プロダクト・エンジニア人事制度の中身を公開!――新制度設計のウラガワを人事に訊いてみた!

山﨑聡・三口聡之介

パーソルキャリアは2019年10月から、エンジニアをはじめとした専門人材に対する「プロダクト・エンジニア人事制度(以下PE人事制度)」を導入 しました。一般的な成果報酬型ではなく、エンジニアそれぞれのスキルや能力を反映させた報酬制度や、市場価値に合った処遇を享受できるようにするために――。そうした設計方針のもと、新制度の導入に踏み切りました。

これまでは営業職の社員が大半を占めていたパーソルキャリアにおいて、自分たちにフィットしていない人事制度で処遇されていたエンジニアたち専門職の苦労があったといいます。新しい人事制度とその背景について、人事本部 人事企画部 人事企画グループの山﨑聡と、エンジニア側の立場から新制度の詳細設計に加わった、現場エンジニアの評価者でもあるサービス開発統括部・エグゼクティブマネジャーの三口聡之介、二人に話を聞きました。

市場にフィットさせたい――新制度導入の背景と想い

——2019年10月より導入されたエンジニア向けの新しい人事制度(PE人事制度)について、まず、その導入目的を教えて下さい。

山﨑:パーソルキャリアでは現在、エンジニアなど専門人材の採用を加速させていこう、という方針が固められています。そこで、採用力の強化と、入社後の適正な待遇と、成長の後押しを目的に作られたのが、今回の新しい人事制度です。当社のMISSIONである「人々に“はたらく”を自分のものにする力を」を実現していく上で、前述の目的を達成するためにはどのような人事制度を導入すれば良いのかということを、ゼロベースで議論し設計しました。

人事本部 人事企画部 人事企画グループ 山﨑聡

▲人事本部 人事企画部 人事企画グループ 山﨑聡

——ゼロから作られた制度なんですね。今回の対象者はエンジニアだけなんですか?

山﨑:いえ、当社でプロダクトに関わる人材のうち、特に仕事の性質が営業職等の他職種と大きく異なり、かつ報酬水準が当時の市場水準と大きく乖離していた5職種を対象にしています。

スライド①

——制度はどのような考え方で作られたんですか?

山﨑:実現したいことは大きく2つです。「入社から一貫して、市場価値に合った処遇を提供し続けること」と、「スキル・能力の開発を後押しする仕掛けとなること」。これらを実現するために、どのような等級・評価・報酬制度を設計すれば良いか議論し、設計しました。結果として、現行制度とは大きく異なるものになりました。

スライド②

——すいぶん大きく変わったんですね。詳しく教えて下さい!

山﨑:はい、説明しますね。まず、今回の制度変更にあたり、大きく意識したのは、報酬制度を設けるにあたっての市場水準です。報酬水準を職種ごとに設定し、かつ外部市場水準と合わせにいきました。これにより、特にエンジニアについては、全体的に以前より報酬水準が引き上げられています。

——内部だけで決めるのではなくて、外部環境も加味したんですね。

山﨑:そうです。そして次に大きく意識したことが、個人の市場価値を測るものさしとして、スキル・能力の高さを報酬に結び付けやすくしたことです。

1つ目として、主に「スキル・能力」を重点的に評価する一方で、それを発揮した結果である「行動」・「成果」も併せて評価する総合評価としました。エンジニアという仕事は成果そのものを測定することが難しいので、以前の制度のように成果だけで評価することはしないという考えもあって、総合評価としています。

2つ目として、報酬のうち会社の業績に連動する部分であった賞与を廃止し、半期年俸制としています。そうすることで、よりご自身の市場価値が見えやすくなることを狙いました。

スライド③

山﨑:また下の「各等級における人材像と労働時間管理」のスライドにある通り、スキル・能力のレベルに合わせて5つの等級を設定しました。そして、スキル・能力の高さを測る基準として、職種ごとに等級定義(各グレードにおいて、どのようなスキルや能力が求められるか)を作成しました。

スライド④

山﨑:最後に、メンバーと同様に、管理職者も評価サイクルを半期に1回 としました。管理職者に対しても、スキル・能力の成長をリアルタイムに処遇に反映できることを目的にしています。

——「スキル・能力の開発」を促すにあたっては、どういった制度を設けたのでしょうか?

