データサイエンティストのたまご育成日記 vol.15 ― 番外編 ユーザビリティテスト勉強会 ―


みなさん、こんにちは!デジタルテクノロジー統括部に新卒入社した長谷川智彦です。 データサイエンティスト未経験の新卒社員がデジタルテクノロジー統括部でどんなことをやっているのか、どのように成長していくのかの学びの過程を記録していくこの企画。今回は、社内で開催されたUXリサーチグループ勉強会で学んだことに関する記事をお届けします。
UXリサーチグループのメンバーの方々にもご協力いただき、合作で発信します! 
 
2021年が始まってもう1ヶ月が経ってしまいました。早いですね。
さて、僕が所属するテクノロジー本部内では時折、社内勉強会が開かれています。基本的に業務に支障が出ない範囲であれば勉強会に参加することは推奨される環境なので僕自身も時間が許す場合は参加しています。最近は個人的にUXに興味があり、ちょうどサービス開発統括部のUXリサーチグループの皆さんがユーザビリティテスト勉強会を主催してくださり、是非とも学びたいと思い参加しました。今回はその学びのレポートです。
 

 

サービス企画開発本部 UXリサーチグループの紹介

今回は部署を横断した交流があることをお伝えしたいと思い、勉強会を主催しているサービス企画開発本部 サービス開発統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループについて、メンバーの瀧本さんにお願いし、まずはチームの紹介をしてもらいます!(ありがとうございます!)*1
◇ グループの紹介文 ◇

みなさんこんにちは。UXリサーチグループの瀧本です。グループの紹介をさせていただきますね。
パーソルキャリアには新規サービスを創出することを役割とするサービス企画開発本部の中に、UXデザイン部があり、部内にUXリサーチグループがあります。
2020年5月から発足したグループで、2021年1月現在、5名のUXリサーチャーが在籍しています。

UXデザイン部の役割は、「ユーザー体験価値の最大化」であり、その中でのUXリサーチグループの役割は「ユーザーを深く理解し、企画開発の起点をつくる」こと。
課題のヒアリングフェーズから関わり、プロジェクト進行に伴走するようなかたちで、ユーザーとビジネス視点が交わるところ及びユーザーとデザイン・エンジニアリング視点が交わるところのユーザー視点の提供を行っています。

サービス企画開発本部では、複数のプロジェクトが立ち上がり進行しているため、UXリサーチャーも複数プロジェクトに横断して関わっています。中でも、リサーチャーが意識しているのは、プロジェクト推進という文脈であり、一方的なユーザー視点の押し付けをしないことです。
UXリサーチャーが複数名いる組織というのは、まだ少ない状況かもしれません。
UXリサーチグループは初め3名からスタートしましたが、組織に対してUXリサーチの認知促進を図るべく、部をまたいで参加できるような勉強会を定期的に開催しています。勉強会では、UXリサーチにまつわる書籍のレビューやジョブ理論などを取り上げ、サービス企画開発本部以外の方にもご参加いただきました。毎月の勉強会はUXリサーチグループメンバー全員が分業で運営に携わっており、参加された皆様の満足度を高めるべく質の高いものを提供できるよう努めています。

 

このUXリサーチグループの活動のおかげで、僕も普段ならやらせてもらう機会のないユーザビリティテストを経験することができ、大変勉強になりました。これからもUXリサーチグループの勉強会には参加しようと考えていますが、そのうち自分からも何か提供出来たらと感じているので、そのためにまずはスキルアップを頑張ります。


ユーザビリティテストとは?

