“全社員が本質的にデータドリブンな業務を”―――データ共通BITA部の新たな挑戦

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テクノロジー本部 インフラ基盤統括部 データ共通BITA部では、パーソルキャリアで取り扱うデータの推進および基盤整備を行う部隊です。

データドリブンな会社にしていくためにもデータ共通BITA部が担うミッションは壮大なもの。今期はデータ推進グループと、データ基盤グループでそれらのチャレンジを行います。2020年4月からゼネラルマネジャーに着任した家城に話を訊きました。

※この記事は2020年3月に取材したものです。

※家城は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。

データの活用や推進をサポート—――

——インフラ基盤統括部 データ共通BITA部が担っているミッションについて、教えてください。

家城:データ共通 BITA部のミッションの前に、その上のインフラ基盤統括部から説明しますね。

インフラ基盤統括部は、経営のアジリティを支えるための基盤・データ環境の提供を価値とした集団です。IT活用の高度化、付加価値の創出による事業貢献をするためには、基盤やデータ観点の専門性を最大限活用しなければなりません。私たちはそれを担っています。 

インフラ基盤統括部の中には、2つの部で構成されていて、1つは「システム共通BITA部」もう1つは「データ共通BITA部」です。

システム共通BITA部は、AWS推進グループとIT基盤グループの2つがあり、AWSの環境を使ったクラウド化の推進や、オンプレミスの環境を適切にマネジメントしていくことを行っています。加えてオンプレミス×AWS、Azure、GCP、OracleCloudというようなハイブリッドな構成を考えたり、AWSとGCP、AWSとAzureというようなマルチクラウドの両方を実現するための検証を行っています。

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今年の4月から私が管掌しているのは、データ基盤グループとデータ推進グループの2つで成り立つ「データ共通BITA部」という組織です。

私たちのビジョンは、パーソルキャリアの全社員が本質的にデータドリブンな業務を行っていることです。そこに向けたミッションとして、社内のユーザーにデータ活用環境を提供し、データ活用による各種ビジネス課題の解決に貢献すること、としています。

そのために、システム面でデータ活用基盤の整備や拡張、AI環境の拡張、運用保守、活用の推進をしています。

技術的な要素を細かく言いますと、データレイク、マルチクラウド、セルフサービスBI、セルフサービスAI、レコメンド基盤、セキュリティなどの話が入ってきます。

――全社員のデータドリブンな業務を推し進めることが重要なんですね…!それを活用していくまでにさまざまなハードルがあると思います…。

家城:そうですね。ハードルはあると思いますが、扱えないデータはありません。ユーザー情報、法人情報、人事情報、経営企画で扱う業績データなどさまざまです。データと呼ばれる全てのものを、この分析基盤上で扱うことになります。必要な権限設定を設けて、情報セキュリティを補っています。

一元管理することで、権限の許可が下りれば、すぐに掛け合わせて、いろいろなパターンの分析ができるようになります。しかも、スピーディーで応用も利きます。必ず守らなければならないことは、各サービスの規約で示している以上の利用は行わないことです。分析まではOKなのですが、同意いただいていない用途には使わないように注意徹底が必要ですね。

――「こういう分析をしたらどうか?」という提案も行うんですか?

家城:グループ名にも表れていますが、データ活用の推進とそれを支えるデータ基盤の整備の実施をしています。データ活用の一つとして、データのコンサルティングを実施しているので、社内でどうすれば売り上げが上がるのか、こういうデータを使いたいがどうしたいらよいかといった相談に乗ったり、AIやBIツールの使い方のレクチャーや、データの分析、提案に取り組んでいます。そこからセルフBI化の推進や、AI開発につなげています。今までは提案力が弱かったので、その部分を強化していきたいですね。

データ共通BITAの歴史からひも解く――利用標準化への道のり

――データ共通BITAはそもそもいつぐらいからあるのでしょうか?

家城:2015年前後に、今でいうエージェント事業本部の中で分析基盤が必要という話から始まりました。その時にデータを扱うコトが得意だったメンバーの知見を活かして、CRM分析基盤を立ち上げ、そこから徐々に利用が拡大していきました。

最初はニッチな分析目的の使用用途から始まり、部署全体、その後全社利用へと発展してきました。

私自身は2007年に当時のインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社し、派遣事業を担当した後、BITAのプロセスの標準化や、リソースマネジメントを担当してきました。データ共通に正式にジョインしたのは2018年4月からですね。ちょうどデータ活用経験のあるメンバーを中心に今までのCRM分析基盤から全社活用を見据えて分析基盤を変更するタイミングだったので、大変だったことを覚えています。

――分析基盤を作るという設計から入ると何をするのですか?

家城:データセンターにある基幹データからETLという処理でAWSにデータをもってきて、Redshiftの形に合わせて分析しやすくします。基幹システムは常に最新である必要があるので、今の最新の状態が正しく更新できていればよいのですが、分析基盤というのはどちらかというと時系列でデータをみられるようになっていますね。

全社利用をするうえでは権限回りについても検討しました。どの部署の人がどのデータを見て良いかということを整理して、申請書を作成して利用目的を書いてもらい、どのテーブルのどの項目を使うので許可するということを情報セキュリティの部署とすり合わせる感じです。

営業や企画を担当する社員が実際にデータを見るのはTableauやPowerBIなどのBIツールですね。

――当時はどのようなゴールを想定されて動いていたんですか?