山﨑:こちらは大きく2つ設けたものがあります。まず、評価にあたって、チャレンジングな目標設定を必須としました。チャレンジングな目標を達成いただく過程で、スキル・能力の成長が後押しされるという考えです。パーソルキャリアでは、全社員が半期ごとに自分の上長と面談し、「その半年間の目標」を設定します。そこで、ご自身にとってチャレンジングな目標を設定いただきます。そのチャレンジに対する達成度が報酬に反映されるという仕組みです。

スライド⑤

山﨑:つまり、より良い評価を得るためには「今期は何にチャレンジし、そのためには何をすれば良いのか」ということを上長と会話しながら具体化していかなければなりません。「チャレンジングな課題を解決することで、スキル・能力は伸びていく」というパーソルキャリアの認識を打ち出していくための仕組みですね。

そして、もう1つ、一部の等級の社員に裁量労働制・固定時間外労働手当制を導入しました。これは、スキル・能力を開発した結果、早く仕事を切り上げられるようになることが社員にとってのインセンティブになるようにすること、労働時間と報酬の概念を切り離すことを意図しています。

新制度により解消された「不公平感」

——エンジニア向けの制度づくりには、各部門の現場責任者のみなさま が参加したと伺いました。様々な企業を見てこられ、今は現場でエンジニアの育成も行っている三口さんは、かつての評価制度にどのような印象を抱いていたのでしょうか?

三口:これまでの評価制度には「不公平感」がありました。エンジニアのなかには、自分の評価に納得がいかず、モヤモヤしていた人も多かったと思うんです。

——「不公平感」というと、具体的にどのようなものなんですか?

三口:まず、関わるプロジェクトによってエンジニア自身の評価が左右されてしまうことです。そもそもエンジニアは、アサインされたプロジェクトに携わらなくてはなりませんよね。

サービス企画開発本部 サービス開発統括部 エグゼクティブマネジャー 三口聡之介

▲サービス企画開発本部 サービス開発統括部 エグゼクティブマネジャー 三口聡之介

三口:だけど、案件の内容によって、上手くいくものとそうでないものが存在するわけで……。割り振られたプロジェクトの成果は、エンジニア1人のスキルや努力だけではコントロールできない部分だったりします。このように、エンジニアの評価が、プロジェクトの結果によってのみ決まってしまうというのはおかしな話だと思うんです。

これが、新制度導入によって、「スキル」を評価の軸に据えることで、この不公平感は解消されていくだろうと思っています。

——プロジェクト自体の出来不出来が、エンジニアの評価や報酬にまで反映されてしまうというのは、確かに納得がいかないメンバーもいるかもしれません。

三口:そうなんです。加えて、従来の「賞与2ヶ月分」という報酬制度がなくなり、半期年俸制になったことにも大きな意味があると思っています。そもそも、パーソルキャリアのこれまでの給与体系は、「残業代ありき」で考えられていたんです。忌憚のない言い方をすると、「生産性が低く、遅くまで仕事をしている社員のほうが、残業代が支払われるため給料が高くなる」という状態です。

——たしかに、それも不公平ですね。

今回、残業代も固定時間外労働手当としたことで、エンジニアが生産性を上げることによりコミットできる状況をつくれるようになりました。

不公平な点が、もう1つありました(笑)。「スキルは十分でも、管理職的な役割が苦手なエンジニアは昇格できない」という問題です。エンジニアのなかには、コミュニケーションを不得意とする人も少なくありません。メンバーとして非常に生産性の高い仕事をするだけでは、従来の評価制度では、どうしてもある一定レベルまでしか昇格できなかったんです。

今回、スキルに応じた明確な等級制度を設けたことで、彼らが正当な評価を受けられる仕組みができたことは、とても公平なことだと感じています。世の中の市場価値と照らし合わせて、「どれくらいのスキルを身につければ、どれくらい給与がもらえるのか」という指針が明瞭になりましたから。

