SFプロトタイピングのビジュアルは“あえて ヘンなものに”!?――グラフィック担当に話を聞いてみた

SFプロトタイピングのビジュアルは“あえて ヘンなものに”!?――グラフィック担当に話を聞いてみた

2023年5月、パーソルキャリアのデザイナー組織では未来の「はたらく」を自分ゴトとして考えるために、SFプロトタイピングの手法をプロフェッショナルなクリエイターの方々から学び、その発想をビジネスに活かす取り組みがスタートしました。

今回はその取り組みにおいてメインビジュアル制作を担当したデザイナーの荒井・市橋を迎え、制作のウラガワについて話を聞きました――そこには2人だからこそたどり着いた答えがあったようです。

 

挑戦的なアウトプットで、パーソルキャリアのブランドを拡張していきたい

 

――まずは荒井さん、市橋さんがパーソルキャリアで担う役割や業務内容について教えてください。

荒井:デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部で、デザイナーとして主に法人顧客向けサービスのUI・UXデザインやブランディングなどを担当しています。

 

市橋:私はカスタマーP&M本部 デザイン部において、転職サービス「doda」内の集客を担うコンテンツ制作を行っています。また兼務という形で、デザイン推進統括部における人材育成や人材開発にも携わらせていただいてきました。

 

――今回行われた、SFプロトタイピングの手法を活かした取り組みとはどんなものだったのでしょうか?

荒井:そもそもSFプロトタイピングとは、SF(サイエンスフィクション)的な思考や発想で現実の先にある “未来” を想像し、そこから遡って事業や組織の計画、戦略を考えていく手法として注目されているものです。

デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第1グループ マネジャー 荒井 康豪

デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第1グループ マネジャー 荒井 康豪

今回、このSFプロトタイピングの手法を脚本家やアニメーターなどプロフェッショナルなクリエイターの方々から学びながら、「2050年の “はたらく” の形」を考える取り組みが全社横断のデザイナー組織(NUTION)で実験的にスタートしました。

ここでの議論やワークショップを経てアウトプットを行うにあたり、私たち二人で手を挙げて、メインビジュアルの制作を担当させていただいています。

 

――手を挙げようと思ったのはどうしてですか?

荒井:私はUI・UXデザインやブランディングを、市橋さんは「doda」内のコンテンツ制作を主務とする傍ら、NUTIONによるアウトプットのクオリティを管理する役割も担っています。

その役割の中で、“パーソルキャリアのアウトプット” として最低限の統一感や質を担保するという観点での管理ももちろん行いますが、それだけに終始してしまってはデザイナー組織として少し面白みに欠けるんですよね。

さらに挑戦的なものを作って出すことで、ブランドを拡張していきたい、という思いをかねて持っていました。今回のメインビジュアル制作は、その一環だと考えています。

 

市橋:成果がすぐに数字として表れるような取り組みではありませんが、中長期的に見て、「こんな表現もできる」というパーソルキャリアのデザイナー組織としてのブランディングに繋げていけるのではと思っています。

 

「見た人がどう心を動かされるか」を考えて設計を進める

 

――どのようにメインビジュアル制作を進めていったのですか?

荒井:今回は二人でそれぞれ案を出し、SFプロトタイピングの取り組みに携わっている方々に選んでいただく形で進めました。

 

――どんな思いや発想から案を作られたのか、制作の裏側について教えてください!

市橋:今回は社内の仲間からの依頼ということで、相談や壁打ちをして相手の求めるものを探りながら作っていけるため、最初の段階では依頼者の方の期待値を想像し、それに合わせてまずはスタンダードな案をお出ししようと考えました。

カスタマーP&M本部 デザイン部 dodaデザイン第一グループ リードデザイナー 市橋 壮一

カスタマーP&M本部 デザイン部 dodaデザイン第一グループ リードデザイナー 市橋 壮一

取り組みの中で作られた短いアニメーション動画が数本あるため、ショートアニメーション集などのパッケージを参考に「世の中的に、このような見せ方があるんだ」というヒントを集めてきて。それらをふまえながら、今回のアウトプットの見せ場を考えてデザインしていく、いわゆる一般的なデザインの方法に則って作っています。

 

――荒井さんはいかがですか?

