“職業能力の再開発、再教育”を意味する「リスキリング」。DXや第4次産業革命をはじめとする社会の変化に対応しながらより良い価値提供を実現するために、自社の人材に対して新たな知識や技術の習得を支援する取り組みとして、世界各国の企業が着手しはじめています。
こうした動きを背景に、サービス開発部ではエンジニアのリスキリングを支援する研修プログラムが新設されました。今回は、取り組みを主導するゼネラルマネジャーの鹿野と、マネジャーの佐藤にインタビュー。研修新設のきっかけからプログラム概要まで詳しく聞きました。
- 発揮すべきバリューと“事業会社のエンジニア”としての自覚を胸に、新たな知識や技術の獲得に挑戦
- 業務課題や事業の展望をベースに、3つの研修プログラムを新設
- エンジニアに必要なリスキリングとは。そして組織としてすべき後押しとは?
発揮すべきバリューと“事業会社のエンジニア”としての自覚を胸に、新たな知識や技術の獲得に挑戦
――まずは、サービス開発部の現在地からお聞かせください。
鹿野:2年ほど前に取材いただいた頃と比べてエンジニアの人数が大きく増え、現在約40名の組織になりました。toC / toBを問わずさまざまな新規サービス開発を行い、また継続して新卒の方々の受け入れもさせていただく中で、組織全体として “よりメンバーに活躍してもらえる土壌” をつくろうと育成に重きを置く段階に入っています。
今回新設した研修も、組織のさまざまな課題をベースにプログラムが組み立てられていますが、大きく捉えるとその土壌づくりの一貫として整備したものです。
――研修の概要を教えてください。
鹿野:研修は、主に「ビジネス」「コーチング」「英会話」の3つのプログラムからなります。基本的に業務外の扱いで、希望制で参加いただいています。現状ビジネス・コーチングのプログラムにはそれぞれ10名強、英語はお試しで10名程度が参加してくださっており、結果を元にまた来期のプログラムを考えていこう、という段階ですね。
――希望制でありながら、かなり多くの方が手を挙げられている印象ですね。
佐藤:そうですね。やはり、エンジニアとしての活躍の幅を広げたいという思いを持っている方が多いのかなと思います。
私たちは新しいサービスをつくる組織であり、“事業会社のエンジニア” なので。「単にエンジニアリング技術を極めるだけでなく “新たな価値を生み出す” ことに貢献したい」「そのために自己成長につながることに積極的に挑戦したい」という価値観は共通しているのかもしれませんね。
鹿野:また背景には、パーソルキャリアのバリューである「“外向き”でいること」「“自分ゴト化”して捉え直すこと」「“成長マインド”を忘れないこと」が根付いているのではないでしょうか。これらを意識して、自分の役割の中におさまらずに染み出し、周りの人を支援できるような人になろうという思いがメンバーそれぞれの中にあるように感じます。
サービス開発部としては、そういった一人ひとりのメンバーが活躍し、本人の成長や市場価値の向上につなげられるような機会をしっかり提供していきたいと思っています。
業務課題や事業の展望をベースに、3つの研修プログラムを新設
――概要が掴めたところで、プログラムについて詳しく教えてください。まず、「ビジネス」「コーチング」「英会話」の3つの領域に、それぞれどのような課題があったのでしょうか。
鹿野:まずは「ビジネス」について。サービス開発部で手がけたプロダクトが増える中、新規サービスを0→1で作ることだけでなく、1→10、10→100……とグロースさせることに目を向ける必要性がより高まっています。
ただサービスをグロースしていくためには、単にエンジニアリングの知識を持ち合わせているだけでは足りません。施策を検討し進めていくにあたって、HR領域のドメイン知識やマーケティングの知見を身につける必要があります。
もちろん、判断をリードする立場として企画やUXリサーチグループなどの専門組織がありますが、彼らの判断結果を鵜呑みにして手を動かすだけでなく、エンジニアも関連する基礎知識を身につけ、連携をより円滑に進めることでグローススピードを上げられればと考えています。
