削減コストは2億超え――地道な積み重ねが効果を生んだRPA推進グループの現在地

パーソルキャリア RPA ITコンサルタント

RPAを活用した社内の業務効率化を推進する、BITA統括部テクノロジー企画部RPA推進グループ。プロジェクト開始以来4年超にわたって案件集めと期待に応える業務改善を積み重ねてきた結果、累計削減効果はすでに2億円に達したと言います。

今回は、そんなRPA推進グループの現在地と今後の展望について、現場で活躍するコンサルタントの鈴木、吉野に聞きました。

※撮影時のみマスクを外しています。

 

取り組みが着実に拡大してきたからこそ、足場を固め直す。「標準化」に奔走した2021年

――まずは、この一年でお二人が担当された役割について教えてください。

鈴木:私はビジネスアナリストとして、主に人事本部やコーポレート本部などバックオフィスを中心とした業務改善を行ってきました。

 

吉野:私の場合は、どちらかというとRPAの基盤の運用保守や、派遣で入ってくださっている開発スタッフさんのサポートがメインの役割です。2021年はそれに加えて鈴木さんと同様にビジネスアナリストの役割も担いながら、現在はタレントシェアリング事業部の業務改善を2案件ほど担当しております。

 

――2021年度を振り返って、印象的だった取り組みはありますか?

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 吉野 明

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 吉野 明

吉野:2021年は、これまで3年間一緒にやってきてくれた開発スタッフさんが全員契約満了のタイミングを迎え、新たなチームに入れ替わったという意味で節目の年でした。

RPA推進チームは小さなプロジェクトからスタートし、これまでとにかく「ロボを作る」ことに一生懸命になってきたのですが、いつの間にかここまで取り組みが大きくなって。気がつけば開発スタッフさんに依存する作り方になってしまっていたんです。

例えば、UiPath・WinActor・VBAツール の使い分けも開発スタッフさんによってさまざまですし、「とりあえず“動かす”ことを最優先」の作りもあれば「多様なイレギュラーを想定して頑丈な作りに(その分他人にはわかりづらい)」というものもある。その点で、引き継ぎには非常に苦労しました。

新たに2名入社したメンバーがいるので、このタイミングでしっかりと整理しようとルール作りを始めて、とにかく「標準化」に奔走した一年だったなと振り返ります。

 

鈴木:作り手の個性はもちろん、要件定義した人の個性や考え方も反映されるので、ブラックボックス化しやすいですよね。今ではそれを防ぐために、要件定義をした後にグループ内で「本当にこの要件で開発を進めていいか」を議論する場を設けるようになり、また今回標準化に着手できたことで、環境が整いつつあるのかなと思います。

 

――鈴木さんはいかがですか?

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 鈴木 浩平

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 鈴木 浩平

鈴木:これまでバックオフィスで27業務の改善を行ったのですが、中でも一部署の業務改善にとどまらず人事本部全体に横展開できたプロジェクトが印象に残っています。

人事本部全体の業務を見渡してみると、どの部署でも同じような業務や作業を行っていることがわかるんです。例えば、毎月定型メールを送らなければいけないなど、人によっては過去のメールをコピーしたり、メールサービスのテンプレート機能を使ったりしているのですが、社内の何千人に対して送信するとなると作業量が膨大になってしまいますよね。

そこで、人事管理システムから対象者のアドレスを出力し、相手によって本文の内容を微調整できる仕組みを構築。1,000通のメールを10分程度で送れるようになり、現在は人事本部全体で汎用的に活用いただけている状況です。

初めは一業務に対して要件を決めて仕組み化して……と段階を踏んでいましたが、経験を積む中で、ヒアリングをしながら「本当に困っているところはどこか」「この作業は他の部署でもやっていたな」とあたりがつけられるようになってきました。横展開できるかもしれないと仮説を立てた上で調査して進めていくことで、一つの仕組みを広範囲に広げていけるようになったなと実感しています。

 

本質的な課題を解決するために、“要望”の先へ一歩踏み込む丁寧なヒアリングを

 

――お二人がRPA推進の取り組みを進める中で、特に意識されていることなどがあれば教えてください。

 

吉野:現場の困りごとに着手するにあたっては、同じ社内の人間であっても相手は「お客様」であると言うことを意識しています。

私たちの仕事は、単に「ここを自動化したいんですね」と手を動かすだけでは十分ではないんです。鈴木さんから横展開のお話がありましたが、困っていることだけでなく背景にある事情や前後の業務まで一歩踏み込んで把握してはじめて、本質的な課題解決ができるのだと思っています。グループとして「こうしなさい」という指針がある訳ではありませんが、個人のポリシーとして話を聞くことは常に大切にしたいですね。

 

鈴木:現場からご相談をいただくときには、必ず業務の目的と前後の業務について聞くようにしています。「現在のこの業務や作業は、本来の業務目的を果たせているのか」「前後の作業も含めて自動化できる仕組みはないか」などまで、しっかり考えたいんですよね。

そのために必要なのは、やはり丁寧にヒアリングすること。そこではパーソルキャリアのバリューでもある「外向き」「自分ゴト化」を強く意識しています。自分が業務担当者になったつもりで究極に自分ゴト化し、改善内容を一緒になって検討していきたいですね。

 

――RPAがまだ社内に浸透していない頃にジョインされ、現場で2年半ほど取り組みを続けられてきた中で、皆さんの意識や理解度の変化を感じることはありますか?

