対面の安心感をどこでも提供できるように―― doda オンラインカウンセリング導入のウラガワ

alt

doda会員が安心して転職活動を行えるようにするために、実はコロナ禍以前から計画されていた、オンラインカウンセリングが昨年夏からスタートしました。doda会員からの満足度も高い一方で、その開発段階においてはさまざまな苦労があったようです。

今回はエージェント企画統括部 エージェント企画部 CA企画グループの味岡と、プロセス&システムデザイン部 エージェントプロセスデザイングループの古野にインタビュー。そのリアルな裏側を探ってみました。

完成した直後に方針が覆った衝撃のプロジェクト

――まずは、今回のプロジェクトがスタートすることになった背景からお話をいただけますか。

古野:これまでdodaのエージェントサービスにご登録いただいた方へ提供するキャリアカウンセリングは、基本的に対面か電話のいずれかで実施します。コロナ前までは、お仕事が忙しくて弊社のブースまで足を運べないということもあり、電話カウンセリングのニーズが高まっていました。しかし、電話カウンセリングは対面のカウンセリングと比較して時間が短く、転職希望者様様の顔を見ながらお話することができないことからも、転職希望者様様の本質的なニーズを理解して転職活動を前に進めることが難しいケースがありました。その背景から、何か対面に近い形でありながら、非対面でできるソリューションはないだろうということから、オンラインカウンセリングという手法を以前から検討していました。

alt

エージェントPSD部 リードコンサルタント 古野 順一

これは私が入社する以前、2019年5月頃から時間をかけて、ニーズがあるか、社内業務での棄損が発生しないかなどを検証するためのフィジビリを、味岡さんが中心となって推進していました。そして昨年の2月、私が入社した時にはすでにフィジビリは終わっていて、実際にプロジェクトがスタートするというタイミングにありました。

 

味岡:転職活動は、2、3カ月に渡って転職希望者様様とキャリアアドバイザー(以下、CA)が伴走していくわけですが、その中で気持ちの浮き沈みがあったり、最初に望んでいた転職先が変わっていくということもよくあります。なので、転職希望者様様とCAは何でも安心して話せる関係性であることを意識しています。

その最初の接点であるキャリアカウンセリングで、初めて会うCAに経歴やキャリアの考え方をすべてオープンに話せる方はそこまで多くありません。やはり緊張されている方も多いので、電話だけだとハードルが高かったり、本当に言いたかったことがきちんと伝えられなかったりというケースもあります。

alt

エージェント企画部 CA企画グループ 味岡 紗貴子

対面でお話することで、そのあたりのケアをしっかりと行うことも求められていましたが、弊社でキャリアカウンセリングを提供できる拠点が限られていたり、90分という長丁場であることから、対面で安心感を持つということを代替するプランとしてオンラインが出てきたということです。

古野:それで、4月頃にツール選定の目途が立ち、時を同じくして新型コロナウイルスの影響により、導入時期を急ぐようにと上から指示のもと、我々システムチームが一生懸命に頑張った結果、なんとか6月頃に完成させることができたのですね。ところが、その矢先、とある事情で確定していたツールから、Zoomへの変更のオーダーが来たので、びっくりでした。ツールが変更されるとシステムの人たちはとても大変で、またイチから考え直さなければなりません。なので、その頃は本当に死に物狂いで頑張って、なんとか7月末にリリースすることができました。

 

――なんと!! まさにちゃぶ台返しですね(笑)。最初選んだツールから、なぜZoomに変更となったのでしょうか。

古野:さまざまな機能的要件がある中で、当初選んでいたツールは我々の事業要求を柔軟に取り込んでいただけるということが大きなポイントになっていました。既存のソリューションではありますが、「この機能しかありません。ここまでしかできません」ではなく、適した機能を作ってもらえるような関係性にもありましたし、もちろん費用面でもきちんと比較をしたうえでそのツールに決定したという経緯があります。

味岡:もともとツール選定するにあたり、5つほどツールを比較しました。その中で、もっとも重視した選定ポイントが、“カウンセリングの日程調整が効率的に進められるかどうか”ということでした。1日に数百から数千件のカウンセリングを設定をしていますが、設定業務は外部のベンダーさんに依頼をしています。

なので、そちらが使っているシステムで、CAの日程が抑えられて、その瞬間に転職希望者様にオンラインカウンセリングの案内がスムーズにできるかということをポイントに考えていました。

