「正攻法でお客様と向き合い、お客様ファーストであれ」―グロース部誕生秘話

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サービス開発統括部 グロース部は、統括部の中でも後発にできた組織。正直言って、まだそこまで新規のサービスが多く世の中に出ていない中で、これから何をやろうとしているのか?今回は、このチームを率いる荒川 清貴に直撃インタビュー。まるでミュージシャンのようなスタイル…実はリアル・ミュージシャンでもある彼の仕事&組織づくりに関する哲学を聞きながら、グロース・フェーズに関与するという役割を任されていることの苦悩と喜びを紐解いてみたいと思います!

 

※荒川は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。

 

お客様の声をダイレクトに聞いてきたからこそわかるグロース

――どこからどう見てもミュージシャンですよね(笑)。アメリカで音楽を学んでいたと聞きました。かなり興味深いです。今回の記事の趣旨とは異なりますが、ちょっぴりその辺のお話もぜひ!

荒川:はい。現在進行形で週末に音楽活動をしていますよ。基本的には、ギターがメインなのですが、ドラムを打ち込んで、ベースを入れてコンポージングもしています。歌は歌えないんですけれどもね(笑)。単なる趣味という感覚ではないと言うか、私の中で“ここまで”と線を引いているわけではありません。ライフワーク、生活の一部として音楽と仕事が両立しているというのが私にとって一番ナチュラルな状態だったりします。

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中学時代にアメリカの音楽に出会い、のめりこんでいきました。一応、日本の大学に入ったのですが、思っていたよりつまらなくて…親を説得してアメリカに渡り、バークリー音楽院に留学しました。音楽は好きでしたが、それで飯を食べていけるとは思っていませんでしたね。

バークリーを卒業後、このまま日本へ帰っても仕方がないと思って、昼間は、アメリカ人の友人が経営していたペンキ屋を手伝い、日曜日には、すし屋で寿司を握って食いつなぎながら、日本人のメンバーで組んでいたバンドで活動をしていました。結局、アメリカに渡ってから9年間、29歳まで、そんな暮らしをしていました。

 

――アメリカ時代、何かゴールを設定していたわけではないのですか。

荒川:目標を達成するために頑張ることも大切ですけれど、やり続けるという事が私の中では重要事項だったりします。継続は力なりという言葉が好きで、やり続けることも才能なのだと思います。その人が上達するしないとかじゃなくて、やり続けて見えてくるものがあると思います。

 

――アーティストにインタビューしている気分になってきました(笑)。もう少しお聞きしていいですか?日本に帰ろうと思ったきっかけは?

荒川:向こうで活動していた日本人バンドのメンバーの中で「日本で試してみたい」という気持ちがわき上がっていました。ちょうどメンバーの一人が帰国するタイミングだったので、じゃあ、一緒に帰ろうかという話になったわけですね。でも、帰国後はメンバーも離脱して、なかなかうまくはいかず、バンドは休止状態に。働かなくてはいけないのですが29歳で職歴もない人間なので、仕事探しには苦労しました。結局、派遣社員として働きながら、その隙間の時間を使って音楽活動を続けていきましたね。

 

――パーソルキャリアに入社したきっかけは?

荒川:派遣社員として様々な企業で働いている中、楽天のカスタマーサポートチームでスーパーバイザーとして勤務していました。当時のクライアントである楽天側の社員の方から、「新しい会社を立ち上げるのだけれど来ないか」と誘われたのが、今の上長である三口が運営していたベンチャーでした。そこで新たにカスタマーサポートセンターの立ち上げに参画。一年間でそれをやりきって軌道に乗せた段階でいったん、語学やアメリカでの経験を活かせる仕事ということで、動画配信のプラットフォームを運用する企業に転職しました。そこで海外配給会社との条件交渉や契約内容の翻訳などを担当し、4年ほど経って2019年の8月の終わりに、すでにパーソルキャリアへ入社していた三口からお声がかかり、「カスタマーサポートを含んだ上位組織として新たにグロース部を作るので、そこを任せたい」と言われました。

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グロース部は、サービスを成長させていくミッションを担っている組織なので、正攻法でお客様と向き合い、お客様ファーストで動いてほしいと。私は縁を大切にしている人間ですし、チャレンジする機会を与えていただけたと感じたので、即決でパーソルキャリアに入社することにしました。

