Developer&Designer Advent Calendar 2024 10日目の記事です
はじめに - 私のこと -
はじめまして。今年の春、新卒で入社したUI・UXデザイナーの金子ゆりです。
HR Forecasterというプロダクトで働いています。
もともと大学生の時からデザイナーという職業を目指していましたが、私は他者とのコミュニケーションが苦手でした。デザインは少なからず、人とモノであったり、人とコト、あるいは人と人とのコミュニケーションの領域に関わってくると思っていたので、自分なりに悩んだ時期があります。
今回は、デザイナーとしての自分というよりも、デザインを考える自分が、悩んだこと・大事だと思うことなどを書いてみようと思いました。
(文章のリズムとして丁寧語を使うと書きにくかったので、日記/日誌のような形で書いています)
放課後のデニーズを知らない
大学生だった時、多くの人は「放課後のデニーズ」という共通の思い出があることを知った。テスト勉強をするために放課後に集まって話していると、いつの間にかおしゃべりが盛り上がってしまって、結局目的だったテスト勉強が捗らない、という記憶は、高校生の時の楽しさを象徴するものとして残されているらしい。
私にはこの思い出が分からなかった。高校生の頃、友達と放課後に集まってしゃべって過ごしたことがなかったと思う。
教室の中の私は、いつも先生や同級生からの目を気にして、先生の目に留まらないように、怒られないように学生の期間を過ごした。みんなが好きなものを好きになりたかったし、みんなが使っている言葉を使えばよかったのに、頑なに拒んでいつもふらふらしていて、でもいつも周りの人のやさしさに包摂されていた。
自分自身を保てるギリギリラインで言動の1つ1つを意識していて、私はいつもぎこちなかった。私は昔から、人とのコミュニケーションをとることが苦手だった。
関係性
大学生になっても相変わらずコミュニケーションが苦手だった私は、「人との関わり方にマニュアルがあったらいいのに」と思うようになった。
卒業制作の季節になった時、研究室の教授と卒制テーマについて話し合った時、「金子さんはきっと、これからもずっとそのこと(他者との関わり方)で悩み続けると思います」と言われた。この時は「マニュアルを作ろう」なんて思わなかったけど、私の中で「他者と関係性をつくる」ことは、向き合わないといけない1つの大きなテーマのような気がして、卒業までの1年間は「他者との関係性」をフィールドにして研究をした。
関係性とことば
「関係が作られる時、何が起こっているのか」を知りたくて、知り合いの人・初めて会う人とたくさん話をした。話を録音して、ドキュメントに文字起こしをして、A450枚分くらいの文字起こしデータを見ながら、教授と対話をしながら現場で起こっていたことを書きながら噛み砕いた。
支離滅裂な文章で、文字だけでは伝わらないことは絵を描きながら説明するしかなかった。「関係性」を解釈することは、文字に書き起こせば書き起こすほど表面的になってしまうものだと、その時思い知った。
「あなたとわたし」でいられる
「私って、もっと軽やかな関わり合いをしたかったのかもしれない」
友人関係、恋人関係、家族関係、契約関係、人はいろんな関わり合いに自由に言葉を与えてくれるけど、私が話した人は関係にラベルをつけるのが難しかった。自分との関係を「わたしたち」で括らないで、「あなたとわたし」として、他者の違いを尊重する。
お互いに違う環境で育って、違う生活を営み、任されている役割も過ごした時間も違う。それでも偶然性に身を任せたり、時間と場所を調整したりしながら、他者と会って話をする。完全に理解することはできないけど、諦めないで関わり続けることができる「あなたとわたし」でいられる関係性。
それは「じゃあまたね」で離れられるけど、また出会える関係性でもあると思う。
私はそんな関わり合いをしてみたかったかもしれないなと思った。
「ことば」と向き合いたい
「人と人が関係を築いて、維持する時には、なんか…小さな願いとか、小さな想いとか、そういうのがあると思うんですよね」
教授と対話しながらそんなことを口にしたことを思い出した。当事者たちは意識しているわけではないけれど、「この人と関係を築きたい」とか「保っていたい」と思う背景には、目に見えないくらい小さな何かがあるんじゃないか、と考え始めた。
ある時、「ことば」が関係を成り立たせていることの1つだと思い始めた。私が話を聴いた人もそうだし、教授と私の間にも「ことば」があった。「分からないですけど」という枕詞を添えて、いつも口に出しにくいことを何とか捻り出していた気がする。
多分その頃から、「ことば」を扱うことに慎重に丁寧に向き合いたいと思うようになった。
「ことば」を残す
私が向き合わないといけなかったのは、コミュニケーションの方法でも関係性の作り方でもなくて、分からないことを「ことば」で残すことだったと思う。
研究の途中、分からないこともあったし解釈を諦めることもあった。それでもやっと「こうじゃないか」と出てきた言葉は、ずっと忘れないでいたいなと思う。
共感できないものは切り捨てられるこの世の中で、自分を納得させるための言葉を紡ぐことが、私はとても大切だと知った。
他者とのコミュニケーションは相変わらず下手で、それは私がガールズトークが苦手だからかもしれないし、それ故に相手との距離を見定められないからかもしれないけど、軽やかな関係性が好きなんだと分かった私は、ぎこちないなりにも「ことば」にして感覚を残すことは、大切な過程だと信じたい。
今年の7月、日々の業務の中でデザインを考える時間はあっても、自分の「ことば」を残す時間がなくなったことが苦しくなって、入社してから毎日書いていた日報を再開した。
デザインによってつくる関係性の中に「ことば」を残しておきたい
「デザインはコミュニケーションの領域に関わってくると思う」と冒頭で書いた。
関係性の研究は今でも続けているけど、「他者(と)のコミュニケーションを作ってしまっている」という葛藤と、デザイナーの仕事として割り切りたいという思いで、まだ自分はふらふらしているなと思う時がある。
他者と関わることで悩んでいる自分が残しておける言葉は、とても小さいことだと思うし共感もあまりしてもらえないかもしれないけど、デザインを考える人間として、日常のモノやコトに向き合いながら、分からないことに向き合い続けながら、「ことば」で表現すること・残すことを大事にしていきたい。
金子ゆり Yuri Kaneko
クライアントP&M本部 プロダクト統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第2グループ UI・UXデザイナー
HR Forecasterというプロダクトに所属しています。表面を整えるだけのデザインだけではなく、思考しながら手を動かしていくことを大切にしています。本を読むことが好きです。
※2024年12月現在の情報です。