人事施策「キャリア対話」の効果検証プロジェクトの紹介

こんにちは。パーソルキャリア株式会社でITコンサルタント職をしている倉持です。
入社以降、一貫して人事データの活用に取り組んでいます。
本記事では、人事施策の1つである「キャリア対話」の効果検証に取り組んだ事例を紹介させていただければと思います。

キャリア対話とは

パーソルキャリアでは、代表取締役社長の瀬野尾がコーポレートサイト等で発信している通り、一人ひとりが自分の可能性を信じ、主体的にキャリアを選び取れる社会の実現を目指しています。
※参考:https://www.persol-career.co.jp/mission_value/thoughts/senoo.html

その姿勢は社外へのメッセージにとどまらず、社内の人事施策にも反映されています。その一つが「キャリア対話」です。

キャリア対話は、従業員一人ひとりに専属のカウンセリング担当者が付き、3か月~1年ほどかけて複数回の対話を通じて従業員のキャリアオーナーシップ(個人が自分の「キャリア」に対して主体性(=オーナーシップ)を持って取り組む意識と行動)を支援する人事施策です。
キャリア対話では、キャリアオーナーシップを以下の3要素に分解し、独自のルーブリックで評価・支援を行います。

  • 現状理解:スキルや経験の棚卸し、強み・弱みの把握
  • 自己選択:目標や望む働き方の整理、自己決定
  • キャリアの積み重ね:目標実現に向けた必要経験や行動の積み重ね

プロジェクトの背景と目的

背景

人事本部では、従業員のキャリアオーナーシップ発揮を支援するために複数の施策に取り組んでいます。

その中で、先行研究や他社事例から「対話」に可能性を見出し、チームを組成してキャリア対話に取り組んでいました。

しかし、この取り組みが「本当に本人のキャリアオーナーシップ醸成に繋がっているのか?」「先行研究で期待されている効果と同等のものが得られているのか?」という問いに対し、実証するための手段(=測定し、効果検証する手段)がない状況でした。

それ故に、定量的なエビデンスを持ってキャリア対話の意義についてディスカッションすることが難しい状況となっていました。

目的

そこで、目的を以下のように設定し、本プロジェクトを始動しました。

  • キャリア対話が施策参加者のキャリアオーナーシップを促進し、行動変容に繋がっているかどうかを、データを取得することで定量的に明らかにし、キャリア対話の効果に関するエビデンスを創出すること。
  • 創出したエビデンスをもとに、キャリア対話の意義の確認、キャリアオーナーシップ醸成に向けたより良い施策とするためのキャリア対話の業務改善を進めていくこと。

実験計画(分析設計)

以下のように実験計画を立て、データを取得し、分析を行いました。

  • 施策対象者を期初にランダムに2群に分割:実験群(対話実施)と統制群(対話なし)。
  • 実験群:初回面談前(1時点目)・初回面談後(2時点目)・継続対話終了後(3時点目)の計3回アンケートを実施。
  • 統制群:実験群の平均支援期間(約9か月)に合わせ、事前・事後・9か月後の計3回アンケートを実施。
  • 初回面談(単発効果:1,2時点目の差分)と継続面談(継続効果:1,3時点目の差分)の2軸で検証。
  • 年齢や役職等の属性による影響を調整することができる「傾向スコアマッチング」という手法を用いて、「実験群の変化 − 統制群の変化」で介入効果を推定。
  • 統計的有意性の検定に加え、Cohen’s dという効果の大きさを示す統計指標を確認。
  • アンケートは、社内のキャリアオーナーシップ指標であるCOI:キャリアオーナーシップインジケータや、エンゲージメントなどに関する設問を設定し、リッカート法で回答を求める形式。

※個人情報の取り扱いなど社内のコンプライアンス部門からチェックを受けた上で実施しております。

分析結果(要点)

分析結果の総論としては、キャリア対話はキャリアオーナーシップをはじめ、エンゲージメントやキャリア開発行動など複数指標で有意な効果を確認することができました。

  • 単発効果:主に自己認識的側面に効果。
    例)自分の強み/弱みを理解しているか否かを問う設問にて、中程度の効果を観測。
  • 継続効果:主に行動的側面に効果。
    例)将来像に向けて学習等の行動をしているか否かを問う設問にて、中程度〜大きな効果を観測

その他にも、エンゲージメント関連の設問で高い効果を観測することができました。

考察

分析結果を、当プロジェクトチームでは以下のように考察しています。特に実験群において、当初の想定よりも大きな変化が観測され、さまざまな側面においてポジティブな効果があることが示唆されました。

  • 初回対話に参加することは、自己認識(自分のスキルや望む働き方の整理)を促し、施策参加者が自身を再評価する契機として機能している。
  • 継続的に対話を続けることは、目標を具体化し戦略を立てる力や実際の行動(スキル獲得や経験の積み重ね)にまで影響を及ぼしている。
  • キャリア対話は、単に自己理解を深めるだけでなく、管理職層が担ってきた中長期的なキャリア設計支援を高水準で補完しうる可能性がある。
  • エンゲージメント向上という副次的効果があり、人材定着・組織パフォーマンスに寄与する可能性が高い。

まとめ

今回の取り組みにより、キャリア対話はキャリアオーナーシップの促進および行動変容に有意な効果を示すことができ、当初の目的を達成することができました。

現在、プロジェクトを更に進化させ、効果検証データを用いて施策をデータドリブンに選定する取り組みなどに挑戦しています。

今後も人事の取り組みをデータの力でより高度化していけるように努めていきます!

※本取り組みは「一般社団法人日本キャリア・カウンセリング学会 第30回記念大会」にて発表させていただきました。本記事では社内向けにわかりやすい手法を適用し分析した結果を紹介しましたが、こちらではより厳密な手法で検証した結果を詳細に説明しておりますので、もしご興味がございましたらご覧いただけますと幸いです。
https://speakerdeck.com/techtekt/career-consulting-persol-career

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倉持裕太 Kuramochi Yuta

テクノロジー本部 ビジネスシステム統括部 コーポレートIT部 コーポレートPMグループ

2022年4月にパーソルキャリアへデータアナリスト職として新卒入社。一貫して人事領域のデータ活用に従事。心理統計学や因果推論に関する手法を用いた人事データ分析をはじめ、分析から得られた示唆をもとにした人事IT企画の立案・推進といったPM的な役割や、システム開発にも携わる。現在はサブマネジャーとして、IT投資計画や予算配分の検討、経営層を含む合意形成、チームマネジメントを担う。

※2026年2月現在の情報です。