
OOUI(オブジェクト指向UI)は、プロダクトの構造を整理し、ユーザーにとって自然な体験を生み出す設計手法として注目を集めています。しかし、その概念を理解するだけでなく、実務の中で活用するには高いハードルがあります。
パーソルキャリアのデザイン組織では、そうした課題を乗り越えるため、1年間にわたる社内ワークアウトを実施し、OOUIを“実務で使えるスキル”として組織に定着させる取り組みを行ってきました。
今回は、この取り組みを企画・推進した長沢、参加者として後藤・大橋の3名に、ワークアウトの背景や工夫、そこから生まれた変化について詳しく聞きました。
- “わかる”から“使える”へ ―― OOUIを実務に根づかせるための挑戦
- 正解のない問いに向き合う力を育てる。再現性重視の実践型ワーク
- 継続的なワークを通じて思考の軸が生まれ、感覚的なデザインから論理的な設計へ
- 学びを力に、事業の成長へつなげる。根拠を持って語れるデザイン組織を目指して
“わかる”から“使える”へ ―― OOUIを実務に根づかせるための挑戦
――本日はよろしくお願いします。まずは、みなさんの自己紹介とOOUIとの関わりについて教えてください。
長沢:新規事業領域のリードデザイナーを担当しており、UIUXデザインチームのサブマネジャーを務めています。

私たちのチームでは「OOUI」をUI設計における重要なスキルとして位置づけています。これまでも「OOUIとは何か?」という基礎知識や概要を共有するワークに取り組んできました。
しかし、より実務に根ざしたスキルとして定着させたいという想いから、今回の「OOUIワークアウト」を企画・推進しました。
後藤:長沢さんと同じ新規事業に携わっており、リードデザイナーとしてUIUXの全体設計を主導しています。

OOUIは、入社前に実施されたOOUIワークショップの記事で初めて知り、興味を持ちました。現在は新卒研修にも関わっており、OOUIの基礎を伝える立場でもあります。今回のワークアウトでは、より実践的に活用できるようになりたいと考えていました。
大橋:私は入社3年目で、法人向けのプロダクト「HR forecaster」のUIデザインを担当しています。

OOUIの概念は新卒研修で後藤さんから教わり、基礎的な考え方は理解していました。ただ、実務でどう活かしていくかまでは落とし込めていませんでした。今回のワークアウトを通して、OOUIの設計思想をより深く理解し、日々の業務で使いこなせるスキルとして身につけたいと思っていました。
――OOUIワークアウトを立ち上げた背景を教えてください。
長沢:今回のワークアウトには、大きく2つの目的がありました。
一つ目は、OOUIを「実務で使えるスキル」として定着させることです。これまでも新卒研修や勉強会はありましたが、基礎的な学習にとどまり、実務では知識のある人に確認しながら進める状況が続いていました。
そうなると、一部の人に負荷が集中してしまい、組織全体の成長スピードも鈍化します。だからこそ、一定レベルでOOUIを扱えるよう、実務での活用を前提とした“体系的なスキル習得の機会”が必要だと感じたんです。
二つ目は、パーソルキャリアが推進する「学び合う組織」を、活性化させるための仕組みづくりです。社内におけるPE制度(※)では等級が定められていますが、等級が上がるほど「教える時間」が増え、「より学ぶ機会」が減ってしまうという構造的な課題がありました。
そこで、基礎スキルを初級層のメンバー同士で学び合う場をつくることで、互いに知識を高め合える状態にしたいと考えたんです。結果として、上級層はより専門性の高いスキル習得に集中できるようになり、組織全体に「より専門性の高い学びの循環」が生まれることを目指しました。
※プロダクト・エンジニア(PE)制度
プロダクト開発に携わるテクノロジー人材を対象とした評価制度で、職種やグレードごとに求められる役割やスキルを明文化し、成長や貢献を評価する仕組みです。
――OOUIのスキルを、なぜ組織に広めたいと考えたのでしょうか?
長沢:OOUIを理解すると、UIの情報設計がしやすくなり、変更や拡張にも柔軟に対応できる「長期的に運用しやすいUI」が実現できます。
ただ実際には、多くのUXデザイナーは、個別の“良い体験”を設計するスキルは持っていても、プロダクト全体を合理的に設計する方法を学ぶ機会は、あまりないんです。
OOUIは、まさにそのギャップを埋める有効なアプローチだと感じています。私自身も実際にワークに取り組む中で、理解が深まるほど設計のスピードと質がどんどん向上していく実感がありました。
そのため、まずは実際に“体験”してもらうことが大事だと思っています。そして、OOUIのスキルが組織全体に浸透すれば、より良いプロダクトを安定的に生み出せる組織になると考えています。
正解のない問いに向き合う力を育てる。再現性重視の実践型ワーク
――OOUIワークアウトを実施するにあたって、工夫したことはありますか?
長沢:取り組みづらくなる原因をなるべく解決し、安心して取り組める環境づくりを意識しました。

