DWHプロジェクト――最適解として導きだしたのは「やめる」という選択

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dodaには、エージェントサービスと求人広告サービスと大きく2つのサービスがあり、そのサービスに紐づいて複数の事業部が日々活動をしています。 1,000名を超える営業メンバーが主要指標を確認するための “帳票” を使いながら、法人/個人それぞれの顧客に提案活動を行っており、これまでこの帳票の参照元はデータウェアハウス(DWH)でした。しかし長期間使われる中で正しい分析がしづらい環境になっていたこともあり、EOSLを前にDWHを廃止することを決断。 より良い提案活動に繋がる“正しいデータ分析をするための環境づくり” を目指しています。今回は、その環境構築をリードするエージェント企画統括部 プロセス&システムデザイン部の鈴木 智士に話を聞きました。

 

スケジュール・コスト・影響範囲…プロジェクトの「最適解」として導き出した方針転換

――鈴木さん、本日はよろしくお願いします。今回DWHを廃止し、それに伴い帳票とツールの参照先を移したということですが、そもそも帳票とは、どのようなものなのでしょうか?

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エージェント プロセス&システムデザイン部 リードコンサルタント 鈴木 智士

鈴木:帳票は、主に営業や営業企画のメンバーが、指標を確認したり、成果を上げるための施策を考えたりするときに使うものです。月次、週次、日次など期間で区切っているものや、職種別、選考進捗別、などさまざまな切り口のデータを見たうえで、営業や営業企画が戦術を考えるために使っています。

 

――営業現場にとっては、なくてはならないものなんですね。その帳票の参照先であったDWH環境は、当初どのような課題を抱えていたのでしょうか。

鈴木:本来DWHとは、データが時系列など扱いやすい形に再構成・蓄積された場であり、分析やデータマイニングを可能にするものです。

しかしこれまでのDWHは、帳票を出力するにあたって参照される「個人情報を含まない、“点” のデータの集合体」に過ぎず、分析に必要なデータの蓄積は不十分でした。

長きにわたり、各部署が明確なルールや「蓄積・分析」の観点なく一定期間だけデータを置いておく、という形で利用してきたことで、正しいデータ分析が難しい状態になってしまっていたのです。

 

――その課題解決の方法として、廃止を判断した理由を教えてください。

鈴木:DWHには一定の課題があったのですが、はじめからDWH廃止を目的に今回のプロジェクトが動き出した訳ではありません。出発点は、「 1,000名を超える社員が使う、帳票自体を定義し直したい」というところでした。

 

同時に、帳票それぞれが「何のために・誰によって・どのように使われ、管理されているのか」が、利用者含め明確に分からない状態だという課題もありました。そこで、まずは長く使ってきた帳票自体を廃止し、現在のビジネスに合わせた形に置き換え、参照元データベースを分析環境に寄せていこう、という1一つ目のプロジェクトを立ち上げました。

 

――まずは、事業側も使いやすく、またデータを取りまとめるメンバーも管理がしやすいよう、帳票自体を置き換えて整えたかった、ということなんですね。

鈴木:そうです。その作業を経て、DWHを使わない状態にした上で廃止したかったのですが、あまりの帳票の数の多さからあるべき定義の見直しが思うように進まず……帳票自体をどうするか考えているうちに、DWHのEOSLのタイミングが近づいてきてしまったのです。

 

――当時、アップデートする、という選択をされなかったのはどうしてですか?

鈴木:個人情報保護法の改正によって「とあるデータAに、もう1つのデータBを追加した場合、個人が類推できてしまうものは個人情報である」と定められたことが背景にあります。当時のDWHは、もちろん個人情報を含んでいませんでしたが、改正にあたり、よりそれらを強化しなければいけないと考えました。個人情報保護法の改正にあたる強化と、データソースを複数置くのではなく新しい分析基盤に寄せていきたい、ということなど複合的に考えてアップデートではなくEOSLまでにDWHを廃止するべき、と決断しました。

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「ツール含めて300本近い帳票」「個人情報保護法の改正による項目強化」「DWHのEOSL」とさまざまなタイミングが重なったこともあり、今回は「コストをかけてでも、まずは現状維持をする」と判断しました。

帳票の数が多いことなどの課題は残ったままですが、実際に事業側のユーザーは業務で帳票を使っているので、DWHのEOSLを優先しては、使っているユーザーに迷惑をかけてしまいます。そこだけは避けたいと考えていました。そしてそのための方法として考えたのが、参照元となるデータベースの切り替えだったのです。今回のプロジェクトでは、帳票はそのままに、データソースをDWHからARCS(エージェント事業の基幹システム)の本番データに切り替えようと9月に方針転換し、10月から切り替え作業を開始しました。

 

「今やれること」を合理的に判断し、とにかく前に進める

――スケジュールやコスト、事業側への影響度などあらゆる観点を考慮して最適解を探す中、データソース切り替えの影響範囲や、帳票がそのままの状態で残ることの懸念も検討されたのでは? 

