【DataRobot社×パーソルキャリア 特別インタビュー】AIの民主化によってビジネスを前に進める――DataRobot活用プロジェクト

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パーソルキャリアでは、2017年からDataRobot  を導入し、データ活用を推進してきました。導入してから4年間、どのように現場への普及やデータ活用の文化醸成を図ってきたのか、今回はDataRobot社でデータサイエンティストを担う香西様と、パーソルキャリアのデータ共通BITA部に所属する二色、李にインタビューを実施。それぞれの立場からどのようにデータ活用を実現してきたのか、話を聞いてみました。

非エンジニアでも使いやすい機械学習自動化ツールの導入で、AIの民主化への第一歩を踏み出した

――まずは、4年前に機械学習自動化ツールDataRobotを導入された背景から教えてください。

二色:DataRobotを導入した2017年には、世の中的にAI活用の意義が重要視されるようになっており、当社でもデータサイエンティストを擁して事業にAIの活用をし始めていました。

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データ共通BITA部 リードエンジニア 二色 祐徳

ですが、データサイエンティストは採用コストも比較的高く、人材が豊富に在籍している訳ではなかったため、企画側が「自分たちの部署でAIを試したい」と思っても、その全てに応えることはできませんでした。技術的な戦略や事業への貢献度の高さをふまえて、限られた範囲にしかAI導入ができなかったんですよね。

そこで、企画側のメンバーが自分たちの手でAIを使えるようになれば、とツール導入を検討するようになったという背景があります。

 

――ツール導入を検討する中で、DataRobotを選ばれた決め手は何でしたか?

二色:選定にあたって基準になったのは、「非エンジニアの人でも使いやすい」ことです。その観点で様々なツールを比較する中で、以下3つの観点からDataRobotに決めたと聞いています。

  • DataRobotはプログラミングをしなくても使えること 
  • データを投入するにあたって必要とされる事前加工が、他ツールと比べて少ないこと 
  • 完全にブラックボックス化されておらず、アウトプットに可能な範囲で説明がついており、またその説明が企画側のメンバーでも理解しやすい粒度になっていること、

また加えて、DataRobot社による導入から普及までのサポートが手厚いところも大きな決め手になっています。

 

香西:DataRobotは、コーディングの技術やアルゴリズムの知識をソフトウェアに詰め込んで、ExcelのようにみんながAIを活用できれば、より良い世の中になるだろうという思いで作られたものなので、その点を評価いただけて嬉しいですね。

 

――香西様はこれまで様々な企業様と接してこられていると思いますが、パーソルキャリアの印象はいかがでしょうか。率直にお聞かせください。

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DataRobot Japan データサイエンティスト香西 哲弥 氏

香西:印象的なことは大きく3つあります。1つ目は、年齢や役職にかかわらず当事者意識とチャレンジ精神を持たれている方が多いということ。定例会やワークショップで発言される人数や質問の数が多く、またその内容も実際に業務で使うことをしっかりと考えられた上での質問が多いです。集団の議論の場で起きがちな、上司がいると発言できないということや、発言者が偏ることなどがないので、そういった風土があって民主化が進んでいるのだなと思いますし、支援させていただく立場としてもやりやすさを感じますね。

ある時には、新しいワークショップを開発して無料トライアルをしていただける企業様を募った際に、「ぜひうちで試してください」と手をあげていただいたこともありました。新しいことを始めたい、テックの導入にチャレンジしたいという意識の強さが、パーソルキャリアさんらしいなと感じた経験でした。

 

2つ目はスキル面で、組織全体として技術力が高い印象です。技術側だけでなくビジネス側の方も、データベースの設計やシステムインテグレーションについて抵抗なく話していますよね。

「ビジネスに価値を生み出す」というゴールに向け、ビジネス側からの知見や課題感と、システム側から見た業務へのインテグレーションを合わせて進めるという点で、パーソルキャリアさんはバランスがいいなと感じています。

 

――データ共通BITA部のみなさんとしては、技術側・企画側の連携はやはり意識されているのでしょうか?

