申し込み延べ人数は5,000名を突破!基礎から Power Query までを教える人気の“Excel塾”とは

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「テクノロジーを活用してデータを価値あるものに変えていく」という指針を掲げ、データとテクノロジーからミッションの実現を目指す、デジタルテクノロジー統括部(以下、DT)。その組織文化である「 DT Policy 」に則り、多くの人を巻き込んで人気を博している取り組みの一つが、“Excel塾” です。たった一人でこの取り組みを始め、力強く推進しているビジネス部の佐々木に、何を目指し、なぜこの取り組みを始めたのか、熱い想いを語ってもらいました。

 ※2020年12月に取材を行い、撮影時のみマスクを外しています。

「全社員Excel活用」で、ビジネスの質と意思決定スピードの向上を目指す

――まずは、“Excel塾”の概要から教えてください。

佐々木:元々は2020年6月に勉強会としてスタートし、8月からExcel塾としてExcel の基礎知識からデータ分析、統計学、管理会計などのビジネススキルまで、幅広いテーマを取り上げながら講座を開いています。コンテンツは1回1時間で月に8本、弊社に限定せずパーソルグループ全体に展開しています。

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毎月200名前後の方にお申込みいただき、スタートから6ヶ月間でお申し込みいただいた数は延べ5,000名を超えました。所属の企業は8割がパーソルキャリアから、残り2割はグループ会社からですね。また職種の面では、営業などフロント社員が4割、企画や総務、経理、人事などミドル・バック系の社員が6割と、さまざまな業務に就いている方にご参加いただいている講座です。

ユニークにすると参加者は800名くらいで、リピートや複数コンテンツの受講をしていただいている方が多くなっています。

 

――5,000人超えとは・・・すごい数ですね。さまざまな所属や職種の方を巻き込むようになったExcel塾ですが、どのようなきっかけで始められたのですか?

 佐々木:ベースにあるのは、複業で Excel 講師をやっていた経験です。もともと前職では3年間経営企画のポジションを担っていて、業績の集計や年度予算の策定、管理などに奔走する中、Excel を使った効率的なデータの集計や活用のスキルが鍛え上げられていきました。その経験をもとに当時の部署内で小さく Excel 研修をしていたところ、「社内でやっているのはもったいないから、自分の価値を認識して外に発信した方がいい」と背中を押してくれた先輩がいて。複業で、パソコンスクールでの講師など様々なことに挑戦しながら、Excelスキルの習得ニーズの根強さを肌で感じていました。

 

――DTに入る前から、源泉となる活動はされていたんですね。

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佐々木:そうですね。その後 DTに転籍してしばらく経ってから、データ集計をとても効率的に行える「Power Query」という機能に出会ったんです。もっと早く知っていれば、経営企画での仕事の生産性も上がっていただろうに、と惜しく思ってしまうような素晴らしい機能で、これは世に広めなければいけないものだなと、使命感すら感じていました(笑)。そしてまずは社内で企画職あたりを中心に展開していったら面白いことになりそうだな、と思ったことが Excel塾を始めるきっかけになりました。

 

―― Power Query との出会いが取り組みのきっかけだったとのことですが、その機能や実力を具体的に教えてください。

佐々木:Power Query は、データの取り込みや整形、加工などの一連の作業を自動化できる機能です。

例えば、法人顧客からのオーダーで求人広告の応募者データを集計・分析するとします。通常であれば、CSV や Excel を開いてデータをコピーし、貼り付けて加工して……と工数をかけているところを、Power Query を使えば最新のデータを反映して更新ボタンを押すだけ。

実際に求人広告事業の営業担当者から相談をもらって、応募データの集計作業にかけていた8時間×3日もの時間を、15分に縮めることができた例もあります。それも、自動化するシステムを作るのに1時間とかかっていません。弊社の求人広告に出稿してくださった顧客が求めるデータを、タイムリーかつスピーディに提供できるのは、大きな価値になりますよね。

また集計を効率化しようとすると、VBAやマクロの知識を習得しなければいけないイメージがありますが、これは難易度が高くて挫折しがち。対して Power Query なら、関数やピボットテーブルの基本を抑えておけば、すぐにその扉を開くことができるのです。

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――構築が簡単で、さらに膨大な作業を自動化してくれる。そうした Power Query という素晴らしい機能を広めることで、どのようなことを達成しようと考えたのですか?