佐藤:「コーチング」については、既存の1on1の中でメンバーの成長につながるようなコミュニケーションが現状取れていないという課題感から生まれています。
これまでの1on1は業務の報告や相談、コンディションチェックの場として機能していて、それが間違っている訳ではありません。
ですが、その時々の上司や所属部署をはじめとした環境に左右されることのない「持続性のある育成や成長」を癖づけるためにも、より内省から気づきや答えが得られるような時間にしたいという思いがあったんですよね。その結果として、組織全体が継続的に成長し続けられるような後押しができればと、プログラムにコーチングを加えました。
鹿野:「英会話」をプログラムに組み込んだ背景には、オフショア開発を進めていることがあります。
実際にオフショア開発を行うにあたって、プロダクトを丸投げでお願いするのではなく、共に開発を進めたりコードレビューを行ったりと、仲間として連携していきたいという思いがあります。それができる組織をつくるためにも、英語を介したコミュニケーション能力を身につけて下地を整えていきたいなと考えています。
ドキュメントや対話を通してきちんとコミュニケーションをとることで、内部にも知見を蓄積し、サービスのグロース段階もスムーズに進められるようにしていきたいですね。
――それぞれの課題を元に、具体的にどのような内容のプログラムを組まれたのでしょうか。
鹿野:プログラムの詳細をまとめると、以下のような形になります。
テーマ | 内容と目的 |
---|---|
ビジネス | ・マーケティングの基礎知識 市場の動きを把握した上でグロース施策を検討、実行できるようになる |
コーチング | ・コーチングの体系的な知識とテクニック 「相手と一人の人間としてどのように向き合うべきか」を理解した上で1on1を導入できるようになる |
英会話 | ・マンツーマンのオンライントレーニング
オフショア拠点のエンジニアと英語でコミュニケーションがとれるようになる |
佐藤:コーチング研修については、マネジメント層だけでなくメンバーも対象としています。コーチングを受ける側の方も「コーチングがどのような時間で、何を目的に行われるのか」を理解していないと、コーチに言われるがままの時間になり、十分な効果を生むことが難しいので。心構えを持った上で参加し、自分の考えを深めたり気づきを得たりしてもらうきっかけになればと思っています。
エンジニアに必要なリスキリングとは。そして組織としてすべき後押しとは?
――リスキリングは「その職業で求められるスキルの変化」を見据えて行われるものですが、これからの時代、サービスのあり方が変化していく中で、エンジニアにはどのような役割やスキルが求められるようになるとお考えですか?
鹿野:エンジニアにとっては、求められるスキルそのものが大幅に変化するというよりも、拡大していくだけなのだと考えています。ただのwebエンジニアから、例えば「IoTを活用したサービス開発でデータを取得する」「データ活用の基盤をつくるデータエンジニアリングにも挑戦する」などと、一人のやれることの幅がどんどん広がっていくイメージですね。
例えばそこでサービスにフォーカスするなら、今回研修に組み込んだようなドメイン知識やマーケティングのスキルが必要になりますし、役割に応じて求められるスキルは変わってくるかなと思います。
佐藤:そうやって活躍の幅を広げるためには「この業務は簡略化できる」「この技術を使えばこんなことができる」と知ることが必要で、そのためにはやはり英会話能力は必須です。先進的な技術の多くは海外から発信されますからね。海外のエンジニアとコミュニケーションをとったり、英語のドキュメントを日本語と同じレベルで読み解いてインプットしたりすることが重要になるのだと思います。
――“一人のエンジニアができること” の幅が広がったその先で、組織としてはどのように力を発揮していくべきなのでしょうか。
鹿野:リスキリングで一人ひとりの役割が拡大するとはいえ、根本にある “自身のプロフェッショナル領域” はぶらさずに。そこに軸足をおいた上で他の領域に染み出して、他者の意見を聞きながらすり合わせをしていくことが大切なのだと思います。
