サービスのシーズを最短で探るために――ニューロマジック社に学ぶ、スプリント検定

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サービス開発統括部では、“最速でユーザーの課題を解決するようなサービスを生み出す”ことを役割としています。組織立ち上げ当初から、まだ日本の企業では普及していなかったデザインスプリントを取り入れてきました。ところが、独学で得た知見をもとに、数多くスプリントを回してきたものの、なかなか手ごたえを実感できていなかったといいます。

そこで、独自のデザインスプリントプログラムを開発、コンサルティングを展開するニューロマジック社にご協力をいただき、数々のスプリントを通じて、部署にあった“デザインスプリント”を開発。これまで歩んできた道のりを振り返るとともに、サービス開発統括で抱えていたスプリントの課題は何だったのか、ニューロマジック社から見たパーソルキャリアの特徴はどのようなところにあるのかなど、ざっくばらんにお話を伺いました。

“何となくうまくいっていない”が、その理由が分からなかった

――まずは、パーソルキャリアのメンバーにうかがいます。ニューロマジック社と出会う前は、どういった課題があって、それに対してどういう取り組みをされていたのでしょうか。

長谷川:自分が2020年1月入社ですが、サービス開発統括部では、それ以前からデザインスプリントに取り組んでいたました。組織が立ち上がった2018年ごろは、初期メンバーたった3名(マネジャー、エンジニア、デザイナー)で、当時からスプリントを導入していたと聞きました。

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サービス開発統括部 サービスデザイナー 長谷川 椋平

導入当初は、エンジニアですとプロトタイプは紙に書けばいいものを、実際にエンジニアさんがコードを書いていた、なんて失敗談もあったと聞いています。ないもの尽くしの状態でしたが、仮説検証を行うことに特化したデザインスプリントの存在はかなり魅力的であったようです。そこでいわゆる青本、Googleベンチャーズで開発されたジェイク・ナップ氏が書いた「スプリント」と題された本を教科書代わりに読み込んで始めていったという話です。

 

――それぐらいの時代から日本の企業の中に、デザインスプリントを積極的に取り入れるような流れがあったのでしょうか?

永井:なっていないですね。私たち日本人がよく慣れ親しんでいる“何かきれいに見せるラベリングなどのデザイン”ではなく、“ビジネスの戦略を考えるなどのデザイン”といった広義の意味のデザインの考え方は欧米に比べて日本は10年遅れていると言われています。

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株式会社ニューロマジック 永井 菜月 氏

元々、海外でデザインスプリントという手法が開発されたのが2000年代半ばで、向こうでは当時からそういう気運がありました。デザインをいろんな人が使えるような手法にしていこうということです。

 

――ちなみに、それはどうして始めようという話になったのでしょうか。

長谷川:これも当時いたメンバーから聞いた話ですが、“仮説検証を低コストで行わなければならない”という新規サービス開発の共通する事情があったという中で、サービスデザイン手法をマネジャーが調査した結果、デザインスプリントに行き着き、更にいくつか種類がありそうだということを突き止めました。まずは、青本、教科書から入ってやってみようという話になったようです。

 

――まずやってみよう!というのが、いい意味でも悪い意味でも弊社らしい(笑)。まずは自力でやり始めたとのことですが、その後ニューロマジック社のようなプロと組まないとだめだという結論になったと思います。どのような課題を感じていたから自分たちだけではできないと感じたのか教えてください。

長谷川:再現性の観点で課題を持っていました。何回やっても同じように仮説検証を安定して行う事ができません。多様な人材がそろっていた点でアイデアの質など、所々良かった部分はあったと感じていましたが、メニュー単体で何か物事を成しえるわけではなくて、メニューが連続して初めて価値が生まれます。そこが全くできていませんでした。

なぜかというと、何を検証したいのか、そもそものユーザーやビジネスの課題は何かといった部分の絞り込みができていませんでした。何をこのスプリントで検証したいのか、解決したいのかの絞り込みが不足していたのですね。そのほかにもさまざまな課題を感じていました。

 

――ここまで課題を言語化することができたきっかけはどこにあったのでしょうか?