それでは、本題のユーザビリティテスト実習の内容や学んだことについて書いていこうと思います。
しかしその前に、いきなりユーザビリティテストと書きましたが、そもそも『ユーザビリティ』とはそもそも何なのでしょうか?
ISO(国際標準化機構)のユーザビリティの定義(ISO9241-11)を引用するとユーザビリティとは『特定のユーザーが特定の利用状況で指定された目標を達成するためにサイトを使う際の、有効さ、効率、満足度の度合い』であると書いています。
ここで注意しておかないといけないのが『特定の』という単語が使われていることです。
サービスの企画や開発に乗り出す際にはそのサービスで解決したい課題を持つユーザーのイメージを共通して持つためにペルソナを設定します。誰にでも合わせるのではなく、特定のユーザーとした方が、解決する課題が明確になり、どんなサービスを作るべきなのかがわかりやすくなるからです。なので、この特定のユーザーが利用する特定の状況を設定し、Webサイトやアプリ上でいかに違和感や迷いなくスムーズに目的の行動を行い、達成できたことで満足するかを定義したのがユーザビリティとなります。
 

ユーザビリティテスト実習では何を行ったのか?

一般的にユーザビリティテストでは、作成したWebサイトやアプリのユーザビリティを調べるため、実際に協力者の方に目の前で使ってもらい、その際の使用する様子や考えていることを観察・ヒアリングすることで、設計したアプリ等がこちらの意図通りに操作してもらえるかを確かめ、課題を掘り起こしていきます。
これは僕が実習で感じたことなのですが、自分がアプリについて知れば知るほど、利用者がこちらの意図してくれているように動くだろうという思い込みができてしまいました。やはりこうした思い込みがあると何が課題となっているのか作成側はわからなくなってしまうことがあるそうです。なので、実際の現場ではリサーチャーが客観的な立場からツールの改善点や課題を発掘して、それをプロジェクトメンバーに伝える、というところを実際の業務では行っています。
 
 それでは次に実習でどのようなことをしたのかについて書いていこうと思います。今回のユーザビリティテスト実習では以下のことを行いました。
ーユーザビリティテスト実習の内容 ・ユーザビリティテストに関しての講義
・実習の説明
・実習で利用するアプリの選定と調べたいタスクの選定
・シナリオの作成
・実践2回
・参加者での共有

 勉強会は月1回の頻度であったのですが、まずはユーザビリティテストと実習の説明を受けました。ここで今回の勉強会では講義にとどまらず、実際に参加者の方にもユーザビリティテストを体験してもらうことを伝えられました。
説明を受けた後は、ユーザビリティテストで使いたいアプリを選んでくることと、そのアプリを通して確認したいタスクを決めてくることが宿題として出されました。
ここでのタスクとは、先ほど挙げたユーザーに成し遂げてほしい目的の行動のことであり、シナリオとは、ユーザビリティテストを行う上での進行の流れや話す内容、会話パターン、注意事項をまとめた台本のことをいいます。


(実際に作ったシナリオです。)

実際にユーザビリティテストを自分でやってみると気づくのですが、このシナリオ作成において、相手の反応をイメージして会話のパターンを入念に準備しておくことが大事になってきます。例えば、サービスを利用する場面をテストの協力者に具体的にイメージしてもらえるよう、初めは説明も兼ねた会話から入るのですが、この際、相手が普段から行っている習慣からタスクにつながるように状況をイメージしていただいた方が相手も理解しやすくなり、普段の利用状況に近づけることができます。
実習では2回ほどユーザビリティテストを自分で行う機会があり、僕はスマホアプリでコーヒーのオンラインギフトチケットを友人に送ってもらうことをタスクとし、1回目ではやってもらいたいタスクの説明につなげるために友人に普段プレゼントを贈ったことがあるかどうかから会話をはじめ、オンラインギフトチケットを送ったことがあるかどうかまでの会話を行いました。
しかし、コーヒーなどに限定したギフトチケットを送る機能があるアプリにもかかわらず、コーヒーのことについては一切会話では触れなかったため、インタビューの協力役をしていただいた方にとっては、いきなりコーヒーの話が割り込んできた形になってしまい、初めは操作のイメージがわきづらかったそうです。なので、2回目では会話にコーヒーの話題も入れるように改善しましたが、コーヒー飲みますか?とスマホでギフトチケットを送ったことはありますか?の会話をぎこちなくつないでしまったので、自分自身としては改善の余地はまだまだあるなと感じました。
このような感じで、実際にテストを始めると意外とどのように会話を進めていくか悩んでしまうことになるので、あらかじめ考えれる会話パターンをシナリオに書いて準備しておくことが大事だと感じました。
また、実習ではユーザビリティテストをする側だけでなく立場を交代してインタビューを受ける側も行い、これらの中で難しかったことや悩んだこと、感じたことを参加者全員で共有しました。
すべてを書いていると終わらなくなるのでその中でも特に実感したことや普段の定量的なデータ分析の視点も踏まえて感じたことについてまとめていこうと思います。
 

