【doda×新規サービス デザイナー座談会 第2弾】 デザイン力を高めるために、こんな取り組みしています!

doda x 新規サービス デザイナー座談会 第2弾 参加者の集合写真

今期UXデザイン部に、dodaなどの既存サービスと新規サービスを担うすべての「デザイナー」が集約されました。前回の記事では、それぞれの業務内容の実態やインハウスデザイナーが果たすべき役割について、リードクラスのデザイナーに語ってもらいました。

第2弾となる今回は、「デザイン力を高めるために取り組んでいるコト」について、現場デザイナーにインタビュー。これまで体系化されていなかったスキル向上に関する取り組みをどのように進めているのか――クリエイティブグループからは棟近と津留に、UXデザイン部からは髙井とUXリサーチャーの小林に聞きました!

※小林、棟近は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。

 

大切なのは、継続的にUI/UXを向上させていくための「仕組みづくり」と「スキルアップ」

 

――本日はよろしくお願いします!両部署のスキル向上のための取り組みについて、それぞれ伺っていきたいと思います。まずは既存サービスを担うクリエイティブグループから、技術的な課題をお聞かせください。

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ リードデザイナー 棟近 直紀の写真

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ リードデザイナー 棟近 直紀

棟近:私が「doda Recruiters」を担当する中で感じていた課題は、UI/UXを向上させていく取り組みを継続的に行っていくことの難しさです。

まず2年前から doda Recruiters の画面や機能要件などUIデザインを大きく刷新するプロジェクトがあったのですが、この方針決定や設計は制作会社様にお願いしていました。やがてその外部の方と入れ替わりで私がアサインされたのですが、UIデザインの詳細な設計資料などが残されておらず、社内に知見も溜まっていない状態で……リニューアルが終わった後、UI改善をどうやって継続していくか、方針が中々定まりませんでした。

また、顧客インタビューを実施してニーズを吸い上げていく中で、顧客要望は高いもののプロジェクトで追っているKPIなど短期的な指標で評価し切れないUIデザインの改善に対して、優先度高くエンジニアのリソースを充てることが難しかったり、Reactで開発されている仕組み上デザイナー自身では容易に改修をすることができなかったりと、UIデザインを「育てる」環境が十分でないことへの懸念もありましたね

 

津留:私は棟近さんとは別のプロジェクトにアサインされていますが、いろいろな施策の中で同じように「なんとなく上手くいかないな」という感覚を持っていました。というのも、事業会社の中でデザイナーが少数派であることも手伝って、何をするにもまずはノンデザイナーの方々に対して「デザイナーとは何か」を自分たちの言葉やデザイン力で説明し、信頼してもらうことが必要なんですよね。だからこそ、まずは自分たちが力をつけてから話の場に立とう、という思いがあり、棟近さんのおっしゃった課題に対しての取り組みが始まりました。

 

――異なるプロジェクトに参画されるお二人に共通の課題感があったということですが、そこから具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

棟近:まずは土台づくりとして、私は三つの取り組みを行いました。

一つ目は、デザインの統制を図るためにUIデザインのガイドラインとコンポーネント集を作ること。画面ごとに同じ意味でも違う見た目の要素ができてしまったり、重複してパーツを作ることで効率が下がってしまったりするのを防ぐため、使えるパーツを全て集めてデザインルールを作り、一覧化しました。デザイナーに限らずディレクター、エンジニアも、この一覧にあるコンポーネントを使いながら新しいものを作ったり改修したりすることで、世界観の統一と生産性の向上ができたかなと思っています。

ここでデザインについての共通言語ができたので、続いて二つ目にデザインスプリントを開発に導入しました。機能要件やワイヤーフレーム、デザインラフなどの作成を、全員でガイドラインを見ながら行うことで、手戻りなく良いデザインを作れるような体制になっています。

そして三つ目が、顧客ペルソナ像の作成です。先述したリニューアルの際に作られたペルソナ像が作成から2年程経ち、実際の顧客像とギャップが生まれてきていました。またペルソナ像もざっくりした属性設定のみで作りこまれていなかったため、企画や顧客対応部署の方々の協力を得て、5パターンの新しいペルソナ像を作成しました。ペルソナに近しいお客様の数や構成比も調べてもらい、パターンごとにインタビューを行って課題を集めたり、ペルソナに基づくカスタマージャーニーマップの再作成をしたりと、取り組みが広がっているところです。

 

――「スキルアップを目指す」の一歩手前で、そのために必要な仕組みづくりから始められたのですね。この取り組みをベースに、部署全体として行われていることはありますか?

