技術負債解消の加速を目指して――dodaリビルドグループ発足の裏側に迫る

技術負債解消の加速を目指して――dodaリビルドグループ発足の裏側に迫る転職サービス「doda」が抱える技術負債を解消すべく始動した、dodaリビルドプロジェクト。techtektでは2021年からその歴史を追ってきました。(※dodaリビルドにまつわる記事はこちら

2023年4月より、フロントエンドエンジニア、サーバーサイドエンジニア、デザインエンジニア、ITコンサルタント職の有機的な連携によってリビルドをさらに推進すべく、「dodaリビルドグループ」が発足。10名弱の組織として新たなスタートを切りました。

dodaリビルドグループが担う組織役割とは。そしてこのグループではたらく上で必要な心構えとは――マネジャーを務める和田に話を聞きました。

 

フロントエンド・バックエンド・デザインの各領域が、より有機的に連携できる状態へ

 

――まずは、今回dodaリビルドグループが発足した背景から教えてください。発足以前は、どんな体制でプロジェクトが進められていたのでしょうか?

 プロダクト開発統括部 システムアーキテクト部 dodaリビルドグループ マネジャー 和田 武

プロダクト開発統括部 システムアーキテクト部 dodaリビルドグループ マネジャー 和田 武

和田:そもそもdodaリビルドプロジェクトは、「doda」サイトのフロントエンド領域について、立ち上げからの長い歴史の中で蓄積された技術負債を解消することを目的として始まりました。

そこから徐々に、「バックエンドのサービスを汎用APIとしてマイクロサービス化していきたい」「デザインシステムの再利用性を高めたい」とフロントエンド以外の領域にまで取り組みの幅が広がって。各領域のメンバーをアサインさせていただいてプロジェクトが大きくなってきていた、というのが発足前の状況です。

 

――各組織を巻き込んでプロジェクトが大きくなっていく中、課題になっていた点とは?

和田:当時課題になっていたのが、フロントエンド・バックエンド・デザインの各組織が管掌する範囲や目指すゴールのすり合わせがうまくいっていないことでした。

システムの仕組みや技術負債があるという都合上「この部分はどの組織が担当すべきか」が明確でなく、各組織が別々に調査や開発を行っているために、最終的に作られたシステムに穴の開いた部分が生まれてしまう。それがUATの段階で発覚することもあれば、テストの目をすり抜けて障害に繋がってしまうこともあったのです。

このような状況を受け、各組織がコミュニケーションをより密にとりながら、意識を一つにして取り組んでいかなければいけないだろうと。そういった有機的な連携を加速させるために、フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニア・デザインエンジニアが属して一緒に取り組む、一つの組織が必要だろうという考えから、今回新組織が発足しました。

 

――かねて抱えていた課題の解消に向け、このタイミングで体制変更に踏み切ることになったのはなぜですか。

和田:フロントエンドグループとして行ったリリースによって、大規模な障害が発生してしまったことが大きかったと思います。その振り返りをして次第に要因が見えてくる中で、「フロントエンドとバックエンドが、もっとコミュニケーションをとりながら取り組みを進められるようにならなければいけない」という課題感がマネジメント層からも現場からも出てきていました。

 

――有機的な連携を行うにあたっては、具体的に、どんなコミュニケーションが大事になるんでしょうか?

技術負債解消の加速を目指して――dodaリビルドグループ発足の裏側に迫る

和田:特別なことではなく、進捗を共有し、困りごとや疑問を気軽に聞き合うという対話ができることが大切なのかなと思います。

みんなでそういった対話をするための時間を設けてはいますが、プロジェクトが大きくなって関わるメンバーが増えたことで「発言しづらい」「フロント側で出た疑問について、バック側の方に聞いていいのか分からない」と悩む方も多くなっていたようです。

特にフロントの方々にとっては、Javaで書かれた既存のシステムを移行するために、専門ではないJavaのロジックにも触れなければいけないという状況ですから。より、互いに気軽に対話をして小さな疑問を解消できる、教え合える文化が必要なのかなと捉えています。

 

グループ内や関係部署との密なコミュニケーションが、リビルド推進のカギ

 

――dodaリビルドグループで進めているプロジェクトについて教えてください。

和田:「doda」のwebサイトを新しいアーキテクチャに移行することに取り組んでいます。

各領域のテーマは、フロントエンドをNext.jsと呼ばれるフレームワークで作られた新しいアーキテクチャに移行すること、バックエンドの処理を目的ごとに汎用的に使える形で切り分けながら、マイクロサービスとしてWebAPIに移行すること。そしてデザインは再利用性を高め、またデザインガバナンスを守りやすくするために、デザインシステム化していくことです。

この各テーマの中で、例えば「デザインシステムを使う際により差異がわかりやすいよう、ビジュアルリグレッションテストを導入する」など細かな改善を行っていく形ですね。

技術負債解消の加速を目指して――dodaリビルドグループ発足の裏側に迫る

 

――取り組みを進める中で、グループ内のコミュニケーション活性化のために工夫していることや、それによって生まれた変化はありますか?

