AIリテラシー向上を目指して――AI・機械学習の基礎講座がスタート

AI・機械学習 講師の矢野、参加者の竹鼻と花園の写真

2021年6月、事業側の営業企画を中心としたメンバーに向けて、AI・機械学習を学ぶ勉強会が開催されました。講座には30名以上の参加者が集い、データやデータベース、統計学といった背景知識から、機械学習の基礎・応用までを学び、早速業務に活かす新たな取り組みも生まれているといいます。

今回は、講師として取り組みを主導したデジタルテクノロジー統括部(以下、DT部)の矢野と、参加者であるエージェント企画統括部の竹鼻とdodaプラス事業部の花園にインタビュー。勉強会と今後に対する熱い思いを聞きました。

※矢野は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。

 

ナレッジ共有を通して、コミュニケーションや業務改善における “ビジネス×テクノロジー” を推進

 

――まずは今回勉強会を開催された背景から教えてください。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー 矢野 正途の写真

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー 矢野 正途

矢野:キーマンになったのは、花園さんです。もともと私がdodaプラス事業部と一緒になって進めている「機械学習プロジェクト」というものがあるのですが、この取り組みが事業部の中で広まっていく過程で、PA企画グループ(※)に異動されてきた花園さんが興味を持って声をかけてくださいました。

「どのような仕組みで動いているのか」というご質問をいただいたのですが、なかなか説明が難しいんですよね。一応どのようなモデルになっているかお答えしたものの、専門知識がないと理解は難しいでしょうし、かといって一人で調べていただくのも難しいはずです。

そこで「回答としては一旦この内容になってしまうけれど、もしよければお時間をとってご説明します」とお伝えして。花園さんからぜひ聞きたい!とお返事をいただき、せっかくなので他にも興味がある方がいればと周りに広めていったところから、この勉強会が始まりました。

(※)PA企画グループとは…dodaプラスサービスのプロジェクトエージェントの営業企画を担う部署

 

――花園さんの抱いた疑問がきっかけになったのですね。花園さんとしては、どのような思いでこのご質問をされたのでしょうか。

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ 花園 彩子の写真

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ 花園 彩子

花園: 正直、はじめは単純に興味があって聞いたというのが大きかったですね。

ただPA企画グループに異動してから、勉強としてさまざまなミーティングに参加する中で、どうしてもシステム側の方の話が理解できず上手くつっ込んでいけないことや、「裏側が分からないから、なぜやりたいことをシステムで実現できないのかも理解できない」という衝突が生まれることに、やりづらさを感じていて。背景にある事情が分かれば、もっと気持ちよくコミュニケーションが取れるんじゃないかな、という思いもありました。

矢野さんにせっかくお時間をとっていただけることになったので、せっかくなら私以外の皆も質問したいだろうなと、周囲にお声がけしました。

 

――ご質問を受けた矢野さんは、どのような印象を持たれましたか?

矢野:とてもいい機会だなと感じました。極端な話ではありますが、もし同じスキルを持っているのであれば、私たちよりも企画の方々のほうがいい仕事ができるはずで、私たちの仕事も必要なくなるんですよね。これは私たちにとっては悲しいけれど、会社や顧客のためにはより良いことだと思うので、これを契機に同じナレッジを持つ人を社内に増やしたいなと思ったというのが一つです。

また「顧客のために」という視点でさらに言うと、事業を成長させて顧客に喜んでいただくには、細かなPDCAを高速で回していくことが重要だと考えています。施策の“Check”の精度を高め、“Plan” “Do”の精度・スピードを上げるためには、企画の皆さんが私たちと同じレベル感で機械学習や統計のスキルを持つことに大きな意味があると思うので、ぜひ場を設けてご説明したいと感じました。

 

――竹鼻さんは、どのような経緯で勉強会に参加されたのでしょうか。

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ 竹鼻 祐樹の写真

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ 竹鼻 祐樹

竹鼻:私は、機械学習を業務の中で活用していきたいという思いから参加しました。

前職でビッグデータを活用したマーケティングコンサルに携わっていたのですが、パーソルキャリアに転職してきた時に「とても少ないサンプル数の中で、皆さんが経験則に基づいて話をされているな」という違和感を持っていました。

業務プロセスが複雑で、今月の売り上げ予測を報告するにも“おおよそ”でしか言えないですし、コロナ禍で市場の動向が変わり、経験則に基づく数字の感覚がいつまで正しいのかも分かりませんから、機械学習やテクノロジーを使ってきちんと集計した形で、適正な数値を営業感覚として出さなければいけないと思っていて。そのためにも、まずは「機械学習とはどういったものなのか」から話を聞いてみたい、という思いでした。

 

机上の学習に終始せず、実務での活用を意識したナレッジ共有で納得感を高める

 

――ここからは、具体的に勉強会の内容についておうかがいします。まずは概要からご紹介いただけますか?

