リードコンサルタントが支える――エグゼクティブ領域のリテーナーサーチプロジェクト

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社長や役員クラスなどのエグゼクティブ・ハイキャリア層に向けた転職サービスの中でもニーズが高まっている手法の一つに「リテーナーサーチ」があります。パーソルキャリアのエグゼクティブ領域でもサービス拡充に向けて、リテーナーサーチサービスがスタートしました。サービスをITから支えるべく、今回Salesforceを活用し、新たなシステム構築を行い、社内のアソシエイトやコンサルタントの業務プロセスを理解しながらスピーディーに作り上げたといいます。

このプロジェクトを推進した、エージェント企画統括部 プロセス&システムデザイン部 リードコンサルタントの佐々木 翼に、システム構築の背景や目指す世界観についてインタビュー。その裏側には、ITコンサルタントとしてプロジェクトを推進することの醍醐味と、自身のあるべき姿に対する佐々木の熱い思いがありました。

エグゼクティブ・ハイキャリア層の方にとって「自分に合ったサービス」だと思うきっかけに――

――まずはリテーナーサーチの概要と、今回サービスとして導入することになった背景を教えてください。 

佐々木:リテーナーサーチは、社長や役員クラスなどのエグゼクティブ・ハイキャリア層の転職希望者様を対象にしたサービスで、過去当社にご登録いただいた転職希望者様だけでなく、まだ当社サービスをご利用いただいていない転職希望者様を当社のアソシエイトがお探しし、企業様に紹介するサービスです。

これまでのエグゼクティブエージェントサービスとの違いは、企業様から手数料をいただくタイミングです。これまでは成功報酬のみでしたが、リテーナーサーチを利用される場合には、リテーナーフィーとして成約時に着手金(基本料)をいただき、6ヶ月間で必ず転職希望者様をご紹介し、入社までサポートをさせていただきます。成約時には、成功報酬を再度お支払いいただきます。

このサービスがスタートした背景には、大きく2つあります。

1つは、グローバル化や技術革新などを背景に、優秀なリーダー・プロフェッショナル人材のニーズが高まっており、その採用手法のひとつとして、リテーナーサーチを検討している企業様からの相談が増えていたこと。

もう1つは、やはりエグゼクティブ・ハイキャリア層の方々は通常のエグゼクティブエージェントサービスでも、マッチした方を見つける難易度が高く、それらをカバーする手法としてリテーナーサーチが人材紹介・転職界隈で注目されており、市場規模の拡大も見込めるため、今回導入することになりました。

 

――今回佐々木さんは、そのリテーナーサーチを提供するためのシステムを担当されたということですね。サービスを始めるにあたり、システム上にはどのような課題があって、何から着手されたのでしょうか。

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エージェント プロセス&システムデザイン部 リードコンサルタント 佐々木 翼

佐々木:先ほどのお話の通り、リテーナーサーチでは「dodaにご登録いただいている転職希望者様」だけでなく、転職潜在層も含めたあらゆるところから企業様にマッチした方々をお探しします。そこで、そういったさまざまなところから集めた方の情報を保存しておくためのデータベースを新たに作る必要がある、というところからプロジェクトが始まりました。

ただ、データベースを含めたシステムすべてをスクラッチで作るには莫大な時間とお金がかかってしまうため、今回はSalesforceを活用することを選択しました。サービスインまでのスケジュールを考え、「転職希望者様の情報を保存でき、検索性とアプローチ履歴の管理機能を持たせる」という必要要件と、スピード感を重視した選択をしています。

スピーディーに現場実装まで進めなければならなかったので、構成自体はシンプルなものにしました。今回のプロジェクトでは、新たに登録いただく転職希望者様の情報を厳粛なセキュリティの中で保存できるDBと、当社で保有しているDBで同一の登録がないかどうか確認できる仕様にし、転職希望者様の管理およびこれまでの履歴がわかるように設計しました。