和田:“バーチャルオフィスへの出社” をグループのルールの一つとしました。バーチャルオフィスでは「この領域の人たちが固まって話しているな」といった状況が見えるので、話したいことがあるときに声がかけやすいんですよね。

▼バーチャルオフィスの取り組みについてはこちらもご覧ください。

この仕組みに変えてから、「連絡可能」「取り込み中」といったコミュニケーションツールのステータスを都度変更したり、各メンバーの予定表を確認したりする手間をかけずに、気軽に相談し合えるようになりました。みんなからも「コミュニケーションがだいぶとりやすくなった」「ふと疑問に思ったことを話したり、気軽に相談したりできる」との声があがっています。

領域はそれぞれ異なるものの、同じ目標に向かって一緒に頑張っている仲間なので、本来は気持ちを合わせやすいはずですから。あとは互いに疑問をぶつけ合えるような環境や仕組みを作っていくことが大切だなと、改めて感じます。

 

――他の組織とはどのように連携しているのでしょうか?

和田:リビルドを行う領域によって関わる組織が異なるので、都度アサインさせていただきながら進めてきました。

影響範囲の考慮が不足していたために、ある作業がさまざまな部署に影響を及ぼし、結果として障害に繋がってしまう……という事態を避けるためにも、各事業やその企画部署の方々をはじめ、関連組織の皆さんとしっかりやりとりをしていかなければいけないなと認識しています。

また「フロントエンド周りをアーキテクチャレベルでよくしていかなければいけない」という観点から、アーキテクトグループとも目線を合わせて協力しながら取り組んでいます。

 

主役は開発メンバーのみんな――自分や仲間が開発しやすく自慢したくなるような環境づくりを

 

――後半は和田さんにフォーカスして話を聞いていきたいと思います。和田さんは企画職でありながら現在エンジニアリング領域のマネジャーをされていますが、どんな思いやモチベーションでこの役割を担っているのですか?

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和田:私には、生涯 “広義のデザイナー” でありたいという思いがあるんです。UIレベルでも、グラフィックレベルでも、アプリケーションレベルでも、組織のレベルでもいいので、何かを設計することに携わってものづくりをしていたいなと。

その軸はブレずにあり、企画職で入社してグロース領域を担い、A/Bテストの開発サポートや環境改善を経験し、また技術的要素が多い案件のディレクションにも関わって……と役割や場所が変化してもモチベーションは変わっていません。今後も「新しいこの制約の中でどのようなデザインができるか?」と考え直しながら取り組んでいきたいなと思っています。

またこの組織は、みんなプロダクトが好きで「そのために何ができるか」を真剣に考えている素敵な人たちばかりです。この要素は私にとって “所属の意識” という観点で大きなもので、そんな “自分たちのプロダクトが好き” なこのチームで何かよい経験をするために、自分が貢献できる役割をしっかり担っていきたいという思いが根底にあるのかなと思います。

 

――dodaリビルドグループの取り組みを続けた先に、どんな世界観を描いていますか?

和田:プロジェクトの発端である「doda」サイトのUX指標の改善、それによる事業のKPI達成、という部分だけが、最終的に目指すゴールではないだろうと考えています。リビルドによって開発環境が整うことで、開発者が「この開発がどこまで影響を及ぼしてしまうだろうか」とドキドキしながらシステムを触ることがなくなり、より開発が加速する。その結果として、企画が形になりやすくなる、という未来を描いています。

 

――そんな未来を実現するために、dodaリビルドグループのメンバーに求められる姿勢や心構えとはどのようなものだと思いますか?

和田:まずは成果がしっかりと事業に繋がるよう「事業成長のためにこの機能を担保しなければいけない」という前提をおいて。その上でエンジニアとして「どうすれば開発しやすく、この環境でずっと仕事がしたいと思えるか」を考え、提案していって欲しいと思っています。

そう考えたときユーザーはエンジニア自身でもあるということを認識し、 誰かに「イケてる環境でしょう」「こんなことができるんだ」と自慢したくなるような環境を作るために、裁量を持って主体的に取り組んでもらえれば嬉しいですね。

ただ、真剣に打ち込むことはすごいことだと思いますが、もしこの組織や取り組みが合わないと感じるのなら、きつい中ずっと頑張るのではなく、また辞めてしまうのでもなく、少し視野を広げて新たなポジションを見つけにいってほしいです。

パーソルキャリアにはさまざまなプロダクトやチームがあるので、絶対にやりたいことができる、パフォーマンスが発揮できる場所が見つかるはずですから。これまで役割や場所を変えながらさまざまなことに挑戦してきた経験から、そう願っています。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、今後dodaリビルドグループをどんな組織にしていきたいか、展望を教えてください。

和田:自分たちはもちろん、同じくdodaサイトを開発しているエンジニアの仲間に対して、良い開発体験で高い事業貢献が生み出せる環境が作れているかを一番考え、自分ゴト化してつくっていける組織でありたいと思います。

技術負債解消の加速を目指して――dodaリビルドグループ発足の裏側に迫る

――本日はありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)

 

プロダクト開発統括部 システムアーキテクト部 dodaリビルドグループ 和田 武

和田 武 Takeru Wada

プロダクト開発統括部 システムアーキテクト部 dodaリビルドグループ マネジャー

前職は金融系SIerでフロントエンド開発、UI設計、PMなどを担当。2016年4月にインテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。当初はdodaサイトのグロースハックグループに所属し、A/Bテストの開発サポートや、環境改善、リーダー業務などを経験。その後、速度改善など技術的要素が多い案件を中心にディレクション、PMを経て、現在はdodaサイト開発チームのマネジメントを担当

※2023年8月現在の情報です。