アドフラウド奮闘記 #techtekt Advent Calendar 2021

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この記事は techtekt アドベントカレンダー2021 の 22日目の記事 です。
21日目はkanekoさんの "エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング~ の紹介" という記事でした。 🎉

こんにちは👋
テクノロジー本部 サービス企画統括部でデジタルマーケターとして働いている増渕です。*1

今日は、広告詐欺の「アドフラウド」についてお話します。
昨年、日本におけるアドフラウドの被害額は約17億円とも言われています。
今現在はあまりデジマのお仕事はしていないですが、今後、テクノロジー本部発のサービスがGrowthしてゆく中で、デジマで働く人間は避けては通れない部分になると思うので、しくじり先生的なリアルの体験談を残しておこうと思いました。(自分自身への戒めのためにも。)

 

アドフラウド【ad fraud】とは?

 

アドフラウドってなにそれおいしいの?

端的に言うとオレオレ詐欺のデジタル広告版って感じです。
(AD:広告 / Fraud:詐欺)
なりすまし詐欺の手口が増えてゆく感じと同じで、ぶっちゃけ”いたちごっこ”です。

 

最も簡単に、最も儲かる?!

デジタル広告には色々な種類(身近なものでYouTube広告とかTwitter広告とか)がありますが課金タイプは主に下記5つです。

 

課金タイプ 単位
期間保証 1週間 ●●円 etc... Yahooトップのニュース横 etc...
インプレッション課金
CPM課金
※Cost Per Milleの略
1imp(1表示)●●円
広告1,000回表示につき ●●円
Facebook / Instagram内広告 etc...
クリック課金 1Click ●●円 リスティング広告 etc...
再生課金
視聴課金
1再生 ●●円
1視聴 ●●円
YouTube広告 etc...
成果報酬 1CV ●●円 Twitterのフォロワー広告 etc...
※1フォロワー獲得につき●●円

 

代表的な手口としては、botとか使って無駄にimpやClickを発生させたりして、不正に水増しする感じです。
上の表の中のクリック課金”を例にすると…
クリック単価10円の広告を、botで秒で100万クリック水増しした場合、秒で1,000万儲かっちゃう!げへへ!
みたいな話です。

 

アドフラウドの類型

ちょっぴり古いですが、アドフラウドに対するJIAAステートメントを一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会が出しています。
ご興味がある方はどぞ。
https://www.jiaa.org/gdl_siryo/gdl/adfraud_statement/

 

増渕のしくじり 〜代理店時代編(web広告)〜

 

時系列

  1. コンペに勝ってクライアント(広告主)の広告出稿開始。
  2. 大きく効果改善。ROAS 約80%向上 。(※他代理店比)
  3. よりROASを高めるため、効果良好媒体に絞って配信開始。
  4. 1ユーザー当たりの初回課金額がほぼ同額なことに気づく。
  5. 「なんか様子がおかしいぞ…」
  6. 取得できている情報全て生ログから抽出。
  7. メールアドレスが捨てアドだったり、ユーザーエージェントからしてbotだったり etc...叩けばどんどん出てくる。。。
  8. クライアント(広告主)に涙、涙で土下座🙇🏻‍♀️

 

そもそも、そもそも…

私は代理店に入って初めてweb広告の世界を知ったのですが、一般的ないわゆる”マーケティング”しか知らなかったので、めちゃくちゃ違和感でした。
「1ヶ月掲載されます。めちゃくちゃ効果良いです。(他社データもある)でも何処に出るかはわかりません」
という世界に最初は戸惑いました…。

でもデジタル広告(アドネットワーク / DSP etc...)って、効果が出ていれば広告主も、
「Youどんどんやっちゃいなよ」
っていうケースもありますよね。
当時私の所属していた代理店では、断る理由もなく、進めていました。

 

学んだこと。

  1. 生ログ大事。生ログ見なきゃダメ、ゼッタイ!(先述のとおり)
  2. 広告主の目的を正しく理解した上での運営(下記参照)

広告主の目的を正しく理解する

広告主に利益を返すことは重要ですが、代理店と広告主ではビジネスモデルが異なる為、お互いの利害は、基本的には一致しない。

  • 代理店:広告売上の最大化(粗利が営業利益)
  • 広告主:営業利益の最大化

互いに”協業者”として素敵な関係が構築できるのが理想ですね✨


考えられる解決策
  • 違和感のある効果の表出をそのままにしない。常に細かく数値を追っていくこと。
  • アドベリフィケーションツールの活用
  • 粗利ビジネスとは違う経済条件での契約締結
    《例》事業PLのP/S等での契約、固定費での契約 etc...

