IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

パーソルキャリアでは、IT領域において高い専門性を持つテクノロジー本部と、各事業“ならでは”の課題や現場に定着する業務プロセスをよく理解する企画・管理部門とで連携し、“事業課題をITで解決する”ことに取り組んでいます。

両者の密な連携によってプロジェクトをスムーズに進め、IT化によって事業の成長に貢献していくためには、互いに同じ視点を持ち、オーナーシップを発揮していくことが欠かせません。

そこで今回、改めて両者が担う役割を整理し、ITプロジェクト推進におけるノウハウを共通化することを目的として「ITプロジェクト虎の巻」が作成されたのだといいます。

パーソルキャリアでITプロジェクトを進行していくにあたって、どんな“あるある”の困りごとやつまずきがあったのか。そしてどのような思いで虎の巻の作成が進められたのか――コーポレートBITAグループの伊藤、中村、高松に話を聞きました。

 

ITプロジェクト推進におけるノウハウや視点を共通化し、スムーズな連携を

 

――まず、今回「ITプロジェクト虎の巻」を作成されることになった背景から教えてください。

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 伊藤 有紀

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 伊藤 有紀

伊藤:コーポレートBITAグループは全社横断のテクノロジー推進・BPR組織として、管理部門のIT化やデジタル業務改革の推進に部門メンバーと一体となって取り組んでいます。

中でも、コンプライアンス関連領域と各事業の売上管理を扱う「コーポレート本部」の発案・企画によってBPRやRPAなどのITプロジェクトを進める機会がさまざまあるのですが、ITプロジェクト推進における共通のノウハウや視点がない状況での連携となるために、さまざまな課題が生じていました。

 

中村:コーポレート本部はその役割からもITに限らずプロジェクト推進についてのナレッジがないのは当然で、“知らない・インプットがない中やらなければいけない” という難しい状況だったと推測しています。

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 中村 友美

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 中村 友美

また事業側のプロジェクトに管理部門として入られるケースも一部ありますが、その場合も業務の特性上、システムがある程度出来上がったタイミングでコーポレート本部の方々に声がかかり、オペレーションの検討のみ行われるケースがほとんどで。上流工程から入り込むことは稀なため、よりナレッジの蓄積しづらい状況になっていました。

 

――さまざまな課題があったとのことですが、非IT部門の方々とともにITプロジェクトを進めていくにあたり、どのような “あるある” のつまずきやお悩みがあるのでしょうか。

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 高松 美佳

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 高松 美佳

高松:プロジェクトの初期段階でシステム要件をしっかりと洗い出し、すり合わせてから走り出す、ということがなかなか上手くいかず、開発に入ってから要件の追加が生じてしまうことが多かったですね。さらにコーポレートBITAとしてそういったご要望に寄り添いすぎてしまい、システムが複雑になって、開発が大変で不具合が起きて……というケースをよく目にしていました。

 

伊藤:要件の決定は大きな課題ですよね。事業側のプロジェクトであれば、私たちも事業の流れを理解しているため「この点はこう気をつけなければいけない」と分かりますし、押さえるべきポイントとしても個人情報保護法や情報漏えいの観点など、ある程度明確になっています。

しかし管理部門のこととなると、私たちに会計領域などの専門知識が十分ないため、こちらから提案をするのがなかなか難しいんです。法的な観点も絡んできますから、業務要件をすべて出しきれていない状況のままプロジェクトが進んでしまいかねないことに怖さは感じていましたね。

一度は、コーポレート本部の中でも企画の役割を担う方に要件を決定いただいて開発を進めていたものの、テストの段階になって、実際にシステムを使う財務経理系の方から「会計の知識的に間違っています」とご指摘をいただいてしまったこともありました。

 

中村:コーポレート本部の中でも、幅広い領域を皆さんが分担されているため、ナレッジが共通化されておらず、全体を把握して企画の役割を担っていただくのが難しい部分もあるのかもしれませんね。

 

――そうした課題をかねて抱えていた中、今回のプロジェクトが始動することになった経緯を教えてください。

伊藤:パーソルキャリアでは四半期に一度グループ単位で、ミッション推進に向けてチーム力を高めるための「Value対話セッション」を行っています。その場で、コーポレート本部の方々もプロジェクト推進がしやすく、互いに連携しやすい状況を作るために何かできないか……という文脈で「ITプロジェクト虎の巻」を作る案が出て、みんなで それだ!と。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

