”現場”で経験を広げる秘訣とは――リードエンジニアが振り返る2年間

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多様なキャリアを持つエンジニアが次々にジョインし、パーソルキャリアの新しいテクノロジー集団が形成されつつあることは、これまでもお伝えしてきました。今後は、いわゆる組織長ではなく、実際に“現場で活躍するエンジニア”にフォーカス。現場で起こっているリアルに迫っていきたいと思います。今回は、入社2年が経過して、さまざまな組織の変化を体感しているデジタルテクノロジー統括部リードエンジニア、春日にインタビュー。たっぷり本音を語ってもらいました。

39歳、未経験エンジニアがパーソルキャリアを選んだ理由

――春日さんのこれまでのご経験を伺いたいのですが…ユニークなキャリアをお持ちですよね。

春日:そうですか?学生時代には材料工学を専攻していた流れで、ファーストキャリアに選んだのは半導体などを取り扱う材料科学の分野。シリコンウェーハの不良個所の分析や化学品の組成分析に従事していました。要するに電子顕微鏡を扱うような世界。システムからまったく遠い世界にいましたね。

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ただ、もともと計算やプログラミングには興味がありました。学生の頃から、研究室にサーバを立てて、インターネットのルーティングを立てたりして、会社勤めをしている時もちょこちょこ触っていたんですよね。結局、最初に勤めた会社は少し社風が合わなくなってきたので、そこからお天気の業界に転職しました。

 

――お天気業界ですか??

春日:はい。気象にも興味があったので転職しましたが、1社目から早く次に進みたかったので、少し後ろ向きなキャリアチェンジですよ。期限付きで気象庁に空きがあったので入社しました。

天気は面白いですよ。雨はなぜ降るのかといった分析や計算に興味があって、その計算を基に予測するシステムを作りたいという考えもありましたね。気象庁が契約期間満了になったので、その後は同じ気象関係の民間会社に入りまして、当時はエンジニアとしての採用予定でしたが、直前になって現場で予報する人がいないからという理由で予報士に変更になって現場で働いていました。しかしやはり、エンジニアやプログラミングのキャリアを目指したいと思っていたので、ずっと独学で勉強していました。

 どうしてエンジニアにフォーカスしたかというと、エンジニアはある程度、組織や場所、地域から依存関係が外れています。必ずこの場所に行ってやらなければならないというものがないので、疎結合ですよね。なので、働き方としても仕事としても、将来必要になると30歳の頃から思いはじめていました。

 組織に依存している形では、その組織の中で必要なスキルしか身につかないと考えていました。1社目の会社にいたときも、上がすべて判断をするタイプの組織だったので、上を見るスキルだけはつきましたが、しかしそれは将来的にはどうなんだろう…と思っていたんですよね。

 

――エンジニアのスキルを持っていれば、たとえどこかの組織に属していたとしても、その組織に依存するのではなく、疎結合なので、常に自分に選択肢があるというイメージですね。職場経験を積んでプロになりたいと思い、探した行先がパーソルキャリアだったということですね。

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春日:そうです。39歳のときです。40歳までにエンジニアになれなければダメだと思いました。39歳、新人のエンジニアとしてパーソルキャリアに入社しました。パーソルキャリアの面接を受けてみようと思ったのは、当時の勤務地が丸ビルだったので、アクセスがしやすくて、そこまで必須の条件もなく応募できたからですね。正直に言うと、パーソルキャリアのことはよくわかっていませんでした(笑)。ただ、人材紹介やHR業界はまったく経験のない業界ですが、自分のそれまでのキャリアもハードからソフトに移ってきていたので、HR業界はその自分のキャリアの流れにあっているのではないかとは感じました。

 

――未経験でのチャレンジ…面接ではどのようにアピールしたのでしょうか。

春日:読んだ本や、実際に自分でどのようなプログラムを書いたのかを伝えました。仕事の合間にPythonで予測を出していたことも話しましたね。直接お客さんには出していませんでしたが、予報士が参考にするガイダンスという形で、ざっくりとしたDeep Learningの値を出して使えるようにしていたので、そのあたりを評価していただいたのかもしれません。

 

通称「セカンドマッチ」に関わったのちに、怒涛のアサインが待っていた

 ――今だから語れる、入社当時の印象をぶっちゃけて、教えてください(笑)