古野:私たちとしては、転職希望者様の感情の変化も捉えられるように音声の品質にはこだわりたかったのですが、そのツールでは一部音声の品質に不安が残る部分など、さまざまな課題がありました。コロナの状況下ですぐに導入しようとなったときに、世の中的にもとても普及しているZoomに着眼し、変更することになりましたね。Zoomは音声通話の仕組みが特殊で、とても最適化された仕組みになっているので、品質評価が比較的高いということがありました。

 

――どれくらい準備されていた段階でZoomに変わったのでしょうか。

古野:ぶっちゃけ、、、すべて作り終わっていて、テストのフェーズでした(笑)。

作っていたものとしては、カウンセリングを予約する際に、カウンセリング日程調整担当が使うシステムから、そのツールで提供していたAPIを介してこちらのデータを連携します。転職希望者様の予約が完了すると、日程調整担当のシステムからAPIをコールして、APIから返ってくると、転職希望者様にメールを飛ばします。そしてライブ動画を呼び出すという仕組みを作ります。転職希望者様はメールに書いてあるURLをクリックするとリモート対話ができる画面が立ち上がり、CAは管理画面からその画面に接続し、双方のカウンセリングができるようになるという仕組みでした。

 

alt

――直前でツールの変更…古野さんとしては衝撃が大きかったのではないですか?

古野:僕は入社してはじめてのプロジェクトということもあり、「すごいな」と吹いていましたね。面白がっていました(笑)。大変なのは大変ですが、転職して数カ月の仕事ではパフォーマンスを出す必要があるので、ひっくり返って文句を言っている場合ではなかったです。そういうことよりは、面白い会社だなと思い、“またイチから考えるか…”という感覚でしたね。

 

――どのポイントで“この会社面白いな”と思ったのでしょうか。

古野:ネタになるという点で単純に面白いのはそうなんですけど(笑)、普通は開発で投資かけてからひっくり返すというのは、損失になるのでやらない判断ですよね。それでも品質などの観点からスピーディーに判断をして、即座に現場まで降りてくるという観点が面白いと感じました。やられる側はたまったもんじゃないと感じる人もいると思いますが、僕はどちらかと言うとワークというより、一緒に戦略を考えたりすることも好きだったので、そのスピード感も面白いなと感じましたね。

 

――入社して最初のプロジェクトがこんな感じで(笑)、先行きが不安になったりはしませんでしたか。

 古野:ITの世界では、よくあることですよ。それが1件目からそうなるとビックリするというだけで、ITあるあるではあったので、僕の場合はそれも面白がることができました。反対に、“パフォーマンスを見せるにはいい機会が来た”という考えもありますよね。内容的にも応用すればできることだったので、深刻な感じには捉えていませんでした。

“そのタスクが誰のものか”はとても小さなこと

――最終的には、作っていた構成から流用できるものはあったのでしょうか?Zoomによってできるようになったことを教えてください。

alt

古野:流用できるポイントはありませんでした。構成もまったく違うものになっていますし、作りをシンプルにしました。メールで到達という流れは一緒ですが、実装の仕方が違っているので、完全に別のものとして作りましたね。

カウンセリング予約をしたときに、メールにZoomのご案内を送ります。転職希望者様はその案内通りに進めていくと、Zoomのカウンセリング画面に移ります。Zoomから通常のライブ動画を開始するという形で始めます。

 

――お二人はどのように連携しながらプロジェクトを進めていかれたのですか。

味岡:私が主に担当していたのは、システムを作っていただいてからの現場との接続の部分や他部署との調整です。何よりもカウンセリングの中では、転職希望者様のご経歴など個人情報を扱うため、セキュリティ周りの調整を慎重に進めていました。

また、Zoomをどのように既存のカウンセリングフローに当てはめるのかという点について、古野さんとけっこう話をしました。Zoomにもオンラインミーティングの方法がいろいろとあるので、どうしたら転職希望者様が迷わずにアクセスできて、CA側もすぐに慣れて入ることができるのかということを話し、検討していきました。

 

――Zoomに変更した際に、CA的には疑問や不安に思う点などありませんでしたか。

味岡:Zoomだから、という理由で不安や疑問はそれほどありませんでした。そもそも社内でITツールを利用してミーティングを実施するということも、コロナ前はあまりありませんでした。そのため、キャリアアドバイザーが転職希望者様とのコミュニケーションをオンラインで取るということ自体のハードルがあると感じていました。

