データ・AI活用の検証を繰り返して見えてきたモノとは――デジタル企画統括部の現場に迫る!

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dodaエージェント事業部の配下にデジタル企画統括部が設立されて、半年。エージェント事業のDX推進とそれによる業績最大化を目指し、テクノロジーとビジネスがタッグを組む形で組織された当該組織。その現在地と現場のリアルとは――。

経営層の視点から組織の存在意義や指針についてお伝えした前回の記事に続き、今回はデジタル企画統括部 ゼネラルマネジャーの足立と、兼務で参画するデジタルテクノロジー統括部(以下、DT)の橋本に、現場の声を聞きました。

業績貢献を掲げる組織だからこそ、優先順位や投資対効果の見極めが重要

――2020年10月のデジタル企画統括部立ち上げから半年が経ちました。まずは現在取り組まれている施策について教えてください。

足立:現在は、大きく次の4つの取り組みを進めています。

  • AIを活用し、転職希望者様や求人案件の状態に応じて、個人/法人顧客それぞれに最適なマッチングをご提案するためのロジック開発
  • キャリアアドバイザー(以下、CA)が顧客に提供している価値をデジタルで再現し、転職活動を支援するための仕組み
  • 転職希望者様に合った最適なCAが自動で振り分けられるアルゴリズムの作成
  • ご登録〜カウンセリング実施までの無人化・スピード向上を図るための、LINEのプッシュ機能を活用した呼び込みの実現

これらは全て、私たちデジタル企画統括部が掲げる「業績最大化」を見据えてテクノロジー活用を進めるための取り組みです。

 

――現場の課題やそこに活かせる技術はさまざまあるのだと推測していますが、着手する施策はどのように決められているのでしょうか。

橋本:将来を見据えた変革ももちろんデジタル企画統括部でやっていくのですが、やはり足元の現場改善もやっていく必要があります。まずは「どのように現場で使われ、それがどのように改善につながるのか」という視点から優先度を検討して、組織内でのスタンスを揃えながら施策を進めています。

その中で、業績への貢献の仕方を検証する必要があるものや、コンプライアンスやセキュリティの観点から前に進めづらいものもありますから、そこは保留にして考え直しつつ、すぐに進められるものから進めている状況です。

 

――率直に伺いますが……そうした検討の中で、進めようと思ったけれど上手くいかなかった、というものもあるのでしょうか。

足立:当然ありますよ。今はdodaエージェント事業側からのメンバー4名とDTから兼務で来ているメンバー6名の計10名で進めていますが、人的リソースにも限界がありますから、「今やるべきか」の見極めは必要ですね。

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デジタル企画統括部 デジタル企画部 ゼネラルマネジャー 足立 真人

また、投資対効果が見えなくて実現に動けないものもあります。例えば、パーソルキャリアのビジネスの肝であるオンライン商談・カウンセリングの領域で、ビデオ会議システムを開発するという施策も企画段階にはありましたが、無料のツールが世の中に存在していることから、投資対効果を考えて現在は保留になっています。仕切り直してゼロからもう一度考えている段階ですね。

事業やお客様にとっての価値を明確に見出せないものにリソースを投下し続けるのではなく、思い切って中止を決断する勇気も時には必要です。

 

――組織が研究的な意義ではなく事業貢献と業績最大化を掲げているからこそ、ドラスティックな判断が求められるのですね。

橋本:そうですね。投資対効果が出せないとなった時点で、適切な判断が求められる。この辺りが、DT統括部とデジタル企画統括部の大きな違いです。DT統括部でこういった取り組みをやる時は、もう少し時間をかけて判断をしていたと思いますが、この組織だと見極めが早いなと感じます。事業と一緒に進める体制になったからこその変化ですね。

 

一つの組織になったことで互いの理解が深まり、互いの思いが「翻訳」できるようになった

――お二人はどのような役割分担で業務を進められているのでしょうか。

足立:改善すべきポイントや現場からの要望を私が精査し、それに対して「事業やお客様にとって良いものを、テクノロジー領域でどう実現していくか」という手段の部分を橋本さんを中心にプロジェクトメンバーに集中的に考えてもらっています。

私自身も長く営業現場で経験を積んだのでよく分かるのですが、現場側で「こんなことができたらいいな」と描いたとしても、それは自分たちの業務負荷を楽にするためのものになりがちで、事業への投資対効果を出すことにまでつながらないことも多いんです。

あくまで顧客の支援を通じて結果的に業績に貢献することが私たちの役割なので、私の方でまずは「その要望に応えることが、お客様や事業にとってプラスになるのか」を考え、自分たちの守備範囲内の仕事かどうかを決めていかなければいけません。

 

橋本:その部分の判断は深い現場視点をお持ちの足立さんにお任せしていますが、そこがいいバランスかなと思っています。

 

