パーソルキャリアのITインフラを管理するIT基盤グループで、マネジャーとリードエンジニアによるディスカッションが始動。システムやガバナンスのあり方について課題認識を共有し合い、改善の方向性や手段を模索する取り組みが行われています。
どのような背景で取り組みが始まり、どのような連携や対話が進められているのか。IT基盤グループでマネジメントを担う月島と、リードエンジニアの青柳、野村に話を聞きました。
- 「プロダクトをよくしたい」共通の思いのもとに、課題を持ち寄る
- ゴールは厳しい統制ではなく「使う側がいかに使いやすいか」を考えた柔軟な対応
- 一人ひとりの知見を活かし、パーソルキャリア全体を牽引できる組織へ
※撮影時のみマスクを外しています。
「プロダクトをよくしたい」共通の思いのもとに、課題を持ち寄る
――まずは今回ディスカッションが行われるようになった背景から教えてください。
月島:2021年10月からIT基盤グループでマネジャーを務めるようになったのですが、その前後で現場の皆さん一人ひとりと対話をしていく中で、さまざまな課題が持ち上がっていました。例えば「もっとプロダクト・ユーザー目線に寄ったシステムのモニタリングや改善をすべき」「AWSがシステム監視ソフトウェアと連携できない」「データベースを可視化したい」「システムの担当者が明確でなく責任が宙に浮いているものを、すべてIT基盤で巻き取らざるを得なくなっている」などですね。
一つひとつレイヤーが異なる課題ではありますが、「プロダクトをよくしたい」という方向性は一緒なはず。そこでまずは連携して課題を共有・整理してみないか、という形でディスカッションが始まりました。
青柳:特に、一つひとつの課題に「誰がオーナーシップを持って取り組むか」は明確にしなければいけないと感じていました。「プログラム以外の “その他” のものはすべてIT基盤グループでよろしく」と依頼がきている状態だったんですよね。もちろん相談にのって一緒に考えていきますが、それぞれのプロダクト・事業が主導していく方が良いはずです。
改めて課題を出し合って状況を整理し、誰が手綱を握るのかを明らかにする必要性を、皆が共通して感じていたのだと思います。
――そのような課題が生まれた背景や要因について、どう捉えていらっしゃいますか。
野村:「doda」の内製化が始まるまでは、社内で扱うのは最上流工程のみで、企画を作り要件定義を行った後は、外部の方に開発から運用までお願いしていました。
「自分たちが担当としてシステムの面倒をみていく」という意識が芽生えづらいままに進んできた中、内製化が急速に進んだために、知見の蓄積がなされていないことやシステムの統制が取れていないこと、責任の所在が不明確なことの影響が出てきてしまったのだと思います。
内製化が進む過程で、最近のシステムや組織はしっかりと先のことまで考えて作られるようになっているので、過渡期だったのかなという印象ですね。
――さまざまな課題がある中で、どのような体制を作っていくことが理想だと思われますか?現場のお二人のお考えをそれぞれお聞かせください。
青柳:事業側の方々からどんな依頼があっても「大丈夫です、できます」と言える状況を作りたいんですよね。そしてそのためには、責任の所在を明確にした上でオーナーシップを持つ人が一度依頼を受け止め、そこから適材適所で振り分けていく体制をつくる必要があると思っています。
野村:パーソルキャリアの場合、守らなければいけない大切な個人情報がありますし、とはいえ事業スピードをしっかり担保していく必要もありますから、統制の舵取りが難しい点です。だからこそ、最低限守ってほしいルールを設けた上で「ルールから外れない範囲で自由に走ってもらう」という形をつくるのが望ましいのではと思います。
ただそういったルールをつくるためには、やはり青柳さんのおっしゃるように「誰がオーナーシップを持つのか」を明確にし、旗振り役を立てる必要がありますよね。旗を振って引っ張ってもらっている後ろで、私たちが最新の技術も使いながらやり方を考える、という連携ができればいいかなと思っています。
ゴールは厳しい統制ではなく「使う側がいかに使いやすいか」を考えた柔軟な対応
――ディスカッションの場では、どのような対話が進められているのでしょうか。
青柳:私は長く現場を見てきているので、現場の視点から課題を挙げたり、一つひとつの課題の解決方法を議論する中で「今のやり方を改善していくよりも、ベンダーさんをガラッと変えた方が早いのでは」などと意見を伝えたりしています。
野村:私からは「こういうことをやる必要があると思いますがどうですか」と話を持っていって、月島さんに旗振り役で立っていただけるよう提案していますね(笑)。
月島:10月にマネジャーになるまでは、やはりあくまでIT基盤グループは「隣の部署」だったので、これまで私には見えていなかった部分がありました。何度も対話をしていく中で、ようやく具体的な課題が幅広く見えるようになってきたかなと感じます。
野村さんがおっしゃるように、私が方向づけをしてお二人が後ろで考えてくださって、と役割分担がうまくいっているのかなという印象ですね。
――ディスカッションを進める中で大切にされている視点などがあれば教えてください。
青柳:ルールを固めてその通りに進めた方が楽で都合がよく、インフラ的な観点から理想に近づけられるというのはもちろんありますが……「どう実現するか」については、技術者なのだから腕前でなんとかすべきところだと思っています。そうではなく「使う側がいかに使いやすいか」「スピーディに使えるか」に価値をおく、ということは意識するようにしています。
野村:「このルールさえ守っていれば」というものを作って守ってもらえば楽ではありますが、そんな万能なルールをつくることなんてできないですからね。
皆さんよい技術者なので、きちんと話をすれば理解して実践してくださる方々です。なのでこちらとしても厳しいルールや仕組みを押し付けるのではなく、柔軟に、より良い方法を模索していきたいと思っています。
――今後、持ち寄った課題に対する改善の取り組みはどのように進めていこうとお考えですか?
