パーソルイノベーション株式会社「omochi」ユニットでも「doda」の内製開発チームでも、若手エンジニアの目覚ましい活躍がサービス開発を支えています。その活躍の裏側には、若手エンジニアも教育担当もそれぞれどのような工夫や苦労があったのでしょうか。
今回はエンジニア育成をテーマに、特別座談会を実施。キャラクター診断でおすすめの仕事が見つかるバイト・インターン求人検索エンジン「omochi(※)」の開発責任者 土田氏と開発をリードする若手エンジニア 青山氏、そしてdodaアプリの開発エンジニアでチームをリードする福田と、新卒でバックエンドやアプリの開発を経験している万代(まんだい)に話を聞きました。
※撮影時のみマスクを外しています。
※omochiは2022年3月31日をもってサービス終了となりましたが、許可を得て掲載をしています。
サービス開発を支える、若手エンジニア中心の組織体制
――まずはomochiユニットから、サービス概要について教えてください。
土田:新規事業創出プログラムDrit発のサービスである「omochi」はアルバイトを中心とした求人検索サービスで、「キャラクター診断」の結果と統計情報をもとに、一人ひとりのユーザー様に最適な検索条件をご提案しています。
現在、若い世代の情報収集手段はSNSやGoogleでの検索が中心です。その習慣にマッチしたサービスをご提供し、学生をはじめとした若いユーザー様の「どうやって仕事を探したらいいのか」「検索してもやりたい仕事がヒットしない」といった悩みを解消することで、ユーザー様がご自身に合った仕事に出会え、さらに企業様としても意欲のある若い求職者と出会える、そんな世界観を目指しています。
――どのような体制で開発を進められているのでしょうか。
土田:ユニット全体の人数が11人、そのうち開発担当が約半数の5名と、小規模の組織で運営しています。開発体制としては、リードの立場に私が就いており、その下にフロントエンドとインフラを含めたバックエンドがそれぞれ2名ずつおります。うち1名は外部からパートナーさんとして来ていただいている方で、またデザイン領域については適宜外注をすることもありますが、基本は内製開発という形ですね。
私が開発をリードする立場ではありますが、主な役割は要件やスケジュールの管理、タスクマネジメント、イレギュラーが発生した場合の判断などに閉じるようにしています。状況に応じた実装の判断は、開発をしているメンバーの方が詳しいので、現場の皆さん一人ひとりの力を存分に発揮してもらいながら、よいものを作っていこうという体制で進めています。
――ありがとうございます。続いてdodaアプリ開発チームもお願いします。
福田:dodaアプリ開発は、転職サービス「doda」の提供範囲をサイトユーザー様のみでなくアプリを主に使われる若年層の転職希望者様にまで広げ、機会を最大化するべく始動しました。現在は「doda」サイトと機能的な差異はほとんどありませんが、今後は独自機能を開発し「アプリでしかできないこと」をやっていきたいなと思っています。
全体としては10名強ずつの2チームで運営しており、それぞれのチームに5〜6名のエンジニアがいます。フロントエンドがメインの方とバックエンドメインの方の比率は3:7くらいですね。
また年齢層としては30歳以下の若手が多く、一部経験の長いメンバーにサービス面・技術面の知見をフォローしていただきながら開発を進めています。
――それぞれ、使っている技術言語の特徴などがあれば教えてください。
土田:フロントエンド・バックエンドともにAWS上にサーバーを置いており、インフラもAWSを中心に使っています。ドメインやネットワーク、コンテナ管理なども、状況に応じてAWSのサービスを使い分ける形ですね。
フロントエンドの技術についてはRuby on Railsを使っていますが、今後「omochi」の方向性が明確になってきたタイミングで刷新し、ReactやVue.jsなどフロントエンド専用の言語に切り替えていきたいと思っています。バックエンドはメインのAPIをPythonとFastAPIで開発しています。バッチなど随時必要になる処理は開発者が得意な言語で開発を進めてもらっており、基本的にはPythonでの作りになっています。
福田:dodaアプリはサーバーサイド側のみAWSで構築されており、API自体はサイト側に揃え、Javaで書かれています。フロント側は、React Nativeを使って開発しています。
若手・リードそれぞれの立場から見る “組織文化”
――今回はリードエンジニアと若手エンジニアの皆さまにお集まりいただいています。それぞれの視点から、所属される組織の文化はどのように見えていますか?