——エンジニアにフィットした制度ができたことで、従来のさまざまな制度上の矛盾を改善することができた、と。

三口:そうです。パーソルキャリアという会社が、もともと営業職を中心に組織されていたという背景があるために、以前の評価制度は「総合職の営業」をベースにつくられていたんです。

山﨑聡・三口聡之介

三口:営業職は、「月にいくら売り上げることができたか」といった短期目標に照準を合わせて働きます。一方、エンジニアは、わかりやすい数値目標を設定することも難しいですし、なかなか結果が出ないような半年から1年間の中長期のプロジェクトに関わることも多い仕事です。両者を同じ制度で評価することは無茶な話で、キャリア設計の側面で言うなら「Will」「Can」「Must」を見失わないためにも、エンジニアにフィットする制度が必要だったんです。

山﨑:三口さんの言うとおり、従来の営業寄りの人事制度には無理があるという声は、社員からも上がってきていました。と同時に、トップからも、プロダクト内製化を進めていくにあたって、技術力のある人材の採用を強化するだけではなく、しっかり成長を後押しできるような環境をつくる必要がある、というメッセージが降りてきていたんです。

新制度のキーのひとつ「チャレンジングな目標設定」

――評価者である三口さんも、その不公平感に対して、声を上げていたんでしょうか?

三口:僕は、2年前に入社して以来一貫して、「エンジニア組織の強化とプロダクトの内製化」というミッションを担ってきました。しかし、今までの制度では優秀なエンジニアを採用するのは難しいと思っていて、折に触れて社内でも発信してきました。

制度の不満については、社員にも繰り返しヒアリングしてきましたし、代表取締役の峯尾に1on1で直訴したこともありました。パワーポイントでつくった大量の資料をもとに「ここが変だよパーソルキャリア」みたいなプレゼンをして(笑)。「今の報酬のままじゃ、優秀なエンジニアはうちには来ないし、部隊強化も難しいよ」と。

山﨑:経営層にも同様の危機感は広がっていたので、方向転換は早かったです。プロジェクトが動き出したのは2019年の2月だったんですが、新制度の導入は同年の10月と、当社ではこれ以上ないくらいの猛スピードで進んでいったんです。

山﨑聡・三口聡之介

――そうしてすすめられた制度導入ですが、その過程で、三口さんが最も注視していた点はどこなんでしょうか?

三口:エンジニアにとって給与というのは、ただの報酬ではなく、「自分の市場価値がどれくらいなのか」を正しく認識するための指標という側面もあります。ただ高い報酬を目指すだけでなく、「自分の市場価値をどう高めていくか」を考えながら、働く場所を選ばないといけないんです。

仮に報酬は低かったとしても、その企業で働くことによって市場価値が高まるのであれば、籍を置く価値はあると思います。ただ反対に、高い報酬をもらっていても、技術面の学びを得られず、スキルがまったく上がらなければ、それは自分の市場価値を落としてしまうことになる。そんな不均衡を解消できる制度になっていなければ、意味がないと考えていました。

――そして10月から新制度が走り出して、現場の反応はいかがですか?

山﨑:純粋に自分のスキルや能力が評価され給与につながるという点で、年俸制については好意的な声をいただいています。等級定義に関しても、従来より基準が明確になったことに対してもポジティブに受け取られているようです。

山﨑聡・三口聡之介

山﨑:ただ、一方で「チャレンジングな目標設定」の部分においては、これまでと評価の仕方がガラッと変わったことに対する不安の声も届いています。「チャレンジング」の度合いを、どのように評価されるのか?という懸念ですね。

三口:そうですね。従来は、設定した目標がどんなものであっても、それが達成できさえすれば「◎」という評価がされていました。しかし新しい制度では、その目標がハードルの低いものであったら、達成しても「◎」にはならないんですよ。「その目標では、全然チャレンジしてないよね?」と突っ込まれますし、場合によっては達成しても「△」や「×」といった評価をもらう可能性だってある。

そういう意味では、目標設定の段階でかなり苦戦することは確かなのですが、この新制度の醍醐味は「達成できるかできないかはわからないけれど、目線を少し高く持ち、そこに向けて努力する」というところにあるので。

山﨑:そこで「チャレンジングな目標であるかどうか」という評価の基準がマネジャーごとに差があったら、また不公平感が出てしまいます。そこについては三口さんにも協力してもらって、全員の目標を横並びに見るということを実施しました。管理職間で会議を開き、「この人の目標、ちょっとチャレンジングすぎない?」といった話し合いを繰り返し行いました。そこに関してはマネジャー陣を含め、人事として皆の目線を揃える努力は続けないといけないですね。

――三口さんのチームからの反応はどうですか?