――足立さんが「業績に貢献するために必要な仕掛けかどうか」を正しく判断して、実行に移していくということなんですね。

足立:自分の役割は、正しい判断をした上で「現場に対して適切な説明責任を果たし、進めるもの/断るものを言い切ること」だと思っています。そうでないと、現場が「重要なことだ」と言ったら、現場経験がない人は「重要なことなんだ」と認識してしまいますからね。

これまでの経験を活かして、お客様や事業に貢献できるものを選び取って要望に応える、そうでないものは「それはうちでやることではない」としっかり説明する、ということが求められるのだと認識しています。

 

――現場の視点があるからこそ、断るにしても伝わる言葉を選べますもんね。

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デジタルテクノロジー統括部 シニアストラテジスト 橋本 久


橋本:そう思います。研究としてではなく事業貢献をするためには、業務の背景を理解した人の視点で「ビジネスプロセスをどう変えるのか」を伝えていかないといけないと思います。DTだけではそこまでの主導はできず、「使い方は現場で考えてください」といった見え方にもなりかねません。

ですから「現場からの要望をテクノロジーでどう実現するか」「そのシステムをビジネスプロセスにどうやって落とし込み、オペレーションを変えていくのか」というところを一緒に考えて対話できることが、一つの組織として組成された意義だと思っています。

 

――現場の生の声に耳を傾けながら、お二人の力で正しく取捨選択と実現ができるというのが素敵ですね。「現場とテクノロジーの融合」はDXの風潮の中で共通の課題だと思いますが、デジタル企画統括部でこの点がうまく実現できている要因は何なのでしょうか。

足立:今お話したことが全て綺麗にできているか、というとまだ途上な部分もありますが、一番のポイントは、「相手に対して翻訳ができるか」というところだと思っています。経営層は日報で現場のKPIなどを日々追っていますが、テクノロジー部隊がお客様に価値提供をするために一生懸命考えたAIのロジックなどは、日報上だけでは伝わらないですよね。

私も、今でも橋本さんにITの勉強をさせてもらっていますが、そうやって相手がしていることや考えていることを理解して、テクノロジー部隊が何をしているのかを翻訳できることが重要なのだと思います。

 

橋本:DT統括部で、経営層とAIのロジックやテクノロジー領域について一段深く話せる機会はそこまで多くありません。だから、とりあえず研究として別で進めることになるか、現場と協働することになっても、ビジネスとテクノロジー間の翻訳ができずに上手く進まないかということが多かったんですよね。

 

――共通言語を得るために、ビジネスとテクノロジーの間に人が立って進める組織は多いと思いますが、そことの違いは何なのでしょうか。

足立:どの会社のどの組織でも、この翻訳はとても難しいポイントだと思いますが、今回は橋本さん他DTのメンバーが「事業側にきてくれた」ことが大きいと思っています。これまでは、つなぎ役は必要なのでもちろん両者の間に置くけれど、組織としては分かれていました。それが今回、DTの人たちがエージェント事業の中に入り込んできてくれたことで、普段のコミュニケーション接点も増えますし、私がITを勉強させてもらっているように、分からないことを訊ける機会も格段に増えたんです。

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自身の業務もある中で、事業側がテクノロジーのことを理解するには、10回は聞かないと分からないんです。そのためには、近くでコミュニケーションが取れることが大きくて。私も橋本さんに、同じことを10回も20回も聞いてしまっているはずです。

 

橋本:3回くらいですよ(笑)

 

足立:本当に助けられています(笑)このコミュニケーションが普段の会話上で取れることで、「経営層にどうやって説明するか」「どんな例えを持ち出せばうまく伝わるのか」ということがようやく見えてくるんです。

 

――実際に事業側に入り込むことによって、現場感のキャッチアップのすばやさとコミュニケーション頻度の高さが実現できる。だからこそ「どう伝えれば事業が動くのか」まで踏み込めて、この半年でもいろいろなことが大きく前進してきた、ということなんですね。

橋本:そうですね。あとは現場への浸透スピードとしても、組織として組成されたことが大きな意味を持ちます。DTとして外からアプローチしていたときは、「現場に使ってもらえるようにする」というスタンスでしたが、経営層に対して足立さんが説明責任をもったことで、現場の言葉で「使う事の意義」を理解してもらえるようになりましたし、多少トップダウン的に“使わせる“ということもできるようになりました。  最終的に使ってもらうことは同じでも、DTだけでやるのとは現場浸透までの苦労が大きく違うなと感じています。

 

失敗から得られるものを必ず残し、「パーソルキャリアにとってのDXとは」という問いの答えを探しにいきたい

――二つの組織の間に人が立つのではなく、一つの組織になることでプラスの側面がたくさんあると分かりました。一緒になって半年が経ちますが、お二人は率直にどう感じていますか?