佐々木:社内でお世話になっている方は本当に素敵な方が多いので、まずはやはり社内の人に貢献したいという気持ちが強いですね。そうした人たちの目の前にある困りごとを解決したり、また Excel を武器にしてもらうことで個々人をエンパワーしたり、そうやって社内に還元していきたいなと考えました。

もう一つは、組織への貢献の一端として、「全社員 Excel を活用する組織」を個人的に目指しています。例えば Power Query を全員が使いこなすことで3日の作業が15分でできるようになる。するとアウトプットが3日早く出るので、早く意思決定ができて、その分早く顧客に価値を届けられますよね。

データ集計やレポートをベースにした意思決定は、日々あらゆるシーンで行われています。一連のスピードが上がればビジネスプロセスのギアが高速回転するようになり、ビジネスの質を高めることや新しいサービスの提供を早めることもできると考えています。

 

――単に個人にスキルを教えるだけではなく、その先にはビジネスの最大化や顧客への還元を見据えていらっしゃるんですね。その実現の第一歩として、どのように Excel塾を広めていったのか、教えてください。

佐々木:昨年の6月の勉強会のタイミングで、まずは仕事仲間やこれまでプロジェクトで関わった方に声をかけ、20名くらいの規模で実施しました。コンテンツについての意見も参加者に聞きながら、「こういう内容が響くんだ」「こういう伝え方をしたらいいのか」とブラッシュアップしていって。翌月からは、その20名程度の参加者に周りの方を紹介してもらう形で進めていきました。

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現在も基本的にはメールでお知らせをして、「Excelを学んで生産性を上げたい」「スキルを高めるために、何か身につけたい」と意欲のある方にご参加いただき、「Excel塾をいいと思ったら、周りの人に薦めてください」という形で少しずつ伝播させていっています。

 

――ということはクチコミだけで延べ5,000人以上申し込みがあったということですね・・・すごい・・・!社内外を問わず広く展開していくにあたり、上司をはじめ人々の理解を得ることに苦労はありましたか?

佐々木:もちろん、始める前に上司の承認を得ています。でもそれ以上に申請や承認が必要ということはありませんし、批判のようなものもありませんでした。

DT policy に「プロセス < 結果」とあるように、最終的に「みんなが Power Query を使えるようになって、仕事の効率が上がった」とか「今までできなかった分析ができるようになって、仕事のクオリティが上がった」などと、個人にとっても組織にとってもプラスになる結果を出すことができれば、誰からも何も言われません。自由にやらせてもらっていますね。

 

実務で苦しい経験をした自分だからこそ、伝えられること

――延べ5,000名以上の方に申し込みをいただくまでになった、成功の要因をどのように振り返られますか?

佐々木:一つはExcelそのものの素晴らしさだと思います。便利で優秀な機能の数々は、あまり知られていなかったりしますが、「Excelでここまでできるんだ」「もっと早く知っておけばよかった」という声をいただくことも多いです。一生使う可能性のあるソフトですし、習得したいというニーズはとても根強いものなのだと思います。

 

――みんなが使っているExcelがテーマ、というのが人気のポイント、ということですね。 

佐々木:そうですね。そしてもう一つは、「私だから伝えられることがある」からだと思っています。

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パソコンスクールやノウハウ関連の書籍などは様々ありますが、関数を教えるための題材が無理に作られていて、実務に反映しづらい部分が多いんです。また書籍で学ぶ中で一箇所つまずくと、もういいやと投げ出してしまいがちですよね。

私が発信しているのは、実務で過去に苦しい思いをしてきた私が、「ここで困っていたときに、この機能に助けられた」という生きた知恵です。そして、その知恵をわかりやすいコンテンツに落とし込んで伝えたり、行き詰まった時に個別でフォローを行ったりすることで、多くの方に届いてくれたのかなと実感しています。

 

――経験から生まれた生の声として届けることを意識されているのですね。そのための工夫を、具体的にお聞かせいただけますか?

佐々木:やはり特に大切にしているのは「実務で使える」ことですね。ありもしない架空の表を使って関数を学んでもリアリティがないですし、一回参加して「いい話が聞けたな」と思っても、実務で使わなければ当然忘れてしまいます。なので、営業実績やアンケートの集計など、日常業務の中で登場するような粒度の例を、適切なサイズ感で出すことを常に意識しています。

あとは定期的に新作を出すことも、工夫の一つです。テーマも、関数の知識やテクニックだけでなく、例えば「Excelで学ぶお金の勉強」や「競合他社との財務諸表の比較分析」など、色々な角度から用意して。「Excelって面白いな」と思って学んでもらえたら嬉しいですね。

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大切なのは、「Excelを学びたい」という意欲に着火させること。ここはまだ課題が残る部分でもあるので、突きつめていきたいです。

 

――参加者の実務に落とし込む、運用のフェーズまで考えていらっしゃるとのことですが、幅広い職種の業務内容はどのようにキャッチアップしているのですか?

佐々木:それぞれの職種の具体的な業務については、最初はあまり見えていませんでしたし、もちろん今も全てが見えている訳ではないところですが。

講座に参加していただいた方から、「Excel塾で学んだけれど、実際に使ってみるとココが上手くいかない」などとよく相談をいただくんです。基本的には個別でお時間をとって対応しているのですが、その中で私も「この職種の人は、こういうことに困っていたんだ」と気づきをもらっていて。そうして業務内容や困りごとをキャッチしながら、コンテンツに還元しています。

 

――細やかな工夫の凝らされた Excel塾の講座を受けた方からは、実際にどのようなお声が上がっていますか?

