2020年10月からエンジニアリング統括部内で“エンジニア循環施策”がスタート。短期間の「調査旅行」、2か月程度の「留学」、そして「移住」と旅をイメージさせる用語を用いて、自身が所属している部署だけでキャリアが閉じないような仕組みにトライしています。全3回にわたり、本施策の様子を追っていきます。(第1回の記事はこちら)
第2回は、「旅行前編」と題し、旅することを決意したエンジニア、そして彼を送り出す側、受け入れる側のそれぞれのマネジャーに話を訊いてみました。
※鈴木は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。
“知りたい”という気持ちの裏側には、“全然わかっていない”というジレンマが――
――さて、ここからは実際に旅をすることになった第二開発部でリードエンジニアである鈴木 拓也さん(以下、スズタクさん)にお話をうかがいたいと思います。入社半年というこのタイミングで、スズタクさんが、この新しい施策である体験移籍になぜ応募したのか教えてください。
鈴木:施策のことに関して言うと、すごい良いタイミングだなという感想がありました。この半年で、他の部署のことをもっと多く知りたいと思うようになっていて、他部署が扱っている他サービスとの連携なしに新しいサービスを作っても、パーソルキャリアに入って作る“良さ”が半減してしまうな、と感じていました。
もちろん、少しずつ他の開発部門ともコンタクトはとれるようになってはきていましたが、チャットベースなので、充分なコミュニケーションがとれているわけでもないし、このコロナ禍ということもあり顔合わせは一切していないので、正直表面的な部分しかわからない、というもどかしさがありました。そんなタイミングに、この循環施策の話を聞いたので、何の迷いもなく速攻で応募しました。
他部署のことを知りたければ他部署に入ったほうがいいなというのは正直なところですが、それで第二開発部から離れてしまうのも少し嫌だなと。行って戻ってこられないと、今度は新しいサービス開発が出来なくなってしまうので、他の部署に異動するのは、ちょっと違うなと。一時的に移籍すれば、移籍先のことも知れるし、また戻ってこられる。これは願ってもないことだなと思いました。
――「他の部署と連携ができないと、このパーソルキャリアでの“良さ“を感じられないのではないか」という発言が、すごい面白いと思ったのですが。その真意をお聞かせください。
鈴木:“知りたい”という気持ちの裏側には、“全然わかっていない”というジレンマがあります。今、自分が担当している新規サービスも、ゆくゆくは既存のサービスと連携して、ユーザーの “はたらく”を支援していくために、サービスを拡張しなければなりません。しかし、何をやっているのかわからないということは、どういうデータがあるかわからないことにもなり、どういったもらい方ができるのかもわからない。その辺が全然手探りで、決められたチャネルの中で情報収集するのは非常に非効率です。
マネジャーレベルであれば、他の部署とのつながりはあると思うのですが、私みたいな入ったばかりの社員は、他の部署に対して十分なコンタクトはとれません。他の部署にいた人を頼り、人脈があるところにお願いしてお話をうかがうことをしなければいけないので、ここがすごく煩わしい。平たく言うと、今回の施策は、人脈作りのために行くと考えている節はあります。
――サービスを広げるにあたって、まずは既存のサービスを深く理解し、また部署連携のための“つながり”も作っておくことが重要ですよね。今回“旅行者”としては第一号ですが、何か不安や懸念材料はありませんでしたか?
鈴木:私自身、どの部署に行きたいかという希望は固まっていたし、その希望をかなえていただいたので、その点についてはまったく問題はありません。逆に言えば、希望通りの所に行かなかったら、つっぱねちゃえばいいかというある意味軽い気持ちもありましたけど(笑)。
期間に関しては、やっぱり今の時点では不安は残っていて、やりたい目的に対して、期間が短すぎるのではないかという心配はあります。とはいえ、まずは短く行って、その後長く行く設計になっているという話なので、そういった意味では妥当かなという気はしています。
――2週間ですもんね。確かにあっという間に過ぎてしまいそうですね…。ちなみにいくつか旅行先の部署はあったかと思いますが、どうして第三開発部だったんでしょうか?