まず、学習時間は事業貢献につながる活動として業務時間扱いとし、必要な書籍の購入費用も会社が負担するようにしました。さらに、個人目標に「ワークアウトを完走すること」を加えるように促し、努力が評価される形にしました。
取り組みを業務の一環として位置づけたことで、メンバーが高いモチベーションで学びに向き合える状態を整備しました。
――カリキュラムは、どんな方針で設計されたのですか?
長沢:カリキュラムの内容は、私自身も取り組んだことのあるOOUI関連書籍に掲載されたワークを活用しています。
加えて、運営は参加メンバーの一人に担当してもらい、私はあえて裏方に回りました。運営者には、各回終了後のアンケートをもとに、方向性を見直してもらいました。
学びの循環をつくることを意識し、誰もが再現・運営できるよう、カリキュラム全体はシンプルかつ汎用性の高い構成にしています。
――具体的な取り組みの流れを教えてください。
長沢:隔週で1回、約1時間のセッションを1年間継続して行いました。各回のファシリテーターを交代制にし、全員が進行役を経験できるようにしました。
セッションでは、ファシリテーターがその日の課題を読み上げたあと、参加者は各自のスタイルで30〜40分間ワークに取り組みます。ツールの選定も自由で、Miro(オンラインホワイトボード)やFigmaを使う人もいれば、紙とペンで手を動かす人もいました。
最終的に、アウトプットはすべてMiroに集約し、その後、2〜3人のグループに分かれて発表・ディスカッションを行いました。
――特に意識したポイントはありますか?
長沢:特に意識したのは、参加者の「マインドセット」を整えることでした。私はデザイナーにとって、大切なのは「主張する力」だと思っています。
主張するためには、「なぜそうするのか」という意図と根拠を持ち、それを言語化することが必要です。今回のワークアウトを通じて、そうした力を育てていきたいと考えていました。
そのため、ワーク中に「正解はない」と繰り返し伝えていました。大切なのは、自分なりの仮説とロジックを持ち、それを相手に伝えることです。だからこそ、毎回のセッションの最後には、一人ひとりが自分の考えを言葉にして発表する時間を設けました。
継続的なワークを通じて思考の軸が生まれ、感覚的なデザインから論理的な設計へ
――1年間の取り組みを通じて、参加者に変化は見られましたか?
長沢:もっとも印象的だったのは、一人ひとりのOOUIスキルが目に見えて向上していったことです。
初めのころは、モデルの構築やインタラクション設計など、基礎プロセスに戸惑いも見られました。しかし、終盤には理解が深まり、各自が自分の思考に沿って効率的に進められるようになっていたんです。
単にステップを省略するのではなく、本質を捉えたうえで要点を押さえ、自信を持って意見を伝えられる状態になっていました。
その変化から、今回の取り組みでは「限られた時間の中で何に注力すべきか」を見極める力も養われていたと感じます。
――お二人は、ご自身の成長をどのように感じましたか?
後藤:他のメンバーとアウトプットを見せ合う中で、「人によって正解は違う」と実感できたことが重要な気づきでした。言語化は大変ですが、学びが深まったことで、自分の設計意図も以前より自信を持って伝えられるようになりました。

大橋:最初は、書籍に沿って丁寧にステップを追うことに時間がかかっていました。ただ、回を重ねるうちに、「まずは形にしてみる」という意識に変わっていったんです。
隔週のワークを通じて試行錯誤する習慣が身につき、自分なりの判断基準や思考の軸ができてきたのだと思います。
――学びを実務に取り入れてみて、どんな気づきがありましたか?
後藤:OOUIを実務に取り入れてみると、アウトプットの質が明らかに上がった感覚がありました。その成功体験が自信につながり、今では自然とプロジェクトの中に取り入れています。
新機能の検討や既存画面の改善でも「この情報設計でいいのか」「これが今必要なのでは」といった問いを持てるようになったのは、大きな変化だと思います。
大橋:以前は、過去のUI事例を参考に、感覚的に組み立てることが多くありました。しかし今は、「なぜそのレイアウトなのか」「なぜこの要素が必要なのか」といった設計の意図を、自分の言葉で説明できるようになりました。