佐々木:印象に残っているのは、関数の入門編の講座をやった翌日に「早速部下から、関数を使ったレポートが上がってきました」というお声をいただけたことです。

また、講座でPower Queryを学んだ人事系の方から「今まで時間がなくて退職者の細かな分析ができていなかったけれど、Power Queryを活用して、様々な角度からの分析の仕組みが作れました」とご報告をいただいて、その方が社内でVP賞を受賞されるなど、実務でアウトプットするところまで到達してくれたんだなと、とても嬉しかったですね。

 

自分がバリューを発揮できる場所を自覚し「Giver」でありたい

―― Excel の知識やスキルを持っていて、自分が職人としてその仕事を請け負うこともできる中、時間と労力をかけてでも敢えて「人に教えること」を選択する、そのマインドはどこから来ているのでしょうか?

佐々木:もともと人に教えることが好きで。難しい複雑な物ごとをシンプルにわかりやすく、さらには面白く伝えられて、「相手に伝わったな」と感じられる瞬間自体に喜びを感じますし、感謝の言葉をいただけることが大きなやりがいにもなります。

ただもちろんそれだけではなくて、根底には「Giver」でありたいという思いがあるんです。

短期でリターンがあるかどうか、とかそういうことではなくて、自分にできることはどんどん場に出して人に与えていく。その方が、相手も自分自身も豊かになるのではないかなと思っています。

何かを教えて対価をいただくのは「Give and Take」で、これらは複業で満たされますが、それだけではつまらなくて。結局は、スペシャリティを発信した側に生きた情報が集まってきます。だから、まずは自分ができる範囲であれば、最大限手助けさせてもらいたいなという気持ちでいます。

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――自分の持っているものを場に出して推進させることで、ビジネスや組織の成長に繋がり、また自身も多くのものを持ち帰れるのですね。見返りを求めてはいない訳ですが、何がここまで佐々木さんをつき動かしているのでしょうか?

佐々木:一人ひとりが「自分のキャリアを作る」となった時に、大切になるのは、それぞれが持っているコンテンツを自分自身にタグづけして発信していくこと、平たく言えば「キャラ作り」だと思うんです。

DT は特にスペシャリストのようなメンバーが多い中、転籍してきた当初の私はろくに仕事ができませんでした。データサイエンスの道を志してやってきたものの、知識も経験も不足していて「テクノロジーを活かした企画を」と言われてもまともなものが出せず、とても苦しい思いをしたのです。

このままではここで食べていけないのではないか、という不安を初めて強く味わった時、「あなたは何ができる人なの?」と問われて答えられるものがないと厳しいなと痛感したことが、今の原動力になっているのかもしれません。

 

――「それぞれのコンテンツを持って輝くメンバーの中、自分が自立した一人の存在として立っていくためには何が必要なのか」そう自問した時に、専門知識をもち、発信していくことが大切だと考えたのですね。

佐々木:そうですね、発信というよりもとにかく「 give 」すること。自分が持っているものを、他人に何かメリットがある形で与えていくことですね。

自分のバリューを発揮できる場所や光るコンテンツを自覚して、力を発揮できる状態でありたいと考えています。

 

――最後に、今後の展望や今見据えている未来像を教えてください。

佐々木:最近では、DX のような抽象的で高いレイヤーの話がありますが、ビジネスを推進、変革していくにあたって、何も難しい高度なソリューションばかりが必要な訳ではないと思うんです。

現場の方々は身近なデータの見方や分析の仕方を知っていて、クイックに対応ができる。DTは別の側面から、テクノロジーを活用して会社の成長をリードし支えていく。そのハイブリッドが実現できれば強いのではないかなと考えています。

そういった未来を見据えて「全社員 Excel 活用」を進めるためにも、今後は「企画部門の社員は受講必須」と強気でやれるくらい、Excel を学ぶ意欲に着火する方法を突きつめながら、実績とユーザーの信頼を積み上げていきたいです。

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―― DT policy に則り、一歩一歩丁寧に、推進力を持って結果を出していく姿が印象的でした。ステキなお話をありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)

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佐々木 慶太 Keita Sasaki

デジタルテクノロジー統括部 データ&テクノロジー ビジネス部 ビジネスグループ リードストラテジスト

新卒でパーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社。コンタクトセンター部門でマネジメントと電話システムの運営・管理を経験後、経営企画部に異動し中期経営計画の策定や予実管理等、管理会計全般を経験。2018年に現職に異動し、主に求人広告事業においてテクノロジーを活用した企画立案と推進、及びRPAを活用したBPRを推進。プライベートでは、Excel Power Queryと囲碁の普及に尽力している。

※2021年1月現在の情報です。