ただ、そのためには「この領域は私たちの管轄だから」と凝り固まらずに多様性を認め合える、誰もが活躍できる組織であることが重要になるはずです。そういった組織づくりを進めるために、今回新設したコーチングの研修を、マネジメント層とメンバーのコミュニケーションを活性化させる機会にしていければと期待しています。
――「多様性を認め合える環境づくり」がお話に挙がりましたが、ほかに組織としてリスキリングをどう後押ししていくべきだと思われますか。
佐藤:一般的に、エンジニアというのはスキルの可視化が難しい職種であると思っていてます。「あの人はこの領域が得意だよね」といった抽象的な判断や「自分はこういったことができる」という主観的な自己認識が行われやすい傾向にあります。
こうした状況では自分の強み・弱みも正確に捉えられず、強みを伸ばしてスペシャリストになるのか、弱みをカバーする学びに挑戦するのか、などの選択が難しくなってしまいます。
組織として、評価制度の整備などによって「現在のスキルが市場においてどのくらいのレベルにあるのか」を可視化し、今後のキャリア選択や学習の道しるべになるような客観的な情報を提供していければと思いますね。
――ありがとうございます。それでは最後に、お二人が今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
佐藤:2021年11月にジョインして実際に働いてみて、とても良い組織だなと感じているので、まずはその姿を世の中に広く知っていただいて新しい仲間を増やしていきたいなと思っています。
その上でさらに良い組織にしていくために、継続的な成長の機会を創出できるような仕組み・仕掛けづくりにも取り組んでいきたいです。
鹿野:サービス開発部はこれまで新規のサービス企画・開発を中心にチャレンジしてきましたが、昨年は既存事業と連携した大規模なサービス開発に関わる機会も増えてきました。今後は規模の大小を問わずに、さまざまな新規サービスに対応できるよう、オフショア開発への挑戦も含めて、柔軟性のある組織を目指していきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)
鹿野 徹也 Tetsuya Shikano
エンジニアリング統括部 サービス開発部 ゼネラルマネジャー
SIerにて金融系プロジェクトの要件定義〜開発〜マネジメントを経験。その後、地元へUターンし、ソフトウェアハウスにてIBM、FUJITSU、NEC等のリホスト業務(ランタイム作成、言語変換)に従事。地方と東京の「はたらく」違い・差を実感し、より自分らしく「はたらく」ためWebアプリケーションエンジニアへ転身。アプリ連携、サーバレス開発、AGILE(SCRUM)開発リードと各種Webサービス開発で経験を重ね、2018年にパーソルキャリアへ入社。昨今はGV提唱のDesignSprintを利用したサービス企画に加え、マネジャーとしてエンジニアの「はたらく」をサポート、より良いチーム開発の実現に向けて挑戦中。佐藤 卓哉 Takuya Sato
エンジニアリング統括部 サービス開発部 第1グループ マネジャー
Sierに入社後、主に業務システムの開発を通じて上流から下流までの工程を経験。 その後、事業会社へ転職しJava、PHPでコンシューマ向けサービスの開発、サービスリニューアルなどのプロジェクトマネジメント、エンジニアチームのリードに従事。 自らの転職活動の中で、世の中の転職や主体的なキャリア実現の課題を感じ、HR系企業へ転職。 サービス開発やバックオフィスの業務刷新、法改正対応などのプロジェクトマネジメントでコトのマネジメントの経験を重ねつつ、サービス開発を担うエンジニアチームのマネジメントに従事し、チームの戦略立案やコーチング、サーヴァント型リーダーシップを通じたピープルマネジメントを経験。 2021年にパーソルキャリアへ入社し、エンジニアの成長と成功を実現できる組織づくりに尽力している。
※2022年3月現在の情報です。