家城:私が引き継いだ時は、2018年度末には全社でBI化が完了しているというざっくりしたゴールだったんですが、具体的な計画や完了イメージがありませんでした。そこで、さまざまな調整しながら、3月末のゴールはここという指針を打ち出し、その先は運用に乗るイメージを合意しながら着地させていきました。

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同時進行で部署ごとにデータ活用の洗い出しを一斉に行っていたので、期待値が高くなってしまい、現場からすると利用できる範囲がバラバラで、なかなか使えるようにならないというジレンマもありました。

最初は一度にすべてを行おうとはせず、メディア事業部でPowerBI、マーケティング企画統括部でTableauなどニーズのある部署にリソースを集中させていました。昨年くらいからエージェント事業本部での基幹システムの刷新に合わせてBI化もすすめられたので、現在は全社レベルで一定の水準で利用が進むようになりましたね。

――データ共通BITA部はすべての部署と直接やり取りしているんですか?

家城:すべてがデータ共通ではないですが、エージェント事業本部であればエージェント プロセス&システムデザイン部(※)、メディア事業本部であればメディアBITAのメンバーとやり取りします。規模の大きい事業部については、データや帳票回りを担当している人が数名いて、その人たちと協力して進めます。小さい事業部やまだ事業部という単位ではないところについては、データ共通が直接対応します。

※エージェント プロセス&システムデザイン部…エージェント事業本部を管轄する事業IT担当

TableauやPowerBIの利用や、分析基盤の利用状況を利用人数やPVなどを見て、それぞれ内部資料としてレポートを作り、現状把握や進捗管理をしています。以前と比べて利用頻度が落ちているということは「うまく使えていないということかもしれない」と先回りして考えるようにしています。今後は、データ推進グループが、コンサルティングの資料の一つとして使っていきたいです。

データ共通BITAのこれから――目指すは継続的な活用推進とデータ基盤の整備

――だんだんと仕事のイメージがついてきました。データ基盤グループではどのような考え方で進めているんですか?

家城:分析基盤の性能の向上はもとより、データの定義や精度/品質などを正しくマネジメントしていく考え方、「データスチュワード」と呼ばれるような役割を意識しています。また、ローデータのままのでは集計しにくいもの、人によってばらつきが出てしまうものの加工を担当します。 

――集計後、活用しやすい形にする。その分析自体に意味を持たせていく。そういう作業は常にやらないといけないですね!

家城:そうなんですが、実はまだまだ弱いところで、各部署を統一して加工修正できていないのが現状です。この集計に関して定義付けをして、誰が見てもわかる状態にしたいと思っています。先々には、データカタログのような形や、データソースはどこのものを使っている、どのタイミングで更新されているなど定義付けをしたいと考えています。

――データ共通BITA部のはたらく”リアル”を教えてください。

家城:まずは関係者が多いこと、が大変だと思いますね。部署も多いし、サービスも複雑…。スピードと質を担保しながら、現場である程度、セルフBIサービスのかたちがとれるようにしたいと考えています。

分析基盤上にテーブルが揃い、定義がわかりやすいところに掲示できるようになると、自分たちでBIツールを使いデータを引き出せるようになります。その形まであと少しという段階です。データマート化と、データカタログの整備が進むと、もっと簡単に手元でスピーディーに分析ができるようになります。

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また、そもそものデータが分かりにくいことについては問題だと思っています。というのも、これだけ大きな規模の会社にもかかわらず、基幹のテーブル構造がきれいに可視化されていないのです。結構やりにくい、という声もちらほらあります。自分のテーマとしてはもちろん、ほかの部署の課題としてもデータソースの可視化があります。

また、今はデータ共通のメンバーはここ2年以内に入社した中途がほとんどなので、事業そのものの理解もしながらなので、大変だと思いますね。例えば、dodaという一つのブランドで、求人サイトやエージェント、スカウトなどサービスが複雑……それにまつわる基幹システム、取るべきデータは有象無象にあって、中途で入社される方はやはり驚かれます。

ただ、「何もない状態から作っていける」ぐらいに、この状況をポジティブに捉えてもらえると良いと思います。 

――データ共通BITAではどのようなスキルが求められるとお考えですか?

家城:普通の企画職のスキル+データの専門性が必要です。まず、問題解決力、課題把握力が重要です。データの専門性においては、機械学習に関する理解であるとか、ETLの処理、DWHの処理、BIツールの可視化、仕組みの理解というような専門性は必要になると思います。

 ――最後に、今後の展望を聞かせてください。

家城:まずは、データの可視化です。現場と協力しながら活用までのハードルを低くして、活用の継続を促していきたいです。このミッションを達成できることを前提として、数億件レベルのデータでも、リアルタイムな更新が必要なデータでも、様々な利用目的に合ったデータ基盤を提供していきたいです。

さらに、セルフAIとして、データロボット社の機械学習のツールを使って、軽量なコンサルティングができるようになること。クラウドAIについても、人を採用し規模を拡大して2020年度も継続してやっていきたいです。

 ――ありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=THE TEXT FACTRY/撮影=古宮こうき)

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家城 一彦 Kazuhiko Ieki

テクノロジー本部 インフラ基盤統括部 データ共通BITA部  ゼネラルマネジャー

1999年に独立系SIerでキャリアをスタート。2007年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に中途入社。派遣ビジネスの基幹システム刷新を成功させた後、IT組織の統括部署に異動。プロジェクトの成功率をあげるためのメソドロジー(方法論)の確立や、スキル標準の改訂を行い、IT組織の組織力強化に寄与。ITソリューションの活用を推進するITリサーチを担当し、2018年からデータ共通BITA部に異動。2020年4月よりゼネラルマネジャーに着任。現在は退職。

※2020年5月現在の情報です。