春日:そうですね。当時は、全体的にメンバーが少なかったですよね。今でこそオンボーディングが必要だとやってくださる人がいますが、当時はそういうものも全くなく、当時の上司から「慣れるまでは自由にしていて」と言われていました(笑)。、正直、どうすればいいのか分かりませんが、それでも何かしなくてはならないので、悩みながらも大人しくフラフラしていました。まあ、けっこう戸惑っていましたね(笑)。会社に来てもすぐに自分ができることはない…とはいえ、いきなり成果を求められても難しいので、やることと言えば、とにかく人を見ることでした。同期にスペシャリストがいたので、彼から情報収集をしたり一緒に勉強をしていました。

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当時は、特にインフラ回りを中心に調べていて、Kubernetesというマイクロサービスをやる新しいアーキテクチャシステムがあり、Googleの講演会や勉強会に参加しながら自分でも試してみました。当時、エンジニアは10人ほどでしたが、少ないながらに毎週月曜日と金曜日はスプリントをやっていました。僕は案件に入っておらず、何も発表することがない状況だったので、開発環境の中で試しに作っているものの進捗を発表していました。

 

――入社してから案件に着手するまで、どれくらいの期間がありましたか?

春日:入社して半年後に、機械学習を活用したレコメンドシステム、通称セカンドマッチのプロジェクトにアサインされました。入社後の半年間は自由研究期間だったので、こんなにも自由研究させてくれるのか、と思いましたが、反対にこの期間があって良かったとも思います。しかし、職種チェンジはもうやめようとも感じました。やはり30代後半になると、勉強しても新しいことがなかなか入ってこないですね。

当初は、お手伝いのような役割だと思っていましたが、前回の記事で話した通り、奥が深いので調査や開発をしていたら、気がつけば自分が主導でやることになっていましたね。なので徐々に本格的に調べなくてはという気持ちになりました。そこからはスロープのようにどんどん上がっていきましたね。

 

――セカンドマッチのような既存のプロジェクトに入って、社内のシステム事情がより深く見えてきたという感覚でしょうか

春日:そうですね。あまり理解促進のためにプロジェクトアサインするのは本質ではないですし、怒られてしまいますが…(笑)、既存プロジェクトから入ることはシステム構造を理解するのにわかりやすいと思います。僕自身もセカンドマッチを通じて業務を理解することができたので、最初にアサインされるには適したプロジェクトだと感じました。ただ、現状は、運用と、当初考えていたシステムに足りないところがあり、まだ開発し続けているので、サグラダファミリアみたいな感じになっていますが(笑)。

 

――春日さんは現在、Hadoopの基盤やデータ仮想化などのプロジェクトにアサインされていますが、いくつかあるプロジェクトの中からそれにアサインされている理由はどのあたりにあると思われますか?

春日:データや基盤回りでの知見がベースにあると思います。それはこれまでの経歴というより、セカンドマッチでの経験を見られて、その延長線上にあると思います。この経験があってさまざまなプロジェクトに関われるようになったので、自分としても大きいですね。

 

――そうだったんですね。セカンドマッチ以降さまざまなプロジェクトが来ていますが、実際にどうでしょうか。

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春日:逃げ技は知っているので、キツイときはキツイと言っています(笑)。そんなに仕事が出来る方ではないので…。忙しくなった今の心理状態は、前の勉強期間の時よりもいいですね。仕事をしている実感が持てる方が断然いいです。今までも、自分の働く状態を良いバランスにするために仕事を変えてきたところもありますが、今はキツイときがあっても、リソースが足りなければ他に振ってくれるので、そういう意味ではバランスが取れています。

 

――春日さんが考える、理想のバランスとは?

春日:量的な意味でのバランスです。今はやりたいことがやれています。少なすぎると自分が仕事をしている実感が持てませんが、かと言ってたくさん仕事が来るのも違うなと感じます。飽きっぽいので、適度に新しい案件が入ってきて、自分でコントロールできるくらいがいいですね。

 

――そのバランスを自分主導で保つのは難しいケースもありますが…春日さんとしてはどのポイントで可能にしていると思いますか?

