
はじめに
皆さん、こんにちは。私はdodaダイレクトというサービスに関するプロジェクトを推進しているITコンサルタント職の大井と申します。
この記事では、私が携わっているプロジェクト「カスタマーサクセスツール[Gainsight]の新規導入」についての話をできればと思っております。
といっても単語に聞きなじみのない方もいらっしゃると思うので、ぜひ下記に該当する方に読んでいただけたら嬉しいです。
カスタマーサクセスツールに関心のある方
ITコンサルタント職の仕事や、パーソルキャリアのプロジェクトの一例について気になる方
ツールやサービスの新規導入に関わってきた、もしくはこれから関わっていく方
この記事で出てくる用語について
CS(クライアントサクセス)
一般的には役割や行動を指す単語ですが、dodaダイレクトでは、採用を進めている企業と転職希望者が、双方納得のいく形で縁を繋ぐことができるように、主に前者の企業に対して効果的なサポートを行うために業務を遂行している部門を指しています。
また、この記事では上記の業務を行い直接企業のサポート対応をしている面々を「CSメンバー」と指して表記しています。
カスタマーサクセスツール
企業がお客様の成功を支援する(カスタマーサクセス)行動を支援する、効果を最大限発揮するためのツールを意味します。
今回のプロジェクトに合わせて言い換えるとしたら「パーソルキャリアのCSメンバーが、採用を進めている企業の成功を支援する行動、を支援するツール」でしょうか。
このような性質を持ったツールのひとつが「Gainsight」です。
CRM(Customer Relationship Management)
日本語に訳すと「顧客関係管理」となります。企業がお客様との関係を良好に保ち、収益向上に繋げるための戦略やプロセス、そしてそれを支えるシステムのことを指します。
Gainsight導入が決まるまで
背景
パーソルキャリアのCSメンバーが日々の業務を通じて達成したいことは「企業の募集している採用が、企業から見ても転職希望者から見ても、双方の納得のいく形でいち早く決まること」になります。
そして「納得のいく形で決まること」と「いち早く決まること」、そのどちらも達成するための「より早く、より効果的」なサポートに向けて、最近では「手動で行っている単純な作業の自動化」「より効果的なサポートを行うためのデータ収集・分析」「AI活用による効率化」などが挙がってくるようになりました。
これまでCSメンバーはSalesforceを活用していたのですが、今のツール運用では上記のような取り組みを実現するにあたって課題があり、その課題をどのように乗り越えるのか検討を始めたのが企画の始まりとなっています。
抱えていた課題
CSメンバーが業務を進める中で、dodaダイレクトでは大きく分けて下記の3点の課題を抱えていました。
- 最適なCRM活用ができていない
前述の通り、現在CSメンバーはSalesforceというCRMシステムを利用しています。
Salesforceではお客様の情報の一元管理、営業プロセスの効率化や、お客様との接点を記録し以降のアプローチに活かす、と言ったことが可能です。
このシステムは元々、周囲の部署で多く利用されていることを理由にツールの統一化も目的としてdodaダイレクト領域にも導入されたのですが、前提として営業プロセスの効率化を中心に強みを持つツールです。
カスタマーサクセスを軸に置いたチーム向けの機能を実現するには、開発者に依頼しての複雑なカスタマイズが必要としており、またそれをその場最適での判断で長期に渡って重ねた結果、拡張性が低く新しい施策の実現が非常に難しい構造となってしまっていました。 - 人依存の労働集約型の顧客対応
CSメンバーは、dodaダイレクトを利用する企業と利用開始前からコミュニケーションを取っていきます。
関連する社内の事務手続きを含め、企業に合わせて対応を調整したり、パーソルキャリアにデータとして登録を待たずに素早く動いたりするために、イレギュラーな対応にも柔軟に対応を進めてきましたが、その対応が特定の人に依存しているフローが多々見受けられました。
今後より多くのお客様に、質の高いサポートを提供し続けるためにもTechを利用した生産性の向上に繋げたいポイントとなっています。 - ツールの利用費や開発コストなどの維持管理費の増加
既存のツールでは、課題の1で述べた通りシステムの構造が複雑で拡張性の低い作りとなっていました。
その状態での施策の推進の結果、複雑な構造を紐解き、課題を調整し、カスタマイズを重ねての実現をする......といった流れになるため、小さな機能を1つ開発するにも、知識を持ったメンバーを確保し、工数をかけて開発するような流れが多く発生してしまっておりました。
これらの課題を払拭し、「Tech技術を活用した最適なCSのCRMプロセスを設計し、生産性向上へ繋げる」こと、その取り込みを通じてCS全体がTechドリブンな動きになっていくこと、を目的に企画が動き出しました。
Gainisightへの決め手
課題を解消するにあたって、プロジェクトの初期メンバー内では既存ツールのリファクタリングや新しいツールの導入の検討を重ね、最適な案を比較した結果「Gainsight」というカスタマーサクセスツールが最も実現に適している、という判断になりました。
特に決め手となったポイントは下記の通りです。
- カスタマーサクセスに特化したツール
CSメンバーの行動と紐づけて実現を検討していた、CTAやヘルススコアを中心とした機能の実装を、ツールを利用して比較的簡単かつシンプルに実装が可能。 - GUI上で簡単に開発操作が可能
コードを書かずにツールの画面上で機能の実装が可能。プログラミング言語を学んでいない人でも直感的に操作できるため作業メンバーにかかるハードルが低く、構造を把握しやすいため所謂大きな泥だんごになりにくい。 - 維持管理を視野に入れた際のコスト面でのメリット
単純なツールの利用費だけでなく、既存機能などを活用して開発工数を小さく抑えることができる、ストレージ容量が別途かからないためリアルタイムでデータが積みあがっていくというデータ量が増えやすい業務の特性に適している、などの長期的な維持管理にあたってのメリットが大きい。
