「5事業部8部署」の正義をどう束ねる?巨大サービスdodaのPdMが語る、失敗から学んだ”合意形成術”

こんにちは。パーソルキャリア株式会社で転職サービス「doda」のプロダクトマネジャー(PdM)をしている新庄です。

私が担当している日本最大級の転職サービス「doda」、その巨大なプラットフォームは、単一の組織ではなく、戦略もKPIも異なる複数の事業部によって支えられています。ここでは新しいサービスを一つ作るにも、立場の異なる多くのステークホルダーとの合意形成が不可欠です。

「上位役職者と握れば大丈夫」という過信で手痛い失敗を経験したPdMが、泥臭い現場での調整の末に見出した、大規模プロジェクトを動かすための「3つの原則」とは? パーソルキャリアのPdMが直面するリアルな難しさと、その先にある醍醐味を語ります。

 

 

1つのサービス、無数のステークホルダー

まず、私たちが向き合っている環境の複雑さをご理解いただくために、下の図をご覧ください。

これは、「doda」という一つのサービスに関わる主要な事業部を示した組織図の一部です。dodaには、人材紹介事業、転職メディア事業など複数の事業があり、その中にも、それぞれ独立した戦略を持つ複数の事業部が紐づいています。

ですので、「doda」で新サービスやプロダクトを立ち上げようとすれば、関係する複数の事業部・部署との合意形成が必要になります。

各事業部は、取り扱う商材も顧客特性も異なれば、最重要指標(KPI)も異なります。部門で見ても、営業部門は「短期的な売上」を、企画部門は「中長期的なUX」を、法務・コンプライアンス部門は「リスク回避」を優先する。それぞれの「正義」がぶつかり合う中で、PdMは一つの方向へプロジェクトを導かなければなりません。

これだけ合意形成先が多いと、その過程で新たな論点が見つかり、サービスやプロダクトの設計を見直す必要が出てくることも珍しくありません。ですが、これらを乗り越えた先にこそ、売上1,200億円超のパーソルキャリアのトップラインに直接影響を与えられる施策を実行できる面白さがあります。

この複雑性と規模感こそが、パーソルキャリアのPdMが直面する最大の難所であり、同時に、他にない面白さだと言えるでしょう。

【失敗談】「上位役職者と握れば大丈夫」という過信

私自身、この「複雑さ」で痛い目を見た経験があります。

ある大規模プロジェクトで、私は関係する5事業部8部署の上位役職者たちと事前に内容をすり合わせ、「これで合意は取れた」と安心していました。しかし、リリース直前になって事態は急変します。

ある事業部の現場に近い担当者と会話をする中で、サービスの根本を揺るがすような、これまで見えていなかった大きな論点が発覚したのです。

「〇〇なケースがありますが、それって大丈夫ですか?」

「…」

組織の規模感ゆえに、上位役職者が現場の細かい運用実態まで全て把握しているとは限らない、というリスクを私は見落としていました。普段あまり合意形成に行かない事業部だったこともあり、私自身に前提となる事業部理解が不足していたことも要因でした。

結果、リリース直前にもかかわらず、サービスの建て付け変更を余儀なくされ、全事業部・部署への「再行脚」と追加開発により、ローンチは予定より半年遅れてしまったのです。この苦い経験から、私は「表面的な合意」の脆さを痛感し、合意形成のスタイルを改めて見直しました。

複雑なパズルを解くための「3つの合意形成術」

失敗から学んだのは、テクニックではなく、相手への「理解」と「敬意」をベースにしたアプローチの重要性です。現在、私が大規模プロジェクトで実践している3つの原則をご紹介します。

 

① 「相手の靴を履く」ための徹底的な事業理解

合意形成のスタート地点は、「説得」ではなく「共感」です。

5事業部8部署あれば、5事業部8部署それぞれの異なる背景があります。私は交渉に行く前に、以下の点を徹底してインプットするようにしています。

  • 彼らの商材は何か? 誰が顧客か?
  • 今期、最も重要視しているKPIは何か?
  • 現在抱えている最大の課題は何か?

これらを理解した上で、「もし私が彼らの立場なら、この提案のどこを懸念するか?」を予測します。会議の冒頭で、「今の○○の状況、大変ですよね。その上で…」など、相手の文脈に寄り添う言葉から始めることで、初めて建設的な議論の土台が整います。

 

② オープンに懐へ入り、「真のキーマン」の本音を引き出す

前述の失敗から、私は「社内の経験者」へのヒアリングを大事にしています。

「このプロジェクトを円滑に進めるために、現場の実態に一番詳しいキーマンは誰ですか?」と、周囲に教えを乞います。パーソルキャリアには、こうした相談に対して親身に応えてくれる文化があります。

そして特定したキーマンに対しては、PdMが完璧な正解を持っているふりはしません。あえて自分の迷いや、プロジェクトの懸念点をオープンにさらけ出します。

「実は、この部分の実現性に少し不安があるんです。現場の視点から見て、どう思われますか?」

こちらが弱みを見せることで、相手も「実はうちの部署でも…」と本音の懸念や制約を話してくれるようになります。この相互の自己開示が、隠れた論点を早期に発見し、表面的な合意ではない強固な協力体制を築く鍵となります。

 

③ 「丁寧すぎる事前準備」で、場に安心感をもたらす

多くのステークホルダーが集まる重要な会議では、限られた時間で意思決定を仰がなければなりません。ここで私が徹底しているのが、「ドキュメントのカスタマイズ」です。

私は、全ての部署に同じ資料をそのまま使い回すことはしません。

特に説明が複雑で情報量が多いものほど、相手の関心事に合わせて資料の構成や表現を変え、「自分たちの課題が考慮されている」と一目で分かるようにします。この「少し丁寧すぎるくらいの準備」が、参加者の不安を払拭し、場に安心感をもたらします。結果として、手戻りのないスムーズな現場承認につながります。

複雑さの先にある大きな社会インパクトを「面白い」と思えるPdMへ

「doda」という巨大なプロダクトを動かす仕事は、決してスマートで楽なものではありません。泥臭い調整の連続であり、時には壁にぶつかり、来た道を戻ることもあります。

しかし、異なる背景を持つ多くの人々と対話を重ね、複雑に絡み合った利害関係というパズルを解き明かし、一つの大きな方向へ導いていく。そのプロセスには、他の環境では味わえないダイナミックな面白さと、PdMとしての圧倒的な成長機会があります。

技術とコミュニケーションの力で、この「複雑さ」を乗り越え、事業と社会に大きなインパクトを与えたい。そんな気概を持った方と、ぜひ一緒に働きたいと願っています。

 

 

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新庄 桃子 Shinjo Momoko

プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 プロダクトマネジメント統括部 PdM2部

新卒でインテリジェンス(現在のパーソルキャリア)に入社し、3年間法人営業を経験後、WEB・アプリディレクターとして「an」「doda」における複数の新規機能・サービス立ち上げに携わる。直近はPdM組織のマネジメントと、0→1で立ち上げた法人自走型採用ブランディングサービス「doda企業PR」のサービスオーナーを務める。

※2026年1月時点での情報です。