長谷川:何となくうまくいっていないなという、ふわっとした課題感がありました。ファシリテーションがうまくいっていないのか?とか、何となくこの辺りがうまくいっていないのか?という感覚値はあるけれど、具体的に何がいけないのか分からなかったですね。ただ教科書通りではパーソルキャリアのやり方には合っていないというところまではつかめていました。

 

――“何となくうまくいっていない”というのは、どこで決めているんですか?

長谷川:デザインスプリント自体が、新しくアイデアを検証するシーンで活用する手法なので、成果が出るのは先の話になります。だから余計に、当時はうまくいっているのか、うまくいっていないのかもわからないといった状態でした。

 

――デザインスプリントを導入する企業にはこういった意見が多いのでしょうか?

永井 :恐らく、何となく違和感がある、という企業さんでも2段階に分解できると思っています。

一つは、デザインスプリントの経験がありつつも悩んでいるパターン。

パーソルキャリアさんの場合は、我々もトレーニングがやり易いくらい、ご自身たちで実践されてきた経験値があるので、わからないところと、純粋に実践値があるところがきちんとあるのだと思います。

もう一つは、学んだり、実践したりした経験が浅く、手探りでトライしながらもその方々は実践値やリソースを、限られたところからしか情報収集していなかったりするパターンで、どちらかというと後者のほうが多いです。特に後者のパターンだと、弊社のような寄り添ってくれるプロがいるという事を知らない会社さんも多いですね。

坂部:そうですね。サービスデザイナーが長谷川で、私はリサーチャーという立場で話をさせていただきます。先ほど再現性という話がありましたが、やはりメンバーが優秀ゆえに思いが強すぎて、物を作ることだけを注視してしまったという課題があったと聞いています。

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サービス開発統括部 リードディレクター 坂部 佑磨

そういう時に、“ユーザーはどう思っているのか?”という立場で考えるのが我々、リサーチャーです。それを必ずスプリントに取り入れることで審査会での報告の時にも、「ユーザーからの意見も反映させたうえで、作りました」という表現になります。再現性と成功をと考えると、審査会というフェーズにおいても、正しく伝わっているのかを注視すべきだという気づきがありました。

 

――何となくふわっとした報告になってしまうと、審査会でもふわっとした話になってしまい、経営判断までうまく刺さらないことが多いということですか。

坂部:そうですね。多くの企業がそうですが、それはスプリントの良いところでも悪いところでもあると思っています。「もうできた」と言われると、そこで終わってしまいますが、では、ユーザーにとってはどうなのかという視点を加えることで、ふわっとしたものが明確になります。

 

――先に作りがちなので、そのユーザーの声をその場で確認できる、知ることが重要だというお話ですね。今回はなぜパートナーとしてニューロマジック社を選ばれたのでしょうか?

長谷川:デザインスプリントの教科書はありますが、各社の組織体制や開発思想によって、理想の設計自体を変化するべきものだと思っています。ですので、スプリントは決められた状態ではなく、弊社の課題を徹底的にヒアリングしていただいた上で新しい提案をいただけるパートナーというのが、まず前提としてありました。

その上で、ニューロマジック社は、サービスデザイナーであり、リサーチグループ、デザインスプリントを組織に導入しているメンバーのポジション、立ち位置も念頭に置いたうえで、どう進めていくかをご提案いただけます。最たる例が、部署だけでなく他部署の方々に向けたデザインスプリントの講義です。

デザインスプリントの性質上、多様な専門家を巻き込んでいく必要があるので、部署外のメンバーに声掛けをして協力を募ることも今後必要になっていく中、社内の方々に向けた講座を行うことで、今後の協力を取り付けやすくする、かつ社内のデザイン力の向上にも貢献しようというご提案いただきました。その話を聞いたときに、“これはもうお願いするしかない”と。ご提案内容の柔軟さが決め手になりました。

 

――ちなみに、他の選択肢はなかったのですか。

長谷川:セミナーを受講したり、コンサルティングファームに相談したりする手も考えましたが、ニューロマジック社ほどきめ細かくプログラムを組んでいただいたところはなかったと思います。基本的な「型」を渡されるような印象だったのでそれは僕らが求めるものではありませんでした。

 

――永井さんにお聞きします。この辺りは貴社でも意識されているのでしょうか?