鈴木:第三開発部は、パーソルキャリアの根幹のサービスであるdodaの中でもサイト開発している部署です。元々希望していたdodaのデータを適切に見て扱える部署でもあり、第二開発部で連携しやすい所という意味で言うと、やはりdodaを深く知らなければ、パーソルキャリアを知る事にはならないと思うので、必然的にセレクトしたという感覚です。
――まずはdodaのwebサイト側を取り扱っている第三開発だったわけですね。第二開発でもWebサービスを中心とした開発なので、共通項もありそうですね。スズタクさんが知りたい部署の人やデータの取り扱い方、データベースの構造は、やっぱり第二開発からみるとなかなか見えにくいということですか?
鈴木:そうですね。一部の他部署から移ってきた人には見えるのかもしれないですが、直近で入社したメンバーはほとんど見えないと思います。
――少し細かいのですが、具体的にどこまで知れるといいなと思っていますか。
鈴木:そうですね。知れば知れるほどいいとは思うのですが、大前提としては、全容、つまり、どういうものがざっくりとどこにあるのか、それと誰に聞けばいいのかということがわかれば、最悪、わからない事を聞く人がいるというところが確立できると思います。逆に言えば、現状ではそこがなかなかままならないということです。
――逆に、行った先に何か自分なりの貢献というか価値を置いていこうといった意識はありますか。
鈴木:そうですね。スキル面のところで何かを残せればいいなという思いは、もちろんありますが、まず行って、知って、つながりを作るということが、組織として絶対に価値があると思います。個人的なところか、組織的なところかわからないですが、関係性の構築は今回、メインとなる目的と考えていますし、それができれば、メリットになるかなとは思っています。
今は既存サービスも新規サービスも「そこにあるだけ」――ここから共存する意義とは
――ありがとうございます。では、上司である鹿野さんにもお話を伺います。複数の応募がある中で、スズタクさんにしようと決定した理由を、期待も含めてお聞かせください。
鹿野:そうですね。スズタクさんだったら大丈夫だろうという自信があったからです。スズタクさんが言ったとおり、入社半年のタイミングで、パーソルキャリア全体へのコネクションが不足していることや、パーソルキャリア全体の動きがわからないという課題感に気付いているタイミングでした。スズタクさんは、入社してすぐにプロジェクトリーダーとしてガツガツ積極的に動いていただいていまして、そこでの実績は残しているので技術的にはもちろん大丈夫という安心と、コミュニケーションもリーダーとしてもしっかり行動できていることから、他の部署に体験しに行っても全く問題ないだろうなと判断しました。
僕たちの組織はパーソルキャリアの中では新しく、異文化と言ってはおかしいけれど、既存の組織とは少し違う新しい文化があるので、その違う文化同志が混ざり合うことって摩擦が必ず起こるじゃないですか。ただ、摩擦が怖いから何もしないと、結局前に進まないし何も変わらない。やはり混ざり合って新しい価値を出していきたいと思っています。
なので、そもそも新しい、はたらくサービスを作る上で、たぶん僕たちの部署だけではダメで、パーソルキャリア全体、テクノロジー本部として動いて連携していかないといけないな、とひしひしと感じているんですね。その課題感をスズタクさん自身もすごく感じていると思っていて、だから今回のタイミングで積極的に手を挙げてくれたのは本当にありがたいと思っています。
――素晴らしいですね、めちゃめちゃ期待されていますよ、スズタクさん。
鈴木:そうですね(笑)。この前の全体ミーティングの場でもちらっとそういう話があったのですが、本当に荷が重くなるばっかりです(笑)
鹿野:まずは第一号として行くことに価値があるんだから。だから、まずはコミュニケーション、対話の文化、そこがきっかけとしてできればいいというぐらいなので、あんまり重荷に感じることはないかな(笑)。
――まずはチャレンジすることが大切ですよね。上司である鹿野さんから見て、“旅行“に行った後のスズタクさんに期待したいところがあったら教えてください。
鹿野:そうですね。今回、旅行前に他の組織を理解してもらうためのガイドを動画で用意したのですが、それで全部理解できるかというとやっぱり難しいですよね。先ほど、doda側の既存の組織が何をやっているのかわからないという話がありましたが、そもそも情報セキュリティがしっかりしていて、その中の個人情報が見えなかったり、基幹システムであるARCSやBAKSの中身が見れないというところが結構大きいかなと思っています。構成図や、どういうことをやっていますよというのを説明されても、実際それを見に行かないと本当の意味では理解できません。
こういうデータが格納されているんだ、こういうログが格納されているんだというところがわからないと、本質的に“ここのデータを使えば、こういう課題が解消できる、こんなサービスが出来る”といったところまでたどり着くことはできません。スズタクさんはその課題に目を向け、興味を持って参加してくれています。もちろん、期間も短いので完璧な理解は難しいと思うのですが、その取っ掛かりとして、まずはコミュニケーションをとる第一歩として関係性の構築や、お互いの理解を深めてもらえばと思います。
――鹿野さん率いるこの第二開発部としては、どういうものが入ってきてくれると嬉しいですか?