二色:データ共通BITAとして、しっかりと連携を図って進めていきたいという思いはありました。一方で、企画側も普段からBIツールでデータを見ていたり、「データについては〇〇さんがやっているから、そことも連携しましょう」と話をつないでくれたりと、両者の連携は以前から文化として根付いていたように思います。

 

――習慣として、データを意識してビジネスを進める意識があるからこそ、AI活用に対するニーズがあったのかもしれませんね。香西様からの3つ目はいかがですか?

香西:3つ目は、テックの導入に対して新しいことに挑戦してみようという文化はある反面、実際にAIを現場で導入するまでのハードルが高すぎる場合が時折あるように感じます。それはテックのスキルが高く、知識が豊富であるが故に、だと思いますが……たまにですが、「本当に実ビジネスで結果を再現できるのか?」や「本当に検証は一度でいいのか?」といった風に検証を徹底して行いすぎてしまっているプロジェクトについて相談を受けたことがあります。

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きちんとした検証プロセスを踏むことは重要ですし、それくらい徹底して検証をしないといけないテーマが存在することも事実です。一方で、AIのビジネス現場での活用は前例や正解がない世界でありトライ&エラーの要素が大きいと思うので、クイックスタート・クイックウィンのような”まずは試してみる”といったカルチャーが組織全体で広められてもいいのかな、と感じることは時折ありますね。

――ビジネスへの影響をふまえ「確からしさ」を考えることは大切ですが、実際にビジネスに反映してトライ&エラーを繰り返しながら、データドリブンに向けしっかりと前進していくことも求められる、ということなんですね。

 

導入だけでは事業は変わらない――大切なのは、業務で活用するストーリーが描けるか

――DataRobotの導入を進めていく中で、どのような課題がありましたか? 

二色:ツールの使い方はわかっても、実際に業務で活用するストーリーが描けないという課題がありました。ツールの存在や良さを伝えていく過程で、「エンジニアと連携しながら、企画側でもデータを見ている」「試しに触ってみた」という方は多かったのですが、その先で業務に実際に落とし込んで運用する、というところまではなかなかつながらなかったんですよね。

そこで、DataRobot社のお力を借りながらイベントなどを実施して、少しずつ現場への普及を図ってきました。印象的なのは、DataRobot社の方をお招きし、活用事例の共有会や企画側に向けた「テーマ創出ワークショップ」を行っていただいたことですね。経験豊富なデータサイエンティストの方から「機械学習のプロジェクトの、優れたテーマをどう作っていくのか」「何に注意して進めるべきなのか」をお話いただいたりしました。また、事例共有会を開催して、2017年の導入から1年間で積み重ねた案件の事例を共有することで、ツールの良さや機能の活かし方を知ってもらう機会をBITAで作ってきました。

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抱えていた課題に対して「データをビジネスにどう役立てられるのか」というストーリーを考えられる機会を設けることで、導入して活用を進めた先のフェーズの相談も増えていくなど、少しずつ前進してきたなと振り返ります。

 

――香西様のお立場から見て、このような導入から普及までの難しさは、どの企業にも共通のものなのでしょうか。

香西:グローバルの視点で見ても、この点が共通の課題になると思います。ビジネス課題からAI導入に取り組みはじめても、必要なデータがなかったり予測モデルがシステムに組み込めなかったり、また上席の承認を得られなかったりと、様々な問題があって実際のビジネス現場での運用までこぎつけられないことが多いですね。

 

ワークショップでは、こうした躓きやすいポイントを踏まえた「アイデアシート」を用意していて、「ビジネス課題は何か」「業務フローはどのようになっているか」「データはあるか」などの必要項目を埋めていただくことで、適切なテーマが見えてくるように工夫しながら、支援をさせていただいています。

 

――ただツールを提供いただいて使うだけでなく、その後の普及まで見据えた活動が重要になるのですね。こうしてDataRobot の導入から4年が経った今、パーソルキャリアの「AIの民主化」の現在地を教えてください。