Salesforceにした背景は、本プロジェクトで検討している同時期に別部署でも契約を検討しており、包括契約によるコストダウンや、この先各領域との連携を鑑みるなど、総合的な判断によって決定しましたね。

 

――今回のシステム構築とサービス導入によって、どのような状態が実現されるのでしょうか。

佐々木:エグゼクティブ・ハイキャリア層の方にとっても、優秀なリーダー・プロフェッショナル人材が見つからなくて困っている企業様にとっても、このサービスを通じて出会い、企業や社会が変革されていくことができればと考えています。

またもう一つの課題として感じているのは、エグゼクティブ・ハイキャリア層の方々にとって、当社のエグゼクティブ領域(以下EAS事業)が扱うサービスを「自分向けのサービスである」と思ってもらえるようなイメージ変革をしなければいけない、と認識しています。当社のイメージは、やはりdodaの印象が強く、企業様によっては、ハイクラス層の採用もdodaにお任せいただくこともあり、明確にすみ分けされているわけではありません。

EAS事業として、エグゼクティブ・ハイキャリア層向けのサービス充実を図り、今回のプロジェクトが、その第一歩になればいいなと思いますね。

事業側で新たな景色を見るためのチャレンジ

――ここからは、佐々木さんご自身のご経験や思いを深掘りしていきたいと思います。まずは、どのような背景で入社されたのか教えてください。

佐々木:前職では13年ほどシステムエンジニアとしての業務を行っていました。リーダーやマネージャーとしての責務も経験し、一通りの業務を遂行できるようになった頃、その先のキャリアパスを考えた時に「管理職やより上級のプロジェクトマネージャーに進むよりも、事業側で別の世界を見てみたい」という思いが生まれ転職を決断しました。

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システム開発プロジェクトの企画側メンバー候補として当社の採用面談を受けたのですが、感じたのは「これまでのエンジニアのキャリアが活かせる」ことと、事業側の立場でプロジェクトコントロールをするという「新たなチャレンジ」があるということです。そういった自身のキャリアパスに適合した業務の魅力や、現場の生産性を上げるために推進している面白そうな取り組みの数々がきっかけになって、入社を決めました。

 

――キャリアが活かせそうな点があったとはいえ、これまでの13年間とは一転して事業側に飛び込まれた訳ですが、入社後のギャップや苦労などはありましたか?

佐々木:一番大きなギャップは、企画組織であるがゆえに決まった道筋ややり方がないことですね。

システム開発は、設計、開発、テスト……とフローが決まっていて、その流れに沿っていけば基本的に、やることが分かります。一方で企画側に行くと、企画を立ち上げて通して、実行するまでにどうするかを自分で組み立てなければいけません。とにかく自分が動かないと何も進まない、というところに一番苦労しました。

またシステム側と企画側では、用いる言葉など細かいところから見えている景色まで、噛み合わないところがあります。入社当時はシステム側のメンバーの話を聞いて、他の企画側メンバーへ噛み砕いて伝えるということを意識して行っていました。システム側組織でのフローや審議などがしっかりと固まっているのですが、一歩外側から見ると当時のシステム部門であるBITAはブラックボックスのように分厚い組織に思えてやりとりがしづらいな、という印象が当時はありましたね。

 

――入社されて5年が経過しましたが、当時感じていたやりづらさに変化はありましたか?

佐々木:BITA統括部の方針の一つとしてBITAが事業に融合していく、という方針があります。実際に融合が進んでいて、現在では企画段階など上流の工程から取り組みを一緒に進めるなど、距離感が縮まっている印象です。

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企画側もBITAに所属するメンバーも、上流から入らないとやりづらいですし、プロジェクト方針が決まった後にBITAが関わるのではシステム面でフォローすることができず、円滑に進みません。そうした課題を解消するために、システム部門も初めの段階からプロジェクトに入り込んで一緒に取り組んでいくということが、自然と形になったのだと思います。

テクノロジーとビジネスをつなぐ、架け橋になりたい

――入社された当時は、何を目指してどのような思いで取り組まれていたのでしょうか?