鹿野:技術というよりは文化ですかね。そもそも、こういうエンジニアリングの循環施策みたいなことができる企業は限られていると思います。これだけ大きい大規模サービスをちゃんと運用しつつ、ゼロイチでも新規サービス開発に力を入れ続けている、その両方が混在している会社は、僕はあまり聞いたことがなくて…。そこにすごく価値があるな、と感じています。でも、たぶん今はそれだけで、どっちも「あるだけ」なんですよね。やっぱり相互理解をちゃんと進めるためにも、コミュニケーションをとって互いの文化というのを知ることができればいいなと思います。
――確かに今は大規模サービスと新規サービスが「そこにあるだけ」かもしれないですね。せっかくなら双方が融合してよりパワー最大化させたいですね…。
鹿野:そうなんです。スズタクさんも言っていましたが、相手が何をやっているかって実際やってみないとわからないという所があります。新規サービスをやりたくて入ってきて、何年かやった後、じゃあ大規模サービスってどういうことやっているんだろう、と興味が出てきても、わからないところがすごいあると思っていて、やっぱりそこでその人の新たな適性が出てくると思うんですよ。新規サービスだけでなくて大規模サービスもやってみたら面白いな、ここ進んで学習していきたいな、というところまで発見できると思います。
そうすると、今まで新規サービスしかできなかった人も両方できることによって、エンジニアとしてのキャリアの可能性を広げられると思います。新規サービスでは、企画段階からデザインスプリントを行い、UX最大化をイメージしてサービスデザインを行って、と段階を踏んで進めています。ただきっと大規模サービスと考え方が違ってくるし、使う技術も違ってくると思います。自分の適性によっていろいろなキャリアを積めるんだという文化が根付くのが、最終的には僕としては素晴らしいと思うし、パーソルキャリアにいないとできないことだと感じています。
「パーソルキャリアのリソースを使えるから」という理由で、入社していただいているエンジニアさんも多いので、それが使えなければあまり意味がないし、「はたらく」サービスを新たな事業として立ち上げるのなら、そこをしっかりできるようにしていかなくてはなりません。スズタクさんには、古い仕組みや文化が残っているということも同時に伝えましたが、それをそのままにしてはいけません。ちゃんと変えていく必要があります。今、まさにそれらを変えている段階で、スズタクさん自身もそれを積極的に変えよう、パーソルキャリアを新しくどんどんアップデートしていこうというところに協力してくれるのは嬉しいですね。
――既存の大規模なサービスや新規サービスの双方を理解して、自分のキャリアの選択ができるといいですよね。また、今回実は受け入れ先の上司である一階さんからもコメントをもらっています。*1
少し紹介をしますね。まずは「なぜ今回スズタクさんを受け入れようと思ったのか?」を訊いてみました。
スズタクさんとは、同期入社だったので(笑)というのもありますが、下記理由です。
- トップバッターに進んで挑む素晴らしさ
- 技術レベルに問題がないと考えたこと
- 今後、業務でdoda DBとの連携を行うことに備えてコネクションを作りたいと、明確な目的をもっていること
- 上記目的に対して第3開発部としても協力したいと考えたこと
――同期入社だったんですね。スズタクさんを受け入れることによって第三開発としてどのような効果を期待していらっしゃいますでしょうか?