二色:以前は、企画部門が主体になってツール活用に取り組んでいて、データ共通BITA部ではサポートのみ、という形で、先ほどお話したような「操作はわかっても、運用までのストーリーづくりで躓いてしまう」という課題がありました。私一人では、他の案件との兼ね合いもあって、そこまで手厚いサポートができていなかったんです。

ですが、前職でのBI開発経験からデータを見ることに長けている李さんが入社されたことと、DataRobot様にたくさんの支援をいただいたことで、私の方では課題設定や導入検証などの企画側との調整にもっと時間を使えるようになり、一気通貫でサポートができるようになりました。現在では、企画側と要件を相談しながらBITAでも一緒になって手を動かし、リードしていくという体制に変わっており、その成果として「実際にツールの運用にまでつなげられた」という案件がこの1年でだいぶ増えてきています。

 

――現場と調整しながら手を動かして一緒に走ってこられた李さんは、普及活動をどう振り返られますか?

李:BI開発の経験はありますが、AIの領域は初めてなので、私にとっても挑戦の1年間でした。

DataRobotは初心者でも使いやすく、また自動で適切な形にしてくれます。そのおかげで、現場との調整や「データをどのような形で渡したら現場で使いやすいか」「このツールをどのように使っていくべきか」などを考えることに、しっかりと時間をかけて集中することができたなと感じています。

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データ共通BITA部 エンジニア 李

「こういった分析が必要な時に、それに合わせてDataRobotをどう使うべきか」については判断しかねる場合がありますが、香西様に相談すると、様々なケースを踏まえて分析方法や機能の活かし方を適切にアドバイスいただくことができ、いい方向に進めてこられたと思います。

自ら考え、自らの手でAIを活用できる人材を育てたい 

――ここからは、データ活用の「文化」を創ることに焦点をあててお話を伺います。様々な企業のケースを見てこられた香西様は、文化を創っていくために、どんなことが必要だと思われますか?

香西:これまでの国内外のケースから「現場に存在するAIの利用に対する誤った思い込み」と「組織の旧来の評価体系」という二つの障壁をいかに取り除き、現場と上層部のそれぞれがAI活用に向けて”本気になる”ことが必要になると思います。

AIの利用に対するする誤った思い込みについては、AIの導入には「プログラミングコードを書かなければいけない」とか「データサイエンスの知識がなければいけない」などと思われがちです。しかし、二色さんと李さんからもあったようにDataRobotはコードを書けなくても使えますから、このような機械学習自動化ツールを用いて実際のビジネスデータを使いながらトライ&エラーを繰り返すことが大切です。

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また組織の評価体系については、例えば「データサイエンティストがDataRobotを使うと評価されるが、営業部の現場の方が使ってもKPIの顧客獲得数を達成できなかったら評価されない」など、割り振られたKPIに評価がフォーカスしすぎるというような組織的な課題が、民主化の障壁になり得ます。

その点で、当社では現場の方へのAI勉強会やセミナーの他に、エグゼクティブ層向けのセミナーや、複数社のエグゼクティブ層の方をお招きし、組織におけるAI活用に関する議論を行っていただく「エグゼクティブラウンドテーブル」という場も設けています。AIを活用したいという現場の思いは、そういった場がなければエグゼクティブ層へ届けて説得するのは難しいですから、セミナーや他社の取り組みを知る機会を通して評価体系も含めて会社の仕組みがAI活用に取り組みやすいように変わっていけばいいなと思っています。

 

――導入するのであれば、「ビジネスにつながるまでとことん使いこなす」という意思決定が大切なのかもしれませんね。今後の展望についてお聞きしていきたいのですが、パーソルキャリアのお二人は、現在の課題をどのように捉えていますか?