青山:失敗を許容する文化があると思います。新卒や経験が浅めの頃となるとやはり失敗は怖いものですが、「失敗を責めるのではなく、そこから学びを得て次につなげる」という考え方のおかげで、若手もシステム面で提案をしたり新たな挑戦をしたりしやすくなっていると感じますね。
またメンバーの考え方が、基本的に土田さんの考え方と似ている印象です。スタートアップならではの事業方針転換などによって、現場でも柔軟な対応を求められることが多いものですが……そういった場面でも、土田さんの言葉で皆が状況を理解して納得し、同じ方向を向けている部分があるのかなと思います。
先日も、求人がユーザー様にどのくらいマッチしているかを示す「マッチ度」という指標の改善に取り組み始めた矢先に、方針転換で改善を手放さなければいけなくなったことがありました。
土田:現場のメンバーとしてはもう少しチャレンジしたいという思いがあったと思いますが、「廃止されてしまう訳ではなく、優先度が変わるだけ」と事情を噛み砕いて説明しました。思想が似ているので、きちんと状況や考えを伝えれば理解してもらえる――だからこそ言葉を尽くすことは普段から意識しています。
青山:お話を聞いて「まずは検索機能に注力し、ベースが整ったら次の段階でマッチ度をより良いものにしていこう」と皆が納得しましたし、目線が揃う機会だったのかなと振り返ります。
――dodaアプリ開発チームのお二人はいかがですか。
万代:基本的に自由にやらせてもらえるという土壌の上で、一人ひとりが「どうすべきか」を考えて実装に落とす文化があると思っています。
長く続いていて規模も大きい「doda」に対してアプリは比較的新しいものですし、「既存のブランドを活かしながらその中で新たなサービスを作る」という特殊な開発でもある。さらにターゲット層もサイトとは異なりますから、一人ひとりのエンジニアが方向性を模索し、特にターゲット層に近い若手が声を挙げていくことが大切になっているのかなと感じますね。
福田:確かに「doda」サイトとは異なる、アプリならではの風土があるかもしれませんね。サイト側では現在もシステム改善の取り組みが進められていますが、あまりに大きなシステムだからこそ一気に変えることは難しい部分があって。
一方アプリでは一度大きく作り変えるタイミングがあり、「綺麗なシステムを作るとはどういうことか」「チームの組成とは」といった根本から考え直して進めてきたので、自分たちで考え、決めたことを守っていこうという意識が強いのかなと思います。
若手エンジニア育成において大切なポイントとは?
――ここからは「エンジニア育成」をテーマに皆さまのお考えやご経験をお聞かせいただきたいと思います。まずは若手エンジニアの受け入れについて、どのような準備や工夫が必要だと思われますか?
土田:「omochi」はかつて私が一人でやっていたところからメンバーが参画してきてくれたのですが、当時は設計書やテスト仕様書など詳細な資料が全くなかったんです。新たに資料を作る選択肢も考えましたが、サービスの仕様や事業方針などが明確に定まり切っていないフェーズなので、先々で多くのメンテナンスコストがかかってしまうことが予想されます。
なので、まずはコードを読み解きながら各所にコメントを残したり、研修も、実際に手を動かしながら学んでもらえるよう、Issueの切り方を工夫しました。シンプルでわかりやすいIssueを作り、それを割り振ることで理解を深めてもらう、OJTのような形ですね。
福田:受け入れ側としてやって欲しいことや「こうなってもらえたらよいのでは」という像はありますが、やはり一番大切なのは本人の志向性に合う・合わないだと思います。なので、万代さんがアプリチームに配属になると知った入社2,3ヶ月前から、どのような方なのか、どんなことをしたいのか、などの情報を上司から仕入れていましたね。
また参画されてからは、万代さんに渡す案件について一度自分でも調査や設計を行い、「この辺りで詰まりそうだな」というポイントを押さえておいて。その後実際に案件を進めてもらう中で1on1をしながら、ここがわからないという疑問にすぐに回答が出せるように準備していました。
――育成の中で特に意識されている点があれば教えてください。
福田:「市場価値を高める」ことを意識しています。やはり歴史があり規模も大きなサービスなので、数々のdoda特有の開発事情や手法などがあるのですが、それに詳しくなることがゴールではないと思っていて。
「間違っていてもいいので自分でまずは答えを出してみること」「わからないことを明確にして情報をキャッチアップしにいけるようになること」の方が、万代さんの市場価値を高めるためにも大切なはずです。こちらから情報を与え続けて成長を妨げないようにとは考えていました。
あとはやはり育て方の合う・合わないはあると思うので、万代さんに合うやり方を見つけるためにも「どこで悩みやすいのか」「悩むと動けなくなるタイプか・なんとなくでも答えを出して壁打ちするタイプか」などを、1on1での対話から引き出すことは意識したかなと思いますね。
土田:特に意識しているのは、モチベーションの保ち方でしょうか。私ももともと開発をやっていたのでわかりますが、「上から降りてきた案件を、ただ言われた要件通りに黙々とこなすこと」にモチベーションを保って臨み続けるのは、非常に難しいと思うんですよね。
なので「どのような機能やシステムを作りたいのか」「omochiの枠にとらわれず、どのようなキャリアを歩んでいきたいのか」など一人ひとりの思いを1on1で聴きながら、なるべくやりたいことに近いものをお願いするようにしています。
――若手エンジニアのお二人としては、組織に参画し現場で活躍されるようになるまでに意識されたことなどはありますか?