鈴木:データソース切り替えについては、①現状維持をすること ②運用を変更してもらう必要がある部分はフォローすること の2点を踏まえ、影響範囲は見ないことにしました。

200本を超える帳票の一つひとつに対して、誰がどのように使っているのかを調べていては、プロジェクトが前に進んでいきません。もちろん重要なところはきちんと確認しますが、そもそも管理者が不明で聞く先が分からないものや、聞いても回答できる人がいないものが多いのが現状です。そこは割り切って進める必要があると認識しています。

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限られた時間の中でできる最善の選択と考え今回DWHを廃止しましたが、もちろん帳票をめぐる課題は残っていますから、理想を目指すプロジェクトは別で進めているところです。

 

――理想の追及は時間をかけて着実に進めるけれど、そことは切り分けて、まずは目先の困りごとを解決するプロジェクトを実施した、ということでしょうか。

鈴木:そうですね。やりたいことが全てスムーズに進められる訳ではありませんし、時には今回のように理想とは違うことをしなければいけない場面もあります。

目的とゴールを明確にした上でさまざまな条件を照らし合わせ、「今回のプロジェクトでどこまで実行できるのか」の切り分けを合理的に判断して、とにかく前に進めていくことが求められるのだと思います。

 

――「目先の困難解消」と「理想の追求」を一緒に進められるなら進める、難しい場合は理想の追求は別で行う。その事実と同時に、ご自身のマインドも切り分けて素早い判断をされているんですね。このように、ご自身の判断軸をもって業務を進めることの面白さはどこにありますか?

鈴木:まずは、自分がやっている仕事と会社がつながっている、という感覚でしょうか。私はもともと客先常駐型の開発からキャリアをスタートさせたのですが、事業会社への転職を決めたのは、この自分と会社のつながり、平たく言えば「一体感」を経験したかったからなんです。

その点、今の環境では「このプロジェクトの目的は何か」「自分たちは今、何に注力すべきか」を自分で考え、優先順位の判断や各部署との調整を通して事業を後押しできているので、そこに醍醐味を感じます。これまでの経験を活かした自分の判断を、ある程度許容してもらえているのだな、という実感がありますね。

 

――鈴木さんの、先を見据えた合理的な判断と推進力が認められているんですね。 

鈴木:自分自身の判断が自社事業の背中を押すということ以外にも感じるやりがいがもう一点あります。プロジェクトを進めるにあたって、事業側とエンジニア側が対話をしても、互いの言いたいことが理解できないことは多々あります。そこで、私たち事業BITAが「橋渡し」としてそれぞれの言語を翻訳することで、互いが理解し合える。その瞬間がこの仕事の面白みであり、いいところだなと思っています。

(※)事業BITAとは…人材紹介事業や転職メディア事業を支えるIT戦略・企画開発部門(PSD部やメディアBITA部など)の総称を指す社内用語。

 

ビジネスとテクノロジーの橋渡しで、プロジェクトを支える存在でありたい

――率直なお声を伺いたいのですが……今「ビジネス側はテクノロジーを / エンジニアはビジネスを、互いに学び、理解して事業推進を」という風潮もありますが、「橋渡し」の役割として活躍されている鈴木さんは、両者の間に人が介在する意義をどのように捉えていらっしゃいますか?

鈴木:私は、間に立つ人間がいなくてはいけないと考えています。いくら互いの仕事を頭で理解したとしても、それがどれほど大変なことかは、実際に経験しないと分かりませんよね。ですが、事業側にシステム開発を経験してもらうのは難しいですし、その逆も同じです。そう考えると、間に入って取りまとめる役割は今後もなくならないのでは、と思えます。

 

――間に両者を理解する人が立つことで、より両者がそれぞれの力を発揮できるということでしょうか。

鈴木:そうです。「野菜を買うなら八百屋に行こうよ」という感覚で、ビジネスはビジネスのプロに任せたらいいし、システムはプロであるエンジニアに任せたらいい。そこに対して、両者が上手く一緒にやっていけるように、私たちが何でも屋として橋渡しをしていくことができればと思っています。

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先ほど事業とエンジニアの対話の話をしましたが、そこさえ噛み合えば、両者がそれぞれ考えるべきこと・やるべきことが前に進み出すので、プロジェクトが自走できるようになります。後は、BITAが全体のディレクションや判断を下す部分だけ押さえておけば、前進できる。この自走の状態が、理想の形なのかなと思いますね。

 

――表に立って引っ張っていくというよりも、それぞれの良さが出るようにしっかりと支えるお仕事、という印象ですね。それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。 

鈴木:「データをビジネスに役立ててもらいたい」というのが一番の思いなので、データ利活用を推進して、定着させていきたいです。そのために使いやすい環境や、適切なデータの使い方を提供していけたらと思います。具体的な課題としては、まずは既存の帳票はなくせる部分をなくして整備していきたいですね。

また全社の特徴として、新しいものを取り入れたり何かを変えたりするにあたり、 どうしても慎重な姿勢になる部分があります。セキュリティなど重要なポイントは押さえた上で、データの領域を変革していくために、フォローしていければと思っています。

 

――トップダウンで変革をするのではなく、現場から浸透させることで、文化も変わっていくのでしょうね。

鈴木:文化を変えるのは大変ですが、そこを越えなければデータ利活用は定着しませんから。現場の小さな範囲から新しいものを触ってもらい、成功体験を積み重ねながら、徐々に広げたいです。

 

――データをビジネスに活用するために、環境整備を通じて文化を変えていくことの重要性を理解しました。素敵なお話をありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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鈴木 智士 Satoshi Suzuki

エージェント企画統括部 エージェントプロセス&システムデザイン部 エージェントプロセスデザイングループ リードコンサルタント

SIerに入社後、システムエンジニアとして要件定義から保守運用まで幅広く従事。その後、2013年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に中途入社後、インテリジェンスビジネスソリューションズ(現パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)へ出向。人材紹介事業の保守内部改善系を担当し、2015年にBITA部へ異動。帳票・データ回り、BIツールの推進やデータ利活用を担当。自称ユーティリティプレイヤー。

※2021年4月現在の情報です。

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