グループを越えてメンバーが同じ歩幅であるく――「HR Spanner」におけるUXリサーチャーの関わり方

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中途・新卒入社者の定着サポートツール「HR Spanner(エイチアールスパナー)」正式版が2021年8月2日より開始しました。「HR Spanner」は、doda求人広告を利用中の企業に無償で提供し、企業の人材採用のみならず、人材定着をも支援するサービスとなっています。

一部の顧客に提供していたβ版から正式版への開発にあたっては、ユーザー調査の知見を多いに生かしたものとなっています。企業の人材採用から定着までを一気通貫で支援できるように、ユーザー視点を取り入れながら開発した取り組みとは――ユーザー調査を担当したUXリサーチチームとの協業について聞きました。

 

※坂部は退職していますが、本人の同意を得て、掲載を継続しています。

プロジェクトの進むべき方向に迷った時に出会った、リサーチチームとの協業

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サービス企画統括部 サービスオーナー部 ゼネラルマネジャー 幕田 博之

――リサーチチームに声をかけた時のきっかけについて教えてください!

幕田:当時、β版のプロダクトをアップデートしていこうというタイミングで、何から手をつけようか、という状態でしたすでにβ版を利用されている顧客から声を聞くべきではないか?とは思っていました。

カスタマーサポート経由で顕在化したニーズやご意見などを拾っていたのですが、それを実装するだけだと何か違うのではないか、と。そこで上がっている声の中でも、やるべきこととやらないことの振り分けが必要ですし、何よりそもそも声として上がっていない、潜在的なニーズを掘りに行かないと価値発揮できないという思いが自分の中にはあったんですね。でも、どうやってそれを聞きに行けばいいかわからない。

そんな時に、UXリサーチチームのことを思い出して、「そういえばうちの会社にプロのリサーチャー集団がいた!」とお声がけした次第です。

 

徳田:その頃は、プロダクト改善を裏付けるデータが何もない状態で、仮説検証ができるように、定性情報を取りに行かなきゃと思っていました。

 

――なるほど。UXリサーチチームに声をかけた時、どんな期待を抱かれていましたか?

幕田:目の前で何をすべきかの指針を与えてくれるんだろうな、と思ってお声がけしました。サービスオーナーの姿勢としては恥ずかしいのですが...。でも、そこをさらけ出して、「坂部さんお願いします!」と思って尋ねました(笑)。

 

坂部:ありがとうございます!

「どういうふうにしたらいいでしょう?」とお声がけいただいたことで、プロジェクトの状況も具体的にわかりましたし、どの指標から優先順位をつけたらいいかわからない状況だと感じました。

僕の中には、インタビューするだけではなく、プロジェクトを適切に進めていきたいという思いがあって。そこが正しく伝わっていたんだと思ってご相談をお受けしました。スピード感も必要だったので、比較的早い段階でインタビューを実施し、それにフィードバックを貰うかたちで進めていくことにしました。

 

リサーチチームとの協業によって、チーム全体のレベル底上げに繋がった

――UXリサーチチームに相談してみてどうでしたか?

幕田:考え方とか深掘りの仕方とか、なるほど!と思う場面が多かったです。

悪い言い方すると、本を読めばわかる、オンラインで調べるとやり方が出てくる、みたいなことってあるじゃないですか。でも、そういったフレームワークってプロジェクトの中で使えるものになってないと意味ないと思いますリサーチチームと協業する中で、これまで存在を知っていたけど、現場で活用するとこうなるんだ、みたいなのが実践で見せてもらえた印象でしたね。

 

徳田:定性データを設計した上で取りに行く流れを「こうやってやるのか!」と学ばせてもらいました。自分は専門的なリサーチの知識はありませんでしたが、後半になってくると新しくインタビューしたい、と思ったらチーム内で独自で動けるようになっていましたね。

もっとレベルの深いインタビューはリサーチチームに依頼したほうが良いと思いますが、当時のプロジェクト状況に合ったインタビューを提案してくれました。

チーム内でリサーチを自走するきっかけに

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サービス企画統括部 サービス企画部  徳田 千尋


幕田:今徳田さんが話してくれたエピソードは、すごく良いものでした。リサーチチームから学んだ手法をベースに、チーム内である程度インタビュー設計をして自走できた、そこまでいけたのが本当に素晴らしいな、と思って。そのきっかけを与えてくれたという印象が強いです。

 

徳田:最近だと、リリース後にユーザーボイスを見ていく必要があるなと思っているですが、β版で行ったインタビューをベースに、質問項目としてこれをプラスしたい、みたいなちょっと一つ上に上がった段階でプロジェクトを見ていますね。

 

坂部:ありがとうございます!インタビューフローをただ渡すだけじゃなく、「こう話すといいですよ」とかもお伝えしましたね。

企画、開発の目線がユーザーを向くきっかけに

――色々リサーチチームとの取り組みがあるのですね!印象に残っている協業エピソードはありますか?

