2023年4月、新規サービス開発も担うエンジニアリング統括部に5名の新卒エンジニアが加わりました。2021年に当該部署では初となる新卒受け入れが始まって以来、techtektでは新卒研修プログラムにフォーカスし、内容やその背景にある考え方について話を聞いてきました。
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2023年度はさらに受け入れ態勢を強化し、充実した学びの得られる環境づくりに注力したといいます。どのような点に工夫して研修プログラムを作ったのか。そして新卒メンバーはそれらをどのように受け取ったのか――リーダーとして取り組みを主導した鵜飼と、新卒メンバーの讃岐に話を聞きました。
- 新卒研修を通して、実際のプロジェクトにスムーズに合流し活躍できる土台をつくる
- 技術だけでなく、“人を頼ること”や“他職種の仲間の視点で考えること”も身についた
- 今年の課題をふまえ、さらに質の高い “新卒研修2024” へ
新卒研修を通して、実際のプロジェクトにスムーズに合流し活躍できる土台をつくる
――前半は講師側のリーダーとして取り組みを主導された鵜飼さんに、プログラムについてお聞きします。まずは、昨年の新卒研修のよかった点、課題になった点から教えてください。
鵜飼:よかった点としては、まずカリキュラムの構成が挙げられます。
“座学を中心とした職種別のパート” で基本を身につけ、 “実践を中心とした3職種合同のパート” で実際のプロジェクトに近いプロセスを体験することで、幅広い内容が学べますし、研修後にプロジェクトに合流しやすかったのではという印象です。
また新卒メンバーとのやりとりがオンライン中心になってしまう環境の中で、メンバーどうしがコミュニケーションをとるイベントを企画・実施したこともよかったと思います。
一方で、講師側のリソース不足は課題と捉えています。昨年までは、プロジェクト外の取り組みに自由に使える時間を全体の20%までとするルールに則り、限られた時間の中でスライド作成や修正を行っていて。「時間をかけてよいものを作りたい」「とはいえリソースに限りがあり、また大勢をこの新卒研修の取り組みに巻き込むのも難しい」という葛藤がありました。
――そうした振り返りをふまえ、今年はどんな研修プログラムを組み立てたのですか?
鵜飼:研修を通して「チーム開発に参加するための基礎的な知識を身につける」「プロジェクトを理解してスムーズに合流できる」「メンバーとうまくコミュニケーションがとれる」状態になることをゴールとして掲げ、プログラムを組み立てていきました
構成は昨年と同様に、前半(4月中旬〜5月末)はエンジニア職・デザイナー職・企画職のそれぞれで職種別研修を行い、後半(6月〜7月末)に3職種合同のグループワーク研修を行う形としています。
――具体的なプログラムについて教えてください。
鵜飼:前半のエンジニア研修では、以下のように全15項目の研修を1日1項目ずつ、オンラインで実施しました。
またこれらの研修で学んだことを実践に落とし込んでもらうために、昨年に引き続き今年も「アウトプット研修」を設けています。ここでは、「Next.js + Express + MySQL (Docker) 」でブログアプリを開発し、先輩メンバーのレビューを受けてもらいました。
後半のグループ研修では、エンジニア職・デザイナー職・企画職合同でデザインスプリントを実施。各グループで「どのようなプロダクトを作るか」を決め、実際にデザインから開発までを行いましたね。
\研修資料を一部公開/
――「メンバーとのコミュニケーション」の面では、どんな仕掛けを用意されたのでしょうか。
鵜飼:まずは昨年の取り組みを踏襲し、オフラインでのランチ会やオンラインでの雑談の機会を定期的に設けています。
また「研修中に出てくる疑問は、いつでも先輩に聞いてください」とあらかじめコミュニケーションツールでの質問や相談を促すことで、プロジェクト配属後もこまめに質問や相談をする癖をつけてもらえればと考えています。
――昨年の課題であった「リソース不足」については、どのように解決したのですか?