 

――導入後の普及状況はいかがですか。

味岡:まさに今も、絶賛取り組み中という感じですがオンラインカウンセリングの設定率、実施率や満足度などの数値を見たり、転職希望者様やキャリアアドバイザーにヒアリングをしたりする中で、課題を見つけて改善策を実行しています。

 

――味岡さんはどのようなかたちで、古野さんをサポートしていたのでしょうか。

味岡:導入開始まで時間が限られていたので、“あと、どれくらいで何をしなければならない”という計画は、古野さんと目線を合わせながら立てることができたと思います。また、古野さんは即レスをしてくれるので、分からないことをチャットすると、すぐに回答してくださったり、密に連携が取れたことがポイントだったと思います。

alt

古野:役割としては、味岡さんが全体のファシリテーターという感じで、僕はどうしてもシステム色が強いので、システム全体をリーディングしていました。今回のプロジェクトに関して言えば、僕も入社して初めてのプロジェクトで、味岡さんもプロジェクトにジョインするのが初めてという状況。僕はIT業界が長いのであまり緊張はありませんでしたが、味岡さんが一生懸命に動かれて課題を解決する姿を見ながら、あまりセクショナリズムを意識しないようにしました。

本当は、その人がやるべき仕事の領域はある程度あって、それをしっかりとやっていくべきですが、プロジェクトを成功させようと考えたときに、このメンバーであれば、みんなで相談し、ディスカッションしながら進めていくことがいいだろうと思いました。コミュニケーションの取り方や連携の仕方を意識して動いた記憶がありますね。要するに“一緒にやる”という感じでした。

味岡:古野さんから「お客さんはこうだよね」というご意見をいただくこともありました。転職希望者様やCAの視点でディスカッションができたのは、とてもありがたかったですし、前に進むきっかけになりました。

 

――他の企画では、企画と開発でタスクを譲り合うようなことがよくありますが、そういうことがなく進んだコツについては、終わってみてどのように感じますか。

古野:僕の部署はシステムをデザインするだけではなく、プロセスもデザインするという役割も担っていると自覚しています。ですから、僕たちの今の立ち位置は、ただシステムを作るだけではなく、事業の中のIT担当、すなわち目線は事業に向いています。事業を見ながら、それを実現させるための具体的なソリューションや手法を提供していくという役割ですね。その視点に立って、物事を考えていくと、“そのタスクが誰のものか”というのはとても小さなことです。目的ベースで動いていれば、そもそもその議論にはならないと思いますし、僕自身はそのように心がけています。

 

――直前で方針が変わったこと以外に、本プロジェクトで苦労した点はございますか。

古野:時間が限られている中で、本当に短期間で仕掛けを確定させなければならないということがありました。最初にやり方を決めていたからライトに進められたという話をしましたが、ライトに進めるための方式を短時間で一気に決めて、それを味岡さんたちと連携し、運用上でも問題がないことを確認し、すぐに走れる状態にすることが必要でした。最初がいちばんパワーをかけなければいけないところでしたね。

alt

味岡:私は正直に言うと、その期間の記憶があまりありません(笑)。最初に課題やタスクを洗い出しはするのですが、状況が刻一刻と変化していくため、柔軟に優先順位を組み替えながら、納期を意識して走り切るという感じでしたね。山場があるというよりは、ずっと大変だったという感じです。

今回のように転職希望者様のサービスの仕組みを一部変えるとなると、経営層の合意を取らなければならないことも多くあったので、事あるごとに時間を見つけて話をしに行くようにしていました。

 

――この日までにリリースという期限があったのですね。

味岡:はい。4月の時点で、7月末にリリースと決まっていました。他の会社を見渡しても、オンラインカウンセリングを初期段階で導入できているところが少なかったので、“いち早く転職希望者様により良い転職体験を”と考えたときに、半期である7月末が1つの納期として浮上してきました。

 

初のプロジェクトを通じて、この会社の面白さが増した

――このプロジェクトを通じて、改めて感じたことや仕事の醍醐味、やりがいなどがあったらお知らせください。

古野:先ほども少し触れましたが、プロセス&システムデザイン部(以下PSD部)という組織はプロセスとシステムをデザインする組織なので、要件を単純にシステム化すれば良いというものではありません。企画組織は経営方針をしっかりと汲み取り、戦略や戦術を立てることを精度高く実行する必要があります。僕たちは、それを最適なソリューションや手法で実現していくのがミッションだと思っています。