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永井 :そうですね。寄り添って提案することを大切にしています。背景には、元々デザインスプリントは欧米でうまれた手法なので、そのままそれを取り入れようとしても、欧米と日本の文化が違うので、どう意見をいうか、決裁権者が何を決めるかなど、すごく文化的な背景を理解しておかないと適切に進められません。これは私たち自身も苦戦した背景から、“そのまま入れるのは違う”という思いがあります。ですから、しっかりカスタマイズをしていますし、それができるのは弊社だけなのではないかな、と思っています。

 

――日本的な文化を踏まえた上で、このデザインスプリントをどのように活かすかが重要なんですね。初回のご面談におけるパーソルキャリアの印象はいかがでしたか。

永井:率直に言いますと、最初から“この案件は気合いをいれてやるぞ!”という気持ちになりました(笑)。

というのは先にお伝えした通り、「そもそも実践したことがなくこれから取り入れたい」という企業のご相談が多いです。長谷川さんは「課題感がぼんやりしていた」と言っていましたが、ここまで実践をされていたのでご相談も具体的でした。そういうご相談をいただくクライアントさんはなかなかないので、すごくチャレンジングな不安もありつつ、同じ目線で取り組める印象でした。どうしても、いつも教える側になるので、対等に議論をしながら独自のメソッドをつくろうという感じになれるテンションでしたね。

 

“とりあえず作ってみよう”という、企業カルチャーがあった

――トレーニングの流れを教えてください。

永井:ニューロマジック”ならでは”で、ユニークな点だと思いますが、いきなり“こういうメソッドで行きましょう”と入れるのではなく、ヒアリングを最初に行います。長谷川さんや坂部さんにインタビューし、サービスオーナー、デザイナーの方など、立場がバラバラな方に幅広くヒアリングをして、「スプリントをどう思っていますか?」と聞きました。いつも対峙しているのが長谷川さんと坂部さん以外、その後ろに控えている方々がどう思っているのかも非常に重要です。そして、最初にヒアリングをして、そこから次に、今までやってこられたスプリントを傍聴させていただきました。つまり、観察とヒアリングですね。そこで課題を言語化して、その後、教えていくという流れです。

 

――ヒアリングと観察をして、どこに課題を感じましたか。

永井 :色々な視点がありますが、まず先ほど長谷川さんがおっしゃっていたように、再現性がないという点に課題を感じました。これは“事業会社あるある”かもしれませんが、アイデアを持っているサービスオーナーさんの知識量や性格でその会が変わってしまうことです。起案者の声が大きいと、それに従ってしまいがちです。また参加者の人数やメンバーの選定方法によってはそれが、再現性がなくなる要因になる可能性があります。色々なぶっちゃけ話をお聞かせいただいたので、深く分析できるようになりましたね。

 

――再現性を持たなければいけない最たるポイントは、さまざまな人が参加しても、アイデアは同じくらいの量が出ることが大事ということでしょうか。何をもって再現性が大事なのか知りたいです!

永井:先ほど長谷川さんが仰っていたように、いつも仮説がきちんと検証できるかどうかだと思います。全てのプロジェクトのスタートやサービス開発は、“ユーザーが〇〇な課題を持っているから、××のサービスが良いのでは”という仮説から始まると思います。それをきちんと検証できることでローンチまで行く、あるいはそこから新しい課題が生まれるというサイクルが、まさにサービス開発の流れですよね。そこで仮説が何であれ、決めた仮説をきちんと検証できる手法になっているか、いつも仮説を立てるのに、また仮説を立てるところからはじまっていないか、すなわちワンクールで検証できているか、それが毎回、どんな人が参加してもできるというのが、再現性がある状態だと思います。

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――確かに声が大きい人の一存だったり、“こうあるべき”と決まってしまうと、そのまま走ってしまいがちですよね。それが正しく検証されると、正しい判断ができるということですね。

永井 :ビジョンドリブンのように “誰か一人の発案者が引っ張ってくことで何かが生まれる”という考え方は、それはそれで間違いではありません。これほど大きな会社の規模であれば、誰か一人が引っ張るパターンと、ボトムアップで何かを発案して意見を拾っていくパターンの両方が必要になります。

パーソルキャリアさんのような規模であれば、多様な意見を集めて、色々な種類のサービスを展開することもうまくいく可能性があります。すなわち両方のパターンで毎回、仮説が検証されることが重要です。今日は声の大きい人に従うパターン、今日はみんなから聞くパターンといった具合に、色々な手法を混ぜながら実施するのが理想です。これまで長谷川さんたちがトライされていた手法も、ビジョンドリブンのパターンだったので、間違いではないですが、そのほかのパターンも選択しながら、自分たちでできるようになることが、最終的なゴールだと思います。

