押印や資産管理の在り方を見直す――IoTプロジェクトの取り組みと変化

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With/Afterコロナの世界を見据えて高速で進められた、IoTプロジェクト。ICカードをかざすだけで交通費精算ができる機器を作り、リモートワークが進んだ世界でも、実費精算が簡易に行える仕組みを構築しました。

この取り組みを完遂したメンバーが次に取り組んだのは、「押印の電子化」と「資産管理の棚卸自動化」プロジェクトです。複数の組織が関わるこれらのプロジェクトはどのように進められ、どのような成果をあげたのでしょうか。キーマンとなる3名に話を聞きました。


※撮影時のみ、マスクを外しています。

何気ない雑談から、2週間で新規システム完成へ

 

――今回、IoTグループとビジネスグループが主導して「押印電子化」「資産管理の棚卸自動化」の2つのプロジェクトを完遂させたと伺っています。まずはプロジェクトにおける皆さんの役割から教えてください。

 

草薙:開発はIoTグループから、吉川さんと私で担当しています。吉川さんはフロント部分の構築や法務・経理など関係各所との調整を、私はシステムの基盤構築や障害時にアラートを発する仕組みづくりなどを行いました。

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デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 IoTグループ エンジニア 草薙 駿

 

平林:私はWebディレクターに近い立場として、関係者との細かな調整や二人のサポートを行っています。

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デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ リードストラテジスト 平林 正己

 

――押印電子化プロジェクトは、どのようなきっかけから立ち上げられたのでしょうか。

 

吉川:コロナ禍で緊急事態宣言が発令された状態が長く続いたことを受け、押印の遅滞による機会損失が非常に多く起きてしまっていることが、課題としてあがっていました。

この状況を受け、総務部の方から「押印を自動化するシステムをできる限り早く実装し、機会損失を最小にしたい。何かいい手はないか」と何気ない会話の中で相談をもらったことをきっかけに、システム構築に向け動き出すことになりました。

 

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デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 IoTグループ シニアエンジニア 吉川 聡

 

――そこから、どのようにプロジェクトが進められたのですか?

 

吉川:求められることは、電子署名のような複雑なものではなく、認印で構わないのでなるべく早く実装すること。なので機能は限定的に、QRコードを用いて押印ができる仕組みのみを付加した書類回覧システムを作ろうと考え、すぐに構築に移りました。

総務部の方からお話をもらった翌週にはデモシステムを仕上げて持っていき、いくつか修正したい点をフィードバックいただいて、翌週までに直して。システム自体は2週間ほどで完成しています。

その間にはセキュリティ上のルールや契約関連の法令について、例えば「2022年1月施行になる改正電子帳簿保存法にどう対応するか」などの調整も並行して行っていました。基本は総務部の方が窓口となり、社内の法務・経理やパーソルホールディングス(以下、ホールディングス)の方々とやりとりすることになりますが、システム的な部分については私たちプロジェクトメンバーでも補佐させていただいています。

 

――今回システムは新規で内製開発されたということですが、技術的なポイントを教えてください。

 

草薙:インフラについては、GCPを使って構築した点ですね。当社内のルールなどの兼ね合いもあり、AWSよりもGCPの方がスピーディに環境を構築できることからも、今回はGCPを選択しました。その判断を早めにしたことがポイントだったかもしれません。

 

吉川:フロントエンドについては、Webシステムとしては非常に一般的な作りですが、レンダリング用のフレームワークは独自で作成したものを使っています。Angular, React, Vue.jsなどさまざまなフレームワークがありますが、どれも機能がリッチすぎるんですよね。

内製したことで、「込み入った大規模なことはできなくていいから、思ったことをすぐに実現する」、そんな軽快な開発ができました。スキルトランスファーのコストを考えなくて済む、実質2名の小規模組織だからこそとれた選択肢かなと思いますね。

 

2〜3ヶ月かけて行っていた棚卸し作業を、新規システムで「8営業日で98%完了」まで短縮

 

――続いて、資産管理の棚卸し自動化プロジェクトが始動した背景を教えてください。

 

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吉川:これも総務部の方からご相談をいただいたのがきっかけです。これまでの資産管理は、PCやスマートフォン、セキュリティカードなどの番号を社員が転記し、総務部の方が元帳と突合する流れで行っていました。

ただ4万5000件ほどもある資産を管理する中で、誤記が非常に多かったり、元帳と突合する際にも合っているかを確認するのが難しかったりと、多くの手間がかかっていたそうで。

 

平林:回答を促す社員へのメール連絡も総務部の方がすべて行っており、例年2ヶ月半〜3ヶ月ほどの期間かかりきりにならなければいけなかったそうです。その一連の業務をなんとか自動化したい、というお話でしたね。

 

――多くの労力や時間が割かれていた作業を、どのように変えていかれたのでしょうか。

 

平林:システムの概要としては、社員一人ひとりにメールを送り、社員が確認して回答すると、元帳にデータが反映される形になっています。メールにはあらかじめ一人ひとりが持つ貸与物のIDが反映されているので、転記によるミスも防げますし、元帳との手作業での突合も不要になりました。回答が出揃って元帳に反映された時点で棚卸しが完了します。

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お二人が作ってくださったこのシステムのおかげで、リリースして社員にメールを送ってから8営業日で98%の回収が完了したと伺っています。

 

――短期間で、素晴らしい成果があがっているのですね。これだけの成果をあげられた要因どのように振り返られますか?