矢野:まず講座を開講するにあたって、趣旨が大きく三つあります。

「AIや機械学習が重要だ」ということは誰もが分かっている状態ではありながら、特に統計などは一人で勉強するのはとても難しいと思うので、私たちの部署のノウハウを分かりやすくお伝えして、現場の方々が業務に活かせる状態を目指すことがまず一つです。知識を持つことで、お客様への支援の幅や深さが変わればいいなと個人的には思っています。

続いて、花園さんからのお話にもあった、テクノロジー部隊と企画や現場の方々の目線合わせが一つ。互いの知識や経験のレベル感を合わせて、対等でスムーズな議論ができる状態を目指しました。

そして三つ目は裏の目的ですが、私の所属するDT部に「こういうことをできませんか」とどんどん相談を持ちかけてもらえると私たちとしても嬉しいので、そのきっかけの一つになればいいなという思いもありました。

 

――ただ知識を得るだけでなく、さまざまな場面で今後につなげることを意識したのですね。

矢野:そうですね。具体的な講座内容としては90分×3回のカリキュラムを組みました。

皆さん「機械学習とは?」を一番知りたいのだとは思いますが、それを理解するにはまず統計の基礎を押さえる必要があると思ったので、1日目は「ビジネス統計」をテーマとして、データ分析と統計学の基礎をお伝えしました。機械学習は平たくいうと「統計の力を、機械の力で高めたもの」なので、この前提知識をベースに2日目、3日目で機械学習をより理解しやすくする狙いです。

機械学習基礎講座シラバスの画像

機械学習基礎講座シラバス

2日目は「機械学習やAIとは何か」「機械学習はなぜ・どのように発展してきたのか」「機械学習にはどのような種類があるのか」といった基礎編を、ワークも取り入れながら一緒に勉強しました。

最終日は応用編として、機械学習の肝となる「精度」についての知識をお伝えするとともに、実践としてDataRobotを使ったデモンストレーションをお見せし、講義を終了しました。

 

――今回、どのような方々が参加されたのですか?

矢野:集客を手伝ってくださった花園さんともご相談しながら、ターゲットは花園さんのように「興味や意欲はあるが、自分で取り組むのはなかなか難しく、きっかけを探している方」と設定して展開しました。

1日目 35名、2日目 32名、3日目 28名の方々にご参加いただいています。

 

花園:集客の際は、PA企画グループ全員とRA企画グループ(※1)・CA企画グループ(※2)の知り合いに声をかけたほか、営業職でも興味のありそうな方に広めてもらいました。参加者のメインは企画職です。

(※1)RA企画グループとは…法人営業の企画を担う部署
(※2)CA企画グループとは…dodaエージェントサービスのキャリアアドバイザーの営業企画を担う部署

90分×3回の講座なので、基本的に意欲の高い方々が参加されていると捉えています。初めのお声がけの段階で想像以上の人数から反応があり、矢野さんに「20名を超えてしまいそうですが大丈夫ですか」と確認しながらまとめていきました。やはり皆さん機会があればぜひ学びたいという意欲をお持ちだったのかなという印象です。

 

――機械学習というテーマを、幅広いバックグラウンドをもつ社員に向けて発信するのは難しかったのではと推測しています。伝える内容の難易度しては、どのくらいのレベルに照準を合わせたのでしょうか。

矢野:基本的には「“こういうことをやっているのね”とざっくり理解してもらえるくらいのレベル」を狙っていました。例えばビジネス統計の場合、平均・分散・偏差値や、回帰分析と決定木分析などの基礎中の基礎といった内容を、数式ではなく簡単な事例を用いてイメージで掴んでもらうような感覚です。事例も、社内の実例を使い始めると複雑な内容になってしまうので、基本的には私が簡単なものを作成してお伝えしています。