 

増渕のしくじり 〜ソシャゲ時代編(App広告)〜

 

時系列

  1. インハウスでゴリゴリ運用!!
  2. SQLガリガリ書いて、どの経路をたどったユーザーがゲーム内でどんな行動をしたか?etc... ゴリゴリ分析。
  3. 効果不良媒体の停止。余剰予算使って新規媒体を追加!を繰り返す。
  4. 今まで効果良好だった媒体の効果が悪化。
  5. 「え。なんでだろう?」
  6. 一部の媒体に配信が寄っていることが判明。
  7. ひたすら潜って(辿って)調べてみると、意図しない形で広告配信されている枠を発見😭
  8. ユーザーがゲームを楽しんでくれて『その価値に対しての対価』という形でいただいたお金をそんな形で使ってしまったことに、チームみんなで猛省。。。🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️
  9. ガイドラインを作成し遵守。”いたちごっこ”に即時対応出来るようシステム構築。

 

そもそも、そもそも…

デジタル広告のコンバージョン(※以下CV)は、『CV直前にクリックした広告』に計上される仕組みです。


例えば、CVを『ゲームアプリインストール』とした場合…
 ① テレビCMでゲームアプリを知って
    ↓ ↓ ↓
 ② Google検索で検索し、口コミサイトを閲覧。
    ↓ ↓ ↓
 ③ 口コミも良さそうだったので、アプリストアで検索しインストール。
本来この場合、オーガニックCVとなります。


上記②のような口コミサイトとかの下部にある動画バナーが1pxでも表示されたらクリックログ飛ばす設定がされていたら、ラストクリック口コミサイトの動画バナーとなり、口コミサイトの動画バナー配信業者(メディア)にCVが計上されます。

「え?私、テレビCM観て『このゲームアプリ面白そう!』って思ったんだけど?口コミサイト見て『インストールしよう!』って思ったんだけど?」って思いますよね…
違和感しかない…。

 

学んだこと。

  1. 配信媒体の条件(クリックログ等を飛ばす条件とかとか)をちゃんと知る。
  2. その上でアトリビューションも含め、広告媒体をしっかりレーティングする。
    ※アトリビューション:媒体(メディア)ごとのコンバージョンへの貢献度を測ること。

 

 

 

おわりに

アドベリフィケーション(Ad verification)問題。
昨今メディアとかで結構取り上げられて、日本企業も意識するようになってきたと聞いています。
その1つであるアドフラウド(Ad fraud)についてツラツラ書いてみました。

他にも、

  • 不適切なサイトへの広告掲載(Brand safety)
  • 視認性が担保されていない枠への広告掲載(Viewability)
  • 同一配信面への多重掲載(Ad experience)       etc.......


確かにテレビCMとかよりもデジタル広告の方が、圧倒的に安いです。
デジタル広告を”安かろう、悪かろう”にしてしまうのではなく、正しい知識を持って、有用に活用してゆきましょう!

 

明日は松森さんによる "パパも育休取って何が悪いんじゃ!" です。
いや。悪くないっす…!
子に過ぎたる宝なしっ!!
お楽しみに!

 

 

サービス企画統括部 サービス企画部 マーケティンググループ 増渕 有紀

 

増渕 有紀 Yuki Masubuchi

サービス企画統括部 サービス企画部 マーケティンググループ 

飲食業界、代理店、アプリゲーム会社を経て、2019年よりパーソルキャリアに参画。
プライベートでは3人(中学生×2、小学生×1)の子どもの応援団長。現在は退職。

 

※2021年12月現在の情報です。

*1:※増渕は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。