 

――グロース部ではカスタマーサービスを担当している方がどういう力を発揮できるのでしょうか。その関連性をお聞きしたいです。

荒川: カスタマーサポートは、お客様の声をダイレクトに聞くことができる部署です。企業の顔として、気軽にもてるタッチポイントだと思っていて、そこから得られる情報というのは、ネットの書き込みではない、かなりリアルなデータといえます。もちろん、クレームも寄せられますが、お客様からの問い合わせが多くなっていき、そこにナレッジができて、企業もプロダクトも改善されていきます。すなわち、良いサービスというのは、こういった良いサイクルができているものですし、カスタマーサポートは、お客様の声を判断材料としてPDCAを回して、プロダクトへ反映していく役割です。

 

私たち、グロース部にはマーケティングの機能があり、お客様の行動パターンから、より自分たちのターゲットを明確にしたりより自分たちの改善ポイントを明確にできるという点において、カスタマーサポートとマーケティングは密接な関係にあると考えます。

 

とにかく変化が激しく、情報がすごいスピードで行きかっている時代の中、“今やるべきサービスは何なのか”ということが、以前に比べて限定的になっていると思います。そのサービスを“今やるべき”と判断したのであれば開発リソースを集中させてリリースしたうえで、それが軌道に乗った段階で、そこからグロース部を立ち上げたのでは遅い。ですので、これからグロースするかもしれないサービスを見据えて、それが世に受け入れられて、さあここからグロースさせるとなった時に、すぐに動ける体制にしておく必要があります。 

「正直グロースフェーズのサービスはまだない」―――

――サービス開発統括部ではものすごい勢いで新しいサービスを作ろうとしています。その中でグロースを見据えてチームを作られたところですが、実際には、作られ始めたサービスがどの段階になった時に出番が来るのでしょうか。

荒川:サービス開発統括部では、グロース・フェーズに入るまでのステップをProduct/Market Fitの考え方に基づいてフェーズを切り分けています。

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一つ目が「Customer/Problem Fit(以下CPF)」です。お客様が抱えている課題を発見し、フォーカスすることを指しています。

その次に「Problem/Solution Fit(以下PSF)」があります。それは、お客様が持っている課題を明確にし、またその課題に対する、解決策を提示することを指しています。

その後、そのソリューションやプロダクトを受け入れる最適な市場があることを確認する「Product/Market Fit(以下PMF)」です。

それらを満たしてようやくグロース・フェーズとなります。この時点では、お客様もいて、ソリューションもあって、市場に受け入れられているはずです。

 

――この3段階を乗り越えて初めてグロース部の出番なんですね。

荒川:そうなんです。ただ、サービス企画開発本部は立ち上がったばかりという事もあり、サービスリリースを判断する審査基準を作っている段階で、正直まだグロース・フェーズにあるサービスはないんですよ。

またその前に、「そもそもCPFはどの段階で終わったと判断するのか」「達成できなかった場合は本来どういうことをやらないといけないのか」といった基準を作る必要があります。

 

ビジネスとして成立させるために、サービスの価値が何なのか?をもっと明確にする必要があると思っていて、必ずしもお金を多く稼げるサービスが良い、という事ではないですよね。会社のミッションを実現するのは最重要事項ですが、それを判断する物差しが無い。人々の“はたらく”を自分のものにできているかどうかを、どのように判断するか、その基準を作ることから考えるとなると、とても壮大な仕事だと感じています。

 

――「はたらくを自分のものにする基準」ってどういう風に作るのでしょうか?会員数とか送客とか定量的な基準データだけではなさそうですね?

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荒川:個人的な考えですが、 「このサービスがあるから、この人たちの“はたらく”がパワーアップしたよね」ということをある程度明確にしていく必要があると思っています。

 

そのために、定量データだけではなく、基礎となるユーザーインタビューやユーザーテストなどによって定性的なデータも必要です。そこでグロース部では、カスタマーディライト、マーケティング、UXリサーチ、さらにデータ分析、この4つのグループに分類。その測り方や、その時にやるべきことを明確化して、企画の方が必要なタイミングでデータを提供できる、可視化できる環境を作ることが大切だと感じています。

 