佐々木:企画側としては、システムやテクノロジーが分からないといけない訳ですが、私が入社した当初は企画側とBITAとが目線を合わせられておらず、話が噛み合わなくて困っていたようです。

そういった課題に対して、きちんと対話を成立させるためのポジションとして採用された、という認識もあったので、「両者をつなぐ架け橋になれるといいな」と当時から思っていましたね。

 

――佐々木さんは、さまざまなプロジェクトで責任の大きいことを任せられても、「なんとかしてくれる」方だと伺っています(笑)。架け橋になることを目指して歩んできた、これまでの取り組みを振り返っていかがですか。

佐々木:プロジェクト全体を余さず任せてもらえるような人であることを目指すべきかな、と意識してやってきたので、そう評価いただけているのであれば、ありがたいです。

個人的な解釈ではありますが、BITAの役割は「事業として実現したいことがある時に、IT目線でのソリューションの提供と、それによるプロジェクトの推進、マネジメントを貫徹する」ものだと認識しています。それを遂行していく中で、自ずとプロジェクトを受け持ってそれを完結する、というところを担う形になっていたのかなという風には思いますね。

 

――自分が認識する役割を全うして、周囲からもその役割として頼られているという点が素敵ですね。仕事をする中での、佐々木さんの哲学のようなものがあれば教えてください。

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佐々木:線引きをしない、ということですね。「ここまでは企画側でやってください」「これはBITAの管轄だけれど、これ以上はやりません」など、線引きをしてしまうと物事が前に進まなくなったり、上手くいかなくなったりしてしまうので、それは無くして。ビジネスや事業として目指すべきところを達成するために、どうするのが一番効率的なのか、という考え方を常に意識しています。

プロジェクトでは企画を担当される方もいれば、開発を担当される方もいます。様々な状況の方がいてプロジェクトが成り立っていますから、それらを束ねて完結させるために、BITAとして推進していく立場であることが重要なのかなと思います。

 

――プロジェクト全体のことを考え、線引きをせずに必要な役割を引き受けることは重要ですよね。そうした中でモチベーションになっている、業務における喜びなどはありますか?

佐々木:プロジェクトがサービスインするのが嬉しいというのは当然ありますが、個人的には「どうやってこれを組み立てようか」と、目的達成のための計画を練っている時に喜びを感じます。

計画通りに運ばない時も当然ありますし、その時々は大変ですが、どう工夫したら計画を軌道修正できるだろうか、などと考えている時が好きなのかもしれませんね。

 

――以前の取材でも感じていましたが、特にPSD部には、「計画通りに運ばない時も、どのように工夫して乗り越えるか」という点にやりがいを覚える方が多いのかもしれないですね。最後に、今後目指すところを教えてください。

佐々木:これまではプロジェクト主体でやってきましたが、若いメンバーも増えてきたので、チームメンバーのスキルの底上げにも力を入れていきたいですね。

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――ご自身の役割とあるべき姿をしっかりと見据えて歩んでこられた姿が印象的です。佐々木さんに学び、背中をみて育つメンバーが作る組織の今後が楽しみです。ありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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佐々木 翼 Tsubasa Sasaki

BITA統括部 エージェントプロセス&システムデザイン部 エージェントプロセスデザイングループ リードコンサルタント

前職ではシステムエンジニアとしてさまざまなプロジェクトを推進し、リーダーやマネージャーを兼任。2016年8月にパーソルキャリアに入社。企画部門で入社し、その後システム部門へ異動。現在はリードコンサルタントとして、dodaエージェントサービスで活用するシステムの機能開発や、エグゼクティブ領域など多岐にわたるプロジェクトに従事。

※2021年3月現在の情報です。