春日:私自身は、とにかく仕事を断ることはしていません。おそらくPM陣が私のキャパや力を見ながら適切にアサインをするなど、カバーしてくれていると思います。自分に出来ないことは無理をしません。他の人に任せた方がプロジェクトを上手く進められるケースもありますよね。

 

――任された仕事を達成するために自分が負えない所は適切に他の人に振っているという感覚ですね。そうなると、周りに適切に振るという判断力も必要だと思いますが、それはどうしているのでしょうか。

春日:皆さん、それぞれに専門や得意なところが違うので、それを見ています。しかし何でも相手に投げてしまうと信頼関係が崩れてしまうので、それはしません。また基本的に「これをやって」という言い方はせずに、「どう?」と聞きます。また、周りの忙しさは朝会などで分かるので、相手の状況も確認しています。

 

――周囲を上手に巻き込みながら早く達成していく、ということですね。もう少し入社後の様子を詳しく知りたくて、春日さんが仕事をされる中で、“やりたい仕事を取りに行くもの”と“これまでの実績の延長で請ける仕事”の割合はどのくらいなんでしょうか?

春日:後者のほうが大きいと思いますが、やりたい仕事をスポットで取りに行く、というよりもある程度の範囲に入っていれば、取りに行く、という感じでしょうか。ほかの人は分かりませんが…。

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セカンドマッチのときもSparkの技術はやりたいと思いましたが、壮大すぎますし、本来は入るべきではないと思っていたところに入ったので、最初のモチベーションはそこまで高くはありませんでした。それが徐々に自分の専門性を活かしたり、自分がやりたいと感じる世界に引っかかっているものをなるべく取るような感覚になってきました。

 

――では偶然にも、振ってきた仕事が春日さんのやりたい範囲の中にあるものだったということでしょうか。

春日:興味が変わってきたと思います。前の職場でDeep LearningやPythonをやっていて、ちょうど機械学習のブームが始まったころだったので、私もその部分ばかりをやっていました。しかしパーソルキャリアにきてセカンドマッチなどのもっと根幹のところ、データベースなどの地道なところを扱うようになり、最初は面倒でしたが、実際にやってみると面白いと感じるようになりました。

新しく入った人の能力が発揮できるようなサポート役として

――いちメンバーとして入られて、様々なプロジェクトを経てエンジニアの人数も増えて、いつの間にか2年が経過していると思います。その中で人数が増えたからこそ大事にしていることはなんでしょうか。

春日:新しく入った人が能力を発揮できるような、ワンポイントのサポートができればいいなと思っています。新しく入った人は会社の様子は分からないと思うので、その点を伝えられればと。例えばキーマンや、どこに話を聞けばいいのか、ということですね。システムとともに組織が見えないので、「このシステムは誰に聞くのか」ということがなかなか分からないと思います。私も最初の半年で苦労をしているから、その部分はカバーしてあげたいという気持ちがあります。

 

――今の組織での役割で自覚していることはありますか?

春日:デジタルテクノロジー統括部は、急激に組織の人数が増えて、やりたいことと仕事が合っているのかわからなくて苦労している人がいると思うので、そういうところをフォローしたいと思います。セカンドマッチでやりたいことが出来るのならば、セカンドマッチに誘いたいと思います。駆け込み寺のようなイメージでしょうか。

 

――偉い人には言いづらいけれども、組織のハブとして存在する春日さんには相談しやすいかもしれないですね。春日さんの視点から見て、DTのエンジニア組織の中で課題に感じることはありますか?

春日:人数が増えて全体が見えないので、本人の特性に合ったアサインかどうかがわからないですね。人数が少ない頃はその人の特性などが分かっていましたが、今は60人くらいいるので全体を見るのは難しいです。

 

――将来的にはどのような立場で仕事をしていたい、など考えていることはありますか?

春日:マネジメント一本は嫌ですね。しばらくはエンジニアをやりたいです。どちらの志向もあると思いますが、マネジメントだけでは面白くありません。今はバックグラウンド寄りのエンジニアなので、次はフロントというように、ある程度フルスタックになりたいと考えています。きっちりとは決めていませんが、世の中の変化に合わせて考えていきたいですね。

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――柔軟に世の中の変化に合わせたキャリアを作っていきたい、ということですね!素敵なお話をありがとうご会いました…!

(取材・文=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/撮影=古宮こうき)

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春日 善信 Yoshinobu Kasuga

デジタルテクノロジー統括部 データ&テクノロジーソリューション部 エンジニアリンググループ リードエンジニア

本来の専門は物性分子工学。材料分析を行う公益法人でのキャリアをスタート後、東日本大震災を機に気象庁や民間気象会社での防災関係の業務に従事。その後エンジニアリングやアナリティクスに軸足を移し、2018年にパーソルキャリアに入社。現在は、インフラ・Sparkアプリの開発や保守運用の業務を中心に担当。今後も掴みどころのないキャリア形成を目指す。気象予報士/気象防災アドバイザー。

※2020年12月現在の情報です。