もちろん社内の実例も最後に共有しましたが、難しい内容も含まれているので、3日間で学んだことを総動員して理解してもらえたら、というところですね。

 

――理系の素養や前提知識がなくとも入り口に立てるよう工夫の凝らされた勉強会ですが、お二人は参加してみていかがでしたか?率直な思いをお聞かせください。

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ 花園 彩子の写真

花園:機械学習に触れたのはほぼ初めてでしたが、冒頭から「機械学習ってこんなもの、という概要を掴むための講座です」と頭出ししていただけたので、大前提としてとても聞きやすかったです。

また、裏側の仕組みを示していただけたので、「時間をかければ人でもやれることを機械が代替している」ということも理解しやすかったですし、実際の事例をもとに教えていただいたことで「何を学習させているのか」の構造を掴むことができました。

また受講前の段階では、竹鼻さんのように具体的に「機械学習を業務にこう活かしたい」というイメージまではできていませんでしたが、初日のお話を聞いてすぐに、自分が施策を考える際に欠かせない存在になるなと感じました。知識がもっと深まれば、「これを変えたい」と思った時の引き出しが増え、思考の幅も広がるだろうなとイメージできたのもよかったです。

 

――竹鼻さんはいかがですか?

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ 竹鼻 祐樹の写真

竹鼻:前職での経験から統計の基礎などはなんとなく理解しているものの、理系やエンジニアとしてのバックグラウンドがある訳ではない、というスタートラインでしたが、文系の方が聞いても理解できるよう噛み砕いてご説明いただけて、分かりやすかったなと感じました。平易な例えを用いながら「この事例の場合、どういう風に判断しますか?」とケーススタディーなどもやっていただいたので、納得感が抜群に高かったと思います。

印象に残っているのは、「分析はやってくれるけれど、それを人間がどう使うのかが大事」というメッセージを初回から最後までずっと伝えていただいたことですね。知識のインプットに終始するのではなく、「そこから何をどう読み取るのか」「ビジネスに活用するためにはどうするのか」という人間が脳みそをフル活用すべきところを強調していただけたので、講座の意図を受け取りやすかったなという印象です。

 

――矢野さんの思いが、お2人に伝わっていますね。他に参加者の声などあれば教えてください。

矢野:実は今日参加予定だった、PA企画グループの羽柴さんからもこんなコメントをもらっています。

※羽柴さんはお子さんの発熱により保育園お迎えのため欠席。

貴重な学びの機会を得られました。今回テーマは機械学習でしたが、それに限定せずシステムに業務側の要望をどう反映させるのか、の理解が一段深まったように思います。何をもって成功とするのかは、ビジネスサイドの理解が正しくないと間違った設定になると思いました。顧客理解や現場理解をアップデートし続けることを意識しようと思います。

 
こういった声をいただいたり、「外部であれば高いお金を払って学ぶような内容を、無料で研修していただいて嬉しかった」というコメントがあり、とても嬉しかったですね。

 

勉強会はあくまで手段の1つ――「文化醸成」への挑戦は続く

 

――矢野さんとしては、講師の立場から勉強会を振り返っていかがでしたか?良かったこと・得られたことや課題があれば教えてください。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー 矢野 正途の写真

矢野:目的の一つに「私の所属するDT部へ案件相談をいただく契機にしたい」がありましたが、今回をきっかけに実際に質問や相談が4,5件寄せられ、一緒に施策を進めていこうと動き出せたものもありました。やはり私たちの視点から解決すべき課題を見つけるのは難しく、どちらかというと解決を支援する立場になるので、今回事業側の方々に機械学習の基礎をお伝えしたことをきっかけに、「こういうことを解決したい」「こうやってテクノロジーを活用できないか」と主体的に考えてくださったのが、一番良かったです。

せっかくですので、仕組みや文化として会社に残していけるように、機械学習に限らず、講座自体を続けていきたいなと思います。

 

――課題についてはいかがですか?

