャリアを描きなさい」というのではなく、「失敗しても大丈夫」「やりたい時に好きなことをやればいい」とメッセージできる存在になっていければよいなと思います。
――素敵なお話をありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)
太野 英恵 Hanae Futono
デジタルテクノロジー統括部 事業開発部 HR-technologyグループ リードデータアナリスト
大学卒業後、メーカーやWebサイト運営会社等数社にてマーケティング及びデータ分析、新規事業企画等を担当。出産後多くの方の支えでワーキングマザーとして勤務する中、教育とキャリア領域への関心を強め、前職では教育産業にて高校生向けデジタルツールの実証研究などに携わる。現在パーソルキャリアにて、テクノロジーを活用した新規事業開発部門にて企画及び調査を担当。 日本マーケティング学会会員、教育テスト研究センター(CRET)連携研究員にも名を連ねる。
田中 麻衣子 Maiko Tanaka
デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ リードストラテジスト
大学院卒業後、独立行政法人にて研究員として若年者雇用・キャリア形成に関して調査・研究。その後、コンサルティング会社に転職し、広告関係のコンサルタントを担当。2022年より現職。
※2022年7月現在の情報です。
*1:労働政策研究・研修機構発刊:大都市の若者の就業行動と意識の変容-「第5回若者のワークスタイル調査」から-