幕田:僕はやっぱりインタビューですね。坂部さんにモデレーターで入ってもらった時、同席しながら「インタビューはこうやってやるのか!」とわかったのが大きかったです。そしてインタビューの直後にあるラップアップの時間も印象的でしたね。30分ないしは1時間でモデレーター、同席者全員がお客様の反応を話したり考察を深めたり、ネクストアクションを考えたり...あの時間があったからこそ、全員の目線合わせができたと感じますし、価値ある時間だと思います。

 

坂部:エンジニアの方も積極的にインタビューを見たいって話していましたね。

 

幕田:そうなんです普段は開発やデザイン業務に集中することの多いエンジニアやデザイナーもインタビューに参加していましたね。あれもすごかった。

 

坂部:珍しいことだと思います。プロジェクト「全員」が自主的にリサーチを見よう、ってなっているのはほとんどないですね。

 

幕田:作り手も、ユーザーの声を直接聞けるインタビューに参加することを強くおススメしたいですね。インタビューをプロジェクトに共有した時に、自分たちも参加したい、っていう流れに自然になったのは本当に素晴らしいことだと思います。

 

リサーチチームの良さは、「企画者目線で寄り添って併走してくれる」ところ

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エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ プロデューサー 坂部 佑磨

幕田:リサーチチームは、僕たちと目線をちゃんと合わせてくれます。企画者目線になって一緒に考えてくれるというか。

インタビューだけやる、みたいな社内業務委託のようなスタンスでの関わりではなく、ちゃんと企画側と同じ目線になって、同じ視点を持って考えてくれるスタンスがすごく心強かったです。

 

坂部:こちらとしても、非常に協業しやすかったですね。こういうことを知りたい、こんなことを考えている、というのも共有いただいていたからこそ、プロジェクト状況を的確に把握して「じゃあまずユーザーのことを知りましょう」とトントン拍子に話を進められました。

 

――プロジェクトの進め方について、幕田さんが意識していることは何かありますか?

幕田:単純にわからないというのもありつつ「この進め方で合っていますか?」って随時聞いていました。今振り返ると、同じ目線になって欲しいからだったな、と思います。役割は異なりますが、変に縦割りにしたくなかった。同じ歩幅で歩きたかったからこそ、確認しつつ進めていましたね。

 

徳田:縦割りの関係性じゃなかったから、気軽に相談もしやすかったです。

企画側にいるとどうしても自分が聞きたいところに誘導してしまう危険性があると思いますが、リサーチチームに入ってもらうことで客観的な意見が拾えました。入ってもらうこと自体のメリットがあると思いますね。 

 

――リサーチチームとの関わりでよかった点や、こんな視点が得られた、などの気付きはありますか?

幕田:実利的な観点でいうと、お力添えいただけたことで製品版リリースというゴールまでの距離が短縮されたのが単純によかったですね。リサーチチームがプロジェクトにもし入っていなかったら、やるべきことが見えていない状況のままだったと思います。施策の優先度が付けやすくなったのと、お客様の声が拾える体制が作れるようになりました。

製品版はリサーチ結果ありきで作られているので、その土台になるファクトをたくさん集めてもらえたのが大きかったです。これは、リサーチチームが入ったからこそ得られた気付きなので、もしなかったら未だに迷っていたかもしれません。

 

坂部:製品版はリサーチ結果ありきで作られている、というのはリサーチチームとしても大変嬉しいです!

 

―ー最後に、今後どんな時に協業したいか、またリサーチチームに期待することがあれば教えてください!

幕田:これからも、基本相談ベースでお声がけすると思いますね。こういう方向にしたい、というものはありますが方向の妥当性や、ユーザーに還元できる価値かどうか、など正直読めないところもあります。リサーチチームの守備範囲を超えるのかもしれませんが、フラットに意見をもらったり、ブレストしたりしながら一緒にプロジェクトを進められたら嬉しいです!

 

徳田:今後、定量データが取れる検証環境にしていることもあって、定量データを用いた上で相談に行く流れになりそうです。リリース後はスクラム開発で進めたいと考えていて、優先順位付けを行うために必要になる分析方法の検討などでもご相談させていただきつつ、協業もしたいです。

 

坂部:そうですね。お二人ならきっと見せてくれると思っているんですが、ユーザーボイスや、HR Spannerで実際に取得したデータを一回机の上に全部出してもらいながらお話できるといいですね。今までのこともお話しながら関われたら非常に健全だと思っています。引き続きお願いします! 

――ありがとうございました!

 

幕田 プロフィール画像

幕田 博之 Hiroyuki Makuta

サービス企画統括部 サービスオーナー部 ゼネラルマネジャー

新卒で証券会社入社後、インターネット事業会社、流通系企業のデジタル戦略を担う子会社等でサービス企画、事業開発を経験後、2020年1月にパーソルキャリアに入社。2020年5月より、「HR Spanner」のサービスオーナー。

徳田 プロフィール画像

徳田 千尋 Chihiro Tokuda

サービス企画統括部 サービス企画部 サービス企画グループ

SEとしてキャリアをスタートし、結婚情報メディアでの企画職経験、アパレル企業へのCRMツール導入コンサルタント等の経験を経て2019年8月にパーソルキャリアに入社。

坂部 プロフィール画像

坂部 佑磨 Yuma Sakabe

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ プロデューサー

マーケティングリサーチ会社に勤めた後、IT企業にてECサイトのUXリサーチを担当し、複数のプロジェクトを経験し2020年にUXリサーチチームのリードディレクターとしてパーソルキャリアにジョイン。サービス開発統括部が関わるサービスのリサーチをすべて担当し、リーダーの役割も担い、複数のメンバーの育成も担う。デザインスプリントやワークショップなどの適切な手法を通じて、新規サービスの意思決定のためのデータ提供ができるチーム作りに取り組んでいる。現在は退職。

※2021年8月現在の情報です。