 

――初回のヒアリングや観察だけで、そこまでのご提案が作れるのですね。

永井:Googleベンチャーズで生まれたスプリントがビジョンドリブン系で、それが世界的に有名なのですが、もう少しボトムアップで意見を拾っていくというマイナー手法があって、それを両方取り入れているのがニューロマジック社の強みです。そこをバランスよく、提供したいと思っていて、それがハマったという感じですね。

 

――パーソルキャリアのお二人はどうでしょう?こういう現状を言い当てられてドキッとしましたか(笑)?

長谷川:言語化できていなかったことをバシッと言ってもらえたので、“やはりそうか”と思いました。外側の第三者視点で、プロとして分析をしていただいたことに、よりお墨付きをいただいいたので安心して、部外のメンバーにも「これで行きましょう」と言えるようになりました。これは大きな変化です。

坂部:そうですね。我々も本は読んでいるけれどこれで合っているのか、問題はこのあたりかと思っているけれど、確信が持てないでいました。ですから、改めて場を設けて、ご指摘をくださったことで、やっぱりニューロマジックさんでよかったと実感しました。これまではビジョンドリブンで引っ張るパターンが多かったですが、課題自体がふわっとしていたことが一番の問題であったと思います。

私は元々、理系の人間なので、何が仮説で、こうしたからこうなったという論理がしっかりしていないとダメな事はわかっていました。ところが仮説もわからないままに作り出していましたし、本当に“ユーザーは大事”と思っているか、疑問はありました。改めてご指摘を受けて、切り分けたり、住み分けたりして、頭を切り替える必要があるとわかりました。そして私たちだけではなくて、それ自身がメンバー全体に行き届いたことがとても良かったと思います。

 

――提案や指摘を受けた後は、どのような流れになるのでしょうか。

永井:課題があることを提案した後は、まずは我々なりの最適解をご提供します。実践値が既にありましたので、ポイントはここです、いつもとここを変えてくださいと伝授させていただくだけでわかっていただけるので、座学ベースで一通りポイントを教えさせていただき、その後にご自身たちだけで実装していただくことをオーバービューする感じですね。

長谷川:座学は前半と後半に分かれていて、後半は今までやってきた内容に近しいものがあったので、教えていただきより走りやすくなりました。前半に関しては、かなり新しい知識だったので、永井さんにご相談させていただきながら進めました。座学の内容が本当に丁寧で、なおかつ100ページほどの教材や、実際にワークで使うテンプレートもご用意いただき、それらがかなり質の良いものでしたので、自分たちのファシリテーション力も向上したと思います。

永井 :やはり、もともと色々と工夫、試行錯誤をしていた背景がありますし、新しい手法に対してオープンな感覚があるのでしょう。新しいことを取り入れよう、とりあえず作ってみようという精神が企業カルチャーとしてあるので、それがあるかないかでだいぶ違うと思います。トラディショナルな企業さんだと、まずその“やってみよう”が難しいケースや、年齢的にも上の方が仕切るという文化、雰囲気もあります。そういう意味では長谷川さんのように若い方が仕切る企業カルチャーは素晴らしいと思っています。

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もちろん世代だけで切れるとは思いませんが、20代は大学でデザイン思考を学んでいる人が出始めた世代です。そもそも、デザインの概念が他の世代と異なると思います。若い時から学んでいて、デザインの考え方が違う、産まれてきたときからいろんなイノベーティブなプロダクトが出ている時代なので、“今までとは違うやり方でやらないと”という世代だと思います。もちろん、年配の方の中にもそういう視点を持っている人はいますけどね。

 

デザインドリブンな開発手法で「はたらいて、笑おう」を実現

――今回、ニューロマジックさんの研修およびスプリント検定を受けた長谷川さんと坂部さんですが、永井さんから客観的に見て受講前後で何か変化はありましたか?

