
- 気づくと、もうAIに話しかけている
- 昔は、考えるしかなかった
- AIは、考える“前段”をほとんどやってくれる
- それっぽいUIと、ちゃんとしたUXのあいだ
- 考えなくてよくなったもの/考え続けるしかないもの
- 最近、腑に落ちてきたこと
- 今も、自分に問い直していること
- これからのAI × デザインは、たぶんこんな感じになる
- まとめ
気づくと、マイクに向かってAIに話しかけている
便利で優秀で、仕事は確実に速くなった。
でも、そのとき自分はどこまで考えているのか。
AI時代のデザインと向き合いながら、現場で感じている小さな違和感を言葉にしてみました。
気づくと、もうAIに話しかけている
最近、仕事中にひとりで喋っている時間が増えました。
キーボードじゃなくて、マイクに向かって。
文章を書き始める前に、アイディアを出すときに、
「ちょっと整理したいな」と思った瞬間に、もう話しかけている。
正直、かなり優秀です。
速いし、うまいし、だいたいそれっぽい。
でも、
「これ、考えたの、どこまで自分だっけ?」
と思うことがあります。
長く仕事をしてきましたが、
ここまで声に出すだけで形が出てくる感じは、やっぱり初めてです。
便利だし、助かっている。
それは間違いない。
その一方で、便利さの裏で、「考えた」という手触りだけが、
どこかに置き忘れられていくようにも感じる。
今日はその違和感を、少しだけ言葉にしてみようと思います。
昔は、考えるしかなかった
今とは比べものにならないくらい、
UIを作るのが大変でした。
ツールは重い。
変更は面倒。
1回の修正コストが高い。
だからこそ、
考えてから作るしかなかった。
「このボタン、本当に必要か?」
「この流れ、ユーザーは迷わないか?」
一度作ってしまうと直すのが大変なので、
自然と頭の中で、何度も行ったり来たりする。
今思えば、あの頃は「よく考えていた」というより、考えないと前に進めない時代だったのだと思います。だからこそ、今の“考えなくても前に進めてしまう状態”との差が際立つのかもしれません。
AIは、考える“前段”をほとんどやってくれる
今はどうでしょう。
とりあえずAIに聞く。
とりあえずワイヤーが出る。
とりあえず文章が整う。
試作のスピードは、体感で何倍にもなりました。
これは素直に、ありがたい。
特に「手を動かすのが遅くて苦しかった人」にとっては、
かなり救いになっていると思います。
ただ、その分だけ、
「考えなくても、形だけは出る」
という状態にもなりました。
ここは、少し立ち止まったほうがいい気がしています。
それっぽいUIと、ちゃんとしたUXのあいだ
AIが作るUIは、だいたい「それっぽい」。
余白もきれいで、
配色も無難で、
レイアウトも大きくは外していない。
でも、その画面を前にして、
自分はちゃんと答えられているだろうか、と考えます。
このUIは、誰のどんな不安を減らしているのか。
なぜ、この順番なのか。
なぜ、ここで決断させようとしているのか。
AIは「形」を出してくれます。
でも、「なぜそうしたのか」までは引き受けてくれない。
UXというのは、
UIの見た目の裏側にある
この「なぜ」を考え続ける作業なんだと思っています。
考えなくてよくなったもの/考え続けるしかないもの
AIのおかげで、
デザイナーが考えなくてよくなったことは、確かにあります。
細かいレイアウト調整。
定型的なパターン出し。
初期案をたくさん出すこと。
ここは、もうAIに頼っていい。
一方で、
考え続けるしかないことも、
だいぶはっきりしてきました。
そもそも、何を作らないか。
どこで迷わせて、どこで迷わせないか。
このプロダクトは、ユーザーのどんな瞬間に触れているのか。
ここは、AIに任せると一気に薄くなる。
むしろAIが優秀になるほど、
人間側の「問いの浅さ」が、
そのまま形になる。
そんな感じすらしています。
最近、腑に落ちてきたこと
AIを使っていると、
判断やアウトプットのスピードは、確実に上がります。
形が早く出るようになったからこそ、
その違和感が、前よりはっきり見えるようになった気がしています。
AIは、答えを出すのがとても得意。
人間は、問いに違和感を覚えるのが得意。
つまり、AIは“答えを出す存在”であり、人間は“問いの違和感を捉える存在”。その役割分担こそが、これからのデザインを支える軸になると感じています。
今も、自分に問い直していること
AIを使っていると、
判断が速くなる分、考えたつもりになりやすい。
だから最近は、アウトプットを見る前に、
ひとつだけ確認するようにしています。
「これ、自分は何を決めたんだっけ?」
UIを作ったのか。
選んだのか。
それとも、流しただけなのか。
この区別がついていれば、AIを使っていても、
仕事の手応えはちゃんと残る気がしています。
これからのAI × デザインは、たぶんこんな感じになる
AIは、これからも賢くなるでしょう。
UIも、どんどん自動化されていく。
だからこれからのデザイナーは、
AIが出した答えを「どう作るか」より、
「その答えを採用するかどうか」を判断する側に
回っていくのかもしれません。
まとめ
AIのおかげで、
私たちはたくさんのことを考えなくてよくなりました。
でも、
考えなくてよくなった=考えなくていい
という話ではない。
結局のところ、
「何をAIに任せ、何を自分で決めるのか」。この選択を丁寧に続けられる人こそ、これからのデザインをつくるのだと思います。

林 梨絵 Rie Hayashi
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 テクノロジー統括部クライアントプロダクトデザイン部 デザイン第1グループ
2023年にパーソルキャリアへ入社し、doda CONNECTのデザインを担当しています。過去にはエンジニアや海外勤務の経験もあり、多様なバックグラウンドを活かしながら、学び続ける姿勢を大切にしています。現在はAI技術の活用に注力し、新しい価値の創出に挑戦しています。
※2026年1月時点での情報です。