月島:まずはレイヤーの異なるさまざまな課題を共有し方向づけができたので、「どうやって改善していくか」をこれから詰めていくことになります。
その中で、テーマごとでバラバラに対応するよりは一つの窓口があった方が、カウンターとなる開発チームの皆さんとしてもやりやすいと思うので、なんらかの箱を用意していければいいなと考えています。それがグループやチームになるのか、プロジェクトになるのかはわかりませんが、形にとらわれずに体制を整えていけたらと思いますね。
一人ひとりの知見を活かし、パーソルキャリア全体を牽引できる組織へ
――ここからは組織にフォーカスして伺います。皆さんの視点から、IT基盤グループの組織文化はどのように見えていますか?
青柳:個人商店ですね。それぞれに得意な領域があって、責任を持ってやっているからこそ、お互いに尊敬、尊重し合ってつながれている組織かなと思っています。
「その領域のことはその人に任せれば大丈夫だ」と思っていますし、これまでもずっと完璧にこなしてきてくれているので不安はないという感覚です。
野村:同感です。違う領域のことは全然知らないという訳ではないので、何かあったらお互いにフォローはし合いますが、「この人ならうまくやってくれるだろう」という思いが根底にありますね。
――グループとしての課題などがあれば教えてください。
青柳:メンバーの年齢層が高めになってきていることですね。30代後半〜40歳くらいのメンバーが中心なので、後進を育てていくことにも目を向けるべきタイミングかなと思います。
月島:先ほどの組織文化のお話とつながりますが、一人ひとりが責任を持ってやれている反面、個人商店になりすぎてしまっている部分はあるかもしれません。
もちろん個人によって進め方や考え方の違いはありますが、「組織としてこうなっていこう」という方向性について今後認識を合わせていくことで、シナジーが生まれたり、足りない部分が見えてくるはずです。今回のディスカッションのような機会も、グループでの認識合わせをして、スマートでより本質的な課題形成つなげていけたらと思っています。
――ありがとうございます。それでは最後に、今後挑戦したいことについてお聞かせください。
野村:今は基盤や運用、アプリ、データベース、ネットワーク……とさまざまな領域に関わっていて、“何屋” なのかがよくわからない状態です。中途半端にはならないよう、ここから数年で自分のキャリアがどこにつながるのか、どこにつなげたいのかを見つけ出していきたいと思います。
青柳:自分のキャリアパスをどうするというよりは、自分が持っている技術を広めていきたいと思っています。特にかつてデータベースの製品部門に携わっていた時に培われた「基本を忠実にやる」ということは、今後クラウド化が進む中で重要になってくるはずです。そういった経験にもとづく知見や考え方を後進に伝えていけたらと思います。
月島:今はグループとしてやや受身的に業務を進めている部分がありますが、今後はエンジニアとして、そしてパーソルキャリアの一員として、やりたいことを「私たちで責任を持ってやっていきます」と表現していきたいですね。さまざまな価値観や経験を持つメンバーともっとやりとりし、一人ひとりの知見を活かしながら、テクノロジー本部や会社全体を牽引していける組織を作っていきたいと思います。
――今回のディスカッションが、IT基盤グループとして事業を牽引していく第一歩になりそうですね。素敵なお話をありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=小野綾子)
月島 学 Manabu Tsukishima
インフラ基盤統括部 システム共通BITA部 AWS推進グループ マネジャー
PCメーカーに新卒入社。その後、SIerを経て、自動車流通企業にてインフラ組織のマネジメントを経験。2011年よりAWSを中心に自社とグループ会社のクラウド化の推進や、データセンターの撤廃にプロジェクトマネージャーとして従事。2019年、パーソルキャリアに入社。現在はAWSを活用したクラウド環境の整備、移行推進を担当している。
青柳 宗太郎 Sotaro Aoyagi
インフラ基盤統括部 システム共通BITA部 IT基盤グループ リードエンジニア
ソフトハウスに新卒入社。その後、Oracle製品部門でデータベースの基礎から現場まで経験。2012年にパーソルプロセス&テクノロジーに入社。パーソルキャリアのインフラ保守を経験後、マネージメントを経て、2019年にパーソルキャリアに転籍。現在はパーソルキャリアのデータベース基盤の運用改善を担当している。
野村 徹也 Tetsuya Nomura
インフラ基盤統括部 システム共通BITA部 IT基盤グループ リードエンジニア
金融系システム企業に新卒入社し、基幹システムの基盤系において運用・保守の担当や、運用部隊の立ち上げを経験。2018年、パーソルキャリアに入社。現在はオンプレ基盤の保守と基盤・運用系の施策推進を担当している。
※2022年2月現在の情報です。