実習を通して印象に残ったこと

今回の実習を通して以下のことが印象に残りました。
\\ ユーザビリティテスト実習で印象に残ったこと //
・リサーチャーは中立的な立場を意識する必要があること
・インタビューを受ける側の立場を経験した時、インタビュアーに合わせようとする思考が働いたこと
・定量調査と定性調査の行き来ができると理想的に感じたこと

まず1つ目に関してですが、中立的な立場とは何ぞや?ってとこだと思います。ユーザビリティテストを行うにあたって、リサーチャーの方から教えていただいたのが、リサーチャーは開発者にも候補者にもよらないあくまでも客観的な第3者の立場で臨むことを意識されているそうです。
この意識付けが意外と難しく、実際にやってみるとなかなかうまくできませんでした。調査前にはもちろんアプリを自分でも使っていろいろと準備をしたのですが、アプリについて知ってしまっているがゆえに、タスクを達成してもらうために誘導してしまいたくなったり、「このやり方でいいんですかね?」と聞かれたときに「はい、そうですね」とつい答えてしまうことがありました。
ただそうしてしまうと、本来何もない中でユーザーがどのように動くのかを知りたかった場合、ユーザーが自然にするような行動が観察できなくなったり、見つけられたかもしれない課題を見つけられなくなってしまいます。なので、リサーチャーはあくまでも中立な立場を心がけるそうです。
なら、話しかけられたときどうしたらいいのだと思い、質問をしてみたところ、「そうなんですね、どうしてそう思ったのですか?」など、あくまで自分もそのことは知らない立場を取り、どうしてそのように行動したのか、どんなことを今考えているのかを聞くといいとアドバイスを受けました。切り返し方を身につけていらっしゃるのは流石でした。


(実際にユーザビリティテストを行っている様子です。オンラインでスマホ画面を映しながら行いました。)

次はインタビューを受ける側になったときに印象に残ったことです。今回の実習では自分でリサーチャー役をやるだけでなく、役を交換して、インタビューを受ける側も体験しました。普段ユーザビリティテストを受ける側に回ることもないのでこちらも新鮮な感覚でした。
しかし、いざやってみると僕の性格なのか、普段はやらないタスクでも相手に気を使ってうまくやってみようという心理が働きました。今回、実際に僕が行って欲しいと依頼されたタスクは、あるアプリでブックマーク機能を使って保存してほしいというものでした。ただ、実をいうと僕は今までブックマーク機能を使ったことがなく、検索エンジンでいいサイトを見つけたときもお気に入り登録とかもしてません。なので、おそらく、実際にアプリにブックマーク機能があったとしても「使わない」が本来の僕が行うだろう行動なのですが、今回はタスクとして行う、かつ、人に見られるとうまくやろうとする癖もあり、達成しようと頑張ってしまいました。こういった面で、テストする相手の選び方も大事なことに気づかされるとともに、テストを受ける側はいかに普段通り行動してくださいと言われても、相手を意識してしまう人もいることがわかりました。こうした視点もテストを考察するうえで大事だと感じました。