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ デザイナー 津留 拓也の写真

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ デザイナー 津留 拓也

津留:クリエイティブグループに所属する10名強のメンバーが、それぞれの分野で思ったことや学んだことをまとめて、共有会や勉強会などを主催しています。例えば、ある会社のウェブサイトを作るという架空の課題と期日が設定され、やりたい人が任意で集まる勉強会もありました。ワイヤーフレーム、デザイン作成から作ったもののプレゼンまでを各自が一通り体験し、その中で皆が現場で感じている疑問や課題感を共有し合えたんですよね。こういった総合力をつけるための取り組みは、立場や雇用形態に関係なく「ちょっとやってみよう」と自由に、フランクに行われています。

 

棟近:あとは今年から実施している取り組みに「UIデザイン道場」というものがあります。これはUI/UXの5段階フレームワークに基づいて、コンセプト設計から表層デザインまでを一貫して体験するワークショップです。既存のアプリの使用感やストアレビューから皆で課題を探り出し、深掘りしてもう一度オリジナルで作るといったワークに取り組みます。自社サービスだけに携わっていると、デザインの表現手法や解決法において視野が狭くなってしまうので、他社のサービスを取り上げているのが特徴ですね。

 

――今年は新卒メンバーも入られたということですが、若手育成についてはどのように行われていますか。

津留:育成のプログラムとして、体系的に整っているかというとまだ途上ではありますが、総合力や推進力をつけてもらうことに重きを置いています。もちろん、導入時のフォロー体制はしっかりと用意しておりますが、やはりこちらから「これをやってください」とお願いするより、自分で考えて進めていく力を身に着けて欲しいと考えています。そのために、架空の課題を設定したり、定期的にフィードバックを行ったりはしつつも、基本的には自由に取り組んでもらい、自ら課題を見つけてもらうようにしています。

 

棟近:その中で、新卒メンバーのフォローアップや部としてのデザイン力向上のために、全ての制作物に対して「クリエイティブチェック」を行っています。「企画の意図をきちんと理解しているか」「課題やゴールを整理できているか」「dodaのブランディング視点を持っているか」「見る側の視点への配慮は十分か」など50くらいの項目を設けて、成果物に対するダブルチェックをします。これを習慣的に行うことで、チェックをする側もされる側もスキルを向上させていこうと取り組んでいるところです。

 

チームで連携して価値発揮するからこそ、互いを知ることが欠かせない

 

――お待たせいたしました。続いて、新規サービスを担当するUXデザイン部のお二人にもお話を伺います。まずは課題感から教えていただけますか?

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 デザイン第1グループ リードデザイナー 髙井 良美の写真

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 デザイン第1グループ リードデザイナー 髙井 良美

髙井:UXデザイン部には現在UI/UXデザイナーとUXリサーチャー、サービスデザイナーの三職種が所属しているのですが、従来の UI/UX デザイナーだけの組織とは異なり、部として扱う領域が広くなって職種の細分化が進んだことで、キャリア形成が複雑になっているという課題がありました。特に自分が目指すべきロールモデルを見つけてキャリアを選択していくことが難しく、自分が次にどのようなスキルを身につけるべきか、悩みを抱える方が多くなっていたんですよね。

 

――その課題を改善するために、どのような取り組みをされているのでしょうか。

髙井:メンバー全員に協力してもらいスキルマップを作成しました。内容としては、一般的に定義されているUXデザインの指標から、私たちの組織に合うものを12個ピックアップしていて、UXデザインを体系的に理解できるようなものになっています

これを導入したことで、自分の現在のスキル感や市場価値を正しく理解したり、目指すべきロールモデルやスキルを補うべき分野を知ったりできるようになりました。さらにメンバーのスキル感がわかることで、「この分野はまだ誰も手をつけていないから、挑戦してみよう」などと自分が価値を発揮できる部分を見つけることにもつながるのかなと思っています。

また、このスキルマップを作成するにあたり、各指標について調べる担当を皆で分担したことによって、UXデザインという比較的新しい分野について、一人ひとりがさらに理解を深めることができました。今後、誰かにその領域でフィードバックを行う際などに、より深い理解をもとに責任を持ってチェックができるようになると期待しています。