高松:もともとBITA組織にITプロジェクト推進の基本をまとめた虎の巻があるのですが、それをそのまま企画の方々にお渡ししても分かりづらいはずです。

企画者の目線で「プロジェクトに入ったら何をしなければいけないのか」「どのような点に気を付ける必要があるか」を伝えるべく、カスタマイズを行おうとプロジェクトが始動しました。

 

――発足後、取り組みはどのように進められたのでしょうか。
伊藤:全体を3パートに分けて各パート2名ずつで担当することとし、コーポレートBITAグループのメンバー6名全員で作成を進めました。兼務のメンバーも多いため、個人での役割分担にせず、また定例の後半30分を作業時間としたことで、スムーズかつ着実に作成が進んだかなと振り返ります。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

高松:作業時間には、みんなで「こういうことで困ることがよくあるよね」とディスカッションしながら、盛り込む内容を決定していきました。

 

全体像を掴んだ上で、困った時に都度見返してもらえる資料になれば

 

――今回作成された「ITプロジェクト虎の巻」の概要についてお聞かせください。

伊藤:前半では、まずはITプロジェクトの全体的な流れとタスク・業務成果物をまとめており、「ウォーターフォール型のプロジェクトは、一つひとつのステップを洗い出し、すり合わせながら進んでいく」「これができると次のステップにいける」という基本を掴んでいただくパートとしています。

後半はプロジェクトを進める中で起こりがちな困りごとをまとめ、「こういう時はどうしたらいい?」と悩んだ際に参照いただくFAQのような形にしました。

 

――作成する中で特に意識されたこと、工夫されたことなどはありますか?

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

中村:今いらっしゃる方に向けてはもちろんですが、これからコーポレート本部で企画に来られるメンバーも「プロジェクト推進自体が初めて」という方が多いと思われるので、基本的にはゼロベースで基礎から解説するよう心がけました。

 

高松:「誰が何をしなければいけないか」を明確にするため、タスクと業務成果物のパートではオーナーがやるものは赤字・ITコンサルタント(BITA)がやるものは黒字・一緒にやるものは緑字と色分けで担当を示しています。
あらかじめ成果物で役割分担をしておくことで、「ここは私がやるので、あとはよろしくお願いします」とコミュニケーションを取りやすくする狙いがあります。

ITプロジェクト虎の巻 一部抜粋。プロジェクト進行フェーズに合わせて誰が何を行うのかがわかりやすく記載してある。

ITプロジェクト虎の巻 一部抜粋。
プロジェクト進行フェーズに合わせて誰が何を行うのかがわかりやすく記載してある。

 

伊藤:構成としては、どちらかというと後半のFAQ部分に厚みを持たせていて。勉強資料というよりは、できるだけ実業務で困った時に使いやすいものにしたいという意図で作っています。

 

高松:「はじめに」という最初のスライドにもメッセージを込めましたが、“私たちがプロジェクトを進めやすくするために覚えてほしい” のではなく、“これを知っていただくことで、コーポレート本部の皆さんにも私たちにもいいことがある” という思いで作っています。プロジェクトを進める中で分からないことがあった時、困った時に、都度見返してもらえるような資料になれば嬉しいですね。

 

――実際に作成された「ITプロジェクト虎の巻」に対して、コーポレート本部の方々の反応はいかがでしたか。

中村:まずは「助かります」と前向きな反応をいただいており、やはり「プロジェクト推進のノウハウがなく、知りたいけれどどこに聞いていいか分からない」という状況だったのかなと感じました。

実際に内容を説明してみての感触としては、ある程度内容が伝わって具体的に質問を返してくださる方もいらっしゃる一方、プロジェクトに入った経験がまだあまりない方などは実際に始動してからのフォローが必要かもしれないな、というところです。

 

高松:まずはこういうものがあるということをお伝えして、また実際にプロジェクトに入られてからも重ねてアプローチしていく必要がありそうですね。

 

――プロジェクトの現在地と、今後の展望をお聞かせください。

中村:現在は、一通りの組織には共有ができたという段階です。一度作って終わりではなく改善を重ねていこうという前提で展開を始めているため、今後この虎の巻を使って推進されるプロジェクトが増えていく中で、アンケート結果などもふまえてブラッシュアップしていければと思っています。

 

全員が当事者意識を持ち、同じ目線・モチベーションでコミットできた “チームのよさが光るプロジェクト”

 