永井:大小さまざまな変化があると思いますが、私がもっとも重要だと思ったのは、何を誰に聞いて決めるのか、それともここは自分で決めるのか、その判断の切り分けが非常に上手になったと思います。私の肩書きでもあるサービスデザイナー的な視点でもありますが、やはりスプリントには色々な方が参加されますし、会社の中でも色々な方がいますから、その判断の軸は非常に大切です。私が実際にスプリントを傍聴したときにも、教科書で学んだだけではカバーしきれない範囲があって、その場でジャッジをしないといけないことも恐らくあったと思います。その時に、“ここはサービスオーナーと休憩時間に相談しよう”“ここは自分で進めよう”と適切に分けてあり、しかも場面、場面で臨機応変に合わせながら、しっかり進められるようになっていました。

 

――判断基準はなかなかマニュアル化しにくいものだと思いますし、瞬時に考える必要がありますが、どうして御社の教育を通じて、そういう力が身につくのでしょうか。

永井:なぜこのワークをやるのか、このワークは何のためか、などWhyまで理解し、決断のロジックを立てることを身につけていただいたからだと思います。そこをすごく皆さん真摯に学んでいただいて、もちろん、元々、そういう思考があったという部分もあったのだと推察していますが、我々が提供したのは材料で、それをきちんと調理をしていただけたと感じました。

長谷川:デザインスプリントを経験したことのあるメンバーは多くいますが、おそらく半分くらいの方々は効果に懐疑的だったと思います。それは教科書に書いてあることを体験しているだけで、文章と文章の間にある感覚値、ニュアンスが理解できていなかったのでしょう。それを自分たちのチームを含めて、組織の中で共通理解できる土壌を作り上げられたという大きな変化があったと思います。実際に新しくご提案いただいたもので走った結果、うまく仮説検証ができて、全体として認められるようになりました。そこから「是非デザインスプリントをやりましょう!」という流れが生まれ、他部署の方々からも依頼が来るようになりました。“デザインスプリントって仮説検証ができそうな手法だ”ということと、“それができるチームがあるのだ”という認識が組織の中で浸透し、今まで懐疑的だった方々も、参加したことなかった方も参加いただき、「理解が深まった」という言葉をいただくようになりました。

永井:本当によかったです!

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株式会社ニューロマジック 林 静螢 氏

リン:他部署の方にもスプリントをやってみたい、と思っていただけるのは嬉しいし、ちょっと泣きそうになりますね(笑)

坂部:リサーチも入りやすくなりました。サービスデザインスプリントは、最初まずユーザーの事を知るところからはじまるので、“ユーザーのことが大事”という意識がまず皆に伝わったのが一番大きな変化だと思います。「ユーザーのことを知りたいです」と声をかけていただけるようになりましたのは、リサーチグループとしてもありがたい話です。

一般的には、リサーチャーの出番はリリース後など、後ろに回されがちですが、スプリントのおかげで、課題抽出の段階から呼んでもらえるようになり、スプリントやアンケート調査など複数の提案がしやすくなりました。いざスプリントとなったら頼れるサービスデザイナーがいるということで、すぐに取り組める体制になりましたね。

 

――入るタイミングが違うだけで、全然違いますよね。永井さん、ここまで皆さんとても喜んでいますが、いかがですか。

永井:本当に良かったです。今回メインで学んでいただいたお二人とはほぼマンツーマンでやってきたので、そこに価値を感じてもらえていると思います。他の会社のケースでは、旗振り役の人はやる気だけれど、他の人が付いてこないという状況です。そうなるとスプリントって絶対回らないので、他の部署の方とか、大人数を対象にした座学とかをやらせていただいたという背景がありました。皆さんの後ろにいる方々にもエンパワーメントできて良かったですし、成果が出たのが本当に嬉しかったです。

 

――今回のスプリント検定を通じて、改めて新規サービス開発を行う際に、どのような心構え、思考が大事になるとお考えでしょうか。パーソルキャリアの二人は事業会社としての見解を、ニューロマジック様からは数多くの企業を見ているコンサルティングの視点から教えてください。

長谷川:事業会社が新しいサービスを作り、リリースをするというのは、エンジニアやデザイナーなど、たくさんのメンバーの人件費や、その他予算を投資するのと同義です。自分たちは開発フェーズの前段階に、デザインスプリントを使って、筋のいいアイデアと悪いアイデアをふるいにかけ、低コストかつ短期間で、ダメージを少なく仮説検証を繰り返すことが重要です。そういった心構えが大事ではないかと思います。

