事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

「プロダクトで事業を動かす」――その中核を担うのがプロダクトマネージャー(PdM)たちです。しかし、PdMの役割や立ち位置は企業ごとに大きく異なり、経営とどれだけ密に連動しているかは組織の文化に依存する部分も少なくありません。

パーソルキャリアでは、PdMを“事業成長を牽引する存在”と捉え、経営層からも大きな期待が寄せられています。本記事では、法人向けプロダクト全体を統括するクライアントプロダクト本部 本部長 森 久朋に、PdM組織の“今”と“これから”を経営視点から語っていただきました。

領域が変わっても、仕事の本質は変わらない。挑戦を重ねてきた思考と視座

――本日はよろしくお願いします。まずは、森さんのこれまでのご経歴と現在の役割を教えてください。

森:2007年に新卒でインテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、約7年間アルバイト求人情報サービス「an」の営業に従事していました。その後、新規事業「meeta」の立ち上げに営業マネジャーとして参画しましたが、事業再編により組織が解体され、まったく領域の異なる「an」のマーケティング部門へ異動することになったんです。

クライアントプロダクト本部 本部長 森 久朋

クライアントプロダクト本部 本部長 森 久朋

そこでは、ブランドマーケティングのマネジャーや、販売企画部の立ち上げなどに携わりました。2019年、「an」の事業撤退を機に、ゼネラルマネジャー(GM)として、転職サービス「doda」にて転職希望者様へのスカウト配信事業を任され、本格的にプロダクトへ関わるようになりました。

2024年からはタレントソーシング事業開発本部の本部長として事業全体を管掌し、今年4月より、法人向けプロダクト全体を統括するクライアントプロダクト本部の本部長を務めています。

 

――異動のたびに、新しい挑戦が伴っているように感じます。そうした変化に対して、どのようなスタンスで臨んでこられたのでしょうか?

森:私のスタンスは一貫していて、会社が期待して任せてくれたなら、腹をくくってやりきる。それで成果が出なければ、任せた側の判断が問われる――そう思うようにしています。ある種の開き直りかもしれませんが、それくらい振り切ることで、迷わず自分の力を出し切れると思っています。

 

――そのような割り切ったスタンスがあったとはいえ、業務内容も文化も異なるマーケティング部門への異動は、特に戸惑いも大きかったのではないでしょうか?

森:異動した当初は、正直、かなりの不安がありました。会議では聞き慣れない専門用語が飛び交っていたため、パソコンに覗き見防止シートを貼って、その場で検索しながら覚えていくような毎日でした(笑)ただ、不安が大きかったからこそ、休日に外部の勉強会に参加したり本を読み込んだりして、必死に学んでいましたね。

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

そんな中で強く実感したのが、「領域が変わっても仕事の本質は変わらない」ということです。営業でもマーケティングでも、目の前のお客様の“ありたい姿”と現在のギャップをどう埋めるかが仕事の本質だと気づきました。手法やアプローチは違っても、根底にある目的は変わりません。この視点は、今のプロダクト開発にも繋がっています。

もうひとつ印象的だったのは、当時のマーケターの多くが手法やトレンドに詳しい一方で、お客様の行動や感情にまで深く踏み込んでいる人が少なかったことです。営業時代に現場でお客様の声を聞きつづけてきた自分だからこそ、「顧客と向き合うマーケターになれる」と、そのとき思えたんです。この気づきが、自分の価値観やスタンスを大きく変えるきっかけになったと感じています。

 

プロダクトから生まれる事業成長——その変革の中心に立つのがPdM

――ここからは、PdMについて詳しく伺っていきます。経営の視点からPdMという職種にどのような価値を感じていますか?

森:PdMはプロダクトを軸に、事業へインパクトを与える変数をコントロールして、価値を生み出す存在です。そのため、ひとつの領域を任されたPdMであっても、その領域の“事業責任者”としての視座を持っていてほしいですし、それほどまでビジネスに与える影響が大きく、事業成長の中核を担うポジションだと考えています。

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

だからこそ私は、パーソルキャリアを「プロダクトが成長を牽引する事業」へと変革させたいと思っているんです。そして、その変化をリードしていく存在こそが、PdMだと強く感じています。

 

――プロダクトを軸とした事業へ変革していくために、PdMはどこまでの役割を担うべきだと考えていますか?

