ワーキングマザーにとってのキャリアオーナーシップとは(動機〜WS設計まで)

ワーキングマザーにとってのキャリアオーナーシップとは(動機〜WS設計まで)

こんにちは。パーソルキャリアでサービスデザイナーをしている櫻井です。

自分自身の原体験から、キャリアオーナーシップについてさらに深く考え、はたらくをデザインすることにつなげていきたいと考え、自主テーマを設定し、ワーキングマザーたちとワークショップを開催しました。得られた学びや経験をせっかくなので寄稿しよう思います。

ワーキングマザーもファザーも、働きながら子育てする事を検討している方にも何かの参考になれば幸いです。

 

自己紹介&考え始めたきっかけ

櫻井 乃梨子

サービスデザイナーとしてのキャリアを歩み始めた3児のワーママ。自身の原体験から「ワーキングマザーにとってのキャリアオーナーシップ」という観点で働き方のデザインに挑戦中。

 

「キャリアオーナーシップ」は、私が入社の決め手になった言葉でもあります。

私自身、3度の育休出産、夫の海外駐在帯同と、ライフイベントという外部環境にキャリアを左右されてきました。

その中で、自分のキャリアの軸を持って納得がいく選択できてきたかというと、自信をもってイエスとは言えない。その場その場でそれなりに考えてはいたものの、漠然とした不安不満の中でなんとかやり抜いた感があります。

 

「人が喜ぶサービスやプロダクトを生み出す仕事をしたい」と思いながら点を打ち続けて、結果的に今この場に居られるのは本当に運が良かったし、バラバラに打ち続けた点の幾つかが運よく繋がってくれたおかげだと思っています。

とは言え、「キャリアオーナーシップ」なるものが、私のさまざまなライフイベントで”もみクチャ”になっている時から持てていたなら――

自分の考えや気持ちだけで、全ての条件を選択できていた頃とは違って、家族、子供というポジティブな制約ができる、いわゆるワーキングマザー、ファザーになってから、改めて自分にとっての「キャリアオーナーシップ」を考え直すことは、家族と共に自分が納得できるキャリアを築く上で重要ではないかと気が付きました。

 

そんな原体験から、標題の「ワーキングマザーにとってのキャリアオーナーシップとは」を考え、はたらくのデザインへ繋げていきたいと思い、昨年下期に自主テーマとして取り組み始めました。

 

キャリアオーナーシップってなんだ?

「キャリアオーナーシップ」という言葉自体は、情報元によって多少の表現の違いはあるものの「個人が自分の「キャリア」に対して主体性を持って取り組む意識と行動(=オーナーシップ)のこと」といった説明が多く、意味自体はとてもよく理解できるのですが、抽象度が高いと感じていました。

それが私個人にとってどういう状態なのか、というのをまずは考えてみたいと思い、N=1で自分にとってのキャリアオーナーシップがある/ない状態とは何かを考えてみました。

※これまでの私自身の体験から、個人の主観でまとめてみたものですので、その限りではありません。

それぞれ裏表ではあるのですが、ある状態としては、

  • 現状のメイン業務と自分の価値観とが合致している
  • 自己決定感が伴っている
  • 家族とのバランスが取れている
  • 現状の仕事に思考や選択が縛られていない、自由度が持てている

ない状態としては、

  • 現状と仕事とやりたいことがずれている
  • 仕事に対する自分の価値軸が安定していない
  • 仕事とそれ以外の時間的、心理的バランスが取れていない
  • 視野が狭い、見通せていない

などが出てきました。

 

この簡単なワークではありますが、「キャリアオーナーシップ」というものが自分に落とし込んだ時に、望ましい状態、望ましくない状態が具体的に見えてくるな、少なくとも自分の言葉で表現することでより思考が深まりそう、という感覚がありました。

 

一方で、学術的に「キャリアオーナーシップ」を具体化したものがパーソルキャリアが運営する”キャリアオーナーシップ リビングラボ”がまとめていたので、それらのカテゴリを用いて、自分のキャリアオーナーシップを可視化してみました。

ここでは、キャリアオーナーシップに関する文献からさまざまな要素を抽出、分類、カテゴリ化し5つの中心概念としてまとめられていました。

一番下位の部分を省略して抜粋したものが以下の通りです。

A. 軸を起点にありたい自分の生き方を構想する

 a1:自分らしく生きるための軸を持つ

 a2:未来起点でキャリアを設計する

B. 自己を理解し、仕事を通して自己実現・表現する

 b1:仕事を通して自己実現する

 b2:個性を理解し自己を表現する

 b3:挑戦することで未来を切り開く

C. 心の内側にある好奇心やモチベーションを起点に行動する

 c1:モチベーションを維持する

 c2:精神エネルギーや好奇心を大切にする

D. 新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる

 d1:学びを積み重ねる

 d2:新しいものを受け止める

E. 自分自身・周囲と調和し、好循環を生み出す

 e1:循環を促し自分自身を整える

 e2:会社や環境と調和する

 

