読了後の狙い
・デザインリサーチの基本的な要素を学べる。
・デザインリサーチの実施シーンがイメージができる。
・普遍的な営みとして デザインリサーチに親近感が持てる。
はじめに
パーソルキャリア株式会社 UXリサーチャーの @ono_yah と申します。
今回は現場UXリサーチャーの立場から
・UXリサーチという単語を知っている
・デザインリサーチをまったく知らない
・近いことはやっているので、自分の業務をより深く理解したい
上記のような 業務において専門的に実践していなくとも新しい学びがある、今後デザインリサーチと心理的な距離が縮まるような内容になればと思います。
そのようなコンテンツを執筆したいと思った動機は、2年前にUXリサーチャーとしてパーソルキャリアに入社してから1年半程「UXリサーチャー」という職能の掴みどころのなさに戸惑う日々を送っていた経験からです。
参加プロジェクトにおけるUXリサーチャーとしての介在価値、職務の担当範囲、調査結果を起点に始まる意思決定等々、右も左もわからないような状態で、実直にユーザーとの対話を続けていました。
そのような状況から、複数のデザインリサーチ(UXリサーチ)プロジェクトに参加するにあたって「リサーチする」行為そのものへの理解、「デザインリサーチ」が有効なシーン、リサーチを行うに当たって重要な考え方・スタンス姿勢、価値発揮のポイントが見えてくるようになりました。
今回は、さまざまなリサーチに関連する記事や事例を参照しながら
ふんわりデザインリサーチの輪郭をなぞって全体感を掴んでいくことを目標とします。
UXリサーチ / デザインリサーチって、なんだろう?
デザインリサーチは曖昧です。
デジタルプロダクトに関連するところでは
・プロダクト改善の方法論
・新規事業の銀の弾丸
・デザインプロセスの一環を担うメソッド
・ユーザーリレーションの構築
として「デザインリサーチ / UXリサーチ」という言葉が文脈の中に現れます。
上記の例のように極端に単純化しないで、少し広い視野で「デザインリサーチ」を観察します。
また、少し視野を広げて「リサーチ」という行為に注目すると、
一般的な例では
・トレンドリサーチ
・カスタマーロイヤリティリサーチ
・R&D (Research&Development)
・マーケットセグメンテーション
・プロトタイプテスト
などリサーチの実施シーンは多岐に渡っており、広く一般的に行われています。
リサーチについて
そこで「デザインリサーチ」に主眼を置く前に「リサーチ」に対して理解を深めることで、デザイン分野のリサーチの理解を促すと考えます。
合同会社 Cobe Associe様の「新規事業を加速させるリサーチ術」のスライドを紹介させて頂きます。
「なぜ調査をするのか?」「何をしりたいのか?」「どういったことに活用したいのか」という調査という行為においての前提の整理が、調査結果・アウトプットの品質、調査後の活用 を大きく左右します。
デザインリサーチにおいても調査を行うの前捌きやリサーチの構造化を行う、となどリサーチを開始前の動機や活用者の関心を意識することが必要です。
依頼者や調査を行う根本的な意義を改めて考える、いろいろな視座で調査を検討する癖をつけるため、思考のフレームとして適宜参照することをオススメします。
鳥の目でデザインリサーチを見てみる
次にデザインリサーチの「デザイン」の部分を観察したいと思います。
ソニー様 のこちらの記事を参考に学びを進めましょう。
デザインとは目の前の状況に対し、よりよい未来を切り拓く行為を意味します。それは私たちが直面している問題を解決するための、実践的な行動でなければなりません。だからこそ、問題解決に携わる当事者自身が現場へ赴いてフィールドリサーチを行ったり、エスノグラフィ※2やデプス・インタビューなどの手法を駆使したりすることで、定量的なリサーチではつかみにくい人々の心情や感覚を、身をもって理解する姿勢が大切なのです。
デザインは人々の思想を反映できる概念的な言葉です。
リサーチに「デザイン」を適合して発想した言葉が「デザインリサーチ」だと考えられ、デザインリサーチは「リサーチ」をデザイン的に行うと、解釈できます。