鵜飼:今年は20%ルールにとらわれず注力できるよう、この新卒研修の取り組みをプロジェクトとして切り出しました。並行して走っている開発プロジェクトのメンバーに「新卒研修の準備で、この期間はリソースの割り振りが半々になるかもしれない」とあらかじめ伝え、調整をお願いしていたことで、準備にしっかりと力を入れられたかなと振り返ります。
技術だけでなく、“人を頼ること”や“他職種の仲間の視点で考えること”も身についた
――続いて讃岐さんにお聞きします。入社前、研修についてどんなイメージを持っていましたか?
讃岐:私は自社開発、中でも新規サービス開発がしたいという思いでパーソルキャリアへの入社を決めたため、昨年までの研修内容をtechtektで見て「サービス開発を企画から経験できるんだ」「楽しそうだな」と前向きな印象を持っていました。
ただエンジニアリング経験が浅いので、「いきなり新卒だけでサービス開発ができるのか」「勉強しておかないと付いていけないかもしれない」という思いもあって。面接でお話しする中で感じた「人を見て成長をサポートしてくれる会社なのでは」という安心感と、とはいえ拭いきれない不安とが共存していましたね。
――期待と不安があった中、実際に新卒研修を受けてみてどうでしたか?
讃岐:私の経験の浅さと研修内容の手厚さもあり、座学からチーム開発まですべてが学びだった、という感覚ですが、その中でも大きく2つ得られたものがありました。
まずは先輩に質問することで得た技術的・精神的な学びです。Slack内にある「#chiebukuro_2023」で相談を投げると、すぐに先輩方が集まるビデオ通話に招待してもらえるんです。エラー画面を見ながら解決方法を一緒に考えてもらう中で皆さんの思考の過程を知ったり、「こうやって書くとよりよいコードになるよ」と教えてもらったりしたことが、とても勉強になりました。
また私は「自分でやらないと」と思ってしまう性格を自覚していますが、先輩方に寄り添ってもらう中で「質問や相談は、自分のためによいことなんだな」と思えたことが大きかったと思っています。
もう1つは、グループ研修で各職種の目線を知れたことです。エンジニアも企画を考えてユーザーインタビューをしたり、デザインツールを使ってデザインをしたりしたことで、「企画フェーズからどのようにプロジェクトが成り立ち、その中で各職種のメンバーがどのような視点を持っているか」が見えてきました。
現在グループ研修の最終フェーズとしてチーム開発に取り組んでいますが、その中で「デザイナーさんは多分こういうところが大変だから、これを事前に伝えておこう」などと考えられるようになったことを実感しています。
――実践につながる学びはもちろん、もう1つのゴールである「メンバーとのコミュニケーション」についても研修の成果を実感されているんですね。
讃岐:そうですね。また先輩との間だけでなく、新卒メンバーどうしでも活発にコミュニケーションがとれています。ルールがあるわけではありませんが、自然と週に1度はみんながオフィスに集まって「今どんな感じ?」「ここはどうやってる?」と話し合っており、グループ研修などを通じて関係性が少しずつ深まってきたことを感じます。
今年の課題をふまえ、さらに質の高い “新卒研修2024” へ
――受講したメンバーからの嬉しいお声がありましたが、鵜飼さんとしてはここまでの新卒研修の取り組みを振り返っていかがでしたか?