李:文化として浸透させることについてはまだ途上ですが、案件自体は増えてきているので、成功事例を示しやすくなっていくはずです。

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「AIを使ってみたいけれど、どのように効果が出るのか分からない」という相談も多いので、これからさらに事例が積み重なっていくことで、文化醸成に向けて前進していけると考えています。

課題としては、この1年間は私たちデータ共通BITAが入ってAI活用を推進してきましたが、目指すべきは「セルフAI」で、企画側の方々の手で使ってもらえるような状態に近づけていきたい、というところです。

二色:そうですね。これまでは「一つひとつのプロジェクトを正しく運用まで持っていき、顧客貢献する」というところを重視してサポートしてきました。これが少しずつ達成できてきているので、今度は「企画側が主体で進めて、成功させられる」というフェーズに導いていけるといいですよね。

企画側がデータで気づきを得たり、「ここで使ったらいいのか」と理解したりできる実体験を、積み重ねていけたらと思います。

李:私自身も、AIの領域は初心者でありながらこうしてAIを使ってきたので、自身の経験も共有していきたいですね。

 

――そのプロセスを経て企画側のメンバーが得た気づきが、運用までのストーリーを描くことにつながっていくでしょうから、実体験として知ってもらうことが鍵になりそうですね。 

二色:また文化浸透の方向性として、現在は「AIのアウトプットを役立てる」ことにフォーカスされていますが、そこから一歩進んで「自分で考える」力を企画側で持てるように進めていきたいと思っています。

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企画側で「AIをどこで活用すればいいのか」を考えられるようになれば、施策を打つにあたっての考えの幅も広がりますし、実際に打った施策の効果を「なんとなく」ではなくデータで客観的に評価できるようになります。

アウトプットを出して役立てるところは継続しつつ、それを出すまでに得られた気づきや、背景に何があったのかに焦点を当てていけるといいなと思います。

その点、DataRobotは非エンジニアでも使えるので、自分で考えながらAIに関わっていくために良いツールだと思います。まずは「どこで、どのように活用すべきか」という視点が大切だと伝えていけるよう、DataRobot社の方にもお力を貸していただけると嬉しいですね。

 

――最後に、香西様からも今後の展望や両社の協業についてお聞かせいただけますでしょうか。

香西:我々はAIの民主化に向けて「”自らの手で” AIを活用しビジネス課題を解決していく人材」の発掘と育成に取り組んでいくべきだと思っています。高度な機能や利用者が使いやすいUIをご提供することはもちろんのこと、ペルソナごとのトレーニングや、時代に沿った課題解決のためのサービスを今後強化していきたいです。そしてより各業界の中核の業務で活用してもらえるエンタープライズAIプラットフォームを目指していきたいと思っています。

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その中で、テックスキルが高くチャレンジ精神の文化をお持ちのパーソルキャリアさんには、ぜひまた我々が開発したベータ版のサービスや機能をお試しいただけたら嬉しいですね。最先端のサービスや機能を用いながら、さらなるAI民主化に向けて伴走させていただけたらと思います。

――データ活用の可能性を改めて知ることができました!ステキなお話をありがとうございました! 

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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香西 哲弥 Tetsuya Kozai

DataRobot Japan データサイエンティスト

データサイエンティストとして、お客さまの AI 活用/推進をご支援。メガバンクと外資系コンサルティングファームでの勤務を経て現職。これまで、AI 導入に向けた組織改革から数理モデリングの技術支援、実運用化の支援まで幅広い業務に従事。

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二色 祐徳 Hironori Nishiki

インフラ基盤統括部 データ共通BITA部 データ推進グループ リードエンジニア

大学院で知識科学を専攻。システム開発会社で3年半プログラマ、システムエンジニアとしてシステム開発に従事。人材業界でエンジニアスキルの構造化及びマッチングシステム構築を4年間推進したのち、2018年パーソルキャリア株式会社に中途入社。データ共通BITA部にて、社内におけるデータ活用(特にAI領域)の普及のため、企画部門と連携して自然言語処理系の案件やDataRobotを活用した案件を行っている。

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李 丞容 Lee Seungyong

インフラ基盤統括部 データ共通BITA部 データ推進グループ エンジニア

BIインテグレーションベンダーでBIシステム開発に従事。2020年3月にパーソルキャリア株式会社に中途入社。データ共通BITA部にてBI関連ではPowerBIレポート開発支援、AI関連ではDataRobotの案件化でデータ活用支援を担う。

※2021年4月現在の情報です。