これらのメリットを活かし、Techを活用してCSメンバーの生産性の向上に繋げるためにこのプロジェクトは動き出しました。
現在プロジェクト内では、このツール導入にあたって必要なデータの取込や機能の実装、運用に向けた整備をスコープに、CSメンバーが新しいツールを利用できる環境を整える作業を実施しています。
Gainsightを活用して出来るようになったこと
一部ではありますが、プロジェクトで開発し、Gainsightを活用してできるようになった機能を簡単に紹介していきます。
1. 企業の利用状況の可視化
Gainsightでは、企業の基本情報や受注情報、過去のやり取りの履歴を時系列で確認できるだけではなく、独自の判断基準をベースにしたお客様のヘルススコア(*)の確認とタスク化が可能です。
※ お客様の健康状態を、「1営業月の総配信数が●件以下」、「配信数に対して応募が●%未満」…など個別にステータスを設定可能
担当メンバーが1つ1つ調査に時間かけることなく、自身の担当する企業の状況を一目で把握し、どんなサポートをするのが適切か、素早く判断し行動に移すことができます。
2. 自動メール送信
設定したトリガーでパーソナライズしたメールを自動送信します。これにより、企業への情報提供を効率化し、CSメンバーの工数を削減します。
機能としては特別新しいものではありませんが、お客様の個人情報を取り扱う機能であることや、自動で送れてしまうからこそ「メールがたくさん来て困る」ということになってしまわないよう、お客様にとって適切なタイミングを検討する必要があるため、長らくの調査期間を経て実現が可能となりました。
3. データ連携・可視化
Gainsight以外の各種ツール・サービスと接続し、リアルタイムでのデータ可視化と分析が可能です。
パーソルキャリアでは多様なデータを蓄積しているため、データを持つシステム毎にどのような手法でデータを連携するか検討したり、その連携に時間がかかったりと、データを素早く連携・利用することが難しくなっています。
そのため、これまでもデータ連携の実装には工数を多く必要としていましたが、そのハードルがひとつ取り払われる形となりました。
他にもGainsightで利用できる機能は多々ありますが、今回のプロジェクトの中で特に開発を行ったものは上記のものが中心となっています。
これらを見て、新しいツール導入の割には特別目新しい機能でもない、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
パーソルキャリアでは、「AI」などの最近よく聞く新しい技術の活用や、高度なデータ分析などを通じて皆様の「はたらいて、笑おう」に繋げることができればと考えています。
一方で、「新しいAI技術を取り入れるにあたって、セキュリティの観点で問題はないか、AIの出す答えに信頼性はあるか」「さらに高度な技術を取り入れるにあたって、現場がしっかり受け身を取れるのか」といった足元の部分もしっかり検討が必要です。
今回は新しいツールの導入であり、できることを調査しながらのプロジェクトの推進であったこと、実際にツールを利用するCSメンバーの現場混乱に繋がらないようにと、いきなり大きな新機能の開発や、ツールを利用した業務フローの変更は行わず、このようにベースとなる基本的な機能を中心に準備をする形となりました。
導入結果と今後の展望について
前提として、この新しいツールの導入は、いきなり全体導入するのではなく少しずつ段階を経ての導入を進める計画です。
そして、第一弾となるメンバーへの導入が目前に迫っている状態となっているため、導入の効果を見るのも少し先になっています。
段階を経て導入を進めた理由は大きく分けて2つあります。
-
リスクの予防
規模を定めて少しずつ移行することで、ツールの変更により問題が発生するリスクを最小限に抑える -
素早く、質の高いものを目指す
大規模な移行は時間のかかる作業でもあるため、「小規模でのリリース→意見を取り入れ素早くブラッシュアップ」を繰り返すことで、素早く取り入れスピード感をもって質の高いもの目指す
そのため「導入結果」として現状皆さんに報告できることは少ないのですが、今回整えた新しいツール環境や機能は、これまで通りの業務が実施できるように整えただけではなく、基本的な機能を活用して更に効率化できる部分は無いか検討した上で新しく作成した機能も含まれています。
ですので、第一弾の導入時点から、CSメンバーや、そのメンバーを通じてお客様へより価値を提供する形へと繋がるはずです。
また、今回は詳しくご紹介ができていないのですが、GainisightはAI機能や他のコミュニケーションツール(TeamsやSlackなど)と連携して、昨今チャット中心になりつつある業務に適した形でのタスク管理や情報の通知などの効率化を図るような機能も保持しています。
他にも、データ分析ツールとの連携機能も兼ね備えているため、別途進んでいるデータ活用プロジェクトと連携することで分析の質の向上や、データを利用したCSメンバーの動線を更に効率化など、ツール単体でできることに留まらず活用の幅を広げていくことが可能だと考えています。
CSでのTechの活用はまだまだ土台作りの段階です。
ここから更に発展に向けて進めていくので、そういった今後の動きや実際の効果、成功事例や一方で壁にぶつかったことなどをまたどこかで発信できればと思っております。
最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
※各種Gainisightの機能については2025.12.02時点の情報を元に記載しております。

大井春乃 Oi Haruno
テクノロジー統括 テクニカルプロダクトマネジメント DX&AX
前職はシステムエンジニア。2023年12月にパーソルキャリアに入社。ITコンサルタント職としてdodaダイレクト領域のプロジェクトを推進。
※2025年12月現在の情報です。