「デザイン的に行う」という言葉の広がりにこそ デザインリサーチ/UXリサーチの面白さが秘められていると考えています。
調査手法の選択や中間的な成果物の作成、それぞれのリサーチプロセスに自分のデザインを組み込める余白があります。
また「デザインリサーチを実践的に行う」 ことは、人々と対話的にモノづくりを行う・不確実なものを単純化せずに向き合っていくというスタンスや思想の表明でもあります。
思想や態度としてもデザインリサーチは表現されることもあります。
手法からデザインリサーチを読み解く
デジタルな・フィジカルを問わず、サービスやプロダクトをデザインするプロセスには調査プロセスが存在し、サービスデザインにはデザインリサーチが隣接していると考えられます。
実際に、デザインリサーチを得意分野とするデザインスタジオであるANKR DESIGNの提供するサービスを例にとって見てましょう。
「UXリサーチっていうサービスが...ない?」
「全然調査だけじゃないじゃん...」
という印象を受けた方もいらっしゃると思います。
前述のソニー様 デザインリサーチの記事にて、デザインリサーチは非常に対話的なプロセスであるように紹介されていました。
デザインリサーチの一つな大きな実施価値として「共創的に行うこと」であることが言えます。
「対話的に実施する」という基本姿勢と「リサーチ」という行為の交差点として
・インタビュー
・デザインスプリント
・仮説検証
・ジャーニーマップ
などの調査以外の手法が提供されているように理解できます。
また、調査に留まらない価値の探索・検証のためには、実際に顧客(または顧客となりうる人々)に、手に触れるものとして表層化される必要があり、
デザインリサーチをより広義に捉えると、プロトタイピングやコンセプトとして表層化させる力も必要になるのではないしょうか。
現場・プロジェクトにおけるデザインリサーチはどう実践されているのか?
一番業務としてデザインリサーチをイメージできる記事で、新規プロジェクトの際には僕も参照させて頂いている記事をご紹介させて頂きます。
ここではリサーチのプロセスを「GUIDE」として表現されています。
- 「G」oal:着地点を明確にする
- 「U」ntangle:既知と未知を整理する
- 「I」nsight:洞察を得る
- 「D」irection:方向性を決める
- 「E」ntrust:信じて託す
単純に体系化・プロセス化を行っているだけではなく、リサーチの介在価値があるポイントを象徴的に表されていて、非常に理解しやすいプレゼンテーションになっています。
この記事で紹介した
・調査の実行意義を問う
・スタンスや思想としてデザインリサーチを捉える
・共創的なプロセスを実践する
を実務と照らしながらイメージできますので、デザインリサーチに専任している方、未経験で興味がある方どちらにも良いインプットになることが間違いありません。
ここまで紹介してきた内容も踏まえて一読すると、イメージが更に深めると思います。
まとめ
デザインリサーチは曖昧なものです。
思想であり... 方法論であり... プロセスであり..
さらにテンプレート化された方法論はあるにしろ、実施者が置かれている状況や考え方によっても、実行方法は千差万別です。
曖昧なものと捉えたまま、自分なりのデザインリサーチの解釈を行っていくことこそが楽しみでもあると考えます。
・リサーチの方法論を専門的に追求する
・データサイエンスとデザインリサーチを掛け合わせを模索する
・人文学方面で学術的に深めていく
・共創的なプロセスを実施するデザイン方法として啓蒙する
・デザインリサーチと仰々しいな前を付けずに、普遍的な営みとして実施する
・リサーチから形あるものとして表出するために、サービスデザインへ染み出す
さまざまな世界が広がっていると感じておりますので、いろいろな世界に期待を膨らませることも楽しみ方だと思います。
デザインリサーチをふんわり理解できるお手伝いになっていること、デザインリサーチをよりポジティブに行える足がかりになれば嬉しいです。
小野靖弘 Yasuhiro Ono
デザイン推進統括部 戦略デザイン部 UXリサーチ第1グループ ディレクター
全てのゆとり教育を一身に受けに生まれた、Z世代の長老。 インターネット中年。
※2023年12月現在の情報です。