 

平林:吉川さん、草薙さんと総務部の運用者の間で、「どんなインターフェースにしたら社員がちゃんと答えてくれるだろうか」と綿密な打ち合わせを重ねられていたことが一つ大きかったのではと思います。

 

吉川:あとは地味な部分ではありますが、システムに元帳のデータを取り込めるように、必要なデータを精査して整理したところが一番のポイントだったと思います。

IDも、もとはPCとスマートフォンとセキュリティカード、その他用度品……とすべて別体系で管理されており、中にはIDが振られていないものもあって。今回は別系統でIDを振り直し、統一的に扱えるような仕組みに変えました。外からは見えない、こういった整理ができたことが大きかったなと振り返ります。

 

――どちらのプロジェクトも社内外に数多くの関係者がいる中、単にシステムを構築して導入するだけでない苦労があったのではと推察しています。特に大変だったところや、工夫された点があれば教えてください。

 

草薙:吉川さんとご一緒しているからこそ、技術的に難しいことは特になかった印象ですが、やはりホールディングスの総務・経理の方々との調整は大変でしたね。

特に改正電子帳簿保存法については、法律を満たすためにシステムの条件などが細かく指定されているので、すり合わせを行うためにも経理の方々に負けず劣らず詳しくなるくらいには勉強しました。

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やはりスピード感が求められるプロジェクトでしたし、システムの精度を高めるためにも知識はどうしても必要なので。「ホールティングスに問い合わせて、回答を待っている間は何も進められませんでした」では通じないですからね。2,3日必死で法令をすべて読んですぐに実装する、という過程が大変だったかなと思います。

 

誰も手をつけられなかったものに着手し、形にするのが仕事

 

――ここからは組織にフォーカスして伺います。パーソルキャリアにおけるIoTグループの立ち位置やお役割を、どのように認識されていますか?

 

平林:側から見ている立場でざっくり表現すると、IoTチームが一つの会社というイメージです。お二人が営業もPMも関係者との折衝もして、エンジニアもやられている。予算がないけれど、お二人の会社のようなものかなと。

 

吉川:役割としては、「これまで誰も手をつけられなかった・つけなかったもの」「誰が手をつけていいかわからなかったもの」、そういったところでお声がけをいただいて形にしていくのがIoTチームかなと思いますね。

 

――IoTチームの皆さんがいなければ、誰も着手できず前進できないことがたくさんあるのだろうという印象です。少数のチームでありながら、大きな役割を担われていますよね。

 

吉川:基本的に新規のものしか作っていないので、100発打って3つようやくものになるくらいの感覚ですし、あまり派手に成果が取り上げられることはありませんが……ただ現場の方々が喜んでくださっている姿を見ると、役割は果たせているのかなと思います。

 

――これまで着手されてこなかった、難易度の高い課題に対してプロジェクトを推進するにあたり、3人の連携も重要なポイントになるのではないでしょうか。

 

吉川:そうですね。ただ役割分担を決めて連携して、というよりはそれぞれの特性の違いでうまくいっているのだと思います。私が槍を持って突撃して、草薙さんが槍を持ってついて来てくれて、平林さんが各所に「うちのものがすみません……」と言って回ってくれる(笑)。

先ほど技術選定の部分でもお話ししましたが、10名の組織だったらきっとやり方がまた違って。3人だからこそお互いがカバーしあえる、人数が少ないことの良さもありますね。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、皆さんお一人おひとりが今後チャレンジしたいことを教えてください。

 

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平林:私はエンジニアでもないですし、皆さんを引っ張っていくようなタイプでもないので、いろいろな案件に少しずつ関わって、楽しくやっていけたらいいかなと思います。

 

草薙:個人的にはやはりもっといろいろな内製システムを作ってみたいですし、今はWeb系が多いですが、今後はスマホアプリなどにもチャレンジしていきたいですね。今のチームでなら、そういった新しいことにもチャレンジできるはずだと思っています。

 

吉川:今後は……前向きな引退ですかね。自分が表に出るというよりは、草薙さんのような若い後進に道を譲って。最前線で活躍してもらえるようにしていきたいと思います。

 

――本日はありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=服部健太郎)

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吉川 聡 Satoshi Yoshikawa

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草薙 駿 Shun Kusanagi

デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 IoTグループ エンジニア

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平林 正己 Masaki Hirabayashi

デジタルテクノロジー統括部 デジタルビジネス部 ビジネスグループ リードストラテジスト

※2022年1月現在の情報です。