 

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ ディレクター 小林 広祐の写真

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ ディレクター 小林 広祐

小林:UXリサーチの領域からは、スキルマップの取り組みの一角として勉強会を主催しています。この勉強会に参加していただくことで、マップ上でスキルが上がり、リサーチの業務にも一部挑戦していただけるような仕組みになっているんです。実際に業務でインタビューなどを行わないとしても、スキルや知見を身につけていただくだけでデザインの改修などが進めやすくなるので、この勉強会を通してUXリサーチを普及していけたら嬉しいですね。

 

――UXデザインに限らず、リサーチも含む幅広い領域に対して、一人ひとりの現在地を可視化するとともに、皆さんが学べる場も用意されているのですね。

髙井:そうですね。一人で全てを担当する訳ではなく、チームで連携して動くことが多いので、お互いを知ることを大切にしてきました。UIの勉強会にも、リサーチャーやサービスデザイナーの方々が任意で参加してくださったりしていますね。

 

――ありがとうございます。両部署のお話をそれぞれ伺ってきましたが、さまざまな取り組みをされてきた中で、うまくいかなかったものなどがあれば率直にお聞かせください。

棟近:デザインガイドラインの作成から派生して、UIのデザインコンセプトを作成しようとしたのですが……プロダクト自体のUI/UXの方針がまだ決まっていなかったり、当時は優先度を理解してもらうことが難しかったりしたために、実現まで漕ぎ着けられなかったことがありました。やはり津留さんのお話にあったように、自分たちの言葉やデザインに説得力を持たせて、信頼してもらうことが必要なので、まずはそこに注力しているところですね。

 

髙井:私たちの部署では、エンジニアの方とのコミュニケーションの部分でしょうか。エンジニアの皆さんが日常的に音声チャットツールで会話をされているということで、ぜひ交流をしようと私たちデザイナーも同じツールに移動したことがあったのですが、結果的に移動しただけではうまくコミュニケーションがとれなかったんですよね(笑)。まずは先に仲良くなって信頼関係を築こう、と皆で思い至った経験でした。

 

デザイン統括内のコミュニケーション活性化で、知見共有や協力体制の強化を目指す

 

――前半でお互いの部署のことを知れたところで、ここからは「パーソルキャリアで働くデザイナーに求められるもの」をテーマに皆さんのお話を伺っていければと思います。スキルやマインドなどの面で、特に大切にされていることなどがあれば教えてください。

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ リードデザイナー 棟近 直紀の写真

棟近:各サービスや組織によってUI/UXデザインという概念の捉え方や取り組み方がさまざまなので、私たちはただデザインをするだけではなくて、いろいろな知識を身につけながら幅広い領域で柔軟に対応していく必要があるなと感じます

 

津留:そうですね。私が前職でWeb制作会社にいた時は、作る部分に重きが置かれていましたが、事業会社だと特に「何でも屋」的な立ち回りを求められることが多いなと感じます。違う職種の方に向けて説明したり通訳したりといった調整関連も大切になりますし、また一分野に尖って「ここだけしかやりたくないです」となるよりは、「これもできます」「これも興味あります」というタイプの方が楽しめるだろうという感覚です

また自分自身やデザイナーという職種を信頼してもらうためにも、ものを作れることは大前提で、それをデザイナーでない方々にもきちんと説明できる力やコミュニケーション面のスキルも求められるかなと思います

 

――お客様に価値提供をするという観点からはいかがですか?

棟近:OKR(Objectives and Key Results)の概念をもとにゴールを捉え、「デザイナーの視点からどうやって “はたらくを楽しむ” というビジョンを実現していくのか」という道筋や自分のやるべきことを考えていくスキルが求められるのではないでしょうか。

広告媒体は、性質上toBとtoCの両方の視点が必要になりますが、やはりKPIだけを追っていると法人顧客様・個人ユーザー様どちらかの視点が抜け落ちがちなものです。デザイナーはせっかく包括的に関われる立場なので、「誰に対してどのような価値を提供すべきか」を見極め、それを踏まえて自分の価値発揮やキャリアアップを考えていくことが重要なのかなと思います

 

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 デザイン第1グループ リードデザイナー 髙井 良美の写真