森:PdMは、単なるプロダクトを総括するディレクターではなく、プロダクトを通じて事業に価値を届ける責任者であるべきだと考えています。

これまでのパーソルキャリアでは、PdMをあくまで専門性の高い職人的なポジションとして捉える傾向がありました。そうなると、どうしても職能的な指標にとどまり、「この領域のプロでいてください」という限定的な期待に収まってしまうんです。

しかし本来PdMは、プロダクトが「ユーザーにきちんと届いているのか」「価値として受け取られているのか」を、自らの責任で追いつづける存在であるべきだと思っています。

 

――PdMが本来の力を発揮するために、森さん自身が意識されていることを教えてください。

森:特に意識しているのは、目指すゴールに向かう中で立ちはだかる「無意識のバイアス」を取り除くことです。日々、顧客と接点を持つ営業職からの要望はとても重要ですが、それにただ応えるだけでは、PdMが本来担うべき価値創出の役割を果たすことはできません。

そのため、必要があれば私自身が現場に入り、関係者と直接対話しながら認識をすり合わせていきます。本質的な課題に集中できる環境を整えることが、この転換期における非常に重要な部分だと思います。

 

――森さんご自身が、PdMの重要性を強く感じたきっかけを教えてください。

森:労働集約型のビジネスモデルであった「an」の事業撤退が、大きな転機でした。当時は、「今ある体制で、いかに成長率を高めた目標で成果を出すか」という発想にとどまり、構造そのものを見直す視点はほとんどなかったんです。この経験から、「人×労働時間」という計算式から抜け出し、プロダクトを軸にした事業へと転換する必要性を強く意識するようになりました。

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

ちょうどその頃に任されたのが、dodaMapsというスカウト配信プラットフォームの事業開発です。すでに300社以上が導入し、毎月何百万通ものスカウトが動いていましたが、運営しているメンバーは10数名。わずかな運営体制で大きな雇用を生み出していたことを知り、プロダクトが持つ可能性を感じたんです。

そこで私は、「人を増やさずに事業を伸ばす」という方針を掲げ、プロダクトの強化に注力しました。その結果、10数名の営業体制で月に約800名の雇用を創出し、売上の約4割を営業を介さずに生み出すことができたんです。この体験を通じて、PdMという職種が担う本質的な価値を、はっきりと認識するようになりました。

 

組織の意識は対話と理解で変わる。PdMが牽引する、プロダクトドリブンな組織へ

――プロダクトを軸に考えたときに、乗り越えなければいけない壁や問題をどのように捉えていますか?

森:これはまだまだ発展途上なので、しっかりと考えていかなくてはいけないテーマですね。

これまでは営業人数や生産性・効率性に担保した事業運営を行い、短期的な収益を上げてきた事で、いわゆる技術負債が溜まっている状態です。

中長期的な観点を考えれば、抜本的な変革が必要だと認識しています。売上毀損なくどう乗り越えるか、ということを積み重ねてきたことで負債が溜まり、デプロイまでの期間にすごく時間がかかったり、障害が出たりする――逆に障害を検知するための検証にかなりの時間がかかったりもしてしまい、スムーズに施策が進まないという壁はあります。また、システム構造の複雑化でデータを取り切るまでに多くの時間を要してしまう課題もあります。

どれだけ優秀な人材がいいマインドでチームとして取り組んでも、これらを解消しなければサービスの成長を止めてしまうため、今まさに向き合っています。

 

――やはり転換期とし大きな壁を乗り越えないといけないシーンに直面しているのですね。現時点では解消への方向性はあるのでしょうか?

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

森:はい、ようやく道筋が立ってきました。経営としてもこの課題に対して本気で向き合ってくれているので、特に技術負債の解消に向けては、業務変革も伴うため多くの議論を重ねています。特にリソースや業務調整など、会社全体にかかわる内容も多いため、理解を得ながら前進させています。

もう一つは課題がありながらも「こうあるべき」という全体絵を描ける人がいなかったので、岡本旬平さんや真崎豪太さんを中心に進めてもらっています。

周知のとおり、システムの事だけ詳しくても描けなくて、システムを使う側の事業や業務オペレーション、顧客提供の部分は一気通貫で理解をしていないと、いいシステムは作れませんよね。この辺りは経営と現場が一体となって実現までの道筋を定める必要があるので、私自身も入って進めています。

 

――PdMの価値を組織に浸透させるために、どのようなアプローチをされていますか?