つまり、プロジェクトの初期段階で共通言語ができることや、失敗や迷った時に素早く手戻りを行えることが重要で、段階的に仮説検証をしていけば、失敗した時にもすぐに手戻りが行えます。いわゆるゲームでセーブポイントが作れる、そういったイメージかと思っています。

坂部:自分としては、事業会社で新規サービスを開発する際に長谷川のような人材が必要ですね。新しい感性が入ってくると、それがスタンダードになります。

 

――本当にそう思います。こういう方たちが、一人でも多く増えて、組織の中に入り込んで、ちゃんと物を言えるような環境になるのが重要ということですね。

坂部:下から声を出し続けるのも大事ですが、感謝しているのは、マネジャー陣に理解があって、新しいものはどんどんやっていこう、失敗してもいい、そこから学べばよい、失敗を許容する文化が根付いていることです。そういった感覚をマネジャー陣が全員共通認識として持っているのも、この手法を成功させるための大きな柱の一つだと思っています。

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永井:まず、そもそもの企業カルチャーとして、サービスを開発していく人達に必要なマインドセットは、心理的安全性が保たれた企業文化をつくることであると思っています。私も改めてその大切さを皆さんから学んだと思っています。統括部長である三口さんと長谷川さんは、めちゃくちゃ対等にお話をされていますが、そういう環境があるからこそ新しい手法も取り入れられるし、いろんなことを学んでやってみようという一人一人の自主性もつくと思います。

スプリントはまさに参加している人たちの積極性が重要な手法なので、それをいきなりスプリントの場だけでやろうというのは難しいので、普段の企業文化の中で養っていかなければなりません。スタートアップでは、それができるかもしれませんが、なかなか大きい企業では難しいと思いますので、そういったチェンジができると、色々な事業が生まれやすいのかなと思っています。

あとは、やはりトライしていく事業開発の姿勢が大事だと思っていて、よくデザインスプリントをやるときに誤解を恐れずにいうのは、「成功して欲しいということではなく、リスクを減らして欲しい。そして、早めに失敗して欲しい」と伝えています。

よくセミナーで求められるのは、100分の1の成功をつかみに行く手法です。しかし、それは外部的要因によって変わるので、いつも1発で100分の1を取りに行くのは難しいと思います。そのかわり、何千万円もかけて100分の1ではなかったと気づく前に、100万円ほどの投資の段階で気が付くことが重要で、そういったリスクヘッジこそ、この新しいサービスが生まれづらい時代の中で、事業を開発するうえで必要な姿勢であるとお伝えしていきたいです。

 

――新規サービスの成功確率を考えれば、リスクを減らせることの重要性も改めてわかる気がします。今後、サービスデザインスプリントを通じて実現したいことを教えてください。

坂部:具体的な話として、私たちは現在、24のサービスを整えるという目標に向かって進んでいますが、それが単なる自己満足ではなく、ユーザーのためになるものを届けていくために必要不可欠な手法だと思います。リソースの問題もあるので、全部が全部に適応できないかもしれませんが、いち早く問題を解決してサービスに届けるという意味で、このサービスデザインスプリントを活用していきたいと思っています。

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長谷川:弊社のビジョンである、「はたらいて、笑おう」を実現するためのイノベーティブなサービス、顧客体験を創出していく事が大事だと思っています。時代の変化に伴い、個人の価値観が多様化し、社会情勢、テクノロジー、スタンダードが変化していっている、その時代の速さに素早く適合したサービスを提供していくために必要な開発手法がデザインスプリントを主とするデザインドリブンではないかと思っています。

先ほど永井さんがいっていたような、100分の1をつかみ取るようなデザインスプリントは弾丸ではないという話で、その良し悪しを理解しつつ、部内だけではなく社内外を巻き込んだデザインスプリントにしていくことによって、革新的な顧客体験を生み出していく、かつ巻き込まれたメンバーはデザインを重要視していく、そんな未来を実現できたらと思っています。

永井:デザインスプリントは、世の中的に必要なものです。まず、社会のわだかまり、つまり、よどみを解消する手法として有効だと思っています。なぜなら、社会の中でうまくいっていないサービスを組織的な観点、ユーザー的な観点から解消できる手法だと思いますし、色々な会社がトライすることによって、本質的に誰かの課題解決をして、ちょっと背中を押すようなサービスを開発することに寄与できると思うのですね。スプリントを通じて、そういう視野をもちながらコンサルティングをしていきたいと思っています。