青山:まずはタスクを振っていただきやすいように、あらかじめ自分から「ここをこうした方がよいですよね」と提案したり「自分がどの領域にモチベーションを持っているのか」を伝えたりすることを意識していました。
また基本的に人数が少ない組織なので、基礎的な開発力はもちろんのこと、自走できる力が重要になると思っていて。開発を進める中でわからないことがあれば、まずは自分で調べて解決に近づける力を身につけようと取り組んできたかなと思います。
万代:先ほど福田さんからお話がありましたが、私としても自分の市場価値を意識しています。プロダクト開発統括部には「ずっとこの会社にい続ける」と考えるよりは、どちらかというとこの会社をキャリアの中のワンステップと捉えている方が多くて。さらにそういった今後のキャリアを見据えて「自分の市場価値を高めるために、こういうことがやりたいです」と表現できる環境でもあるんですよね。
だからこそ、個としてどうしたいのか・どうなりたいのかを自分自身でしっかりと意識し、手を挙げてやりたい仕事を掴みにいくことが大切なのかなと思います。
――ありがとうございました。それでは最後に、皆さんが今後チャレンジしたいことをお聞かせください。
青山:「omochi」は3年目を迎え、PDCAをしっかりと回さなければいけないフェーズに入ってきているので、エンジニアでない方でも数字を追っていけるよう分析基盤を作りたいと思っています。
万代:これまでは「dodaの上にあるアプリ」でしたが、今後アプリ独自の機能を作っていく新たなフェーズに入ります。その中で、ただ手を動かすのでなく職種の役割を超えて、より上流で「アプリが目指すべきところ」から戦略を考えてものづくりができるエンジニアになっていきたいなと思います。
土田:ユーザー様に検索条件をご提案する中で、「omochiを信頼していれば絶対に大丈夫」と言っていただけるように。診断や統計情報に加え、今後は「マッチ度」の改善にも力を入れていきたいです。
福田:万代さんがおっしゃったように、独自機能の開発も含めてこれからが面白いフェーズだと思っています。今のエンジニア、スクラムマスターという立場もありますが、それにとどまらず企画・戦略・エンジニアリング・チーム運営など主要な要素をすべて自分が巻き取って進められるくらいに、領域を広げ、深めていきたいと思います。
――両サービスの今後が楽しみです。本日はありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=小野綾子)
土田 泰平 Taihei Tsuchida
パーソルイノベーション株式会社 インキュベーション統括部 インキュベーション推進1部 omochiユニット
前職では約100人規模のSIerにてプライム案件の受託開発を行い、開発工程を広く経験する。その後、2020年2月にパーソルキャリア株式会社に中途入社。現在は『omochi』のエンジニアのリーダーとして、プロダクトづくり全般に携わる。
青山 稜河 Ryoga Aoyama
パーソルイノベーション株式会社 インキュベーション統括部 インキュベーション推進1部 omochiユニット
岡山の企業で1年半の開発経験を積んだのち、2020年8月にパーソルイノベーションに入社。omochiのバックエンドエンジニアとして基盤設計から開発まで担当。現在も得意分野のAWSを駆使して、引き続きプロダクト改善に取り組んでいる。
福田 尚亮 Naoaki Fukuda
プロダクト開発統括部 第1開発部 dodaアプリ開発グループ リードエンジニア
2018年にパーソルキャリアに新卒入社。アルバイト求人情報サービス『an』や転職サイトサービス『doda』でプロジェクトマネージャーとして従事。 その後エンジニアとしてdodaアプリの刷新PJTに参画し、現在はdodaアプリ開発チームのスクラムマスター兼エンジニアとして、チーム運営プロダクトの改善に取り組んでいる。
万代 浩史 Hiroshi Mandai
プロダクト開発統括部 第1開発部 dodaアプリ開発グループ エンジニア
2020年にパーソルキャリアに新卒入社。dodaサイトのアーキテクトグループの中でサイト保守・インフラエンジニアの業務に携わる。 その後dodaアプリチームに参画し、現在はdodaアプリ開発チームのバックエンドエンジニアとして、アプリの新機能の開発やシステム改善に取り組んでいる。
※2022年1月現在の情報です。