髙井:私も同じような印象ですね。また新規サービス側は特にユーザー体験価値の向上を重視していて、プロジェクトを計画通りに進めれば成功に辿り着ける訳ではありません。デザインを作り込むことよりは、検証のためにラフデザインを素早く回し、要件が曖昧で仮説が立てづらい中でユーザー体験を重視した正解を見つけていく必要があると思っています。

 

小林:おっしゃる通り、新規サービスでは要件が明確になっていない状態も多いように感じます。

UXリサーチチームでは、明確になっていない状態でもご相談をお受けしますと案内しており、相談を受ける中から本質的な課題を探すことが大切だと考えています

それはリサーチャーに限らず、デザイナーにもおそらく共通するもので、「その課題を捉えた上でどのような調査をするか、どのようなデザインをするか」が鍵になるのかなと感じています。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、皆さんの今後の展望をお聞かせください。

棟近:doda側はUI/UXの専門的な知見を持つ人が少ないので、デザイナーやエンジニア、さらにはディレクターも巻き込んだ勉強会をやっていきたいなと思います。そういった取り組みを通して、UI/UXの視点をしっかりと取り込んでプロジェクトを推進していけるようになると嬉しいです。

 

カスタマー企画統括部  ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ デザイナー 津留 拓也の写真


津留:私も同じ思いですね。また違う部署の方々のお話を聞く機会はあまりなく、これまで新規事業開発の皆さんに対して勝手に華やかなイメージを持っていましたが、この座談会を通して、同じようなことで悩み頑張っていると分かったのが良かったと感じています。今後も、ぜひ職種や部署を問わずにお話しするこういった機会を増やしていけたらいいなと思います。

 

髙井:今までは横串の組織がなかったので、社内のどの部署に何人のデザイナーがいるのかも正直把握しきれていなかったのですが、この組織がまとまっていくことで、知見が一箇所に集まり、分からないところも互いに聞きやすくなって良いなと感じます。あとは日頃から交流していくことで、プロジェクトでの協力体制も築いていきたいです。

 

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ ディレクター 小林 広祐の写真
小林:今リサーチグループで主催している勉強会は、主に新規事業向けのサービスづくり組織メンバーが一定のリサーチスキルを身につけられるような取り組みとして行っています。

 今回、クリエイティブグループと一緒になったことで、リサーチャーとしても個人としても、UI/UXを考えるために必要なリサーチスキルの普及をして、全社的な貢献ができればいいのかなと思いました。

 

――素敵なお話をありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

 

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ リードデザイナー 棟近 直紀の写真

棟近 直紀 Naoki Munechika

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ リードデザイナー

2017年パーソルキャリア入社。「an」のプロモーションコンテンツ、Webサイト/アプリのデザイン制作やUI改修プロジェクトを経験し、現在は「doda Recruiters」開発プロジェクト、社内MAツール「マテリア」のUI刷新プロジェクトにUIデザイナーとして参画中。現在は退職。

カスタマー企画統括部  ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ デザイナー 津留 拓也の写真

津留 拓也 Hiroya Tsuru

カスタマー企画統括部 ブランドコミュニケーション部 クリエイティブグループ デザイナー

Web制作会社で受託制作を経験したのち、2019年にパーソルキャリア入社。現在は転職サービス「doda」に関わる制作業務を幅広く担当。(サイトのデザイン/コーディング、アプリUI、広報など)

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 デザイン第1グループ リードデザイナー 髙井 良美の写真

髙井 良美 Yoshimi Takai

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 デザイン第1グループ リードデザイナー

コミュニケーションデザインの受託制作会社を経て、事業会社でインハウスデザイナーとしてUI設計に従事。2020年に新規事業領域のデザイナーとしてパーソルキャリア入社。UXデザイン部にて後進育成や採用活動も行う。

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ ディレクター 小林 広祐の写真

小林 広祐 Kosuke Kobayashi

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ ディレクター

前職ではBtoBのマーケティング支援企業にて従事。2020年4月にパーソルキャリアに入社、サービス開発統括部 グロース部 マーケティンググループ(現:サービス企画統括部 サービス企画部 マーケティンググループ)にて従事。同年11月にUXデザイン部 UXリサーチグループへ転部。複数の新規事業サービスに携わる。現在は退職。

※2021年8月現在の情報です。