荒井:やはりブランドの拡張というのは常に狙っていて、これだけの規模や歴史があり一定信頼をいただいている会社だからこそできる、攻めたこと、“変な” ことに挑戦したいなと。そのため、今回はUI・UXデザインを作るときとは異なるやり方で進めました。

SFプロトタイピングのビジュアルは“あえて ヘンなものに”!?――グラフィック担当に話を聞いてみた

実際のメインビジュアル

アニメーション動画を見させていただいて、その内容や印象から思い浮かんだイメージを形にしていきました。最終調整の段階でグラフィティなどを参考として見ましたが、基本的には今回のSFプロトタイピングの取り組みによって生まれたものが原点になっています。

 

市橋:私たちはデザイナーであってアーティストではないので、目的や解決したい課題があり、「これを作ることでどんな効果があるか」「見た人がどう心を動かされるか」を考えた上で何かを作ります。

荒井さんは今回のメインビジュアルで「これは何だろう」「よく分からないぞ」と思ってもらおう、という意図でこの案を設計されたのかなと感じました。

SFプロトタイピングのビジュアルは“あえて ヘンなものに”!?――グラフィック担当に話を聞いてみた

荒井:そうですね、そういったユーザーの心の動きは意識して作っています。

 

NUTIONでの取り組みやコミュニケーションを通して互いを理解し、組織としての価値発揮を目指す

 

――最終的に荒井さんの案が採用されたとのことですが、意思決定までの過程や皆さんの反応も含め、ここまでの取り組みを振り返っていかがでしたか?

 

荒井:かなり攻めた私の案が採用されたのは、市橋さんの案があったからだと思うんです。私のものだけお出ししても「これで大丈夫なのか」と不安になってしまったはずですから。

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今回スタンダードなものと攻めたものを並べて議論できたことで、皆さんも「既定路線に落ち着いてしまいがちな部分を少しずつ壊していきたい」「いい意味で少し変わったことをしていきたい」という、私たちと近い思いを持っていたということが見えてきました。

 

市橋:そうですね。私はデザイン推進統括に途中から参加させていただいて、これまでの取り組みや皆さんの温度感を探っている段階でしたが、今回攻めた案が通ったことで「これを良しとする方もいる組織なんだ」と一つ理解が深まった感覚です。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、今後に向けた思いを聞かせてください。

市橋:たくさんのデザイナーさんが集まりましたが、そこから組織としての強みや個性を育てて価値を発揮するには、お互いのことを知り「誰が何をやっているのか」を理解することが必要だと思っています。そして、そういった理解は自然と生まれるものではないため、意図的にコラボレーションを生み出していく必要があると感じます。

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そういった意味で、NUTIONという全社横断の組織や取り組みが重要になるはずです。真面目にしっかりと締めるべき部分と遊び心を持たせる部分のバランスを大切にしながら、このNUTIONを継続させ、組織に浸透させていければと思います。

 

荒井:「パーソルキャリアが攻めたことをしている」と少しずつでも浮き上がるものがあれば、他の会社のデザイン組織との差別化が絶対にできるはずだと思っています。

市橋さんのおっしゃる通りバランスは大切にしながら、一方でやりすぎることをあまり心配しすぎずに。そういった挑戦的な取り組みを積み重ねた結果として、形ないものを作るデザイン組織の中でパーソルキャリアが一番の存在になっていけば嬉しいですね。

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――ありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)

 

デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第1グループ マネジャー 荒井 康豪

荒井 康豪 Yasuhide Arai

デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第1グループ マネジャー

日本デザインセンターなどグラフィック系のデザイン会社で、ナショナル企業のブランディングや広告制作を多数手がけ、ONE SHOW DESIGN 金賞、ニューヨークADC 銀賞などを受賞。その後、デジタルデザインの領域へ。大手IT企業等の新規サービス開発においてUI/UXデザインを中心に手がけ、プロダクトまでを含めた一気通貫したブランディングを実践。2022年からパーソルキャリアに参画。新規サービスやデザイン組織の開発・運営に携わっている。

 

カスタマーP&M本部 デザイン部 dodaデザイン第一グループ リードデザイナー 市橋 壮一

市橋 壮一 Soichi Ichihashi

カスタマーP&M本部 デザイン部 dodaデザイン第1グループ リードデザイナー

前部署では各法人のオウンドメディアとしての求人用ページを制作する業務に従事。2018年より現部署に異動しdoda内の集客用コンテンツのデザインおよびdoda転職フェアのプロモーションに関わるクリエイティブディレクションを担当。現在はdoda内のコンテンツ制作を管轄するチームのリーダーとして進行管理及び制作業務を行っている。

※2023年8月現在の情報です。