――ここまでのプロジェクトを振り返って、感じたこと、気づきや学びになったことがあれば教えてください。

高松:作成した「ITプロジェクト虎の巻」を展開する中で、「コーポレートBITAという存在を知らなかった」「こういうことを相談していいんですね」というお声もあって。そういったあまり繋がりのなかった方々と対話し、どのようなことに悩んでいるのかを知れたことは一つ大きな発見になりました。

 

伊藤:私は、やはりコーポレートBITAグループ全員で作れたことが素晴らしいなと思っています。チームの全員が当事者意識を持っていたことも、それに対してみんなが同じモチベーションでコミットしたことも、なかなかないことなのではと。

 

中村:確かにしっかりとコミットしたいという思いも揃っていましたし、課題意識を持っている部分や、作る中で「これってどうしたらいいんだろう」と悩む部分も近かった感覚ですね。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

高松:共通する悩みに対してみんなで「こういう時は、こういうふうにあるべきだよね」と対話をすることもでき、自分の中でも “あるべき” が明確になった実りある機会でした。

 

伊藤:そうして一人ひとりが“自分ゴト化”して取り組めたことで、よいものができましたし、全員が内容を理解しているからこそ、今後誰が質問を受けても同じ回答ができ、誰がフィードバックを受けたとしても修正の対応ができます。

企画の方々にも混乱なく活用いただける状況が作れたと思いますし、ガッチリと今後の展望を固めなくともブラッシュアップに向かっていけるのかなと。チームの良さが光るプロジェクトだったなと思います。

 

――ありがとうございます。それでは最後に、皆さんが今後チャレンジしたいことをそれぞれお聞かせください。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

中村:私がコーポレートBITAとして担当する会計領域は、これまでは「まずシステムを導入していこう」というフェーズでしたが、そろそろ改めて評価をしてもいい時期になってくるなと思っています。今後はただ導入するだけでなく “使いこなす”、使いこなしてみて次にどうするかを検討する、そんなフェーズに移行し、未来を見据えた計画を立てていきたいなと思います。

 

伊藤:現段階でメイン事業のシステム導入が大方終わったので、これからは「現状をふまえてどうBPRしていくか」に話を持っていきたいですよね。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

この虎の巻作成の取り組み以降、「BITA側のWBSのフォーマットを見せて」などとコーポレート本部の方からお声がけいただくことも増えており、お互いに “未来” のことを考えるマインドになりつつあるのかなと。システム導入以上のことができる兆しを感じ、これから一番面白いフェーズに入っていくのではと楽しみです。

 

高松:コーポレートBITAはできたばかりの組織で、やはりまだあまり存在を知られていないところがあります。まずは皆さんに私たちのことを知ってもらい、一緒に課題解決に取り組んでいけたらと思っています。

IT/非IT領域が“ともに”課題解決を進めるための大事な一歩を――プロジェクト進行“虎の巻”作成のウラバナシ

その中で、パーソルキャリアではBITAに「事業部側に寄り添いたい」という強い思いがある分、“あるべき” を追うよりもご要望にシステムを合わせてしまっている部分もあるなと。コーポレート本部の方々と一緒にITプロジェクトを進めるにあたっては、世の中の動きもふまえて「自分たちがどうあるべきか」を一緒に考える形で寄り添っていけたらと思います。

 

――ありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)

 

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 高松 美佳

高松 美佳 Mika Takamatsu

BITA統括部  全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント

2009年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。当時親会社であったUSEN社への出向やアルバイト求人情報サービス「an」や転職サービス「doda」の営業、企画を経験後2019年よりBITA統括部へ異動。

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 伊藤 有紀

伊藤 有紀 Yuki Ito

BITA統括部  全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント

2017年新卒入社。キャリアアドバイザーに配属となり、その後2019年末まで金融機関ご出身者の方のご支援に携わる。キャリアチャレンジ制度にてエージェントプロセス&システムデザイン部に異動し、キャリアアドバイザー/個人顧客に関わるPJTを担当。おととし猫を飼い始め、在宅ワークの満足度が上がった。

BITA統括部 全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント 中村 友美

中村 友美 Tomomi Nakamura

BITA統括部  全社BITA部 コーポレートBITAグループ リードコンサルタント

新卒で中小出版社向けのバックオフィスシステム開発会社にてSEとして勤務。お客様にシステムを提供していく中で有効利用できないケースを目の当たりにし、内から活用していく側になりたいという思いでパーソルキャリアに2018年9月中途入社。未経験の業界且つ職種で日々誠意奮闘中。

※2023年5月現在の情報です。