また、この手法をご提供することで、今回のケースのように、これまでサービス開発に関わったことが無かった方々や、自分の声が社内に届いているかわからない方々へのエンパワーメントにもなると思っています。弊社に在籍する外国人のサービスデザイナーも言っておりましたが、日本ではヒエラルキーがあって、なかなか自分の思っていることをいえないメンバーもいる、と。そうなるとこの会社にコミットしていこうというモチベーションも下がってしまうし、良い意見も出なくなってしまうというのですね。スプリントでいろんな人の意見を取り入れることで、たとえ選択されなかったとしても、“聞いてもらっている”と実感できるきっかけになると思います。

要するに、きちんとアウトプットとして社会課題を解決していくということ、そして手法自体が、働いている方にとっての充実感のひとつになればいいと思っています。

 

――職種としてサービス開発を任された人だけがやるのではなく、どんな人でもスプリントを通じて考えるきっかけができたりするのでしょうね。

永井:そうなんです。ある会社様をコンサルティングした時の話ですが、いくつかグループをつくって同時にワークショップを実施しました。

ところが諸事情により各グループに多様性を作れなかった会がありました。1つのグループはパパチーム、もう1つはママチーム、1つは若手というように混ぜないでいたら、それぞれがすごく偏ったサービスになってしまったのですね。メンバーが多様性を持って議論して反響しあわないと、本質的に課題を解決するソリューションにならないことを改めて理解しました。

そういうことの大切さを、この手法を通じて伝えていきたいという意思があるので、みなさんみたいに元々そういう環境があって、多様なメンバーが参加できるというのは、既にその課題がクリアできていると思っています。これからどんどん活用して、進んでいく未来が見える気がしています。

 

――パーソルキャリアには、さまざまな職種・年齢の社員がいるのだから、逆にその利点を活かさない手はないということですね。

長谷川:そうですね。僕らは恵まれていると思っています。他の部署の方、営業の方に声掛けして、現場の声をきくことができる環境にあります。たくさんの優秀な営業担当がいて、その声を拾い上げることができるのは、非常に大きな財産だと思います。

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――今日は素敵なお話をたっぷり伺うことができました。長谷川さん、坂部さんおつかれさまでした。ニューロマジック永井さん、リンさん、改めてありがとうございました。

(インタビュー・編集=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/撮影=古宮こうき)

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永井 菜月 Natsuki Nagai

2018年ニューロマジック入社。サービスデザイナーとして、ユーザーインタビューなどの調査企画・実施を担当。また、アパレル企業の採用サイトや学習塾のパンフレットなど、調査結果を元にしたユーザー視点でのプランニングも手がける。デザインスプリント開催時はファシリテーターとしても活動し、欧米向けに開発されたサービスデザイン・メソッドを日本企業向けにローカライズするなど、日英二か国語を活かし業務に従事する。

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林 静瑩 LIN CHING-YING

台湾出身。2019年ニューロマジック入社。前職で培ったマーケティング領域での経験を活かし、現在はデザインスプリントのメニュー設計やファシリテーションを行う。中国語、英語、日本語を巧みに操るトリリンガル。

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長谷川 椋平 Ryohei Hasegawa

サービス開発統括部 UXデザイン部 サービスデザイナー

エンジェル投資家への弟子入り、個人事業主、グルメテック領域での起業を経て、2020年1月にパーソルキャリアへ参画。企画段階からグロースまで、フェーズやプロジェクトを横断して「価値ある体験と持続するビジネスの仕組み」のデザインに従事する。

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坂部 佑磨 Yuma Sakabe

サービス開発統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ リードディレクター

マーケティングリサーチ会社に勤めた後、IT企業にてECサイトのUXリサーチを担当し、複数のプロジェクトを経験し2020年にUXリサーチチームのリードディレクターとしてパーソルキャリアにジョイン。サービス開発統括部が関わるサービスのリサーチをすべて担当し、リーダーの役割も担い、複数のメンバーの育成も担う。デザインスプリントやワークショップなどの適切な手法を通じて、新規サービスの意思決定のためのデータ提供ができるチーム作りに取り組んでいる。

※2021年2月現在の情報です。

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