実現度合いも測ってみる

それぞれについて、自分がどれだけ実現しているかを可視化することで、いわゆる自分のキャリアオーナーシップ度を測れるんじゃない?とこれもやってみました。

さらに自分が現状に対して、もっと伸ばしていきたいと感じたものを★マーク。

内発的な動機に関連するものは満足できているものの、計画性や仕組みが必要な部分について課題があるな、と改めて認識しました。

このようにして、自分の視点、学術的な観点から、自分にとってのキャリアオーナーシップの現状の可視化をやってみたものの解像度がまだ低いし、より満足のできる自分にとってのキャリアオーナーシップの在り方を探るにはまだ探求が足りないことがわかりました。

 

とはいえ、過去の自分と同じようなキャリア迷子になっている、またはキャリアオーナーシップに課題意識を持っているワーキングマザーにブレイクスルーとなるようなワークとまではいかなくても、一緒に探求していく出発点としては使えそう――

とりあえず、やってみようかな!ということで、上記をベースとしたワーキングマザー向けのワークショップを開催してみることとしました。

ワークショップを設計するにあたり、さらにワーキングマザー特有のキャリアオーナーシップに関する課題の要因って何かあるだろうかと思い、ライフチャートを描いて出産前後で考えてみることに。

描いてみて気づいたのが、(当たり前ですが)産後はキャリアに関する要因が、自分の意志以外にさまざまな外部要因が影響するようになり、キャリアの価値軸が多様化するということ。その混乱期を経て、価値軸を精査していくことで少しずつキャリアオーナーシップがある状態に近づいてきたこと。

また、産前のやりたいことをやっていた時期は一見うまくいっているようでしたが、盲目的にただひたすら進んで課題意識すら持っていなかった状態で、キャリアオーナーシップがあったとは言えないかな、と改めて振り返って気づきました。

ライフチャートを通して、過去の時間軸で自分のキャリア感を見直したことで、自分が過去に大事にしてきていた価値観や、それらの変化があっての現在なんだな〜とより現在地がクリアになりました。

 

まとめ

これらを通して分かった、自分にとってのキャリアオーナーシップはこのような観点でした。

 

望ましい状態

  • 現状のメイン業務と自分の価値観とが合致している
  • 自己決定感が伴っている
  • 家族とのバランスが取れている
  • 現状の仕事に思考や選択が縛られていない、自由度が持てている

これまでのキャリアの価値軸の変遷

  • 社会人5年目まで|興味関心や、やりたいことが中心軸。成果の評価も他人軸だった。
  • 産後|人生とキャリアの調和、より自分らしく働く、心が喜ぶことを重視。

現状の課題感

  • 学びを重ねる
  • 未来起点でキャリアを設計する
  • 自分らしく生きるための軸を持つ

これらのワークに加え、ディスカッションを行うことでより自分の価値軸が浮き上がるのではないかと考え、今回の内容をワークショップとして以下のように設計しました。

  • 個人ワーク1
    • 現状のキャリアオーナーシップの可視化 自分にとっての、キャリアオーナシップが「ある状態」、「ない状態」を付箋に書き出してみる。次に指標の項目に基づいて現状のキャリアオーナーシップ度を可視化。
  • グループディスカッション1
    • ワーママにとってのキャリアオーナーシップとは? 個人ワークをもとに、ワーキングマザーにとって、特に大切にしたい項目、またその理由や、キャリアオーナーシップについて感じたことをディスカッション。
  • 個人ワーク2
    • 現状のキャリアの変遷の可視化 ライフチャートでこれまでの変遷を整理。 キャリアオーナーシップの変化と、その時々で実現できていた、いなかったと感じる項目を整理。
  • グループディスカッション2
    • ワーママ的キャリアオーナーシップの保ち方 ワーママにとって、キャリアオーナーシップが取りにくい状態とは、取れている状態とは、取りにくい状態での切り抜けかたなどについてディスカッション。

これらのワークをワーキングマザーの皆さんと一緒に実施してみました。

それらのまとめはまた次回でお伝えします。

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第2グループ ディレクター 櫻井 乃梨子の写真



櫻井 乃梨子 Noriko Sakurai

エンジニアリング統括部 UXデザイン部 サービスデザイン第2グループ ディレクター

2021年9月パーソルキャリア入社。新卒ではメーカー知財に入るが、人間中心のプロダクト開発がしたく、育休、海外駐在でキャリアが途切れながらもデザインベンチャーにてUXデザイナーへキャリアチェンジ。フリーランスなどを経て現職。家族や子育てなどのライフイベントの中でもキャリアオーナーシップが持てる人を増やすサービス創出したい3児の母。

※2022年6月現在の情報です。