
はじめに
プロダクト開発をしていると、つい「正解のレシピ」を求めてしまいませんか?
でも、最初から完璧な正解なんて、どこにもありません。
それでも私たちは、なぜか“あるはずのない正解”に寄りかかろうとしてしまいます。
そこで今日は、プロダクト開発に関わるすべての人に、たったひとつだけ伝えたい考え方があります。
プロダクトとは、対象へ提供したら価値があると考えている仮説である
この視点を持つだけで、プロダクトの未来は驚くほど変わると私は信じています。
今日は、この考え方をとても身近な例でお話しします。 テーマは――サンドイッチ作りです。

あなたの理想の「サンドイッチ作り」
少しだけ想像してみてください。 あなたは家族とピクニックに行く予定です。
そして、一大ミッションを抱えています。
ミッション
家族にサンドイッチを食べてもらい、 「最高!また食べたい!」と喜んでもらうこと。
材料は10個分。
さあ、どんな作り方をしますか?
ここで、家族の笑顔を目指して、2つのパターンを比べてみましょう。
パターンA:工程ごとにまとめて作る
「完璧なレシピ」を信じる進め方
| 工程 | あなたの行動 | 出来上がったもの | 家族の反応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 10個分のパンをすべて用意する | 🍞 大量のパン | (まだ食べられないので無反応) |
| 2 | 具材とソースをすべて準備する | 🍅 具材とソース | (まだ食べられないので無反応) |
| 3 | 10個すべて完成させてドンッ! | 🥪 サンドイッチ10個 | 「うーん、パンがパサパサ。味も好みじゃない…もういらないかな」 |
あらら、あまり気に入ってもらえませんでしたね。
最初に立てた計画は素晴らしいものでした。
進捗も順調でした。
ついに、あなたの"理想"のサンドイッチが完成しました。
しかし、結果は――「もういらない」
材料も時間も使い切り、修正の余地もありません。 残ったのは、"不人気な大量のサンドイッチ"でした。
パターンB:1個ずつ作って試す
「相手の好み」を探りながら作る進め方
| 工程 | あなたの行動 | 出来上がったもの | 家族の反応 |
|---|---|---|---|
| 1 | 一部の材料で、1個だけ作る | 🥪 サンドイッチ1個 | 「ありがとう! でも…ちょっとソース濃いかも」 |
| 2 | 感想をもとにソースを調整して、また1個作る | 🥪 ソースを調整したサンドイッチ1個 | 「ソースはちょうどいい! でも…パンはもっとしっとりが好き」 |
| 3 | ソースもパンも調整し、残りを作る | 🥪 絶妙な仕上がりサンドイッチ8個 | 「これこれ!パンも味付けも完璧! おいしかった、また作ってね!」 |
おや、少し変化が見られますね。
1個目、2個目のサンドイッチは"完璧"ではありませんでした。
しかし、「ソースが濃い」「しっとりしたパンがいい」というフィードバック(感想)のおかげで、残りの素晴らしいサンドイッチが生まれました。
この差はいったい何なのか?
パターンAの最大の敗因は、たったひとつ。
フィードバックがなかったことです。
仕事をしていると、
「中途半端な状態で見せるのは失礼だ」
「完璧にしてから出したい」
と思ってしまいがちです。
でも、その"見せていない時間"こそが――
「リスクが積み上がっている時間」
に他なりません。
- パターンA:「おいしいはずだ」という仮説を、最後まで検証しなかった
- パターンB:「このソースの味かな?」「このパンの食感かな?」という仮説を、検証し続けた
プロダクトを「仮説」と捉えるならば、私たちの仕事は、
「モノを作ること」ではありません。 「仮説が合っているか、いち早く答え合わせをすること」です。

一発勝負のリスクを手放そう
勘の良い方は、もうお気づきでしょう。
この「サンドイッチを1個ずつ作って試す」というアプローチこそ、アジャイル開発の本質です。
サンドイッチは一つ作って、はい終わり、ではありません。 誰かに届けてファンになってもらい、また食べてもらいたいんです。
もしかしたら、たまたま運よく、1回目のレシピで喜ばれることもあるかもしれません。
ですが、2回目、3回目…と数を重ねていったら、どうでしょうか?
ここでもう一度、最初のテーマを振り返りたいと思います。
プロダクトとは、対象へ提供したら価値があると考えている仮説である
あなたやチームの「これは良いはずだ!」は、提供するまではすべて仮説にすぎません。
そして、「絶対に正しいはずだ!」と信じ込んだ瞬間に、私たちは静かに落とし穴に近づいていきます。
おわりに:あなたの仕事の「サンドイッチ」は何ですか?
これはエンジニアだけの話ではありません。 企画でもデザインでも、あるいはメール一本でも同じです。
自分の中で100点を取るまで抱え込まず、まずは「一口味見してもらう」つもりで、出してみませんか?
そこで返ってくる「ちょっと味が濃いかも」という一言が、あなたの時間を守り、プロダクトをより良いものにしてくれる貴重な材料です。
さて、あなたが今抱えているその仕事。
まず最初の一個を、誰に食べてもらいますか?

遠藤 裕樹 Yuki Endo
テクノロジー統括部 テクニカルプロダクトマネジメント部 TPM2部
2024年にパーソルキャリアへ入社。以前は開発チームのスクラムマスター、現在はLeSS Huge導入プロジェクトを推進中。 「また食べたい!」と言われるサンドイッチを届けるために、組織のレシピを日々改善しています。
※2025年12月現在の情報です。