――企画と連携して、データをもとに基準を作っていく、大切なことですね。

荒川:はい。企画部門がこのサービスを通じて実現したいこと、解決したい課題に沿って、何をKPIにするか、何を定性的な達成とするのか、を決めていかないといけません。基準を作って、測れるような仕組を作った後に、企画、開発、グロースの役割分担を明確にする必要があるかと思っています。もちろん、すでにリリースされているサービスにおいても、新たなリサーチ方法や評価基準作成の検討も実施。どのフェーズでどういうリサーチをすれば、それを持って何を判断できるのかということを、一つひとつ明確にしていっています。

 

現在は、共有できるデータもあるはずですが、企画と開発の中で連携が取りづらい状況にあります。グロース部で組織を横断的に見ることによって、前回の失敗点を共有したり、事前に回避することもできると思っています。 

フィードバックをしながらPDCAを回してより良いサービスへーーー

――グロース部が理想的な形になると、企画部門の方々にとっても良い影響がありそうですね。 

荒川:そうですね。実際のお客様の声や行動などからズレが見えたら、フィードバックをしながらPDCAがぐるぐる回っていくと、よりよいサービスになっていきますよね。我々はゼロから企画を考える立場ではありませんが、チームとして機能していけば、大半のデータがグロース部に蓄積されていきます。

それによって企画側はサービスの改善を的確に判断できる状態、もしかすると新しいサービスを考える時も、そこのデータを使って、“こういうサービスを作れば、当たるのではないか?”が予測できるようになるかもしれません。

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そして企画が使えるデータが増えていって、こういう切り口でほしい、それについて判断する方法を教えてほしいといった対話がなされるようになれば、自然と企画のブラッシュアップが出来たり、精度が上がっていく、そんなイメージですね。

 

――今、このフェーズだからこその“やりがい”とか、そのあたりはいかがでしょうか?

荒川:本当の意味での、組織のゼロ→イチというのは、経験したくても経験できないと思っていて、ましてやパーソルキャリアのように5000人規模の会社で、新しい“働く”を、今までとは違った“人の働く”をサポートしていく、これをミッションとして掲げているのは非常に面白いですよね。

 

こういった大きな企業が新しいことにチャレンジしている、特異なタイミングだと思います。ゆえに、これを成功させたいという思いもありますし、メンバーに対して適切に、“こういうことを我々は目指してやっている”ということを伝えながら、組織構築していくのが一番のやりがいなのかなと思っています。

 

――将来、実現したいことを教えてください。

荒川:これからの働き方は、新型コロナウイルスの影響もあり、必然的に多様化が進んでいくと感じています。多様化が進む中で、人々の働き方はどう変わっていくのか、それをウォッチし続けたいですよね。

さらに管理職の役割も変わっていくだろうし、人のモチベーションを保つ方法も変わっていくと思いますので、そのあたりは非常に面白い時期に生きているのかなと。自分でも新しい働き方を模索していきたいですね。

 

――荒川さんが作ろうとしている基準や指標は、もちろんグロースするためのセオリーが見えるというのもあるかもしれませんが、人々が求めている働き方のヒントのようなものが見えてきそうですよね。

荒川:まさにそうですね。「はたらくを“自分のものに”する力を」というミッションは個人的にとても気に入っています。それが実現できて、自分たちで感じられるのならば、パーソルキャリアはもっと楽しい会社になるのかと思います。何をしたら人々がそれを達成したと思えるのか、その基準を作っていきたいですね。

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(取材・文=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=THE TEXT FACTRY(エーアイプロダクション)/撮影=古宮こうき)

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荒川 清貴 Kiyotaka Arakawa

サービス企画開発本部 サービス開発統括部 グロース部 マネジャー

アメリカで大学生活を送り卒業後、29歳で帰国。帰国後、様々な企業にてCSのオペレーター〜管理者、コールセンターの立ち上げまで経験。前職では動画配信プラットフォーム運営会社で海外配給会社との条件交渉や契約内容の翻訳などを担当。
2019年10月にパーソルキャリア入社。新規開発サービスを成長(ポテンシャルの最大化)させるため、ユーザーの行動データ及び、顧客からの声を収集することによって施策、改善策を実施しユーザーアクティビティの総量を最大化させるグロース部の体制構築に従事。

現在は退職。

※2020年7月現在の情報です。