矢野:課題は、時間です。今回設定した90分×3回という時間は、本格的に情報を伝えようと思うと全然時間が足りない一方、参加したかったけれど業務中に90分の時間を捻出できないという方がいたのも事実です。

今後は、「知識を一定のレベルまで高めたら、それ以上は専門的になりすぎて業務に活用できない」「忙しくて長時間の講座には参加できない」などの観点を踏まえながら、どこまでやるのが皆さんにとって一番いいのか、時間やコンテンツ、スケジュールの管理を考えていけたらいいなと思いました。

またもう少し広い視点では、こういったナレッジ共有の取り組みが今はあくまで「個人の取り組み」になってしまうので、組織的に私たちテクノロジー部隊のナレッジが自然と皆に伝わっていく仕組み、デザインを作っていきたいです。

 

――ありがとうございます。それでは最後に皆さんから、今回の経験を活かして今後チャレンジしていきたいことをお聞かせください。

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ 花園 彩子の写真

花園:まだ今は「学んで知識を得た」というところに留まっているので、今後企画職として施策を考えていく中で、業務へ還元していきたいと思っています。自分一人で見える範囲で解決しようとせず、「専門の人がデータを見た時に何が見えてくるのか」「手段としてどれくらい広がりが生まれるのか」にも目を向けながら考えていきたいです。

また今回の勉強会はとても面白かったですし、復習として習った内容を調べ直す中で自己学習の難しさを痛感し、改めて参加して良かったなと思っています。今後開催されることがあれば、ぜひ、もっとたくさんの社員に受講してもらえるよう積極的に関わっていきたいです。

 

――今回参加されてそれだけ価値を感じられたというのが素敵ですね。竹鼻さんからもお願いいたします。

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ 竹鼻 祐樹の写真

竹鼻:今回機械学習についてのナレッジを共有いただき、皆にとって「大変そうでこれまで誰も手をつけられなかったところ」に対するアプローチへの後押しになったと感じています。

私の部署では、転職希望者の方により良いサービスを提供できるようなコンテンツの一つに機械学習を取り入れていきたいと考えていて、すでに矢野さんともお話ししながら一緒に一歩進み始めたところです。ぜひ力をお借りしながら、顧客体験改善のために取り組んでいきたいと思います。

 

――この勉強会が単純なインプットの場ではなく、人や新たな企画など何かが動き出す起爆剤になっているように感じました。それでは、最後は矢野さんに締めていただければと思います。

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー 矢野 正途の写真

矢野:今回の勉強会はあくまで手段の一つで、最終的なゴールは文化醸成だと思っています。なので、このような取り組みをしっかり継続していきたいですし、「講座」という形でナレッジ展開をすることに限らず、より良いやり方や仕組みも整備していきたいと思っています。

今たくさんの協力者を得られているので、皆さんのお力を借りながらそういった文化を育て、「パーソルキャリアってビジネスにデータをどんどん活用しているよね」「データや統計のスキルが高いよね」と外にまで届く会社を作っていきたいです。

 

――素敵なお話をありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー 矢野 正途の写真



矢野 正途 Masato Yano

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ マネージャー

ITストレージのエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、アメリカ留学、経営コンサルファーム、事業会社を経て2019年8月にパーソルキャリア入社。経営コンサル時代はPOSデータ解析を通して主に大手ファストフードチェーン(日本・韓国市場)のマーケティング・価格戦略を支援。前職では英語&STEM(理系)教育の新規事業を推進。現在は今までに培ったIT知識とデータ分析スキル、業務推進力を武器に部署横断で既存事業グロースと新規ビジネス推進を担当。
現在は退職。

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ 竹鼻 祐樹の写真



竹鼻 祐樹 Yuki Takehana

エージェント企画統括部 CA企画部 カスタマー戦略グループ

購買データを活用した小売店、衣料品店向けマーケティングコンサルとして3年経験後、2015年5月に中途でパーソルキャリアへ入社。ITエンジニア専門のキャリアアドバイザーとして3年半求職者の転職支援に携わる。2018年10月よりCA企画グループに異動。基幹システムの刷新プロジェクトや業務BPRを主に担当。

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ 花園 彩子の写真



花園 彩子 Ayako Hanazono

企画統括部 業務企画部 PA企画グループ

2018年4月に新卒でパーソルキャリアへ入社。同年7月よりdodaプラス事業部のPAGEに配属。様々な業界・職種の採用支援に両手型エージェントとして携わり、2020年10月よりULに着任。キャリアチャレンジ制度を利用し、2021年4月よりPA企画グループへ異動。フロント経験を活かし主にPA業務のBPR施策を担当。

※2021年8月現在の情報です。