森:PdMが力を発揮するには、営業や開発など、他部門との連携が欠かせません。どれだけ良いプロダクトを作っても、正しく届けられなければ意味がない。しかし、全員が「顧客の課題を解決する」という同じゴールを見ているにもかかわらず、組織の中ではどうしても摩擦やすれ違いが起きてしまうことがあります。

そうしたズレを解消するために、私は積極的に横断プロジェクトを立ち上げたり、フロントのキーマンと毎月1on1を行ったりしています。プロジェクトとして同じ課題に向き合うことで、自然と相互理解が生まれるんです。表向きは業務の打ち合わせでも、本質的には互いを理解する時間なんです。

性善説かもしれませんが、本気でゴールを共有できれば、必ずひとつのチームになれると信じています。もし連携がうまくいっていないとしたら、それはまだ対話が足りていない、本気で向き合えていないだけだと思っています。

 

変革期だからこそ、PdMにしかできない役割がある。未来を動かす担い手として

――パーソルキャリアのPdMに挑戦したいと思う方に向けて、今のタイミングで入社するとどのような力が身につきそうでしょうか?

森:今この“転換期”に挑戦できることこそ、最大の魅力です。事業や組織のあり方そのものを見直し、大きく作り変えていくプロセスには困難もありますが、その分、大きな成長と手応えを得られる格別の面白さがあります。

もうひとつは、プロダクトを通じて社会に与えられるインパクトの大きさです。私たちのサービスは「はたらく」という、人生に深く関わる領域にあります。たった一つの機能が、誰かの転職を後押しし、人生の転機になるかもしれない。そんな未来を想像しながらはたらけることが、この仕事の醍醐味だと感じています。

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

――パーソルキャリアの転換期に求めるPdM像について教えてください。

森:スキルや経験はもちろん大切ですが、私たちがもっとも重視しているのは「グロースマインドセット」を持っているかどうかです。これは、環境や自分の能力も含めて「変化させられる」と考え、前向きに行動しつづける力のことです。

例えば、「今の会社の仕組みでは無理だ」と諦めるのではなく、「どうすれば実現できるか」「そのために自分がどう変わるべきか」を考え続けられる。そうした姿勢が、今のパーソルキャリアに求められる資質だと思います。

私たちも、未来の変化をすべて予測できているわけではありません。そのため、今あるロードマップに合うかどうかよりも、変化を受け入れ、前に進みながら自らも進化できる人と一緒に、これからのパーソルキャリアを作っていきたいですね。

 

――最後に、クライアントプロダクト本部が目指す中長期のビジョンを教えてください。

森:私たちは、「リクルーティングオーナーシップを育む」というビジョンを掲げています。企業が“誰かに任せる採用”から脱却し、“自らの成長戦略としての採用”を実現できる力を持つこと。それこそが、これからの時代に求められる組織のあり方だと考えています。

このビジョンの実現に向けて、クライアントプロダクト本部では、リクルーティングオーナーシップを軸にした新たなプロダクト作りに挑戦していきます。

事業成長をドライブするPdMの真価――本部長が語る“PdMのいる組織”の強さとは

――ありがとうございました!

 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=嶋田純一/写真=原野純一)

クライアントプロダクト本部 本部長 森 久朋

森 久朋 Hisatomo Mori

クライアントプロダクト本部 本部長

2007年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。アルバイト求人情報サービス「an」、転職サービス「doda」にて法人営業、およびマネジメントに従事し、業界問わず多くの企業の採用支援に携わる。その後、マーケティング組織に異動し、「an」のブランドマーケティングに従事。2018年には販売戦略立案から実行推進まで行う新規部署を立ち上げ、組織をけん引。2019年に人材紹介事業会社向けスカウトサービスの事業開発責任者に着任、2023年よりスカウトサービス「doda ダイレクト」事業も管掌。2024年4月、タレントソーシング事業開発本部 本部長に就任し、2025年4月、クライアントプロダクト本部 本部長に着任。

※2025年5月現在の情報です。