三口:ずっと待たせていたということもあるので、自分のチームのメンバーからは好評ですね。ただ、まだ足りていないところもあるので、現場の声を聞きながら、今後も改善していきたいと思っています。

目指すのは、優秀なエンジニアに選ばれる組織づくり

――最後に、新制度を通して、パーソルキャリアのプロダクトやエンジニアの働き方を、今後どのように変えていきたいか、聞かせて下さい。

山﨑:私は、パーソルキャリアで働く社員が「自分が心の底からやりたい・解決したいと思えることを」「同じ志の仲間と実現し」「正当に評価される」――この3つの満足を叶えられるようにお手伝いしていきたいと思っています。その結果、社員が胸を張って仕事ができるような環境を作っていきたいと思っています。今回は「正当に評価される」ための枠組みをつくったので、次はどのように運用・改善していくかが重要だと思っています。同時に、今後は社員がやりたいことを仲間と実現するための制度設計に挑戦していきたいです。

三口:先ほどもお話ししましたが、なぜエンジニアにとってスキルや能力を磨くことが重要かというと、市場価値を高めるためなんです。「パーソルキャリアにいることで市場価値を高められる」、そうエンジニアに認められ、選んでもらえること。そのための土壌をつくるのが会社や上司の務めです。

山﨑聡・三口聡之介

三口:新制度は、エンジニアの評価システムや報酬を、まず「外部の市場水準と合わせる」ことが大きな目的でした。ようやく他社と同じだけの処遇を用意することができたので、これからは世の中で取り合いになっている優秀なエンジニアに、数ある企業からパーソルキャリアを選んでもらわないといけないんですよ。

――なるほど。三口さんから見た「優秀なエンジニア」とは、どのような資質を持っている人なのでしょう?

三口:そうですね――あくまでも主観ですが、一言でいうなら、「面倒くさがりである」ことでしょうか。面倒を見つけて、それを最適にシステム化し、長期的に業務を効率化できる人材です。どんな仕事も仕組みをつくればオートマチックに処理することはできますが、果たしてどの部分から取り掛かって、どのようなシステムにすれば最も効果を発揮するのか――それを自力で判断できるエンジニアこそ一流だと考えています。

山﨑さんが言ったとおり、「共に働く仲間とやりがいのある仕事をして、認められること」、それができていれば、多くのエンジニアに自然と選ばれる企業になれるはずです。そんな環境づくりを目指して、日々邁進していきたいと思っています。

(文=波多野友子/編集=ノオト/撮影=小野奈那子)

山﨑聡・三口聡之介

三口聡之介

三口聡之介 Sonosuke Mikuchi

サービス企画開発本部 サービス開発統括部 エグゼクティブマネジャー

京都大学在学中に、株式会社ガイアックスの設立に参画。その後、KLab株式会社で携帯アプリケーションの開発に従事したのち、楽天株式会社に入社し、プロデューサーとしてMyRakutenなどを担当した。2013年から株式会社百戦錬磨に参画、取締役に就任。2013年にとまれる株式会社を設立、代表取締役社長に就任した。その後、ベンチャー企業複数社を経て2018年4月からパーソルキャリア株式会社に入社。サービス開発統括部のエグゼクティブマネジャーを務めている。

山﨑聡

山﨑聡 Satoshi Yamazaki

人事本部 人事企画部 人事企画グループ

2011年より、食品メーカーにて研究・開発職として、新製品の研究開発や製造ラインの改善に従事。2017年より現職。主に各種人事制度・施策の企画・運用業務に従事。週に3回のラーメンが欠かせない。

※2020年1月現在の情報です。

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