足立:まずはやはり、システムに対する理解が深まったと感じます。現場からすると、ITと言われるとDTも別の部署も、一緒くたにしか見えていないところが正直あるんですよね。でも実際にそばでコミュニケーションをとってみて、システムの裏側のロジックもすごく考えられているなと思いますし、週次でPDCAを回して現場の要望に応える改善をしてくれていることも分かりました。これは現場には伝わっていなかった部分だと思います。

こうして理解が深まることで、経営層だけでなく現場に対する翻訳もしやすくなります。例えば、AIはある程度試して導入を決めたら、あとは実際に現場で試していかないと精度は分からないですし、進化もしていきませんよね。そういった点も理解をもとに翻訳し、現場視点に落とし込んで伝えることで、現場の協力が得やすくなったなと思っています。

 

――橋本さんからはいかがですか。

橋本:足立さんをはじめ、現場から来てくださっているメンバーはマネジャークラスの方々なので、事業構想も詳しく理解されています。その点で、「テクノロジーを活用してこんなことができるのではないか」という自分たちの発想に対して、違った視点からのアイデアを頂ける機会が多いと感じます。DTの中で壁打ちをしているだけでは見えてこなかったような使い方が浮かび上がったり、「もう少しこういうふうにすれば使える」と現場の視点をもらえたり。やりとりの中でいい意味での衝突もありますが、そこから次につながっていく感覚があります。

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――今の現場を深く知っている人とテクノロジーを深く理解している人が組むことの重要性が見えますね。立ち上げから半年経った今のKPTから、組織の現在地を伺いたいと思います。まずは「Keep」継続したいところからお願いします。

橋本:デジタル企画統括部としてビジネス側と一緒になったことで、施策の実現を、実験的な導入も含めて確度高く検討できていると思います。そしてその中で、「データからこんなことが言えそうだから、これをやってみようか」という考えを、DTと現場感覚をもつ人の双方から持ち寄って議論できるようになってきました。これはぜひ続けていきたいです。

足立:橋本さんのおっしゃるように、双方がコミュニケーションを取り合って議論しながら理解を深めてこられたと思いますが、組織が大きくなっていくにつれて、いつの間にかコミュニケーション頻度や濃度が薄れていく……ということがどうしても起きがちです。相互理解、そして翻訳をしていくことが、「事業やお客様に対してどのような価値を発揮できるか」という説明責任を果たすことにもつながると思うので、ここは維持していきたいと思いますね。

 

――「Problem」課題はいかがですか?

橋本:進め方についてはまだまだ試行錯誤の段階で、今のやり方が必ずしもいいとは限りません。テーマによっては実行速度が遅いところもありますし、現場側からきたメンバーにAIなどの理解を深め、自分たちDTの現場理解を深めることもまだまだ必要ですから、「どうすれば充実した取り組みをスピーディに進められるか」を探っていきたいと思っています。

 

足立:そうですね。「いいものができるけれど、リリースは3年後です」と言われてしまっては、事業側からすると待てないと思うので。お客様や事業にとっていいものを考えるだけでなく、リリーススピードも担保していきたいですし、そのための組織運営を整えていくことが重要だと思います。

 

――両者の間でしっかりとコミュニケーションをとって議論しつつも、スピード感を意識した進行が求められていくのですね。それでは最後に、「Try」今後挑戦していきたいことをお聞かせください。

橋本:デジタル企画統括部として、思いのある施策へつなげていきたいと思います。失敗したとしても、そこから何が得られたのか、次にどう活かせるのかを考えて、取り組みを継続して。失敗から得られるものを必ず残したいです。

 

――ここまでビジネス側に入り込んでデータ活用に挑戦する例はまだないと思うので、失敗も財産になるはずですよね。ありがとうございます。最後は足立さんに締めていただきましょう。

足立:具体的な話ではなくなりますが、世の中の企業はまだ「自社にとってのDXとは具体的に何か?」という問いに対して、答えを出せていないと思っています。自分でもまだその答えは出しきれていませんが、パーソルキャリアの主力事業である「人材紹介のDX」とは何かという抽象度が高すぎる問いに、一定の答えを出しに行く1年にしたいですね。

――ここからの1年間で、見えるものも変わってきそうですね。組織のこれからのご活躍と、問いの答えを楽しみにしています。ありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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足立 真人 Masato Adachi

デジタル企画統括部 デジタル企画部 ゼネラルマネジャー

2007年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒で入社し、関西にて法人営業からキャリアをスタートし、京都や神戸などの支社立ち上げに参画。2012年にはMBAを取得。その後、キャリアアドバイザーや法人営業組織のマネジャーを歴任し、現在に至る。

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橋本 久 Hisashi Hashimoto

デジタルテクノロジー統括部 データ&テクノロジー ビジネス部 シニアストラテジスト

大学院卒業後、大手コールセンターのアウトソーサーに入社、様々な業種のコールセンターに蓄積されるデータの利活用プロジェクトを手がける。その後、本格的にビッグデータをビジネスで活用するシステムインテグレータの会社に転職。主にGoogleCloudPlaltformを軸としたソリューションの企画設計と業務改善を担当。

※2021年5月現在の情報です。

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