異文化コミュニケーションですね。自分たちにないものの発見による進化、共通しているものの発見による関係構築が進んでくれると良いな、と感じています。
――第三開発に移籍すると「こんな経験が得られるよ!」というアピールがあれば教えてください!
サービスを正しくグロースするための、開発経験ですね。
特にdodaサイト/dodaアプリ/iXは転職という人生の一大転機に寄り添うサービスであるため、下記領域を伸ばすことが出来ます。
- セキュリティ:転職活動中の個人情報という機微情報を扱うための、セキュリティに関する知識・スキル
- 拡張性:いずれもパーソルキャリアの基幹となるtoC向けサービスのため、長年にわたり機能追加を行っていきます。そのため、低コストでの運用/柔軟な拡張性を実現する知識・スキル
- 安定性:サービスが落ちて当日の面接情報が参照できず、面接に遅刻という事は絶対にあってはなりませんし、お客様の人生を変えてしまう事にもなりかねません。そのためインフラ・アプリケーションレイヤーの両面で安定稼働を実現する知識・スキル
――お客様の情報を多く取り扱うことで、得られる知識・スキルも多いですね。一階さん、ありがとうございます。さて、いろいろお話を伺いましたが、スズタクさん、最後に、旅行前の意気込みを語っていただければと思います
鈴木:そうですね。組織間の壁のようなところを感じるのがひとつの問題だなと思っています。今回の施策を通じて壊していくというところまでできるかわからないですが、きっかけになるといいなと思っていて、初回から少しでも結果を残せたらいいかなと考えています。
――行ってらっしゃい!こうやって知らない人たちが文化交流するって、本当に行くだけでも価値があるし、得られるものが全然違うなと思っているので、お帰りを楽しみにしています。また終了しましたらインタビューさせていただきますので、生の声、リアルな声をお待ちしております。
(取材・文=伊藤秋廣(エーアイプロダクション))
鈴木 拓也 Takuya Suzuki
サービス開発統括部 エンジニアリング部 第3グループ 兼 エンジニアリング統括部 第2開発部 リードエンジニア
前職はFintechベンチャー企業で開発部マネージャーを務め、自社で抱える複数のプロダクト開発に横断的に携わる。2020年1月にパーソルキャリアに入社し、CAREER POCKET/転職同期の開発リーダーを担う。現在は退職。
鹿野 徹也 Tetsuya Sikano
サービス開発統括部 エンジニアリング部 第2グループ マネジャー 兼 エンジニアリング統括部 第2開発部
SIerに新卒入社後、金融系PROJECTにて要件定義〜開発〜マネジメントを経験。その後、地元へUターンし、地方ソフトウェアハウスにてIBM、FUJITSU、NEC等のリホスト業務(ランタイム作成、言語変換)に従事。地方と東京の「はたらく」違い・差を実感し、より自分らしく「はたらく」ため Webアプリケーションエンジニアへ転身。RubyOnRailsから始まり、アプリ連携、サーバレス開発、AGILE(SCRUM)開発リードと各種Webサービス開発で経験を重ね、2018年にパーソルキャリアへ入社。昨今はGV提唱のDesignSprintを利用したサービス企画に加え、マネジャーとしてエンジニアの「はたらく」をサポート、より良いチーム開発の実現に向けて挑戦中。
一階 武史 Takeshi Ikkai
プロダクト開発統括部 エンジニアリング部 エンジニアリンググループ 兼 エンジニアリング統括部 第3開発部 エンジニアリンググループ マネジャー
2000年にSIerでエンジニアとしてキャリアをスタート。大規模基幹システムのPLやPMを経験後、事業会社に転職。事業会社ではエンジニア・企画/開発・ラインマネジメントなど、幅広い経験を積む。2020年1月にパーソルキャリアに入社し、doda/iXといったtoCサービスを開発するエンジニア部門のマネジャーを担当中。現在は退職。
※2020年11月現在の情報です。
*1:※一階は退職していますが、本人の同意を得て掲載を継続しています。