なので、状況に応じてやり方を提言することも求められますし、醍醐味で言うと、“THE・事業会社のIT担当”ということだと思います。僕はSIerと事業会社を経験したうえでこの会社に来ていますが、事業会社色の強いIT部門だと思っていますし、そこに楽しさを見つけることができます。このプロジェクトを通じて、そういう思いを実感しました。

事業会社のIT担当として仕事を進めるということは、必ずしも周りが条件や材料を提供してくれる環境とはいいきれなかったりします。ルールがあるわけではないので、個人がそういった自律的な意識を持って日々の仕事に取り組んでいないと、企画側も信用してはくれません。そういう意味では、最初のプロジェクトでこのようなワークができて、“やはり思った通りだな”と自信に繋がりました。

味岡:当社では、“はたらくを自分のものにする力を”というミッションに掲げていますが、それが転職支援を通じて実現するために、「転職希望者様から今も未来も選ばれ続けるサービスにしていく」ということが、CA企画の役割だと考えています。

今回のプロジェクトでは、前後の計画策定や仕組み作りから導入、さらに改善まで任せていただいているので、その点はありがたかったと思います。

alt

CA企画の役割と照らし合わせるとまだスタートラインに立ったくらいだと思っています。CAがうまく活用し、それによって転職希望者様に選んでいただける状態にするためには、「オンラインカウンセリング」に閉じず、カウンセリング全体や、カウンセリング前後のコミュニケーションの課題にも踏み込んでいきたいです。

 

――今後、チャレンジしたいことがあったら教えてください。

味岡:私自身、もともとCAからCA企画に異動したのも、属人的になりがちなカウンセリングを、どうしたら仕組みで解決できるかを、企画として考えたいと思ったからでした。カウンセリングは最初の接点であり、dodaを選んでもらえる要素のひとつだと思うので、さらにより良くしていくために頑張りたいと思います。

古野:オンラインカウンセリングはひとつの仕組みであって、僕の今後のチャレンジとしては、世の中の多くの人に使ってもらって喜んでもらえるサービスを作っていきたいと考えています。

この話を聞くとPSDはきらびやかに思うかもしれませんが、我々も含めた基幹システムに関わる部署は、重圧とやらなければならないタスク量は大きいので、まずはそれに真摯に向き合っていくことが重要です。そのうえで、みんなが働きやすくなるような仕組みやサービスを作り、転職希望者様のためになるサービスを作っていきたいと思います。社内と社外のみんながより良くなるような仕事がしたいですね。オンラインカウンセリング以外にもプロジェクトがありますが、そういったものを通じて実現できたら、僕の会社の中での役目が果たせると思います。

今回のプロジェクトがひと段落して改めて思うのは、この会社ではたらく面白さが増したように思えます。それは例えば、大きい会社の割に意思決定が早かったり、裁量をもってやらせてもらえることがわかりましたからね。このスピード感をもって僕自身も引き続き頑張りたいですね。

alt

――これまでにないチャレンジの中で企画、ITコンサル職の役割や携わる醍醐味を改めて理解できました。ありがとうございました!

(取材・文=伊藤秋廣(エーアイプロダクション))

alt

古野 順一 Junichi Furuno

エージェント企画統括部 エージェント プロセス&システムデザイン部 エージェント プロセスデザイングループ リードコンサルタント

六本木の飲食店に「住む」というブラック勤務を経験し、ふと我に返りIT業界にジョイン。その後Sierを8年ほど経験、稼働時間がとても高く、ふと我に返り「何が違うんだっけ?」と思ったがそのまま働くことにする。主にPG、インフラのエンジニア、PM、営業を経験し、ペット保険の事業会社にジョイン。4年半ほどシステム部門をリーディング。パーソルキャリアジョイン後は基幹システムのPMとして従事。

alt

味岡 紗貴子 Sakiko Ajioka

エージェント企画統括部 エージェント企画部 CA企画グループ

新卒でパーソルキャリアに入社し、3年間キャリアアドバイザーとして従事。その後キャリアチャレンジ制度を利用し、キャリアアドバイザー側の営業企画を担うCA企画へ異動。dodaエージェントサービスが、今も未来も転職希望者様から選ばれ続けるサービスにするための仕組みづくりに従事。

※2021年1月現在の情報です。