長沢: 私はワークアウトの題材である書籍を学んだことで、定量的な成果も出ていました。
あるプロジェクトでOOUIを用いて再設計を行った際、当初は画面数が30件ほど必要だと考えられていたのですが、10件まで減らせたことがあります。
画面数が減ればユーザーがサービスを使いこなしやすくなりますし、テストや開発工数の短縮にも繋がります。
今回の取り組みを通じて、メンバーたちがこうした効果を再現できるようになれば、組織としてさらに大きな価値が生み出せると期待しています。
――OOUIの理解が深まることで、どのような広がりを感じていますか?
後藤:OOUIの考え方を理解したことで、明確にデザインの意図を他職種の方にも伝えられるようになりました。また、自然とユーザー体験を意識した発想がしやすくなるので、企画職の方にも有用なスキルだと思います。
だからこそ、OOUIの価値を他職種の方にも伝え、組織全体に広げていくことも、私たちの大切な役割だと感じています。
学びを力に、事業の成長へつなげる。根拠を持って語れるデザイン組織を目指して
――パーソルキャリアでの学びの環境には、どんな特徴があると思いますか?
大橋:デザイナーに求められるスキルは幅広く、トレンドも常に変化しています。その中で「何から手をつければいいのか」と悩むことも少なくありません。
そんな中、パーソルキャリアには、学びに前向きな人が多く、自発的に情報を共有する文化があります。ふとした雑談やチャットから「面白そう」と思えるきっかけが、社内にたくさんある環境は、とてもありがたいですね。
長沢:社員一人ひとりが自発的に学び、非体系的な情報発信が盛んな風土は強みだと感じています。

また、組織としての基盤を強化するには、全員が共通で持つべき“基礎スキル”を体系的に学べる仕組みも必要です。
今回の取り組みでは、その起点となるような、学びを周囲にも広げていけるような「学びをリードできる存在」が育ち始めたことも、一つの成果だと思います。
――今回の取り組みを終えて、どのような手応えや今後の展望をお持ちですか?
長沢:この1年間の取り組みは、自信を持って「やりきった」と言える内容になりました。終了後のアンケートでも全体的に満足度が高く、取り組んでよかったと実感しています。
また、参加メンバーは今回のワークアウトを主導できる状態なので、誰か一人に負担が集中することなく、展開していけると思っています。
今後は、OOUIスキルが必要な人が出てきたときに、自然と広がっていくのが理想的ですね。
後藤:今回のような学ぶ場に参加できたことは、とても貴重な経験でした。今後は、自分自身も発信する側として、取り組みを広げていけたらと考えています。
大橋:社歴が浅い立場で参加しましたが、すごく良い学びになりました。だからこそ、後輩にも自信を持って勧めたいと思います。学ぶ側から“教える・広げる側”として、自分主体で取り組んでみるのも楽しそうだなと感じています。
――OOUIを取り入れたいと考えているチームや組織に向けて、メッセージをお願いします。
長沢:まずは基礎的な学習から始めて、さらにスキルアップが必要になったら、今回のようにチームや組織を巻き込んで、体系的に学んでいくのが良いと思います。
もし進め方に迷ったら、今回取り組んだ内容をそのまま参考にしてもらえれば、きっとスムーズに始められるはずです。私たちの事例を“ひな形”として、どんどん活用してもらえたら嬉しいです。
――最後に、今回のOOUIワークアウトをきっかけに、今後どのような変化を期待していますか?
長沢:デザインという仕事は、特に言語化の力が求められます。ただ「なんとなく良さそう」という感覚に頼っているだけでは、他職種の方との建設的な議論は難しく、設計の質も伸び悩んでしまいます。
だからこそ、OOUIのような構造的な思考法を通じて、根拠を持って「主張できるデザイナー」を増やしていきたいと考えています。今後もこうした取り組みを通じて、学びが連鎖し、自然と広がっていく文化を根づかせていきたいですね。
それが結果として、より良いプロダクトを生み出す力になり、事業の成長にもつながると信じています。

長沢 Nagasawa
新規サービス開発本部 新規サービス開発統括部 デザイン&エンジニアリング支援部 新規デザインG リードデザイナー
事業会社にデザイナーとして新卒入社。UIデザイン以外にも企画、UXリサーチ、プロジェクトマネジメントを経験。事業と仮説検証を理解したUIデザイナーの必要性を感じ、専門性を高める為に転職活動を開始。2021年に、デザイン組織のあり方に共感したパーソルキャリア株式会社に転職。

後藤 悠伽 Haruka Goto
新規サービス開発本部 新規サービス開発統括部 デザイン&エンジニアリング支援部 新規デザインG リードデザイナー
2021年4月にパーソルキャリアへ新卒入社。 大学ではデザインと工学を幅広く学び、特にWebデザインとコーディングに関心を持つ。 入社後は複数の新規サービスに携わり、現在は課題整理からUIデザインまで一貫して取り組んでいる。

大橋 芽生 Mei Ohashi
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 クライアントプロダクトデザイン部 デザイン第2グループ
2023年に総合大学の造形学部を卒業。大学時代は主に情報デザイン(インフォグラフィクス)や、ユーザー調査・分析などのデザインリサーチの手法を学び、2023年4月にパーソルキャリア新卒入社。現在はHR forecasterのUIデザインを担当している。
※2026年1月現在の情報です。