鵜飼:初めてリーダーのポジションに挑戦し、開発プロジェクトとの両立に難しさも感じていましたが、やはりこうして新卒メンバーから「勉強になった」「受けてよかった」と言ってもらえると嬉しく、やりがいが感じられます。
今後、開発プロジェクトに加わった新卒メンバーの育成をしたり、中途メンバーのオンボーディングを行ったりする場面で、今回の経験が活かせそうだなという感触です。
課題点としては、フォローする部分と経験としてやってみてもらう部分の線引きが難しいなと。どうしても「大丈夫?」と声をかけすぎてしまったり、分からないであろうことを代わりにやろうとしたりしてしまいますが、それが行き過ぎると成長の機会を奪ってしまいかねませんから。こちらが先回りしすぎずに、“初めてのことを経験としてやってみてもらう” ことも大切なのだなと感じました。
讃岐:私としては「このレベルの質問をしてもいいのかな?」と不安になる小さな疑問が山盛りだったので、1on1の場で「困っていることはないですか?」と細やかにお声がけいただけたことはとてもありがたかったです。
ただ「成長の機会を奪わない」という観点は、来年以降私が新卒研修に関わる際には意識しておきたいなと感じます。
――ほかに、現時点で見えている課題や来年以降に向けて意識されているポイントがあれば教えてください。
讃岐:今年は新卒メンバーが私を含めて5名と多く、それぞれに学んできた内容や技術・知識のレベルが異なることを強く実感しており、講師側の立場を想像して「どのようなレベル感の研修内容にするか」が難しそうだなと感じました。
鵜飼:そうですね。講師陣で今年のエンジニア研修の振り返りを行った際にも、ある人には「有意義な研修だった」と言ってもらえる内容でも、ある人にとっては退屈な研修になり得る、という点が挙がりました。その点は来年以降さらに工夫していきたいポイントではあります。
讃岐:今年は研修前に「これまでにどんな経験をしてきたか」を問うアンケートを実施いただきましたが、さらに「どんな内容を学びたいか」まで聞いてニーズが多い内容を研修に盛り込むのも一つの方法としてよいのかなと感じました。
また今年たくさんの学びをいただいた「座学の知識をチーム開発ではどう活かせるのか」「実際のプロジェクトではどうか」といった部分が、この会社・組織の研修ならではの魅力だと思います。
このような実務を身近に感じさせるポイントに一層厚みを持たせられれば、さらに心強い研修になると思うので、来年以降はそのあたりも検討していきたいですね。例えばパーソルグループで導入されているe-learningシステム「PALMS」の活用も視野に入れながら力のかけ方を工夫できればと考えています。
――ありがとうございます。それでは最後に、お二人が今後チャレンジしたいことを教えてください。
讃岐:入社以来ブログ制作やチーム開発に取り組んできましたが、今はまだリリースまで持っていくことはなく、ゴールが “完成させること” にとどまっています。実際にリリースしてみなければ分からない、ユーザーの声やリリースしたからこその問題点を知るためにも、自分で一から何かを開発して実際に世に出してみることに挑戦したいと思います。
鵜飼:現在フロントエンドエンジニアとして関わっている副業・フリーランス人材 マッチングプラットフォーム「HiPro Direct」は、ユーザー数が伸びてきて、成長のフェーズにあります。その中で、ただ言われたことをやるだけでなく自分でもサービスを見つめ、よりよいサービスになるよう改善提案を行いながら開発に取り組んでいきたいと思っています。
また世の中的に女性エンジニアが少ない現状に、「もう少しエンジニアとして活躍する女性増えてほしい」「そのために何かできることはないか」という思いがあります。
今回のようにエンジニア研修に積極的に関わることなどによって、エンジニアを志す方、興味を持たれている方にとって「女性も活躍しているんだな」と前向きに考えられるような環境や雰囲気をつくっていければと思います。
――ありがとうございました!
(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈/撮影=古宮こうき)
鵜飼 琴乃 Kotono Ukai
エンジニアリング統括部 タレントシェアリングサービス開発部 HiProエンジニアリンググループ エンジニア
2019年にアパレル企画営業職からWebエンジニアに転職。Reactを使用した受託開発業務を経験した後、2022年4月にパーソルキャリア入社。現在は HiPro Direct のフロントエンドを担当している。
讃岐 美奈実 Minami Sanuki
エンジニアリング統括部 エンジニアリング組織開発グループ
2023年に文系学部で大学を卒業。在学中に長期インターンシップや個人事業を経験した後、エンジニアとして2023年4月にパーソルキャリア新卒入社。現在はHR forecasterのフロントエンドを担当している。
※2023年8月現在の情報です。