パーソルキャリア RPA ITコンサルタント

 

鈴木:初めは半ば “押し売り” のような形で(笑)「この案件やらせてもらえませんか」と案件集めをしながら実績を作ってきたのですが、効果が出てきたことで現在は現場から「これもやってもらえませんか」とお声がけいただくようになりました。

 

吉野:そうですね。以前は、現場で業務にあたる皆さんにとって相談先は各事業部所属のBITAしかなかったのではと思いますが、「RPAというものがあるらしいからちょっと相談してみよう」と変わってきましたよね。市民権を得てきたというか(笑)。

 

鈴木:バックオフィスは専属のBITAがいなかったので、なおさらRPA推進グループが相談窓口になれているのかなという感覚です。

 

より早くRPAの価値を現場に届けるために、開発の標準化・効率化とローコード開発推進の両立を目指す

 

――後半はお二人の視点から、RPA推進の“今”と“これから”についてお聞かせください。現在手応えを感じられていること、維持していきたいことはありますか?

 

鈴木:RPA化・自動化と聞くとどうしても「工数削減」という印象が目立ってしまいますが、私たちは「業務を自動化することで、工数削減以外に何か付加価値をつけられないか」を意識して取り組んでいます。

例えば、システムの登録内容を手作業で更新する業務があり、その作業は現状1週間に1回行うのが限界だったとします。その作業をRPA化したことで、単に工数が減るだけでなく毎日更新できるようになれば、常にシステムの登録情報が最新化された状態を実現できますよね。こういった付加価値は、今後も意識してやっていきたいです。

 

吉野:維持していきたいのは、現場の皆さんがご自身で手を動かせるような仕組みづくりとサポートです。RPAの価値が伝わって繁盛しているのは嬉しいことですが、お待たせしてしまっている心苦しさもあるんですよね。

現在は、待ちきれない方は自分で作ってみませんか?ということで、ご自身が作ったものをテストで動かせる環境を用意しました。また部内のメンバーがグループ向けに「Power Platfrom勉強会」を行っているので、そういった動きと合わせてサポートしていけたらと思っています。

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鈴木:現場でのローコード開発を推進するためのツールとして、Power Automate for Desktop の活用方法を案内するガイドの作成も始めています。

「Power Automate for Desktopを使った簡単な構築は、このガイドに沿って進めてみてください。困った時はご相談にのります」「社内システムに関連する複雑なものについて、お問い合わせはこちらにどうぞ」など、振り分けて。できるところは皆さんでやっていただいて、手に負えないものに私たちで着手するような仕組みを作っていきたいですね。

 

――ありがとうございます。最後に、今後挑戦したいことをお聞かせいただいて締めたいと思います。

 

吉野:2021年は20件以上の案件に対応して投資も回収できており、非常に健全な運営ができていると思うので、この状態を今後も維持していきたいと思っています。

もう一つはAPIの利用です。RPAは「人がパソコン上で操作することをそのまま代替する」だけでなく、APIと連携すれば「画面操作をせずともデータを取ってくる・反映する」ということが可能になるんですよね。それも画面を操作するよりも断然速くできるので、クラウドシステムについては特にAPI連携をどんどん進めていきたいと思います。

 

鈴木:ローコード開発の推進は継続して行いながら、今後は「それぞれの案件でいかに要件漏れをなくせるか」がチャレンジになってくると思っています。

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現状どうしても要件漏れやパターンの洗い出し不足などが出てしまっており、それが後工程で発覚することで上流に戻って開発し直さなければいけない、など非効率的になってしまっているので改善が必要です。

PC作業を可視化できるタスクマイニングを導入するなどの方法を検討し、試験運用に向けて準備を進めているところなので、引き続き取り組んでいければと思います。

 

――素敵なお話をありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=服部健太郎)

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 鈴木 浩平

鈴木 浩平 Kohei Suzuki

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント

前職では保険・カード業界のBPO業務に約10年間従事し、社内の業務改善やツール開発などを経験。RPAなどのテクノロジーを活用したBPR・業務改善に惹かれ、2019年パーソルキャリアへ中途入社。人事領域を中心にバックオフィス業務のBPR・業務改善を担当。約2年半で27業務を改善し、削減時間は累計5,000時間を達成。

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント 吉野 明

 

吉野 明 Akira Yoshino

BITA統括部 テクノロジー企画部 RPA推進グループ コンサルタント

ベンチャー系SIerに約20年在籍し、客先でのシステム導入や業務改善を担当。2019年4月にパーソルキャリア入社後は、WinActor・UiPathといったRPAツールの開発サポート、運用保守全般を担当。

※2022年2月現在の情報です。