- 1. はじめに――経験面積を広げる育成計画を立ち上げた理由
- 2. 育成計画のビジョン――トリプルダイヤモンドで捉える PdMの経験面積
- 3. 育成プログラム設計プロセス――共通課題補強から個別ロードマップへ
- 4. 実行段階で見えた気づき――成長実感を得られない真因は“機会設計”だった
- 5. 今後の展望――育成計画も“プロダクト”
- 6. おわりに――経験面積を共に広げる仲間へ
1. はじめに――経験面積を広げる育成計画を立ち上げた理由
ダイレクト・ソーシングサービス「dodaダイレクト」のプロダクトマネージャー(PdM)を務めている金野(かねの)です。
「dodaダイレクト」のPdM組織は現在9名で構成されており、私はサブマネジャーという立ち位置で、おもにジュニアメンバーのマネジメントをしています。今年(2025年)4月には新卒入社の社員もジョインし、シニア層から未経験者まで幅広いバックグラウンドのメンバーが活躍しています。
私が所属するプロダクトマネジメントグループは、事業KPI、プロダクトの体験指標として掲げているNSM(North Star Metric : チームの目標と方向性、成功を測る指標)を日々追いかけながら、事業の成長やプロダクトの課題と向き合っていました。しかしその裏側で、ジュニアPdMの一人が「学ばなくてはいけないことがたくさんあるのはわかるけど、次に何を学べばいいのか分からない」「自分がPdMとして成長できているのかどうかがよくわからない」と悩んでいたのです。
成果を出す組織と、成長を感じられる組織は似ているようで違う――そう気づいた私たちは、事業KPIやNSMを追いながらPdMとしての経験面積を広げる育成計画を立ち上げました。本稿では、その狙いと仕組み、そして始めて見えた学びを共有します。
※本記事におけるジュニアレベルとは、指示に基づく情報収集・整理や工程の一部は遂行できるいっぽう、Discovery から Delivery までの一貫した設計と意思決定には伴走が必要な状態を指します。
2. 育成計画のビジョン――トリプルダイヤモンドで捉える PdMの経験面積
ここでいう経験面積とは、プロダクトマネジメントにおけるの各工程にメンバーがどこまで関与したかを示す尺度です。断片的な工程だけを担っていては、施策を一気通貫で生み出す力は育ちません。まずはすべての工程での経験を重視し、そのうえで精度やクオリティを深掘りしていく方針で合意形成しました。
工程については、トリプルダイヤモンドと呼ばれるフレームワークをベースに洗い出しを行いました。対象メンバーに対して各工程の経験があるか、それぞれに困りごとがあるかヒアリングを実施しました。
3. 育成プログラム設計プロセス――共通課題補強から個別ロードマップへ
まず多くのメンバーに共通する基礎的な課題を補うため、ロジカルシンキングやマインドセットを扱う共通の学習プログラムを整備しました。(詳細は、また別途記事を公開しますので、お楽しみに!)
しかし画一的な研修だけでは溝を埋め切れません。そこで個別ロードマップ作成との2軸で進めることにしました。
年度末に目指したいPdM像を状態目標として定義し、現状との差分を言語化します。そのギャップを埋めるために本人が取り組むことと組織が用意すべき環境・機会を並べ、四半期単位でロードマップに落とし込みます。あわせて、進捗の定量把握には、PdMのスキルレベルを体系的に示したスキルシートを活用しています。
あるメンバーに対しては、育成テーマを6つに分け、それぞれの目標と取り組みを設定しました。以下はそのうち、「課題発見スキル」の分解です。
課題発見スキルを例にした分解
状態目標
バリュー・プロポジション・キャンバスとカスタマー・ジャーニー・マップを使い、自分が作成した成果物が採用される。
現状と成長機会
指示された情報に基づいて、データを収集・整理することができている。自身で仮説を立て、その仮説検証に必要な情報項目を主体的に特定し、課題の本質を見抜く力を高
めていくことで、より精度の高い意思決定に貢献できるようになる。
本人に取り組んでもらうこと
仮説設定とバリュー・プロポジション・キャンバスとカスタマー・ジャーニー・マップの作成経験
CS(カスタマーサクセス)/セールス/顧客へのヒアリングによるユーザーインサイトの解像度をあげる経験
PRD作成時にKPI / NSMを必ず紐付ける(ソリューションと事業目標を紐づける)経験
組織として支援すべき・用意すべき環境
実案件または擬似案件での実践機会、レビューとフィードバックの確保
自主学習機会の提供(udemy for business アカウントの提供)
4. 実行段階で見えた気づき――成長実感を得られない真因は“機会設計”だった
ロードマップづくりで状態目標・現状・取り組み・提供すべき機会を可視化してみると、一つのことが見えてきました。ジュニアメンバーが成長実感を得られない原因は「本人の努力」ではなく機会をデザインできていなかった組織側にあった可能性です。
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学習→実践→振り返りがつながっていない
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Discovery → Define → Develop → Delivery の文脈を持たせずに部分タスクだけを依頼
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フィードバックが一度きりで循環していない
以降、私たちは“経験設計”という視点でタスクを再構成しました。どの工程に接続しているのか、何を学んでほしいのか、そしてどこで振り返るのか。点ではなく線、線ではなく面として経験をデザインし直す必要があったのです。
この気づきは私たちの反省であるとともに、計画立案以上の収穫でした。
5. 今後の展望――育成計画も“プロダクト”
計画はスタートを切ったばかりです。これからは 実行 → 振り返り → 改訂 を繰り返しながら、次のステップを進めます。
Discovery だけ・Delivery だけという状態ををなくすために、全工程を経験できるローテーションの仕組み化や、シニアPdM層のキャリアパス整備も検討しています。また、いまは「dodaダイレクト」のプロダクトマネジメント組織単体で行っていますが、将来的には社内のほかのプロダクトマネジメント組織とも情報連携し全体最適を進めるつもりです。
育成計画自体もプロダクトと同じく、学習を繰り返しながらバージョン管理していきます。メンバーのフィードバックや成果指標をもとに、半年後には v1.1、1年後にはv2.0……と磨き続けるイメージです。
6. おわりに――経験面積を共に広げる仲間へ
プロダクトマネジメント経験が途上にあるジュニアの方にとっては、断片ではなく全体像を掴む経験を通じて、PdMとしての「面」を一気に広げるチャンスがあります。成長の道筋は個別に描きます。迷ったら一緒に修正すればいい――それが私たちの前提です。
経験者の方にとっては、仕組みづくりそのものに参加し、組織の学習文化をアップデートする舞台があります。アンラーニングが必要なのはリードも同じ。あなたの知見が、次の世代の“経験設計”を変えます。
「プロダクトを育てるのと同じ熱量で、人も育てる。」
そんな現場にピンと来た方は、ぜひ一度カジュアルに話しましょう。ここから先のバージョンアップを、一緒に!
金野 純平 Jumpei Kaneno
スカウトプロダクト統括部 dodaスカウトプロダクト部 dodaスカウトプロダクトマネジメントグループ サブマネジャー
Webディレクターとしてキャリアをスタート。Eコマース、BtoC メディアの企画・ディレクション・運用を経験。2024年よりパーソルキャリアにて「dodaダイレクト」のPdMグループのサブマネジャーを務める。
※2025年8月現在の情報です。