最後は僕がこうありたいと日頃から考えているためかもしれませんが、定量分析と定性分析の2つの手法を使いこなせるといいなと考えています。別の記事でも書きましたが、定量的なデータ分析は仮説の数値的な裏付けや過去、現状の把握に適しています。ただ、どうしてそうなるのか?といった理由や人の心理的な機微をつかむとなると難しかったり、あるいは工数がかかってしまう面が出てきます。一方、ユーザビリティテストはどちらかといえば定性的な調査に入ります。こちらは数値的な厳密性や統計的な優位性を示すのは難しいですが、心情や行動の理解、意見の把握、課題の発見に関しては適した手法です。どちらも得手不得手がありますが、両者を組み合わせられるといいサイクルができると思います。
例えばアプリである機能画面に移るためのボタンを作ったとします。数日後、ログデータを解析すると他の機能より新たに実装した機能への移行率が低いことが分かりました。ここで、定量的な分析を行うことで移行率が低いことが数値的にわかりました。しかし、なぜ低いのかは仮説までしか立てれません。そこで定性的な調査をしてみると、実装した機能に移るためのアイコンボタンがその機能を表していることが伝わりにくく、ユーザーがタッチしていないことが分かったとします。なので、アイコンをわかりやすいように変えることにしました。ここでの、実際に使う人に聞いたり、使ってもらうところを観察したりすることで課題を掘り起こせるのが定性調査のいいところです。次に変更したことで実際に効果があったのかを定量的に評価すると、前回よりも数値的に移行率が上がっていることがわかりました。このように実際の効果を数値的に裏付け出来るのは定量的な分析のうまみだと思います。こんな感じで定量的な分析と定性的な分析を行き来できるとサービスの質の向上に貢献できるようになるなと考えているため、今回のユーザビリティテスト実習にも参加した感じでした。顧客の価値体験の向上のためにデータサイエンスやリサーチの手法を使うといった流れが自分から発信できるようにこれからも頑張ろうと思います。

またここに関してはUXリサーチグループの方からもコメントをいただきました。


「長谷川さんは、一番初めの勉強会から参加してくださり、質疑応答でも積極的にご質問いただいてました。普段の業務では定量データを扱うことが多いかと思いますが、定性調査へ興味を持っていただくことは率直に嬉しいです。定量・定性のアプローチ方法を両方知ることによって、よりユーザー視点への理解が深まると思っています。勉強会では、定性調査を取り上げることが多いので、知見をぜひ生かして多角的に捉えられる視点を一緒に得ていきたいなと思いました。」

 
こちらこそありがとうございます。いずれ僕からもお返しできるように頑張りますね。

最後に

1月は番外編ということで新卒採用Q&Aと社内勉強会について発信させていただきました。こういった社内勉強会は結構行われていて、いろんな方が参加されています。少しでも社内の様子が伝われば幸いです。
次回からは再びデータサイエンスの内容を発信していきます(そろそろ深層学習の記事も書きたいです)。それでは次回のデータサイエンティストのたまご育成日記をお楽しみにしていてください!


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長谷川 智彦 Tomohiko Hasegawa


デジタルテクノロジー統括部 データ&テクノロジー ソリューション部 アナリティクスグループ

大学時代の専攻は植物学・分子生物学。最近趣味でデザインをかじり出した社会人1年目。植物の実験データを正しく解釈するために統計を勉強し始め、データ分析に興味をもつ。データサイエンスはただいま必死に勉強中。



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瀧本 はろか Haroka Takimoto


サービス開発統括部 UXデザイン部 UXリサーチグループ

新規事業開発をメインとするサービス開発統括部に所属し、企画段階〜プリプロ〜リリース後などのタイミングでのUXリサーチを行う。前職のITベンチャー(CtoCマッチングサイトプラットフォーム)でのユーザーインタビュー経験や開発ディレクション経験などをリサーチに活かしている。現在は退職。

※2021年1月現在の情報です。

*1:※瀧本は退職していますが、本人の同意を得て掲載をしています。